《【書籍二巻6月10日発売‼】お前のような初心者がいるか! 不遇職『召喚師』なのにラスボスと言われているそうです【Web版】》第174話 墮ちる星

「貴様は……何のために生きている?」

あれは小學校6年生のときの運會。

それまで負けなしだった徒競走で生まれて初めて2著を取った日の夜。その事を父に報告した俺は、そのような質問を投げかけられた。

數多くの事業を功させてきた俺の父は運會に応援に來るような人ではなかった。だが俺の學校の績やクラブ活の実績、そして運會のような勝負事の結果は常に気にしていた。

いい結果を出せば、父に褒めて貰えたし、小學生にはあり得ないくらいの小遣いが貰えた。

「……あっ……ああ」

酷く失した様子の父を前に、その時の俺は何も言うことができず、ただうろたえることしかできなかった。

とは言っても、何か上手いことを言えたとして……事が良い方向に転がったとも思えないが。

「俺は人生のありとあらゆる勝負に勝ってきた。勝って勝って勝って……そしてこれからも勝ち続ける」

そうだ。

父はとにかく勝つことへのこだわりが半端ではないのだ。執念といってよかった。

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「いいかカケル。貴様は一人で戦っているのではない。貴様が負けるということは、父である私の敗北なのだ」

「……ッ」

「私の栄の人生に泥を塗るような真似をしたら……どうなるかわかっているな?」

「……はい。僕は……父さんのために……勝って勝って……勝ち続けます」

何でもいい。

勝ち続けなくてはならない。勝たなければ。自分の価値を父に証明することができないのだから。

***

***

***

「おーい。そろそろ時間だよー」

「う……あ?」

神永タワーの廊下にあるベンチで寢ていたレーサーの仏契カケルは、DINEの呼びかけで目を覚ます。

「そうか……控え室が見つからなくて……疲れて……ここで眠っちまったのか」

「っていうか、そもそも僕たちの控え室自ないみたいだよ~。はは。エキシビションで負けちゃったからかな~? ちょっと扱いが悪くなりすぎじゃない?」

不満はあるのだろうが、それを表には出さず、ちゃらちゃらと笑うDINE。

「はっ、こんなもんだろ敗者に対する扱いなんて」

「そんなもんかな。傷つくなぁ」

「なぁに。また勝ち上がってやればいいさ。この世界、勝ち続けてりゃ誰も文句は言えねぇ」

「おっ。やる気だねぇ~」

「茶化すな」

(そうだ。また勝てばいい。勝てばすべて元に戻る。俺はこんなところで終わらねぇ……。レーサーとして再び舞い戻る)

決意をに、仏契カケルはGOOにログインする。

***

***

***

タッグデュエルトーナメント第一試合を戦うアベンジャーマスオと黒ヤギのペアは、腕を組みながら余裕の表で敵を待ち構えていた。

「おや、ようやくスター登場のようだね」

「ふぅん、ようやく現れたか。待ちくたびれたと言ったところか」

そして、遅れて現れた仏契カケルとDINE。それと同時に観客席上部に設置されたオーロラビジョンには二人のファンたちが書き込んでいるのだろう、コメントが流れていく。

それを見たアベンジャーマスオは不快を隠そうともせずに口を開いた。

「ふぅん、私は知らないんだが。あいつらって結構人気なのか?」

「ん? ああ、そうだねぇ。仏契は暴行事件前はワイルドなイケメンレーサーとしてよくニュースに取り上げられていたね。DINEは癖が悪いってウワサがあるものの、曲が凄くいいから人気だね」

「ふぅん、つまり人気があると?」

にだけ人気という訳じゃないけれど、人気も高いね」

「つまり我々の敵という訳か……潰す……潰してやるぞぉおおお」

スターに対し闘志を滾らせるアベンジャーマスオ。その目は嫉妬の炎に燃えていた。

「それでは、試合スタートです!」

仏契カケル Lv200 & DINE Lv200

VS

アベンジャーマスオ Lv65 & 黒ヤギ Lv68

アナウンサーの宣言と共に、開戦を告げるブザーが鳴り響く。

「さて、事前に調べた報によると……彼ら二人は【打倒ヨハンの會】のメンバー。GOOじゃ偏見と侮蔑を込めて【魔王討伐群w】とか呼ばれているらしいね」

「群(ぐん)? 軍(ぐん)じゃなくてか?」

「イベントごとに魔王……まぁあのだね……をつけ回し勝負を挑み、負け続けている連中らしい」

「恥ず……みっともねぇ連中だな……おっと」

そこまで口にして、仏契は自分が油斷したことに気が付く。どんな相手だろうと油斷せずに全力でいく。そう決めたばかりだった。

「悪いが雑魚相手にも油斷しない。最初からぶっちぎりで行かせてもらうぜ」

「オッケー。それじゃ後方支援はまかせてね。こう見えても練習したんだ」

DINEはヨハンとの戦い以降、個人でGOOのアカウントを取得し、練習をしていたのだ。あまり時間がとれず、まだ第一層すら突破できていないものの、基礎的な知識はにつけている。

「やるなDINE! それじゃ後ろは任せる。そして俺は……」

機のデスホイールの橫に立った仏契はスキルを発する。それは前回の敗北の後、スタッフに言って追加して貰ったスキルだった。

「スキル発――【トランスフォームフュージョン】!!」

【トランスフォームフュージョン】。オリジナル職業【機獣士】に追加された新たなスキル。その効果は武扱いのバイクとプレイヤーとの合パワーアップ。

子供の頃、父に隠れて毎週楽しみに見ていたアニメの記憶から著想を得た仏契の提案で追加されたスキルなのだが……。

「な、なんだこれはあああああああ!?」

仏契が絶する。彼の提案では、自がバイクを鎧の様に纏う。そういう予定だった。

だが実際には……。

バイクの先端に仏契の上半がくっつき、ケンタウロスのようになるという、なんとも歪な合だった。

***

***

***

「ウキャキャキャキャキャキャキャキャ!!」

神永タワーの一室に下品な笑い聲が響いた。

控え室で他のスタープレイヤーたちと共にタッグトーナメントを見守る江良Pは、仏契の合形態を見て手を叩きながら笑った。

【トランスフォームフュージョン】の仕様を変更したのは江良Pだった。

近くに座らせられている病院坂ふみと久留井咲はそんなPの様子に心引きながらも想笑い。

「ほらどうしたの~? もっと笑って笑って!」

「いや、流石にこれは仏契さん可哀想じゃないですかって……」

「いいのよぅ。落ち目のタレントの役目なんて、ああやって張って笑いを取る以外にないんだから~。大衆はね、手の屆かないところに居るスターが大好き。でもそんな風にお高く止まってた連中が自分たちのところへ墮ちてくるのはもっと大好きなの~!!」

そんなことを語る江良P。エキシビションマッチの前、彼らがヨハンに敗北する前。仏契とDINEにびてびてびまくっていた江良Pの態度を知る病院坂と久留井は、その手のひら返しに背筋が寒くなった。

売れている時はまるで神にでもなったかのように扱われるが……商品価値がなくなれば、あのように扱われる。明日は我が。そう思わずには居られなかった。

「はぁ楽しみだわぁ。イケメンでクールで……どんなレースでも1位をとってきた天才レーサー仏契カケル。そんなアンタがみんなの前で! クソゲーで! クソインキャに無様に敗北する! 最高のショーになると思わな~い? ウキャキャキャキャキャ!!」

一人楽しく笑う江良Pに、同意する者はひとりも居なかった。

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