《【書籍二巻6月10日発売‼】お前のような初心者がいるか! 不遇職『召喚師』なのにラスボスと言われているそうです【Web版】》第23話 夜の語らい

先程、初レビューを頂きました。とても熱い容で、僕自も力を貰いました。ありがとうございます!

一日目夜。

星の広がる空の元、小高い丘の上に見つけたテラスのような場所で、ヨハン達は集めた食料アイテムを食べていた。食料アイテムとは、このイベント中の限定アイテムのようで、冷凍食品のようなパックを開くと、中に食料がっているという便利なものだった。

「もう、変な連中に絡まれたせいで全然探索が進みませんでしたねー」

カレーに食らいつきながら、悔しそうな顔をうかべるゼッカ。

ヨハンの三連【ゲート・オブ・ヘブンズ】によって大多數の敵は始末出來たものの、その後も生き殘り達によってゲリラ戦を仕掛けられ、あの森の中に長いこと足止めを食らってしまった。

「まぁまぁゼッカちゃん。レアなアイテムは全然だったけど、換金用のアイテムは沢山手にったんだし」

「……ボクは楽しかったけどね」

ヨハンとレンマはそれぞれ裝備を外し、パスタを頬張っている。このイベント、裝備の変更は不可能だが、著は自由なようだ。

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「……數日をぐイベントって、ボク初めてだから……リアルでもゲームでも」

「はぁ、修學旅行とかあるじゃないで……むぐんんご」

言いかけたゼッカの口を塞ぐヨハン。レンマのログイン時間は、かなり長い。平日の晝間から夜遅くまで。普通の中學生なら考えられない事である。

だからヨハンは何も言わなかった。それは詮索するべき事ではないし、言いたくなった時。言ってもいいと、レンマが自分たちを認めてくれた時に話してくれればそれでいいと考えたのだ。

「私もちょっとワクワクしてるわ。だって貴方達みたいな、凄い年下の子達と一緒に泊まりがけで遊ぶなんて、初めてだもの」

し前のヨハンには、考えられない事だった。25歳くらいまでは、大學時代の友人達と旅行に行くこともあった。だが、結婚や出産、その他諸々で、次第にそういう機會は減っていく。

(私も……いつまでこうして遊んでいられるのかしらね)

そんな事を考えてしまう。

「ヨハンさん! 私、バーチャルモンスターズ観ましたよ」

ゼッカはヨハンがさみしそうな目をしたことを、見逃さなかった。何か話しかけなければ、どこか遠くへ行ってしまいそうな気がして。思わず聲を掛けたのだ。

「あら、そうなの」

ヨハンの聲の調子が上がる。

「まだ6話くらいですけど。畫配信サービスで。早く寢なくちゃいけないのに、ついつい続きを見ちゃって。あと1話……あと1話だけ……って」

「……いいな、ボクも観たい……前にググったんだけど、エテザルってキャラクターがボクの中で激アツだった」

「あれ、敵よ」

「……え? あああ……で、でも、無理すれば行ける! お姉ちゃんの大好きなアニメ、ボクも観てみたい」

「ありがとう。でも、若い子には退屈かもよ? 20年前のとっても古いアニメだから」

冗談めかして笑うヨハンに、ゼッカとレンマはきょとんとする。

「いやいやヨハンさん。名作に新しい古いは関係ないですよ」

「……うん。新しい駄作もあれば古い名作もある。面白い面白くないに、時代は関係ない」

「は、はぁ……」

ヨハンは二人の熱のりように、気圧される。

「もしかして……二人ともアニメとか好きなの?」

「「大好き!!」」

二人は一瞬の迷いもなく、そう言い切った。

「そ、そう……でもゼッカちゃん、高校生でしょ?」

「年齢なんて関係ないですよ! 好きなモノは好きなんです!」

「……ボクも。どんな大人になるか、わからないけどさ。きっとアニメが大好きで、毎週わくわくしながら観ている……そんな大人になっていると思うよ」

「同ですねー」

『いつまでこんな稚なモノを……お前もう高學年だろう?』

父の言葉が、耳に蘇る。ヨハンはしばらく、なんと言っていいのかわからないに支配される。

あの頃。

小學生だった圭の周りには、アニメが大好きだ! なんて大人は、誰も居なかった。だからゲームやアニメというものは、大人になるにつれて、卒業しなくてはいけないものなんだと考えていた。

それでも、バーチャルモンスターズが好きという気持ちが拭えなかった自分は、どこかおかしい人間なのだと。欠陥を抱えているのだと、好きな気持ちをひた隠しにして生きてきた。

でもこの子達は違う。ヨハンには、それがとても嬉しかった。

(そう。この気持ちは、喜びだわ)

時代が変わった。好きなを好きでいて何が悪い! そう高らかにぶことが出來る子供達が、育っていた。

「ねぇ、二人の好きなアニメ、教えてよ。私、知りたいな」

ヨハンはそう口を開いた。二人がどんな語を好きになって育ってきたのか、聞いてみたくなったのだ。言った途端、ゼッカとレンマの二人は頬を紅させながら、我先にとヨハンに迫った。

「え、私の好きなアニメですか!? もちろん私はVRMMOが大好です! 特に好きなのは、し古い作品なんですけど、ゲームの世界からログアウト出來なくなって命がけのデスゲームが始まるという作品でタイトルは……」

「……待ってゼッカ。ここはボクが先攻。……ボクの好きなアニメは映畫なんだけど、隅っこで暮らしている不思議な生きたちが……」

「ええい黙ってくださいレンマちゃん。ヨハンさんが私の事に興味を持つなんて、こんな珍しい機會、滅多にないんですから!」

「……それはボクだって同じ」

「まぁまぁ二人とも。時間は十分にあるんだから……」

その夜。自分の大好きなアニメの話を楽しそうに語る二人の姿を、ヨハンは嬉しそうに眺めていた。

三人の絆が深まった。次回、最強の召喚獣登場。

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