《【書籍二巻6月10日発売‼】お前のような初心者がいるか! 不遇職『召喚師』なのにラスボスと言われているそうです【Web版】》第20話 殺戮と殺
ダークエルフの里へとやってきたヨハンたち。里とは言っても、巨大な木をくりぬいて作られた、集合住宅のようであったが。
そして里の中央は數枚の大きな板で囲われて見えなくなっており、その向こうからカロンの彼氏のものと思われる悲鳴が響き渡っていた。
「うああああああ! た、助けてくれえええええ」
「ダークエルフたちは全員あの壁の向こうですね。接近は容易でしょう」
「そうね……もっと近づいてみましょう。さぁ、カロンさん、もうしよ」
彼氏の悲鳴が聞こえるたびに肩をふるわせ、青ざめた表をするカロン。ゲームのイベント故にそこまで酷い目にあっているとも思えないが、まぁ大事な人が拷問をけているとなれば、心中穏やかではないだろう。
それを考慮し、4人は壁のすぐ傍までやってきた。
「ぐんうぅ……あああああ……ひゃああああああ」
「さて、どうやって攻めるか……ですが」ヒソヒソ
「ソードエンジェルの【ゲート・オブ・ヘブンズ】で全員即死させましょう」ヒソヒソ
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「ちょっと勿ない気もしますけど……それが一番安全そうですね」ヒソヒソ
「ソラああああああ! 助けに來たよおおおおお!!」オオゴエ
「「「っ!?」」」
その時、カロンが壁の向こうの彼氏に向かって大聲でぶ。壁の向こうからは「何事だ?」というダークエルフのものと思われる聲が。
「何してるんですか! まったくこれだから彼氏持ちは……」
憤りながらも剣を構えるゼッカ。
「カロン……カロンなのか……來るな、來るんじゃねえええええええぎゃああうひょーい。お、お前には……無理だああ」
「大丈夫! 強い人たちを連れてきたから!! 今そっちに行くからね!」
「うひょ……來るな……これは……お前には見せられんんんんんほおおお」
「大丈夫!? 大丈夫なのソラ?」
「お、俺のことは置いて……ひゃん……帰れええええええええ」
目の前で繰り広げられるラブコメを冷めた目で見つめるヨハン、ゼッカ、レンマの三人。
「なんか様子が変ですよね、彼氏」
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「ええ、これは」
「……苦しがっている聲というより……」
「「「愉しんでいる聲」」」
「なんかオチが見えた気がするわ……【エクスキャリバー】!!」
ヨハンはソードエンジェルのスキル【エクスキャリバー】を発させる。それにより、右腕の付けの部分からビームソードがびる。さらに筋力數値に+80が追加される。
「はああああああ!!」
そのビームソードを橫一閃。中央を覆い隠していた壁を破壊する。破壊された壁がの粒子となって消滅すると、中の様子が見て取れた。
「ほらほら……早く私に屈服してしまいなさい。ここ? ここなの?」
「んほおおおお……さいこおおおおおおおおおお」
壁の向こうには、大勢のダークエルフたちが居た。褐銀髪の非常にしいダークエルフたちは、首などの大事な、見せてはいけない所が最低限隠れるくらいの服しか纏っていない。
カロンの彼氏【ソラ】は仰向けの狀態で4人のダークエルフに四肢を拘束されていた。それだけでダークエルフのを堪能するのには十分なのだが、さらに追い打ちとばかりにダークエルフの王はそんなソラの顔を足でぐりぐりと踏みつけている。
「くそ、くそ……俺は……負けねぇ……どんな姿になろうが……人としての誇り……プライドは失わねぇ……逃げろおおおおおカロンんんん」
立派なことを言っている彼氏だったが、その目は足の向こう側、ダークエルフの王の座を真剣に見つめている。ワンチャン運営がそこまで作り込んでいるのでは?と期待している。
「これは酷いわね……何が拷問なのかしら」
「そりゃキレますよなら……なんですかあのデカ過ぎるは!」
「……はわわわ」///
「レンマちゃん、あっちで隠れてなさい」
「……うん、そうする。……ボクには刺激が刺激が強すぎだ」///
王の部を見ることに真剣になっていた彼氏は、助けに來た彼がすぐ傍に來ていることに気が付かなかった。
「……ねぇソラ君……何をシテイルノカナ?」
「見え……見えっ……もうすぐ……え……?」
一瞬で正気に戻る彼氏。ゴミを見るような目の彼。
ヨハンとゼッカはこんなに冷たい目をした人間を初めて見たという。
「た、たたたたた、助けに來てくれたんだね……カロン……そ、そのまま逃げちゃってもよよよよかったのににににににに」ガクブル
「ヨハンさん、ゼッカさん。どうやら私の彼氏は既に殺されていたようです」
「「「え?」」」
ヨハンとゼッカ、そして彼氏の聲が重なる。
「彼氏は既に殺されていたんです。だから、ダークエルフたちを倒してください。ドロップアイテムは全て差し上げます」
「ま、待ってくださいよ……彼氏を助けに來たんでしょ?」
「そうよ。男だもの。多は大目に見てあげるべきよ……」
「いいから殺(や)って」
「「はい」」
「ぎぎゃああああお助けー」
戦闘態勢にったヨハンとゼッカの前に、ダークエルフたちが立ちはだかる。
「お前たち、この里に人間のは要らないよ。やっておしまい!」
武裝したダークエルフたちが立ちはだかる。ゼッカは二刀流で、そしてヨハンはお気にりのスキル【ブラックフレイム】で応戦するが。
「……ふうむ」
「ちょっと、何してるんですかヨハンさん! 集中しないと」
ヨハンはダークエルフたちを見ていて、思っていたことがある。顔。誰かに似ているなと。ダークエルフの顔は全て同じ。王でさえ顔の造形は同じで、裝が豪華になっただけというじである。そのダークエルフたちの顔が誰かに似ていると思いながら戦っていると、ふと思い立つ。
『びえええええんんん哀川せんぱあああいいいいたずげでくだざいいいいいいいいいい』
「ああ、顔があの子に似てるのね!」
「え、似ている? ヨハンさん? 今日一番の楽しそうな聲で、いったいどうしたんですか?」
「ねぇゼッカちゃん。ダークエルフと戦うの、私に任せてくれないかしら?」
「い、いいですけど……え、なんか怖いですよヨハンさん」
ヨハンは一歩前に出る。ダークエルフたちは王を守るように陣形を組むと、手に持った杖をこちらに向けてきた。そして、一斉に魔法を放つ。
「――呪縛の呪文!!」
「――呪縛の呪文!!」
「――呪縛の呪文!!」
行を封じる狀態異常を付與する闇魔法が放たれる。だが、その呪文はヨハンに命中したかと思うと、跳ね返り、呪文を打ったダークエルフに命中する。狀態異常魔法を跳ね返すスキル、バスタービートルの【ビートルアーマー】が発したのだ。
「がっ……ああああ」
大勢のダークエルフたちがその場でけなくなる。その様子を楽しそうに眺めていたヨハンは右腕からエクスキャリバーを出現させると、一一、真っ二つに切斷していく。
切られたダークエルフたちは粒子となって消滅する。
「あは……このゲームたーのしー!!」
ヨハンは笑った。一週間ため込んでいた社會人の闇(ストレス)が解放されてしまった。こうなっては誰にも止められない。
「くっ……調子に乗るなっ!!」
呪文が解けると、今度は素手で襲いかかってくるダークエルフたち。ヨハンはエクスキャリバーを解除し、【闘魂・極】を発させると、向かい來るダークエルフたちを一一毆り飛ばしていく。【闘魂・極】によって倍加し、1000以上の筋力となったヨハンの打撃は、ダークエルフのを一撃で粒子に分解する。
「くそー破れかぶれだー!!」
摑みかかってくる最後のダークエルフの攻撃をひらりと避けると、左手で相手の首を押さえ、右手で頭部を鷲摑みにする。
「つーかまーえたー」
そして頭部を引っこ抜く。
「ふふ……魚みたいねぇ」
背骨ごと引き抜かれた首は瞬く間にのようなダメージエフェクトと共に消滅する。
「このダークエルフの王と戦おうというのか? 愚かな」
殘るのは王のみ。モンスターキャラクター故に王はヨハンを恐れることは無い。王は過度な裝飾の施された杖を構えると、部下と全く同じ「呪縛の呪文」を放ってくる。
當然それは跳ね返され、王は自分自がけない狀態となってしまう。ヨハンはそんな王の髪を引っ張ったり、鼻を摘まんだりしながら遊ぶ。
「くっ……殺せ……」
「あらごめんなさい。貴方の顔が知り合いにそっくりなものだから……つい」
ヨハンは名殘惜しそうに王の顔をでると、し距離を取る。
『びえええええええゴキブリいいいいい哀川さああああん助けてええくだざいいいいいいいぎ』
何故だろうかそんな昔の出來事が思い出されたので、トドメに使うスキルは決まった。
「――【バグ】!!」
ヨハンの鎧の隙間から、小さな蟲がわらわらと湧き出して、それぞれがバラバラの軌道を描きながらも、王へと向かっていく。そして王の足下から這い上がり、大量のメスカブトムシに似た蟲が、全をカサカサとき回る。
王の苦悶の表を楽しんでから、翳していた手を握りしめる。それが起のキーとなり、全ての蟲たちは発。ダークエルフの王は消滅した。
「あー楽しかったー! 凄いストレス発散になったわ!」
本人も知らない間に溜めていたであろうストレスを発させきったヨハンは、まるでのような綺麗な瞳をしていたという。鎧で全く見えないけれど。
「よ、ヨハンさーん。終わったらこっちも手伝ってください~」
振り返ると、そこではもう一つの戦いが行われていた。
彼氏のぐらをつまみ上げ、顔を袋叩きにする彼。その橫で、彼氏にヒールをかけ続ける涙目のゼッカ。
「ゼッカさん、ヒールを。彼氏が死んじゃうので」
「えっと……死にそうなのはカロンさんのせいで……」
「早くしてくださいます?」
「……はい」
「ふむ、これが本當のダークエルフ(の里)の拷問ね」
「いや、訳わかんないこと言ってないで、彼さんを止めてください」
***
その後、彼氏だったものを祭に上げたカロンは、
「ちょっとこの後、アレの家に行ってきます。々と相談があるので。本當にお世話になりました」
と言ってログアウトしていった。
「さて、それじゃあ今回のこの【ダークエルフの拷問】というイベントについて、まとめようかと思います」
ようやくの震えが止まったゼッカが、これまでの事実を踏まえ、この謎のイベントを総括した。
「完全に運営のおふざけですね」
「まぁそうよね」
「……でも、ゼッカが聞いた経験者の話ってのは……?」
「あーあれ、ロランドって人から聞いた話なんですよ」
「あーあのナンパな人ね」
「ええ。過酷だとかには耐えられないとれ回って、の人が行かないようにしてたんでしょう。の人が行ったら、なんだこれってクレームれますからね」
「まぁ子供もやってるゲームなわけだし、當然よね」
「うん……教育上よくないよね」
案の定、このイベントに參加したプレイヤーたちは激怒。當然まともなを持つ男プレイヤーも異議を唱えたのだろう。そうしてこのイベントは削除される運びとなった。
「で、クリア條件はあの狀態を振り切ってダークエルフたちを全滅させる。するとこの【のピアス】というアイテムが手にるんです。【あらゆる魅了狀態の無効】という強力な効果を持ってますね」
「ちなみにロランドさんはクリアしたのかしら?」
「してないと思われます」
「さすがね」
この【のピアス】はゼッカかレンマが持つのがいいだろうということで落ち著いた。
「……ねぇ、こっちにもアイテムが落ちてるよ」
「あ、本當だ。多分王以外の雑魚ダークエルフがドロップしたんですね」
「あら……これ召喚石だわ……しかもダークエルフの……嬉しい」
兜の奧のヨハンの口角が上がる。
「……これを使えばダークエルフが召喚できるんだね」
「うわー男の前じゃ使えないですね……私、こういう無駄にがデカいキャラクターって嫌いで……ヨハンさん? どうしたんですかそんなに笑って?」
クスクスと笑っているヨハンに、ゼッカが恐る恐る問いかける。
「いえ、このダークエルフの顔がね、知り合いにそっくりでそっくりで、面白くて」
「へぇそうですか、知り合いにそっくり……あれ、でもさっき凄い殘酷な方法でダークエルフたちを殺して魔王みたいに笑ってたじゃ……むぐ」
それ以上言っちゃいけないと、レンマに口を塞がれるゼッカ。
ヨハンはダークエルフの召喚石を大切そうにでながら、呟く。
「……ずっと仲良くしましょうね」
その時の仮面の奧のヨハンの表は、誰も知らない。
***
ストレスは解放されたので、次からは優しくて可いヨハンさんに戻ります。
キャラ崩壊になってないか心配です。
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