《【書籍二巻6月10日発売‼】お前のような初心者がいるか! 不遇職『召喚師』なのにラスボスと言われているそうです【Web版】》第175話 勝利への道の途中

「ああ……ひぐぅ……」

暴行事件を起こし出場停止処分をけた後。父さんに呼び出された俺は數年ぶりのあの書斎へと足を踏みれた。

事件のことは知っているのだろう。父さんは酷くやつれていて、年齢以上に老けて見えた。

「來たか……」

以前は聞くだけで震えあがる思いがしたあの威圧的な聲も……今は掠れ、どこか弱弱しくじた。

恨めし気に俺を睨む父さんの目に、以前の迫力はなかった。

「勝負に負けた上に暴行事件とは……なんと愚かな」

父は俯いて、震えた。

……やがて。父はまるで乞いのように、うわごとのように「頼む……頼む……」と口を開いた。

「え?」

「頼む……頼むから死んでくれ」

「なっ……」

俺は耳を疑った。

「頼む。どこか人に迷にならないところで……ひっそりと……誰にも見つからずに死んでくれ。始めから存在しなかったように死んでくれ……頼む……俺と関係なかったかのように死んでくれ……」

俺は……実の父親に泣きながら死を願われた。

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「俺の輝かしい栄の人生で……お前という存在だけが汚點なんだ。お前が生まれてきたことだけが最大の不運だ。お前が生きていることが恥なんだ……頼む……これ以上俺の人生を汚さないでく……ください。お願いしますお願いしますお願いしますお願いします。これまで生きてきたことは何かの間違いだったと思って……死んでください……死んでください……どうか」

最後はまるで他人のように懇願された。

その日以降、もともと上等とは言えなかった俺の生活はさらに荒れた。酒にたばこにギャンブル……今までは低俗だとれることなかったそれらに手を出し……。

神永エンタープライズの江良PからVRゲームの仕事の話を貰ったのは、そんな時期だった。

***

***

***

「ぐっ……なんだこれ!? 畜生……かねぇえええ」

スキル【トランスフォームフュージョン】を使い自の武デスホイールと合した仏契だったが、江良Pの策略により、上半人間、下半はバイクという歪な狀態になってしまった。

しかも、ステータスは下がりこの形態ではまともにくことができないという何のメリットもない狀態だ。

「落ち著いてカケルくん。スキルの解除はできないのかい?」

「やってらぁ! 解除どころか、他のスキルも何も使えなくなっちまったぞ!?」

「むぅ……バグかな?」

「畜生……畜生……負けられねぇのに……負ける訳にはいかねぇのに……神にまで見放されたか……」

「――【沼地生】!!」

仏契たちの混を勝機と見た黒ヤギがスキルを発する。バトルフィールドの半分ほどが一気に沼地と化す。

「なっ足場が……!?」

「くっ……」

沼地の仕様を知っていたDINEはを噛む。沈めば問答無用で敗北。けなくなった仏契の勝ちが潰えたことを悟る。

「好機だよマスオくん」

「うむ。我らの勝利は目前といったところか……では參る」

黒ヤギに【耐リンク】魔法で沼地の適手したアベンジャーマスオは悠々と敵に向かって駆ける。

「おっと、僕を忘れていないかい? ――【破滅の演奏】!」

マスオを迎撃しようと攻撃的なメロディーをかき鳴らすDINE。だが、マスオは涼しい顔で突っ込んでくる。

「な――何故僕の演奏が通用しないんだ!?」

「愚かな」

アベンジャーマスオは渾のドヤ顔をしながら自の耳を指差した。

「【超高能耳栓】というアイテムがあるのだよ。まっ、本來はモンスターの咆哮攻撃を無効にするアクセサリーなのだがね」

「君と魔王ヨハンの戦いを見ていて、おぼろげながら浮かんできたんだ。【超高能耳栓】というアイテムが」

耳栓系のアイテムは、【ひるみ】や【スタン】を付與する敵の咆哮を無効化するアクセサリーである。當然無効にするのは攻撃に限ったもので、プレイヤー同士の會話などは普通に聞こえるゲーム的なアイテムだ。

「構えよ――【インパクトランス】!!」

「ぐっ――ああああああ!?」

マスオの槍による攻撃がDINEにヒット。ダメージこそないが、【インパクトランス】の効果により、10メートル以上も吹き飛ばされる。

「さて、邪魔者は封じた。まずは貴様からだな」

そしてアベンジャーマスオは、既にの半分が沈んだ仏契にゆっくりと近づいた。

「ほう。抵抗しないのか?」

諦めて目を伏せている仏契を見てニヤッとマスオが言った。

「ああ……俺はもう終わりだ……。あのにももう一度挑戦したかったが……どうやら無理らしい」

(ああそうだ。俺が勝つ事なんて……誰もんじゃいねぇ。頑張って勝ったって……無駄なんだ初めから……)

「ふぅん、なんだ貴様は。一度や二度負けたくらいでもう心が折れたのか?」

「一度や……二度だと……? 馬鹿言え。この世はなぁ、一度負けたらそれで終わりなんだよ!」

「馬鹿は貴様だ愚か者めが。一度負けただけで諦めたら……それこそ負けで終わってしまう。我々は何度負けようが、勝つまで挑み続けるのだ。そう、勝つまで何度も」

「無様だな……」

「そう思うか? だがな……何度負けようと、我々は勝つことを諦めないぞ。そう、勝つことを諦めさえしなければ……重ねた敗北はすべて『勝つまでの道のりの途中』になるのだからな」

「……っ」

失敗は功の元とでも言いたげなアベンジャーマスオの言葉。なんというポジティブ思考と思いながらも、自信満々に放たれたマスオの言葉は、何故か仏契の心を打った。

「負けても……負けてもいいのか?」

「ふぅんその通り。最後に勝てばいい。そうすれば途中の負けも、語の談といったところか」

アベンジャーマスオにとって、それは當たり前の考えで。だからこそ、そこに仏契を勵まそうとか、そんな意図はまったくなかった。

だが、そんな風に當然のように語られたからこそ、彼の言葉は仏契の心に響いた。

『オレ、ずっと仏契さんに憧れて……でもそんなこと言えないくらいオレ弱くて。でも今日、貴方に勝てて嬉しかった!』

初めてレースで敗北したあの日。1位を取った若いレーサーから握手を求められた。そのレーサーはいい結果が出せず、仏契が注目するような人ではなかった。だが心折れずに努力し続けた彼は、仏契を破り、1位になった。

(俺は1位を取れなかったことが悔しくて怖くて……笑顔で握手を求めてきた彼を毆ってしまった……俺は……なんて……)

彼は仏契を責めなかった。寧ろ、レース直後に握手を求めた自分が悪い。煽っているようにとられてしまっても仕方がないと謝罪していた。

(負けるのが怖かった。負けたことが恐ろしかった。だって、勝たなければいけなかった。勝たなければ、誰も俺という人間を認めてくれないのだから。いや、悪いのは全部俺だ。人間、誰だって負けることはある。けど俺には……その敗北から立ち上がるだけの強さがなかった……無様と見下したコイツらが當たり前に持っている強さが……俺にはなかったんだ)

「はっ……アンタと戦えて良かったぜ」

「ふぅん。はて、何か言ったかな?」

「ああ言ったぜ。さっさとトドメを刺しやがれってな!!」

「ほう……良い顔になったな」

仏契は水面に映った自分の姿を見る。なんとも稽で醜い姿だと思った。だが何度負けようと立ち上がる真の強さを持った目の前の男なら。

そんな自分を壊してくると期待した。

アベンジャーマスオは槍を振り上げ、叩きつける。

「――【グラビトンランス】!!」

一點集中の一撃で、仏契のは完全に沼に沈み、やがてそのHPをゼロにする。

「ふぅん、一何を悩んでいたのか知らないが。敵ながら、貴様が這い上がれることを……祈っているぞ」

その後、殘り一人となったDINEがあっさりギブアップ宣言。

タッグデュエルトーナメント1回戦、第一試合はアベンジャーマスオと黒ヤギのペアが勝利を収めた。

掲示板の民をカッコよく書き過ぎました……次は覚悟しておけよ!

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