《【書籍二巻6月10日発売‼】お前のような初心者がいるか! 不遇職『召喚師』なのにラスボスと言われているそうです【Web版】》第13話 素材って?

次の日。

早朝からログインしたヨハンは、昨日獲得したランキングポイントを確認する。自分が急上昇ランキング1位になったことは知らないヨハンだったが、それでも580Pという大きなポイントが振り込まれており、頑張った甲斐があったと満足していた。

「【中級召喚】を120Pで購して……っと。ふぅ、これでやっと中級のバチモンが呼べるわね。余った分はどうしようかしら……今はいらないか」

ヨハンは相変わらずバチモン以外への関心が薄かった。目當てのスキルを獲得すると、早々に切り上げ、人気のないフィールドへと移する。

「流石にこの子たちは宿屋じゃ呼べないからね」

そして玩型の召喚石を取り出す。

「――召喚獣召喚! 【バスタービートル】!!」

幾何學的な魔法陣から、一の巨大なモンスターが出現する。クワガイガーと同等の大きさ、上下に並んだ白い二本の角、赤い裝甲に稲妻模様。4本の足でを支え、殘り2本の足は攻撃用に進化している。ヨハンはヘラクレスオオカブト型バチモン、バスタービートルを呼び出すことに功した。

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「ビジジィイイ」

「ああ、格好良いわ……素敵」

ヨハンは出現したバスタービートルの前足に抱きつくと、頬ずりをする。クワガイガーとの扱いの差があるのは、思いれの違いだろうか。

「はぁはぁ……この裝甲、くて冷たくて、でもしぷにっとしてて、気持ちいい。ずっとここに住みたい……このゲーム、こうしているだけで楽しい」

召喚獣に抱きつきながら恍惚とした表を浮かべるその姿は端から見たら完全にやべー奴である。おそらく現実(リアル)の知り合いに見られたら一ヶ月は引きずるであろう醜態だった。そしてそんな醜態をさらすヨハンに聲を掛けるプレイヤーがいた。

「あの……ヨハンさん」

「ひゃ!? ああ、誰かと思ったらゼッカちゃんか。どうしたの?」

慌てて平靜を裝うヨハンだったが、時すでに遅し。ゼッカは割と初めから全てを見ていた。だが心優しいゼッカは今見た景を全てスルーして會話を開始する。

「昨日のランキングイベント、お疲れ様でした」

「ありがとう。ゼッカちゃんがスターターセットをくれたおで、ほら!」

ヨハンはまるで我が子を自慢する母親のようにバスタービートルを指し示す。

「中級のバチモンも呼べるようになったのよ。本當にありがとうね」

「ええ、私もお役に立てて良かったです。ただ……」

「ただ?」

「えっと、昨日のイベント中、黒い鎧を著てましたよね? あれってなんなんですか?」

「ああ、アレね。あれは……」

ヨハンは先週ゼッカと別れてからの出來事を全て話した。

ユニーク裝備カオスアポカリプスを手したこと。

蟲のダンジョンを単獨で突破したこと。

クワガイガーを手したこと。

そしてランキングイベントのこと。

「やっぱりあの鎧はユニーク裝備だったんですね」

「ええ、恥ずかしいから戦う時以外は裝備しないんだけどね。ところでユニークって何?」

「このゲームに一つだけしか存在しないって意味です。ヨハンさん、凄く運がいいんですよ」

「そうなの? みんなこのくらいの裝備は持っているものかと思ったけど」

レベル50のゼッカが言うのなら、そうなのだろうとヨハンは思う。そして、自分のような初心者がこうもあっさりゲームを進められたことにも、今更ながら得心がいった。

本人は【ろくよん】のプレイ経験が役に立ったようね……と思っていたが、それは只の気のせいだったようだ。

「でもそれを聞いちゃうと、なんだか申し訳ない気分になるわね」

「え、申し訳ないとは?」

「だって、みんなこのゲームを一生懸命頑張っているのに。コラボイベント目當ての私が楽に強くなってしまって……それが凄く申し訳ないわ」

自分の機は不純だと落ち込むヨハン。だがそれは違うとゼッカは言う。

「それは違いますヨハンさん。コラボイベントっていうのは集客目的でやるものです。だからそれ目當てで始めたヨハンさんは何も間違ってはないんです」

コラボイベント自がそもそもヨハンのような人間をゲームに引き込むためのものだと語るゼッカ。

「それに、ユニークアイテムを手できたのは、ヨハンさんが本當にバーチャルモンスターズを大好きだったから。していたからです。だから何も恥じることなく、むしろ堂々とその鎧で暴れ回っていいんです!」

「暴れ回るかはともかく……ありがとうゼッカちゃん。元気が出たわ。そうよね。別にズルしたわけじゃないし。堂々とこのゲームを楽しむわ」

ヨハンの言葉を聞いて、ゼッカは嬉しそうに笑う。

「その意気です! それに、昨日のハイライト映像でヨハンさんの活躍を見て思ったんです」

「そうなんだ。え、ちょっと待ってハイライト映像? ハイライト映像で私を見たの!? 活躍? ちょっと詳しく」

あの鎧を著ていた姿が配信されている!? その事実に戸いを隠せないヨハンだったが、ゼッカは構わず続けた。

「エンジョイ勢なのにロランドさんと互角に渡り合うヨハンさんを見て、し救われた気分になりました。ああ、自分が楽しいと思うことだけを貫いて、強くなれるんだって。やっぱり私は間違ってなかったって」

「あの、ハイライト映像って……」

ゼッカの言うことがまるで頭にらないヨハン。

「ヨハンさん!」

「は、はい!?」

「これからも私と仲良くしてくださいね!」

「え、ええ、別に構わないけれど」

に手を握られている事実に、し頬を赤らめるヨハン。

(よくわかんないけど。何かあったのね、ゼッカちゃん。もうし仲良くなったら、話を聞いてみましょう)

その後、一通り話をして、今日はもう解散しようかという時分。ヨハンはふと気になっていたことを思い出し、ゼッカに尋ねてみた。

「なんですか? なんでも私に聞いてください!」

「バスタービートルなんだけどね。召喚できたのはいいんだけど、スキルが一つしか使えないのよ」

ヨハンの召喚獣管理畫面にはバスタービートルの狀態とスキルが並んでいる。確かにスキルは三つあるのだが、その二つには鍵のアイコンがついている。

「ああ、中級以上の召喚獣は強力なスキルを持ってますから。最初は封印されているんですよ」

「封印?」

「ええ。使うためには素材を集めなくてはいけません。ここを押してください」

ゼッカに言われたとおりに作すると、何やら見慣れない畫面が表示された。

【召喚獣解放石】×1

【ビートルダイヤ】×3

【甲蟲の角】×28

「スキル一つにつき、これらの素材を消費して解放すると使えるようになるのです」

「え?」

ヨハンは青ざめながら、自らのアイテムストレージを漁る。

「召喚獣解放石……ない。ビートルダイヤ……ない。甲蟲の角……3個……oh」

肩を落とすヨハン。

「み、道のりが長すぎるわ……」

「あはは。他の中級召喚獣たちの分も考えたら気が遠くなりますね!」

そんなヨハンを笑いながらめるゼッカ。剣士職はここまで素材を要求されることはないので、この余裕である。

「アニメのバスタービートルの必殺技は【テラーズブラスター】。なのにこのゲームではロックされている……。使いたい……でも使うにはどこで手にるかもわからない素材を探し続けなくてはいけないの!?」

的な表をするヨハン。

「いいえ。素材集めは確かに面倒ですが、その面倒さを楽しく済ませてしまう方法があるのです」

「そ、そんな方法があるの!?」

縋るヨハンに気を良くしたのか、ゼッカは続ける。

「はい。來週から始まる新しいコラボイベント【アイドルスターズ】を私と一緒に遊べば、全て解決するのです!」

「あ、アイドルスターズですって!?」

「ええ、ヨハンさんが驚くのも無理はありません。何せ小學生子から大人の男まで、あらゆる層を虜にする大型コンテンツ、アイドルスターズとのコラボですからね」

「ゼッカちゃん」

「はい、なんですか!」

「アイドルスターズって何?」

「え……?」

互いにじるジェネレーションギャップ。次回、素材の味しい新イベント開催。

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