「……くっ、信じたくはないが事実のようだな」

緒話をしている姿な仲睦まじく見えたのだろう。ヴァレンティナはひどく悔しそうな表で聲を絞り出した。

「ああ、言っておくが……この期に及んで、ご主人様のが清いままだなどという薄弱な希にすがるでないぞ？」

「……ッ！？」

ヴァレンティナが目を剝き、輝星がむせた。弾発言にもほどがある。當のディアローズはにたにたと卑猥な笑みを浮かべつつ、輝星の肢をいやらしい手つきででた。ヴァレンティナが生唾を飲む音が、こちらに聞こえてくる。

「當然であろう？　若いと男が仲になったのだ。そこへ行きつくのは、ごくごく自然なことだ」

「そろそろ行き遅れ呼ばわりされる年齢の癖に……！」

さすがにカチンときたディアローズは、一瞬電磁鞭でシバいてやろうかと思案した。だが、ヴァレンティナは銃を持っているのだ。無意味に挑んだところで勝ち目はない。怒りを飲み込み、余裕のある表で挑発を続ける。この手の副蕓ならば、お手のだ。

「いや、素晴らしかったとも。このしく瑞々しいを好き勝手弄ぶのはな？　白磁のようなが赤く染まり、細い手足が妾(わらわ)の手管で自在に跳ね回る……」

「あ、ああっ……」

その様子が脳裏に浮かんだのか、ヴァレンティナが奇妙な聲を上げた。首筋まで真っ赤にしながら、ぷるぷると震えている。その表は、輝星の折檻をける寸前のディアローズによく似ていた。

ディアローズのおもちゃになる以外の仕事がない輝星は、こういうところは姉妹なんだなあとノンキな想を抱いていた。余計なことを考えて気を逸らしていないと、彼ので興しかねないのである。

「知っているか？　地球人(テラン)の男はな、｜ヴルド人の男よりもが強いのだ。ご主人様も例外ではない。このような可い顔をしておきながら、かなりのスキモノなのだ。妾(わらわ)のを求める表は、それはそれはいものだ」

明らかに、ディアローズは話を盛っていた。だいたい、彼の言い草では自分の方が責める側になっていたような口ぶりだが、ディアローズは一貫してけ側に回るタイプの癖である。輝星としては自分の名譽のために反論したい気持ちもあったが、彼の策を邪魔するわけにもいかない。出來ることは、無言を貫くことだけだ。

「そ、そんな……噓だ……我がに限って、まさか……」

「本當だとも。噓だと思うなら、目の前でまぐわってやろうか？　ン？」

輝星からを離したディアローズは、芝居がかった仕草で腕を振って見せた。そのまま、彼のパイロットスーツのファスナーに指をかける。

「ちょっと……」

さすがに文句が口に出た輝星だったが、彼が言葉を言い切る前にディアローズのによって強引に口をふさがれてしまった。それを見たヴァレンティナが、ひゅうと聲とも息ともつかないかすれた音を出した。

「や、やめろ……！」

「やめろ？　やめろと來たか。くくっ」

焦ったような聲を出すヴァレンティナに、ディアローズはを輝星から離して肩をすくめた。

「自分の顔を鏡で見てみたらどうだ？　とてもやめてほしいと思っている人間の表とは思えぬぞ！」

「な、何っ！？」

ディアローズの言葉は、ヴァレンティナにはあまりにも予想外のだったのだろう。焦ったように彼はき、慌てて腰のポーチから手鏡を取り出した。

鏡に映った自の顔は……まるで発期の犬のようにだらしのないだった。目は潤み、今にもヨダレが垂れそうなほど口元は緩んでいる。ヴァレンティナはショックのあまり、一瞬卒倒しかけた。重力下であれば、へたり込んでしまっていただろう。

「なぜ？　何故だ！　どうして……わたしは……」

興しているのか。ヴァレンティナは、そこまで言葉を紡ぐことが出來なかった。自の間がっていることに気付いてしまったからだ。もはや、自分を誤魔化すことなどできはしない。

「地球には、蛙の子は蛙ということわざがある。どうやら、変態の妹も変態だったようだな、ヴァレンティナ」

「変態だと！？　このわたしが……！」

唖然とした様子で、ヴァレンティナが呟いた。噓だと聲高にびたかったが、自のの反応がそれを許さなかった。ニヤニヤと笑うディアローズが、輝星の首筋に舌を這わせる。彼の発した小さな悲鳴を聞いて、ヴァレンティナのの芯はさらに熱くなった。

「ネトラレとか、私の方が先に好きだったのにとか、そんな風に呼ばれる癖であろうな。要するに貴様は、自のする男がほかのに弄ばれているのを見て興するタイプなのだ。まったく、妾(わらわ)のことを笑えぬ変態ぶりだな。エエッ？」

寢取られ。その単語を聞いたヴァレンティナの脳裏に稲妻が走った。理が否定する前に、が納得したのだ。たしかに、ディアローズに抱き著かれて赤くなっている輝星を見ていると、口惜しさと同時にどうしようもなく粘度の高い興が脊髄から脳へと染み出してくる。

「銃を降ろせヴァレンティナ。する男を別のに犯されて喜ぶような輩に、皇帝なぞ務まるはずがないだろう」

ディアローズの放った正論に、ヴァレンティナは固まることしかできなかった。