《【書籍二巻6月10日発売‼】お前のような初心者がいるか! 不遇職『召喚師』なのにラスボスと言われているそうです【Web版】》第16話 中級バチモン大暴れ
「これで良し……と」
ヨハンは作していたメニュー畫面を閉じると、軽くびをした。
「……どうしたの?」
橫でゴロゴロしていた著ぐるみゴリラが小さくか細い聲で尋ねてくる。アイドルスターズイベントで一時的にパーティを組んだ、レンマである。あの後フレンド登録をしたのだが、妙に懐かれてしまったようだ。
仕事を終えてヨハンがログインすると、決まってメッセージを送ってきて、合流し、一緒に遊んでいる。あの時、可らしい素顔を見せてくれたレンマだったが、今は再びゴリラの著ぐるみで全を包んでいる。
(可いのに……勿ないわね)
と素顔が見えないことを嘆きつつも、ヨハンはレンマの質問に答えた。
「中級バチモンのスキルが解放できたのよ」
「……おめでとう。良かったね」
喜んでくれるレンマに「ありがとう」と応え、ヨハンは一つの提案をした。
「レンマちゃん、二人で一緒にイベントエリアに行かない?」
「……イベントエリア? アイドルスターズの?」
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「そう。中級召喚獣のスキルが三つ使えるようになったから、試してみたいのよ」
大量の雑魚が湧く場所というのは限られており、そういった場所は大抵大手ギルドが占有している。そういう意味で、自分たちしかれないイベントエリアというのは貴重だった。
「……わかった。でも、ゼッカは今日來ないよ? ……ちょっと言えない予定があるって」
「言えない予定ねぇ……もしかして彼氏かしら?」
「……かっ、かかかかかれち!? ゼッカ……意外と大人……なんだ///」
彼氏という言葉に顔を真っ赤にするレンマ。夜に彼氏と出かけているという報から、いったいどこまでの展開を妄想しているのだろうか。
ちなみにゼッカは家族で食事に出かけているだけであり、付き合っている彼氏もいない。絶佳も子高生。ちょっと見栄張って、含みを持たせたのだろう。あるいは年下のレンマに、し大人ぶりたかったのかもしれない。
「まぁ、今日は二人で楽しみましょうよ」
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ヨハンはこの前の戦闘を思い出し、今の戦力なら二人でも行けるでしょうと結論づける。もし仮に失敗しても、それまでに集めたサイリウムは獲得できるので、無駄にはならない。
「……お姉ちゃんがそう言うなら。行く」
レンマは初日で目的のアイテムを手したのでもうイベントをやる意味は無いのだが、それでも快くOKしてくれた。対するヨハンと言えば、念願の中級バチモンたちのスキルを解放したものの、まだ一ずつしか解放していない。を言えば、殘りのメテオバード4、ソードエンジェル2もスキルを解放しておきたいところだった。
「それじゃあ行きましょうか!」
「……おー!!」
レンマの可らしいかけ聲に頬を緩めながら、ヨハンは再びイベントエリアへと移した。
***
アイドルの曲が始まると、前回と同じように応援姿のゴブリンが侵攻してくる。
「……ボクは守ってるだけでいいの?」
「ええ、そこで格好良いバチモンたちを見てて頂戴」
ヨハンは玩型の召喚石を取り出すと、それを起する。
「召喚獣召喚! ――【バスタービートル】!!」
幾何學的な魔法陣から、上下二本の角を持つヘラクレスオオカブト型のバチモン、バスタービートルが姿を表す。
バスタービートルが最初から覚えていたスキルは【ビートルアーマー】。敵から放たれた狀態異常を與える魔法を反するスキルである。そして、ヨハンが集めた素材によって解放された殘り二つのスキルは、どちらも攻撃スキル。
「さぁ、苦労して解放したスキル、じゃんじゃん使うわよ! バスタービートル、【バグ】!!」
「ビジジィィイイ」
バスタービートルの甲殻の隙間から、無數の小さな蟲が湧き出して、敵に向かってわらわらと向かっていく。メスのカブトムシに見えるその蟲たちは小さいとは言っても、それはバスタービートルと比べた場合の話で、ルンバくらいの大きさはある。その蟲たちはゴキのような機力でゴブリンたちに這い寄り、攻撃をかわしてにまとわりつく。そして。
どごおおおおおんん!
そのまま発した。巻き込まれたゴブリンたちは々に吹き飛ぶと、サイリウムをまき散らしながら消滅した。
「どう? どうレンマちゃん! 格好良いでしょ? あれ私のモンスターなのよ!」
ハイテンションでレンマを振り返るヨハンだったが、彼の著ぐるみゴリラは青い顔をしていた。どうやらレンマは蟲が苦手だったようである。
「……うん、格好良……うぷっ」
「無理しないでレンマちゃん、蟲苦手なのね!」
(レンマちゃんの前ではバグは封印ね。MP消費もなくて良い技なんだけど)
ヨハンは気を取り直して、次のスキル発の指示を出す。
「ビジィ……ビジジィイイイイ!!」
バスタービートルの頭部と部から生えている二本の巨大な角の間に、ビリビリとエネルギーが溜まっていく。そしてあふれ出んばかりのエネルギーを二本の角で収束させ、ゴブリンの一団に向かって解き放つ。
「――【テラーズブラスター】!!」
放たれたのは超強力な無屬攻撃。ビームと言って良いだろう強力な攻撃はゴブリンたちを一瞬で粒子に分解し、消し去った。
「……凄い破壊力」
「でしょ? でも、ちょっと強すぎるわね。右側の観客席が消滅してしまったわ」
消滅した観客席のあたりから、なだれ込むようにゴブリンたちが押し寄せる。そして、法被を著た足の速いコボルトたちも參戦。フィールドは混沌としてきた。
対するバスタービートルは、大技を撃ったにもかかわらず、まだ戦えるとばかりに雄びを上げている。ブラックフレイム一発で消えてしまう初級のヒナドラとの格の違いを見せつけているようだ。
「MPはまだ殘ってるけど……今日はもういいわ、お疲れ様」
ヨハンはバスタービートルの召喚を解除すると、新しい召喚石を取り出す。あくまで今回の目的は、新しいスキルの実験なのだろう。
「召喚獣召喚――【ソードエンジェル】!!」
続けてヨハンが召喚したのはソードエンジェル。鍛え抜かれた天使がビームウィングやビームシールド、ビームマスクなど近未來的な裝備を纏っている。その姿は神々しくもあり、また歴戦の戦士のようでもあった。
「……お姉ちゃん。ちょっと敵の數が多すぎる。これじゃ守り切れないかも」
アイドルの護衛を引きけているレンマから聲が上がる。だが、ヨハンは全く心配していなかった。
「心配しないでレンマちゃん。ソードエンジェル……いきなり大技行くわよ!」
「了解した、我が主(あるじ)。はぁああああああああ!」イケボ
と、いきなりイイ聲でしゃべり出したソードエンジェルは、天に両手を掲げる。すると、空に巨大な門が現れる。
黃金でできたその門は後が差していて、悪しき魂を浄化するがごとき神々しさだった。その景を、レンマは呆然と見上げていた。
「邪悪なる魂をこの世から消し去る。神の裁きをけよ――【ゲート・オブ・ヘブンズ】!!」イケボ
ソードエンジェルの聲と共に、裁きの門が開かれる。そして、フィールドのモンスターたちは次々とそのを巻き上げられ、門の向こうへと吸い込まれて消えていく。
「……凄い。あの量の敵を一瞬で……ボク、ちょっと震えちゃったよ」
「思ったより凄い演出で、私も鳥が止まらないわ……」
全ての敵を吸い込んだ門が消えていく。とんでもないチートに見えるが、ゲームとしての処理はスキル発時に敵全に即死判定を行い、即死が決定した相手に対して門に吸い込む演出が始まるといったものだ。だがその派手な演出は、十分に二人の心を打つ。
「……あれ、ソードエンジェルが」
門が完全に消え去ると、ソードエンジェルもゆっくりと足下から、粒子となって消滅していく。
「この技、MPを全て消費してしまうのね。発時に殘っているMPの分だけ、即死の功率が上がる……と」
「……強大な力にはリスク……だね」
「大丈夫だ我が主よ。きっと、私たちはまた會える。貴方が、むなら」イケボ
消えゆくソードエンジェルはアニメの臺詞を良い聲で言いながら、消滅していった。
「凄いわ。名シーンの名臺詞も言ってくれるのね」
バーチャルモンスターズファンの間でも屈指の名シーン、ソードエンジェル、命がけの大技発! の再現度の高さに満足し、目に涙を浮かべるヨハン。
「子供の時泣いたなぁあのシーン。ま、今見ても泣いちゃうんだけどね」
「……してるところ悪いけどお姉ちゃん。多分あのモンスター消滅するとき毎回あの臺詞言うよ」
「え……?」
「……そういう前例があるの……ちょっと鬱陶しそうだよね」
「そ、そそ、そんなことないわよ。名言だから……の名シーンだから……毎回聞いたって、飽きたりなんかしないから」
「……力あるスキルには、リスクがある……」
「やめて。的な思い出のシーン(再現)をスキルのデメリット扱いしないで!」
「……わかったよお姉ちゃん。貴方が、むならキリッ」
「やーめーてーイジらないでぇ」
後半へ続く
お様でVRゲームジャンルの日刊1位に載る事が出來ました。また、日刊総合では22位と、凄く驚いています。皆さまのブクマ・評価・想のおでございます。よろしければ、どうかこれからも応援をよろしくお願い致します。
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