《【書籍二巻6月10日発売‼】お前のような初心者がいるか! 不遇職『召喚師』なのにラスボスと言われているそうです【Web版】》第28話 反撃のゼッカ

今回はゼッカ目線となります。

海賊王との死闘の中……私はなぜか、遠い昔の出來事を思い出していた。

***

「ねぇねぇ絶佳ぁ! 昨日PV見たんだけどぉ。このゲーム……凄い面白そうなんだよ!」

「そうそう! 金掛けてんだろーね、クオリティがマジパネー!」

私がGOOを始めたのは約1年前。同じクラスの友達だった優(みゆ)と斬子(きるこ)にわれたのがきっかけだった。私たちはそれぞれ【ゼッカ】【ミュウ】【ギルティア】というキャラクターを作り、GOOを開始した。

「私サモナーがいいな~」

「止めときなって。剣士安定。ゼッカも剣士でしょ?」

「うん。二刀流があるらしいから、それを目指す」

「ほら、ミュウも剣士にしなって。兄貴が言ってたんだけど、剣士なら初心者でも簡単に強くなれるってさ」

「むぅ~」

當時の私たちは、本気でGOOを楽しんでいたと思う。そして開始一ヶ月。ギルド機能が追加されると、私たちは剣士限定のギルド【最果ての剣】を結。當時頭角を現していた、現実(リアル)ではギルティアの兄であるロランドさんを引きれ、指導して貰い、メキメキとその名を上げていった。徐々にメンバーも増えていき、サービス開始三ヶ月。初のギルド対抗戦が開催された。

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正直、私たちは勝てると思っていた。だが、全員剣士という構はバランスが悪い。チームを組めないランキングイベントでは勝てる剣士でも、一人一人がきちんと役割を果たし、チーム一丸となって戦うギルド戦では、あまりいい結果を出せなかった。

「だから……二刀流なんて辭めて、兄貴と同じ戦い方すればそれで勝てるんだって」

「嫌。私は二刀流がやりたくてこのゲームやってるの。それに、この前【デッド・オア・アライブ】っていうユニーク裝備を手にれて」

「あんなの無駄な駆け引きが増えるだけじゃない。勝たなきゃ意味ないのよ!」

「ふ、二人とも……喧嘩は良くないよ……」

「ミュウは黙ってて」

「つか、ミュウ。アンタはいつになったらまともにけるのよ! ウチのギルドが勝てないのはアンタのせいなんだからね!」

「……ごめん」

何がなんでも自分のギルドを最強にしたいギルティア。自分なりの方法で最強を目指していた私。ただ楽しく三人で遊びたかったミュウ。この関係が崩壊するのに、時間は掛からなかった。

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「私ね……楽しかったの。楽しかった筈なのに……このゲームするのが……辛くなっちゃったよ」

ミュウが最後にログインした日。あの子は泣きながら、何度もごめんねと繰り返していた。

「私、本當はサモナーになってね……可い召喚獣と遊んでみたかった」

そんな言葉を最後に、ミュウはアカウントを削除した。そしてその後。

「ねぇギルティア……どういうこと?」

「何よゼッカ」

「新しいギルドメンバー……有名人ばかりだけど、剣士じゃないよね? 最果ての剣は剣士限定のギルドの筈でしょ」

「そんなんで勝てるほど甘くないでしょ。次の対抗戦で勝つ為には、バランスを取る必要があるのよ」

ギルティアはソロで活していた他職業の有名プレイヤー達をギルドに加させた。私もロランドさんと全く同じ裝備をして、全く同じ戦い方で戦うようになった。そのおで、私たちは第二回のギルド対抗戦で、見事最強の座を勝ち取ることが出來た。

「やったよゼッカ! 私たちのギルドが最強になったんだ! あーもう。ミュウも居たら最高だったのに! なんで居なくなっちゃったのかしら」

ギルティアは喜んだ。でも。

「私は嬉しくない……」

こうすれば勝てますよ。そんなレールに沿って手にれた勝利。大事な友達を追い出してまで手にれた勝ちに、価値を見出す事が出來なかった。

「ここはもう……私たちのギルドじゃないよ」

「待ってよゼッカ……何が不満なの!? 一緒に最強になるのが目的だったじゃない! 待って……お願い待ってよ!」

私は逃げるように【最果ての剣】を辭めた。その後、最果ての剣は最強ギルドとしての地位を不としていく。さらにサモナーが大幅弱化された事で、敵無しとなった。

私はどこで間違えたんだろう。剣士にこだわったから? もしミュウが希通りサモナーをやっていれば、プレレフアを率いて、ギルドの勝利に貢獻出來た筈だ。

それとも……。

それとも……。

無限の「あの時ああしていれば?」という後悔が積み重なる。そんなある日。

「――お? 來い、禮儀って奴を教えてやるぜ」

有名な害悪プレイヤーが、初心者のに絡んでいるのを見かけた。

『このゲームをするのが辛くなっちゃったよ……』

泣いている友人の顔が思い浮かんだ。もう、あんな顔を誰かがするのは我慢出來なかった。楽しかったこのゲームを、嫌いになってしまう人が増えるのが、嫌だった。

だから、私は聲を上げた。

「やめなさい!」

その時出會ったヨハンさんは、ミュウと同じサモナーだった。開始二週間近くでランキングイベントで大暴れして。正直、ゲームの腕はいまいちだったけど。

それでもあの人は、召喚獣へのだけで、どこまでも強く、滅茶苦茶になっていく。そんなヨハンさんを見ていると、いつもミュウの事を思い出す。

それは、私たちが潰してしまった、あり得たかもしれないミュウの姿だったから。

***

***

***

海賊王イベント。地底湖には、剣同士が打ち合う金屬音が響き渡る。

「はああああああ――デュアルエッジ!!」

「げはははは」

天使と悪魔の羽エフェクトを輝かせながら戦うゼッカ。だが敵モンスターのAIは高度で、ゼッカの攻撃は全く通用しなかった。

「はぁはぁはぁはぁ」

誰もが目を覆いたくなる絶的な狀況。だがゼッカは諦めていなかった。海賊王のHPを一定數減らす事で発するという【略奪者の末路】。これによりヨハンの【カオスアポカリプス】と召喚石を取り戻す事が出來れば、確実に勝てる。確率は非常に低いが、これに賭けるしか、皆の大切なアイテムを取り戻すはない。

「げははははは――【スラッシュ】」

「――しまっ」

だが疲労から判斷をミスったゼッカに、敵の攻撃が迫る。

「――【ルミナスエターナル】!!」

地底湖全に魔法陣が広がり、プレイヤーに10秒間の【無敵】が與えられる。

「レンマちゃん!」

「……裝備が無くたってスキルは使える……やれることをやる……ボクはまだ諦めない」

「ナイスぅ!」

その隙をついて、海賊王に一撃。

「わ、私も何か……出來ることを」

一方、未だ混から立ち直れないヨハン。そんなヨハンにレンマがぶ。

「……お姉ちゃんはじっとしてて! 今、ゼッカが必死に戦ってるのはお姉ちゃんの裝備を取り返す為」

「カオスアポカリプスと召喚石を取り返して……ヨハンさんがコイツを倒す」

「……ボク達に殘された手は、それしかない……いくよゼッカ――【マジックヒール】」

レンマはありったけの回復と支援をゼッカに送る。ゼッカはそれをけとり、敵のHPを削る。削る。削る。削る。

一人海賊王に挑むその姿は、まさに鬼神のようだった。

(もしこの勝負に負けて、全てを奪われたら……レンマちゃんもヨハンさんも、きっとGOOを引退するだろう……)

『このゲームをするのが辛くなっちゃった』

「……嫌だ……嫌だ嫌だ嫌だ。私はもう嫌だ」

(私はもう……一緒にゲームを遊ぶ友達を……失いたくない!!)

「げはは……その寶、気にった。【オールスティール】!!」

(……來た。この瞬間こそ、私が求めていた勝機!)

『【聖騎士のピアス】が海賊王バンデットのアイテムストレージに移しました』

『【ファントムミラージュ】が海賊王バンデットのアイテムストレージに移しました』

足下から竜巻のエフェクトが現れ、ゼッカの頭部裝備と裝備が消滅。だが。ゼッカは気が付いていた。先ほどこのスキルを見たときに。海賊王はわざわざゼッカから距離をとってこのスキルを発させていた。このスキルを使うほんの一瞬だけ、海賊王に隙が生まれる。

ゼッカは十字に剣を構える。

「食らえ糞モンスター――【グランドクロス】!!」

「ぐあああああああああ」

『【デッド・オア・アライブ】が海賊王バンデットのアイテムストレージに移しました』

『【ファントムブーツ】が海賊王バンデットのアイテムストレージに移しました』

『【黒いコート】が海賊王バンデットのアイテムストレージに移しました』

デッド・オア・アライブが消え去る直前。二刀流最強の攻撃スキルが海賊王に直撃し、HPを大きく減らした。

『海賊王のスキル【略奪者の末路】が発しました』

「やった……お願い……神様!」

全ての裝備を失ったゼッカ。だが、作戦は上手くいった。予想通り、海賊王のからアイテムがドロップされた。だが。

「2つ……だけ……?」

海賊王が落としたのは、アイテム2つだけだった。ゼッカの表が青ざめる。

ゼッカはいつの間にか思い込んでいた。最初に取られたアイテムは800以上。だから敵がスキルでドロップするのなら、大量にドロップするはず。

いや、それこそがこのレイドの趣旨なのだと、そう思っていた。みんなで協力して海賊王のHPを削り、奪ったアイテムを吐き出させ、こちらの戦力を立て直していく。そういうデザインのレイドバトルなのだと、思っていた。

だがそれは希的な観測でしか無かった。

「……勝てない。勝たせる気がない……」

頭の中が真っ白になったゼッカは、その場で立ちすくんでしまう。その狀態を、海賊王は放っては置かなかった。

「げはははは――【アクアスラッシュ】!!」

水流を纏った剣が振り下ろされる。ゼッカが目を閉じたその時、誰かに強くを押された。

「ぐああああああああ」

「レンマちゃん!?」

ゼッカをかばったのは、既にMPが盡きてしまっていたレンマだった。攻撃をけたレンマのHPは0になり、そのは粒子となって消滅していく。

「……泣くのは後だよゼッカ……アイテムを……お姉ちゃんに」

「うん……そうだね……そうだよ」

消えゆくレンマはゼッカの背を、笑顔で見送った。

「……大丈夫だよゼッカお姉ちゃん。もし負けても……ボクはやめないから……ずっとみんなと一緒に」

***

「なんでもいい……逆転のアイテムを……これは!?」

海賊王がドロップしたアイテムを見て、ゼッカは目を丸くした。敵が落としたアイテムの、一つはくず鉄という素材アイテム。そしてもう一つは召喚石だった。卵を模した玩型の召喚石。ゼッカとヨハンが仲を深めるきっかけとなった

「【ヒナドラ】の召喚石……」

海賊王がドロップしたアイテムは【ヒナドラ】の召喚石。それは、絶の知らせでもある。ヒナドラ一でこの狀況をひっくり返すことは不可能だからだ。

『これ、きっと運命ですよ! 20年の時を超えて、ヨハンさんの相棒がGOOに復活したんです!!』

『あの時、守ってあげられなくてごめんね』

『もきゅ?』

『なんでもない……また會えてうれしいわ』

だが、ゼッカの脳裏に、初めてヨハンとヒナドラに會った日の出來事が思い浮かんでいた。

「良かった……これだけは……取り返せた……」

例えこのまま負けたとしても。大好きなヨハンの寶を取り返せた。

「ヨハンさん……コレを!!」

ゼッカはヒナドラの召喚石をヨハンに投げ渡す。そして。そんな無防備なゼッカの背に、海賊王のサーベルが突き刺さった。

HPは一瞬で0になり、ゼッカのは消滅した。

***

「げはははははははは!」

「くっ……召喚石を使う隙がないわ」

ヨハンは海賊王の執拗な攻撃をけていた。敏捷ステータスがほぼ初期レベルのヨハンでは、何かしながら避けるなんて事は出來ない。相手の攻撃モーションを覚え、相手の攻撃パターンを予測して避ける必要があるからだ。

(耐える……耐えるのよ。ヒナドラはゼッカちゃん達が殘してくれた希……耐えていれば必ずチャンスがくる)

だが。

「……あっ」

ヨハンは巖場に躓いてしまった。それを見逃してくれる海賊王ではない。ヨハンの目の前に、海賊王が迫る。そして剣を振りかぶり、振り下ろす。

(終わった……)

そう思った、その時。

「【不死蝶の舞】!!」

幻蝶の森で見た輝く蝶のエフェクトが、ヨハンを守るように包み込むと、海賊王の攻撃を妨害する。海賊王は狂い舞う蝶達を恐れるように距離を取った。

聲のした方向を見てみると、そこには最強の召喚獣プレレフアと……。

「貴方は……!」

「一日ぶりやな魔王はん……助っ人參上どす」

幻蝶の森で出會った召喚師、コンが立っていた。

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