《【書籍二巻6月10日発売‼】お前のような初心者がいるか! 不遇職『召喚師』なのにラスボスと言われているそうです【Web版】》第182話 そんな綺麗なもんじゃないよ

昨日に引き続き宣伝フェイズ。コミカライズ一巻、4月5日発売です。よろしくで~す。

「さて……意味不明のまま終わった第三試合の後は……今注目の二人によるタッグチームが場です!」

久留井咲ことプレイヤーネーム:サキ。そして病院坂ふみことプレイヤーネーム:フミの二人が場してきた。

サキの特殊職業は【聖騎士】。白を基調とした可らしい鎧を纏い、腰には白金の剣を下げている。

そしてフミの特殊職業は【占星師】。サキと対になるような黒い魔裝だが、健全な範囲での程よい出度とデザインで暗くなりすぎていない。

二人が場すると、配信視聴者たちのボルテージが上がる。

「ふぅん。結構有名なんだ?」

「ミュウ報だと、アタシらより下の世代に人気みたいよ。特にあのサキって子。運神経抜群で頭もいいみたい」

「へぇ……あ、橫のフミって人はドラマで見たことあるかも。気付かなかった」

ゼッカは役者を役名で覚えてしまって、本名をなかなか覚えられないタイプである。

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「あの子も最近売れてきた子よね。確かお兄ちゃんとも共演してたことあった気がする」

「へ~」

「もっと興味持ちなさいよねぇ」

「いや……私にとってあの二人は倒すべき敵でしかないから」

「ちょっとアンタ」

「大丈夫。油斷はしてないから」

ゼッカのその言葉に「ならいいけど」とギルティアはほっとする。

(全部聞こえてるんだよなぁ……)

観客席と配信視聴者に向けて笑顔を振りまきながらもきっちり二人の會話を聞いていたサキは、こめかみをピクつかせた。蕓能を生業とするものにとっては、なかなかビターな態度である。

「さて、それでは両者構えて……一回戦最終試合、スタートです!」

ゼッカとギルティアが剣を構えた。しかしすぐには仕掛けない。様子見。相手は未知の職業を持つスタープレイヤーなのだから、當然である。

そして、ゼッカたちがすぐには仕掛けて來なかったのを良いことに、サキはメニューを開く。

(あったあった)

まるでステータスでも確認するような仕草で江良Pの仕込んでくれた【裏技】のボタンを発見する。

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「本當にいいの?」

フミの気弱そうな聲が背に響く。

「私はべつに負けてもいいんだ。売れなくったっていいんだ。事務所の社長も原さんも。みんなのことも好きだし。サキちゃんはどうなの?」

「私は……このまま弱小事務所で部活みたいな活して終わるなんて……絶対に嫌だよ」

「……」

サキは迷わず【裏技】を起した。

「……っ!?」

「……っ??」

途端、ゼッカとギルティアのきが止まる。當然、何の予兆もエフェクトもなく、聲を上げることすら出來なくなる。唯一瞳だけが何が起こったのかわからないという混を浮かべていた。

「さぁて。それじゃあサキちゃん頑張っちゃうよ~」

そして、敢えて二人の異変に気が付かない振りをしながら腰の剣を引き抜いたサキ。

白い刀に金の裝飾のされた片手剣の名は【ゴッドスレイヤー】。エキシビションマッチでヨハンの戦いを見たサキが注文した、神級にダメージを與えることができる能力を持つ片手剣である。

サキは、すでに先の戦いを見據えていた。

「あ、あれ……お二人ともどうしたんですかぁ!?」

ブンブンと可らしく剣を振り回しながらスタジアム中央まで歩いたサキは、まるで今気が付いたかのように二人の様子がおかしいことぶ。

「ええと。アナウンサーさーん。二人が固まってしまってるんですけど、大丈夫ですか~?」

そこでようやく會場のみなも気付く。様子がおかしいと。

『え……ええと。只今問い合わせますので、一時的に試合はスト……え?』

會場のざわめきに遅れてアナウンサーがアナウンスをれる。だが。

『え~、運営からによると……不合はプレイヤー側の回線によるものとのこと……。試合は続行してオッケーとの事……です』

どこか不服そうに、困したようにアナウンサーは言った。

『さ、最後に運営から。プレイヤーの回線の問題でGOOのバグではないのでご安心とのこと……』

そんな冗談のような運営からのコメントはもちろん江良Pによるものだったが、會場からは笑いが巻き起こった。

無論全員が納得した訳ではない。

だが、數世代前のVR機を使っていれば起こりうる事態なだけに、不審がるプレイヤーはなかった。

「ど、どうして……ゼッカとギルティアのマシンスペックは基準以上のはずなのに……回線問題なんて今までなかったのに……」

舞臺袖でこっそり応援していたミュウは泣きそうな聲でんだ。

「二人ともあんなに頑張ったのに……よりにもよってこんなタイミングで!?」

「いや……何かおかしいな」

「貴方は?」

嘆くミュウの背に聲を掛けたプレイヤーが居た。このタッグトーナメント本來の主催者である竜の雛のピエールだった。

不健康そうな顔を不満げにしながら、スタジアムを睨む。

「ピエールさん」

「君はミュウ……だったか。あの二人の友人なんだろう?」

「は、はい」

同じ竜の雛所屬の二人だが、まだあまり話したことがなかったため、どこか余所余所しい。

だが、ピエールもゼッカたちを心配し、また何かおかしいとじていることに気付いたミュウは、彼の質問に答える。

「マナー違反を承知で聞くが、現実(リアル)でも友人なのかな?」

「はい、同じ學校で同學年です」

「ふむ。まぁ同じ場所からログインはありえないとして。まさかとは思うが、二人は近場に住んでいるとか? 例えば家が隣同士とか、同じマンションに住んでいるとか」

ピエールの問いに、ミュウは首を振った。

「ギルティアは一軒家でゼッカは集合住宅……距離も2駅くらい離れてます」

「ならば尚更おかしい。マシンスペックが足りないならこれまでもしょっちゅうこんな事態になっているだろう。土地絡みの通信障害だとしても、違う場所に住んでいる二人がたまたま同じタイミングでなんて考えられるか……」

「土地絡み……ありえないです……。だってゼッカと私は同じマンションに住んでますから!」

「……!?」

ピエールは心「そこまで言わなくても」と思ったが、しかしその報はありがたく思った。

「あまり考えたくはないが……二人は何者かによって意図的にあのような狀態にされたのか?」

「な、何者かって……一

「わからないが……とにかく私は運営に連絡をとってみる。君はここで、二人を見守って居てくれ」

「はい……」

「戦って力及ばず負けるのはいいが……あれではあまりに二人が可哀想だ」

羽月と繋がりがあるからこそ、ピエールの脳裏には最悪のシナリオが過る。無用な心配であってくれと祈りながら、ピエールは運営の羽月に連絡をとった。

***

***

***

「えぇ~戦闘続行ですか!? で、でも~」

申し訳なさそうな仕草でチラチラと、けなくなったゼッカ、ギルティアの両方を見るサキ。

「で、でも回線問題じゃ仕方ないですよね……。私たちゲスト組も、もう後がないので! 運が良かったと思って勝たせてもらいます!」

ゴッドスレイヤーを振り上げ、ゆっくりと。まずは近くに居たゼッカに近づいてくサキ。

(ごめんね。勝ちたかったよね。その裝備そのレベル。たどり著くまでどれだけの時間がかかるのか。どれだけ頑張らなくちゃいけないのか。ここ數日GOOのことを調べまくってた私にはわかるよ)

カツカツカツ。

(でもね、この大會は貴方たちのものじゃない。偉いおじさんたちのビジネスの道になったんだよ。その時點で、貴方たちは違う努力をしなくちゃいけなかったんだ。ゲーム勝つためじゃなく。勝たせて貰える側に行くための努力をね)

カツカツカツカツカツ。

(テレビとかは、みんなそう。私は詳しくないけどさ。興業全般、野球もサッカーも囲碁も將棋も……おおよその勝負事は全部そうなんじゃないかな? お金を出した人が勝たせたい人が勝つ。多分みんなそうなんだと思う。勝った人たちはみんな、貴方たちが考えるのとは違う努力をしてきたんだ。だから……悪く思わないでね。私だって沢山頑張ってこっち側に來たんだからさ)

カツカツカツカツカツカツカツ……ピタ。

ゼッカの前に立ち止まる。

「ごめんね。私にはさ。しいものがあるんだ……」

それは力。

慘めな思いをしなくて済む力。

悔しい思いをしなくて済む力。

それを手にれるために……サキは目の前の敵を倒す。たとえ悪魔に魂を売り渡してでも。

サキは剣を振り上げて――

(悔しいよね……わかるよ。きっと貴方は今、あの時の私と同じように……慘めで慘めで慘めで……本當に慘めな気持ちで目に涙を潤ませているんだよね……)

(って、そもそもVRじゃ泣けないか……さて、この子は一どんな目をして……)

「……っ……!?」

ゼッカの目を見たサキはゾクっとした。

驚いて、思わず飛び退いた。

「……サキちゃん?」

相棒であるフミの言葉も屆かない。VRだというのに、心臓が脈打つような気さえした。

「なんで……」

ゼッカの目は、まるで燃えているようだった。

一切の作を封じられ……戦うことができない。

そんな絶的な狀況において、ゼッカは自らの勝利を全く疑っていなかった。

あの狀態からでさえ勝つことを諦めていなかった。

この狀況から勝つ方法を必死に探している。

その闘志は……くだらない不正では消えていなかった。

その真っ直ぐな瞳は自分たちだけでなく。自分たちを倒した後にある何かを。

勝利の先にある何かを……見つめていた。

(なんで……勝ち目なんかないのに……どうしてそんな目ができるの!?)

の闇の中でるゼッカの目があまりにも綺麗で。

見惚れてしまって。

サキは剣を振り下ろすことができなかった。

(私は知っている。この燃えるような熱い目を見たことがる。あんな風にギラギラと燃える目をしていたヤツを一人だけ知っている)

それは鏡の中に映っていた自分自

有名になりたいと。

今より大きなステージで歌いたいと。

もっと多くの人に自分を知ってもらいたいと。

日々努力し、仕事に挑んでいたかつての自分の目。

かつての自分と同じ目をしたが目の前に居た。

「何が……」

(何が「勝たせて貰える側に行く努力をしないとね」だ……いつから。いつから私はそんなことを言うようになった?)

それはかつて、言われて一番悔しかった臺詞。

この世で一番忌むべき言葉。

そんな臺詞を……あまつさえ自分と同じ目をしたに、心の中とはいえ言うなんて。

「……」

サキはもう一度ゼッカの目を見る。

燃える様な目。

焼き盡くされてしまいそうな目。

けれど、ゼッカの宿すその炎は。まるで燃え移るように広がって。くすぶっていたサキの心に炎を燈す。

『「ワリープロダクションなんて弱小、アタシの手に掛かれば存在しなかったことにすることなんて簡単。それだけじゃないわ。所屬タレントの子たちだって全員――」』

先ほどの江良Pの言葉が蘇る。

もしこのまま負けたら?

自分は、そして事務所はどうなってしまうのだろう……。

アイドルとして右も左もわからなかった自分を育ててくれた社長。

臆病で弱々しくて頼りないけど、姉のように面倒を見てくれた原マネージャー。

売れなくて辛いとき、互いに勵まし合ったふみ。

そしてこれから売り出されていく可い後輩たち。

壊されたくない大事な人たちの顔が浮かんだ。

(ごめんなさい。本當にごめんみんな。でも……)

サキはゼッカを見據える。

(この子にだけは。昔の私と同じ……何か大きな壁に挑もうとしている、そんな目をしたあの子の前では……正々堂々としていたいんだ!)

サキはメニューを開いて、【裏技】の項目をタップ。それを解除した。

「……っ!? う、く!?」

「やった、くようになったわよゼッカ!」

「一何が……あっ」

【裏技】が解除されたことでけるようになったゼッカとサキの目が合った。ゼッカは「さっきは切らないでくれてありがとう」という意味を込めて、軽くお辭儀をする。

「そんな……綺麗なもんじゃないよ」

と、しだけが痛むサキ。

「さ、サキちゃん……?」

「悪いけどフミ。今日は実力で勝つことにしたから」

「実力って……私たちズルみたいに強いアカウント貰ってるんだよサキちゃん? その時點で全然、フェアプレー神とは程遠い位置にいるんだよぉ?」

「ぐっ……そ、それは置いておいて。とにかく、卑怯な真似はなし。ちゃんと勝って、ちゃんと上に行こう」

「うんっ。それがいいよサキちゃん!」

『え、え~と。どうやらゼッカさんとギルティアさんはけるようになったようです。で、では戦いを始めてください!』

アナウンサーの言葉がフィールドに響く。

ここから本當の戦いがスタートする。

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