「へっ、そう來なくっちゃな！　行くぜ"ダインスレイフ"！　男にストライカー戦なんぞ無理だとわからせてやる！」

ぶなり、"ダインスレイフ"が"カリヴァーン・リヴァイブ"に向かって全力の加速をした。全にまとった八枚のマント狀の追加裝甲からもスラスター炎が見える。防と同時に高機ユニットとしても機能するタイプの裝備だろう。

「來たな、かかってこい！」

侮辱に等しい言葉を投げかけられてなお、輝星の顔に浮かんでいたのは怒りではなく喜だった。ブラスターライフルを構え、即座に発砲する。実際にビームは発されていないが、両者のモニターには訓練プログラムによって合されたCGのビームが描寫される。

「うおっ、ロックオンなしでだぁ！？」

"ダインスレイフ"のコックピットでは、ロックオン警告音は鳴らなかった。アクティブセンサーを使わず、パッシブセンサーのみで手で撃したということだ。

にもかかわらず、狙いは正確極まりなかった。ビームは吸い込まれるように"ダインスレイフ"の腹部へ。しかし……

「だが、効かなけりゃあな！」

ビームはマント裝甲によって弾かれる。低出力ビームなどでは貫けないとプログラムが判斷したのだろう。

「他ねえ、そらっ！」

すさまじい加速を見せた"ダインスレイフ"は一瞬で目と鼻の先まで薄した。その手は腰のカタナに添えられている。

「喰らえっ！電磁━━」

「喰らうのはお前なんだよなァ！　これが！」

カタナが鞘のリニア機構で出される直前、"カリバーン・リヴァイブ"の頭部に據え付けられた二の機銃が吠えた。ペイント弾が"ダインスレイフ"の右手に降り注ぐ。

「なっ……！」

ストライカーの正面裝甲を抜くにはあまりに威力不足な小口徑機銃ではあるが、繊細なマニピュレーターを破壊するには十分だ。訓練プログラムが右手の作を強制停止させる。

「くっ……させるかよっ！」

その隙に放たれた蹴りを、何とかマント裝甲でガードするサキ。だが、"カリバーン・リヴァイブ"は防がれた蹴りの勢いを利用して宙返りをした。背中にマウントされた対艦ガンランチャーの砲口が"ダインスレイフ"に向く。

「うそだろ！？」

しかし現実は無であった。対艦ガンランチャーから模擬ミサイルが発される。サキにこれを避けるすべはなく、マント裝甲に著弾。

「ぐ……」

訓練弾だ。當然発など起きないが、サキの機のモニターには撃墜判定の文字が流れる。さしもの追加裝甲も、艦艇の破壊を主眼とした大型ミサイルを防ぐのは不可能だ。

「じょ、冗談だろ……」

鎧袖一、そう形容するしかない完敗だった。サキの縦桿を握る手が震える。

「一回墜ちた程度で呆けるな！　演習だぞ！」

そんな彼の耳朶を輝星の聲がたたく。

「これは実戦じゃない。お前が俺をわからせるか、俺がお前をわからせるかの勝負だろ？　違うか、ええっ！？」

「ああ！？　上等だよ、やってやんよ！！」

生來気の短いサキはこの挑発に対し、即座に撃発した。目に闘志を燃え上がらせ、訓練プログラムを再起させる。

「後悔すんじゃねーぞ、お前！！」

するりと距離を取っていた輝星に、再びスラスターを吹かせて接近。再びカタナの柄を握った。同じ轍は踏まぬよう、ギリギリまでマント裝甲で機銃の線をふさぐのを忘れない。

「今度こそだ、電磁抜刀ッ！」

紫電と共に、鞘から白銀の刀がになる。文字通り弾丸のような速度で放たれた一閃は、まさに神速。ゼニス・タイプであれキル・ゾーンにっていれば一太刀で両斷できる威力を誇る。

「いくら速かろうが當たらなきゃあさあ！」

が、輝星は最低限のきでこれをわしていた。カタナの切っ先が、"カリバーン・リヴァイブ"の裝甲を削るギリギリの距離を通過する。

「チィッ！」

その威力から、電磁抜刀直後はきを取るのは難しい。それでも、獨立可するマント裝甲のスラスターを使ってなんとか距離を取ろうとする。しかし、輝星がこの隙を逃すはずもない。ブラスターライフルの砲口が、マント裝甲の隙間に差し込まれた。そして、発砲。

「くっ……そぉッ！」

無慈悲な撃墜判定に、サキは歯を食いしばった。即座に訓練プログラムを再起させる。

「せめて剣を抜きやがれ！　馬鹿にしてんのかッ！？」

「チャンバラがしたいか？　付き合ってやるよ！」

ブラスターライフルを腰のハードポインへマウントし、部に埋め込まれたシースからフォトンセイバーを抜く輝星。

「舐めやがって！」

抜いたままのカタナを構え、サキは突撃した。最上段からの唐竹割りで斬りかかる。輝星はこれを正面からフォトンセイバーでけ止めた。実刃とビーム刃がぶつかり合い、スパークを飛ばす。フォトン(粒子)を磁界に封じ込めて剣狀に型した武と、刀を高速振させて斬撃力を高めた武だ。雙方強烈な磁力を発するため反発しあい、つばぜり合いが発生する。

「いいパワーだ！」

が、押し負けたのは"カリバーン・リヴァイブ"だ。新型とはいえ相手は近接特化機。全を高トルクモーターで駆させる瞬発力に優れた機だ。汎用機の"カリバーン・リヴァイブ"では瞬間的なパワーでは勝てないようだった。

「余裕ぶっこくからだ、馬鹿めっ！」

姿勢を崩した輝星に即座に二の太刀を叩き込むサキ。が、フォトンセイバーが閃きカタナの軌道がたやすくけ流される。今度姿勢を崩したのは"ダインスレイフ"だった。

「だが、パワーだけが勝負の決め手じゃあないッ！」

即座にフットペダルを踏み、一気に距離を詰める輝星。

「ぐっ……」

何とか逃れようとするサキだったが、それより早く拳打めいて突き出されたパイルバンカーが"ダインスレイフ"の腹部裝甲を叩く。

三たび表示される撃墜判定。サキは歯を食いしばり、そして大聲でんだ。

「畜生、もう一回だ！」

「いいぜ、付き合ってやる！」