《【書籍二巻6月10日発売‼】お前のような初心者がいるか! 不遇職『召喚師』なのにラスボスと言われているそうです【Web版】》おまけ 175話その後の話

バトルに敗北した仏契カケルとDINEは、スタジアム舞臺袖の薄暗い通路にリスポーンした。そこで二人を待っていたのは、意外な人だった。

「アンタは確か……?」

仏契は、壁にもたれかかる筋質で屈強なプレイヤーに見覚えがあった。

「よう!」

その屈強な人の名はバイソン。ギルド殺殺ホビー部のメンバーである。ログイン初日に自分がやらかしたことを思い出し、苦い顔をする仏契。

楽しそうにレースをしていた彼らを見て、つい手を出してしまったのだ。

「おっと、僕は外した方がいいじかな~?」

バイソンの目的が仏契だと察したDINEは気を利かせたのか、先にログアウトしていった。

「報復か?」

「まさか。今日はお前にこれを渡そうと思ってな」

「……っ!?」

バイソンから送られたのはコラボイベントで配布されたギア四駆の素。それを手に取る仏契。

「これは……懐かしいな」

そういえば昔、アニメを見て実しくなった事があったかもしれないと思い出す仏契。だがそれも遠い記憶だった。厳しかった彼の家では、テレビを見る時間なんてほとんどなかったのだから。

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「聞いたぞ。もうレースには出られないんだろう?」

「まぁな。永久追放だ。だがそれとこれと何の関係がある?」

「実際のレースに出られなくなってしまったことは殘念だ。だがその代わりに、GOOで俺たちとやらないか? レースを」

「……何故?」

「何故って、君はレースが好きだろう?」

「……!?」

ハッとした。

(そうだ……なんで忘れていたんだ……)

仏契の父親は勝ちに拘る人だった。そして、それを子供にも強いる人間だった。だが子供がどの分野に進むか、それを指定することはなかった。それだけは、仏契カケル自に與えられた自由だった。

數多くの選択肢があった中で、何故自分がレースという道を選んだのか。

(たしか……あれは)

子供の頃に參加したバイクのレース。1位ではなかった。しかし、ちゃんと完走できた時のあの嬉しい気持ち。マシンと一になってじた風の気持ちよさ。あの気持ちをずっと味わっていたくて、レースの道へ進んだのだ。

(絶対に負けられない勝負の日々……常勝を求められるプレッシャーの中、反則ギリギリの走りをするに……忘れていた……ただ走って、他のレーサーたちと自分の腕を競い合うことの楽しさを)

「フッ……」

もう自分の人生に何も殘っていないと思っていたのに。心に熱い炎が燈ったことが可笑しくて、仏契は靜かに笑った。

そして、仏契は送られたギア四駆の素をバイソンに返す。バイソンはし寂しそうに眉を下げた。

繁栄と衰退を繰り返してきたギア四駆という玩。一時期競技人口がなくなった時は、誰ともレースできない時期もあった。それを知っていたバイソンは、めぼしい者を見つけるとすぐに勧を始めてしまうのだ。

「おっと、乗ってはくれないか。すまないな。レーサー魂を持った者を見ると、つい勧してしまうのだ。悪い癖だな」

「何勘違いしてるんだ?」

「え?」

「このアカウントは神永からの借りだ。貰ったアイテムも全部クソPに取られちまうだろうが。後で自前のアカウント作ってアンタに會いに行くからよ。その時は……よろしく頼むぜ」

「何!? つまり殺殺ホビー部にってくれるのか?」

「それは……わかんねぇけど。今は楽しいレースがしてぇんだ」

「フッ。そういうことなら……首を長くして待っているぞ」

「ああ。ガキ共にもよろしくな。必ず謝る。許して貰えるかわからねぇが」

「なぁに、彼らは俺たちが思っているよりよっぽど大人だ。お前がちゃんと心から謝れば、理解してくれるさ」

***

***

***

「さて……仕事探さねぇとな」

ログアウトし、VR接続機を外した仏契はびをしながら呟いた。レースの賞金の殘りはあるものの、これから一生食うに困らないかと言えばそうでもない。

定職は見つけておくべきだろう。

「その事なんだけどね。実は今、専屬の運転手を捜しててさ~」

先にログアウトしていたDINEがいつもの軽い調子で話しかけてくる。

「君、運転上手いでしょ? 給料弾むからさぁやってみない?」

その願ってもない申し出を斷る理由は、仏契にはなかった。

「助かるぜ。運転手か……悪くない。最速でお前を仕事場に運んでやるよ!!」

「いや、そこは安全第一で頼みたいかな~」

「はっ、違いねぇ」

二人は顔を見合わせて笑う。部屋を出ても、スタッフたちの出迎えはなかった。だが、それで構わない。

ギャラさえ振り込まれればそれでいいと、神永タワーを後にした。

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