《【書籍版発売中!】ヒャッハーな馴染達と始めるVRMMO》第26話 圧倒的強敵

『グガァァァァッ!!』

こちらを視認した『窟の番人』はその太い2本の後ろ足で立ち上がり強く、太く吼える。その咆哮は衝撃波となって辺りへ駆け巡り、その場の雰囲気を穏やかな草原から戦場のそれへの一瞬で塗り替える。

「うぎゃぁぁぁっ!」

「のわぁぁぁぁっ!」

番人熊(ばんにんぐま)の咆哮にリクルスとカレットが悲鳴をあげる。俺も一瞬逃げ出したい気持ちに襲われたが、自分より焦っている人を見ると自分は落ち著くというのは本當の様で、落ち著きを取り戻しながら、大迫力の咆哮に逃げだそうとする2人に言葉を飛ばす。

「えぇい!落ち著け!パニクるのが一番まずい!」

「ッ、すまねぇ!」

「むぅ、すまん!」

俺が言うと2人は気を取り直した様子で各々の武を構える。

リクルスは『蜥蜴鉄甲』を打ち鳴らし番人熊に向き直り、カレットはローブを翻し『蜥蜴鉄の緋杖』を構える。

何でもリクルスは巖蜥蜴戦で『』のスキルレベルが上がったらしく、メインを『』に切り替えたらしい。まぁあんだけ頭悪い連撃をし続ければレベルも上がるだろう。メイ、このバカ(リクルス)に剣だけじゃなくて蜥蜴鉄甲も作ってくれてほんとにありがとう。

「よし、やれるだけやるぞ!」

「「おおっ!」」

さっそく自分に【マジックアップ】を付與してからカレットとリクルスにもバフをかけていく。そして今回は俺も前線に出ようと思う、裝備が新しくなって気分が高揚しているのかもな。

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「トーカ!こいつもあの蜥蜴野郎と同じパターンか!?」

「とりあえずは!ただ々変わると思うからそこら辺意識しとけ!」

「了解!【狂化】!」

リクルスが巖蜥蜴戦でも使った謎のスキルは『狂化』と言うらしい。この前『泣鹿亭』での愚癡を聞いてる時にリクルスが教えてくれたスキルだ。何でも巖蜥蜴戦で稱號『狂戦士』と言うものを取得したらしい。

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『狂戦士』

のカケラもなく攻撃を繰り返す狂者の証

INTの長率半減 STRの長率2倍

『狂化』の取得

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と言うだ。あの時の理のカケラも無い【連衝拳】が原因だろう。STR長率2倍は嬉しいが……INT長率半減は辛いから俺は要らないかな。って何で取れる前提なんだよ……

そして『狂戦士』の稱號によって手出來るスキル『狂化』、このスキルは今現在では稱號によってしか手出來ないスキルで現段階で所持しているプレイヤーは多くは無いだろう、もしかしたらリクルスだけかもしれない。

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『狂化』

のINTを低下させる変わりに

STRを上昇させる

レベル1ーーINT10%低下 STR10%上昇

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なんという脳筋、使い手を相當に選ぶスキルだろう。稱號と同じく俺とは相が悪い。魔法をまるで使わないリクルスにぴったりな稱號とスキルだ。

「シャッ!行くぞっ!」

スキルが発するや否やリクルスが真正面から『咆哮』を発させて突っ込んでいく。

よく見るとリクルスのからうっすらと蒸気が出ている様な気がする、あの時はだったから気付かなかったが細かい所まで作り込まれてるな。

「オラッ!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!【衝拳】!」

裝備を更新した事で更に頭の悪くなった【連衝拳】が番人熊に打ち込まれていく。立ち上がるとの丈3〜4mはある番人熊の巨をリクルスの拳が毆りつけていく。

『グラァッ!』

「【衝けーーグボハッ!」

リクルスに恐ろしい連撃を叩き込まれていた番人熊だが、その攻撃をまるで気にしていないかの様に、何の抵抗もなく拳を振るっていたリクルスを鋭い爪の付いた大木(たいぼく)の様な腕で吹き飛ばす。

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風に吹かれた木の葉のごとく、呆気なく吹き飛んでいくリクルスを視界にれながらも俺は番人熊に向けて亀甲を振るう。

「クソッ、【アースクラッシュ】ッ!」

リクルスを回復するべきか一瞬迷ったがせっかくリクルスが作ってくれた好機を逃すわけには行かない、腕を振り抜いた事によりガラ空きになった番人熊の右の脇腹に全力で【アースクラッシュ】をぶち込む。

ゴシャバキィ!

外道やら何やらの諸々の効果が乗った【アースクラッシュ】はとても痛ましい音を立てながら番人熊の脇腹へと命中したが、番人熊の勢を崩す事は葉わずーー

『グルァァァァァッ!』

左腕での薙ぎ払いによって呆気なく吹き飛ばされてしまう。見ればHPは一撃で1割を下回っており、直前に防を新調していなければ今の一撃で終わっていただろう。

ふと見ればリクルスのHPは既に1、2ドット程しか殘っておらず、加えてスタン狀態に陥ってしまっている様で起き上がる様子を見せない。

幸いなのは不意打ちの【アースクラッシュ】によって番人熊のヘイトが完全に俺に向いている事だろうか。

『グガァァァァァッ!』

HPを回復しようと【ヒール】を唱えようとする俺に向って番人熊は思いっきり突進してくる。その迫力と言ったらダンプカーが押し寄せてくる様で咄嗟に反応が出來ない。

死んだ……と思った瞬間、圧された火の玉が番人熊の顔面で破裂し番人熊の突進を強制中斷させる。

「トーカ大丈夫かッ!?」

「助かった!【ヒール】!」

カレットが生み出してくれた時間で自に【ヒール】を使用し、HPを回復させる。出來れば【エリアヒール】でリクルスも回復したかったが番人熊に吹き飛ばされてしまった事で【エリアヒール】の範囲外に行ってしまい、リクルスを回復させることが出來なかった。

ちなみに今カレットが放った魔法は圧させた炎を弾の様に炸裂させる、『火魔法Lv.4』の魔法【ファイアボム】だ。顔面で炸裂させた事でしの怯み効果が出てくれたおかげで助かった。

「カレット!しでいいからアイツの注意を引き付けてくれ!リクルスを回復する!」

「了解!ただし私が死んでも恨むなよ!【ファイアランス】!」

カレットが放つ緋杖とローブで強化され、更に大きくなっている【ファイアランス】を目にリクルスの方へ駆け寄る。

「【ヒール】ッ!とっとと戦線に復帰しろ!」

しは馴染をいたわれッ!」

【ヒール】の程圏にリクルスを捉えてすぐに【ヒール】を飛ばす。そしてリクルスに一聲かけてすぐにUターンして番人熊に向って『地』を使い詰め寄る。

リクルスも一瞬遅れてスタンから解放され、起き上がってすぐに駆け出す。リクルスも持っていたのか、今習得したのかは分からないがリクルスも『地』を発して俺に追隨する。

「【インパクトショット】ォォ!」

「オラッ!【破豪(はごう)】ッ!」

遠距離からのカレットの火魔法時々風魔法ラッシュによって番人熊の意識は完全にカレットに向いており、俺達には背を向けている。

ならばそこを狙わない手はない。俺は背骨があるであろう位置に【インパクトショット】を打ち込み、リクルスは番人熊の數歩手前で跳躍し後頭部に『Lv.5』の【破豪】をぶち込む。

【破豪】、現時點でリクルスが使えるアーツの中で最強に位置する攻撃で『』で言う【アースクラッシュ】と同じ位置づけのアーツだ。

恐らく攻撃系のスキルはLv.5で一つ、奧の手的なアーツを取得するのでは無いのだろうか。カレットも『火魔法Lv.5』になった時に高火力の魔法を使えるようになったと言っていたな。

俺の背骨への一撃で海老反りになり、後ろにさがった頭部にリクルスが拳を打ち込む。鈍い音が2回の鳴り響き流石に効いたらしく番人熊は勢を崩す。

『グガァァァァァァッ!?』

背骨と後頭部の2箇所に不意打ちは流石に答えた様で悲鳴に近い雄びを上げる。その雄びは軽い衝撃波を伴っている様だった。

「【ファイアボム】!」

『グガァァァッ!グガッ!?』

そして顔が無理やり前に押し出されるタイミングを見計らいその顔面に【ファイアボム】を打ち込むカレット。自分から【ファイアボム】に顔面を突っ込むのは流石にこたえた様だ。

『グルルルルル……』

今までの連撃で相當頭に來た様で番人熊は低い唸り聲を上げながら怒りに染めた瞳でこちらを睨み據える。そして襲い來る圧倒的プレッシャー。

「こいつ……巖蜥蜴より強くねぇか?」

番人熊から発せられる威圧に耐えながら相手のHPバーを見據え……軽く絶した。

40発にも及ぶリクルスの【衝拳】に俺の諸々の強化を載せた【アースクラッシュ】、カレットの強化された火魔法に不意打ちの【インパクトショット】とリクルスの【破豪】にカレットの顔面【ファイアボム】。諸々の攻撃を全てまともにけた番人熊のHPはーー

8割以上が殘っていた。

2割“しか”削れなかったと言うべきか、2割“も”削れたと言うべきかは迷う所だが……なくともコイツは今の俺達には手に余るという事だろう。

「おいおい、これ……やばくねぇか?」

「そんなん分かってる。いいから突っ込め、バフは掛け直しといた」

「わぁーったよ!やってやらぁ!」

這い寄ってきた絶を振り払う様に肺の中の空気を一気に吐き出す。リクルスへの言葉がしキツくなってしまったのは無意識にでも気をい立たせたかったのだろうか。

「オッ……ラァッ!【鎧砕(よろいくだき)】ッ!」

『跳躍』のための踏み込みの瞬間に『地』を発することでまるで空中にワープするかの様に移するという、『地』と『跳躍』を組み合わせ技を使い、一瞬で番人熊の眼前へと飛び出したリクルスは突然の事で反応に一瞬のラグが出た番人熊の顔面へ【鎧砕】を打ち込む。

ガシャァァン!とガラスが砕される様な音をたて、番人熊のHPバーの上に防力低下のアイコンが現れる。

「ナイスッ!【インパクトショット】ッ!」

カレットにバフを掛け直してすぐに駆け出した俺は『地』も使い既に番人熊の後ろへと回り込んでいる。

そして気付かれること無く番人熊のがら空きな背中に【インパクトショット】を叩き込む。

『グルガッグガァァァァッ!?』

俺とリクルスのツーコンボで軽く仰(の)け反(ぞ)った番人熊は顔を前に戻そうとする。結果、カレットが放った【ファイアボム】にまたしても自ら顔面を突っ込む事となる。

カレットェ……アイツ戦闘、特に強い敵との戦いになると攻撃がエグくなるよな。この調子で『外道』デビューしてみるか?

カレットが放つ魔法は顔面や足元など、ウザったらしい場所ばかりを攻めていくので敵にしてみれば相當なストレスだろ。

「だらっしゃァァァァァッ!【破豪】ッ!」

追い打ちをかけるようにリクルスの【破豪】が番人熊の顎を右側から捉える。顎に対する一撃で脳が揺れた番人熊はふらつきながら勢を崩す。

「オラァッ!【アースクラッシュ】ッ!」

勢を崩し丁度毆りやすい位置にまで下がってきた頭部めがけて思いっきり【アースクラッシュ】を打ち込む。後頭部を抉る様に打ち付けられた亀甲は番人熊のHPをなくない量持っていく。

「よしッ!この調子で行くぞ!」

「おおッ!」

「任せろッ!」

し流れがこちらに傾いたタイミングで気合をれ直す意味も込めて思いっきり聲を張り上げる。リクルスとカレットも続いて聲をあげ、やる気は充分な様だ。

俺は亀甲を握りしめ、リクルスは蜥蜴鉄甲を打ち鳴らし、カレットは緋杖を正眼に構え狙いを定める。各々が各々の気合をれ直す。

『ゴガァァァァァァァッ!!!!』

起き上がり勢を立て直した番人熊がこちらへと明確な怒りを宿した瞳でこちらを睨み據えーー

◇◇◇◇

「いやぁ、負けた負けた」

結局、あの後俺達は粘りに粘ったが、番人熊のHPを5割まで削ることしか出來なかった。

半分も削れた、と誇るべきなのかは分からないが、なくとも俺は悔しい思いでいっぱいだった。そしてそれはリクルスとカレットも同じだろう。リクルスの言葉も軽い調子ではあるがどこか暗さをじさせるのはそういう事だろう。

そして現在、俺達はどこにいるかと言うと、番人熊に蹴散らされ呆気なく死に戻った後、『泣鹿亭』で反省會を開いていた。

HPが5割を下回り巖蜥蜴と同じ様に咆哮をあげた番人熊の続く行、地面を叩きつけ揺らし、俺達のきを封じる【スマッシュシェイク】と似た一撃によってきを封じられ、その隙にまずリクルスがやられた、そして次に俺がやられ、最後に殘ったカレットも前衛がいなくなった事でロクに詠唱も出來ずやられてしまった。

まず、HPが5割を切り攻撃力が上がったのか、先程はギリギリ耐えた右の薙ぎ払いでリクルスのHPはカラになった。

続いて俺の放った【インパクトショット】をともせずに繰り出されたベアハッグによって俺のHPが消し飛んだ。

最後に、これはカレットが言っていたが、あの巨からは想像も出來ない俊敏さで詰め寄られ、一撃で叩き潰されたらしい。

そうしてボロ負けした俺達は最後に死に戻ったカレットと合流してから『泣鹿亭』へと転がり込んだのであった。快く座席を用意してくれた大將、本當にありがとうございます。

「けど、これでよかったかもな」

「何でだよ、負けちまったんだぞ?」

俺の呟きにリクルスが反応する。負けてよかったと言う後ろ向きな発言にしムッとした様子でこちらを見てくる。そしてそれはカレットも同様だった。

「いや、悔しいは悔しいぞ?たださ……」

「ただ?」

「イベント前に1回あんなじでボロ負けしてさ、天狗になってた鼻をへし折って貰えてよかった。って俺は思った」

実際、々あって俺は神とは思えない火力を手にする事が出來た。大の敵は一撃で消し飛ぶし、ボスクラスのモンスターだって苦戦はしたが勝てない事は無かった。増長しないように心がけてはいたがどこかで天狗になっていた部分があったと思う。

そしてそれは多かれなかれリクルスとカレットも同じだろう。

そしてその慢心は悲劇を引き起こす原因となりかねない。下手したら明日のイベントでそれが起こる可能だってある。

そんな天狗の鼻を番人熊と言う圧倒的強者にへし折って貰った事で目が覚めた。そんな心境になり、この気持ちを自覚する事が出來た。

そう言うとリクルスもカレットも思い當たる部分はあるようで納得した様に頷いていた。しっかりと人の言葉を飲み込める辺りこの2人は立派だよな。

そういう訳で番人熊よ、俺達の目を覚まさせてくれてありがとう。そしてーー絶対にリベンジしてやる、覚悟しとけ。

次回掲示板回挾んでイベント開幕になると思います

そしてこのタイミングでストックが底を盡きた次第であります。ので毎日投稿は終焉を迎える可能が限りなく高いです、すいません

ただ死ぬか神的に相當辛くならない限りエタる事は無いように努力するんでご勘弁をば

今後その場のノリで々なスキル(複合スキル含む)や稱號、武アイテムを増やしていくと思うので何かアイディアがあればお願いします!

おかしい所や誤字字、誤用などがあったら是非ご指摘お願いします

ブクマしてくれた方や読んでくれてる方本當にありがとうございます!

今後も當作品をよろしくお願いします!

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