「誰が撃てといった！　誰が！」

皇王アリーシャの憤慨のしようは凄まじいものがあった。敵主力が軌道上に居る段階でこちらの位置が呈するなどあってはならないことだ。

ない手勢で戦うために、皇國の部隊は集して布陣していた。それは向こうも予測しているだろうから、これから帝國艦隊は皇國主力部隊のすぐ近くに降下してくるはずだ。

「撃つなと厳命しておいたはずだ。なぜ撃った！」

「敵の大將は……ディアローズはわが兵士たちからも恨みを買っています。それが無防備に出てきたのですから、我慢が利かなくなったのでしょう」

「無防備？骨なだろう！　あの距離からあの戦艦の裝甲を抜ける兵がわが軍にあるか！？」

「……ありません」

憔悴した聲で幕僚が答えた。その隣に居る參謀が、焦った表でアリーシャに言う。

「陛下、わが軍にはいまだ展開の終わっていない部隊もあります。とにかく時間を稼がねばまともに戦えませんよ！」

「わかっている！」

基地戦隊や星軍の地上部隊は鈍足の民間輸送船でどうにかかき集めてきた戦力だ。到著も遅かったため、戦闘態勢になるまで時間がかかる。そんな狀態で敵の攻撃をければ、まともな反撃などできるはずがない。

「いったん部隊を下げろ。ただでさえない手勢が各個撃破されては話にならん。基地の防衛設備と協働していったん防衛線を引き直す。艦隊も後退だ」

命令を下すアリーシャ。だが、現場はとても上からの命令を実行できる狀態ではなかった。

「すごい數ですよ！　私たちだけで対処できる數じゃありません！」

「撤退！　てったーい！」

「うわーっ！」

漆黒の宇宙を背に、多數の真紅のストライカーが白亜の大地に降り立つ。皇國主力機"クレイモア"の部隊は、それらから浴びせかけられるビームでまともに行することすらできない。

「攻撃を分散させる！　私が前に出るからその隙に後退を！」

「無理無理無理！　大盾持っててもこんなの一瞬で焼き切られちゃう！」

「こんなことでビビってちゃじゃないわ！　行くわよ！」

「やめなさいおバカ！」

両手持ちの大型のシールドを構えた"クレイモア"がスラスターを焚いて前進した。敵の撃がその機に集中する。同僚を制止したが歯噛みしつつ、決斷する。この隙を逃してはならない。

「みんな、著いてきて！」

スラスターをわずかに吹かして後退を開始する。ルボーアaの重力は弱いため、下手にスラスターの出力を上げると簡単に飛び上がってしまう。味方の機も、彼に従い踵を返した。

それとほぼ同時に、前進した"クレイモア"の構えていた分厚い裝甲を持つタワーシールドが完全に溶解した。いくつものビームが貫通し、機が発を起こす。

「言わんこっちゃない……」

その発を背に、パイロットが涙聲で呟く。しかし傷に浸っている間はない。幸い、星ルボーアaはクレーターだらけの起伏だらけの地形だ。それを生かしてうまく姿を隠せば戦いようはある。

「とにかく數をしでも減らさなきゃ……」

ちらりと計に表示させたマップに目をやり、はごくりと生唾を飲んだ。フットペダルを踏み込み機を加速させた。

當然、帝國側も逃がすまいとブラスターライフルやマシンガンを撃ち込んでくる。たちは地面の起伏を盾にしてなんとかその攻撃を回避した。皇國パイロットたちはこの星の詳細な地形データを頭に叩き込んでいた。にわか仕込みではあるものの、地の利は皇國にある。

「獲が逃げるぞ！　一機も逃すな！」

「背中を打ち放題！　楽に撃墜スコアを増やすチャンスね！」

優勢な帝國パイロットたちはそれを逃すまいと追跡を開始した。遠距離で仕留められずとも、白兵で倒せばよいのだ。ライフルをしまい、剣を抜く者もいた。

「よし、ついて來た！」

しかしそれは、の作戦のうちだった。彼は開けた場所に差し掛かると、即座に真橫へと飛んだ。仲間もそれに続く。

一瞬遅れて帝國機も同じ場所にたどり著いた。とどめを刺すべくライフルをたちの"クレイモア"に向ける。

「撃てーっ！」

だが、それと同時にすぐ近くの山岳部にを潛めていた別の部隊が學迷彩を解除した。現れたのは六機の"グラディウス改"と、機砲と呼ばれるストライカーで作する大型の大砲が三門。

機砲が火を噴いた。口徑20cmの榴弾が"ジェッタ"の大部隊の真ん中に撃ち込まれた。榴弾は著弾の寸前に起し周囲に自己鍛造弾をばらまいた。大発が起こる。

「やったー！」

炎が晴れると、その跡にはおびただしい數のストライカーの殘骸が落ちている。事前にレクチャーされていた味方の砲撃陣地にい込んだの作戦勝ちだった。喜び勇むたち。

しかし、先ほどの砲撃をはるかに超える猛烈な発がたちのストライカーと砲撃陣地で起こった。悲鳴を上げる暇もなく、皇國部隊は一瞬で全滅する。

前線部隊から送られてきたデータをもとに帝國艦が艦砲による間接撃を行ったのだ。多とはいえ重力のあるルボーアaでならば、弾速を調整することで直接線が通っていなくても砲撃を當てることが出來る。帝國側も支援制は盤石だった。

「ポイントA304を制圧！」

「橋頭保を築く。周囲を警戒せよ！」

後から現れた帝國ストライカー部隊が油斷なくライフルを構えて進軍していく。戦闘はまだ始まったばかりだ。