《【書籍二巻6月10日発売‼】お前のような初心者がいるか! 不遇職『召喚師』なのにラスボスと言われているそうです【Web版】》第184話 神永エンタープライズは素晴らしい會社です

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「どういうことなのよおおおおおおおお!!」

神永タワーの狹い一室。GOOの運営が行われている薄暗い部屋に悔しそうな聲が木霊した。ハンカチを噛みしめながらヒステリックにんでいるのは江良P。

自分の用意したゲスト……もといスタープレイヤーたちの全滅が決定し、荒れていた。

「なんでなんで~なんでサキちゃんは裏技を使うのを止めちゃったのよおおん!」

「あの……電話鳴ってますよ」

「ま……不味いわ……」

羽月の冷めた聲に青ざめる江良P。スマホの畫面には今回のイベントのスポンサーでもある畫配信サイトの運営會社の偉い人の名前が表示されている。

出ない訳にはいかず、江良Pは震えながら電話をとった。

「も、もしもし」

『いやぁ殘念だったねぇ江良くん』

「い、いえ……これは……その何か……何かの間違いで」

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『そう自分を責めることはないさ。大功というほどではないが、數字は合格ラインだ。それに、君の用意した客を呼べる子たちは全員敗退してしまったが……ほら。なんと言ったかな。あの子』

「え?」

『そう、ダルクくんだ。彼はいいねぇ。いいキャラしているよ。私も年甲斐もなくキュンキュンハァハァしてしまった』

「は……はぁ」(何言ってんだこのおっさん)

『実際彼が登場したからの視聴者數はすばらしかった。実は他の役員たちも全員彼にメロメロでね。なんとか彼を推していきたいんだがどうだろう』

「そ、それは……一般のプレイヤーですから……」

『わかっているが……一度コンタクトをとらせてくれ。彼に出會えただけでも金を出した価値はあった。それじゃまたね江良くん。次も面白い企畫を期待しているよ』

一方的に言いたいことだけを言って、電話は切られた。

「た……助かったわ」

スタープレイヤーたちが全員敗退した以上、準決勝からの數字増加は見込めない。それはこの企畫の失敗を意味していたのだが……。

江良Pが手を組んでいた配信サイトを運営する會社の経営陣がダルクのかわいさに興味を持ったことで、その辺がうやむやになったのだ。

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後はダルクというプレイヤーに接し唆せば、萬事上手くいくだろう。

(となると……今度は、あの子たちにお仕置きしなくちゃねぇ……)

自分の首が繋がったと確信した江良Pの心に、今度は怒りが湧いてきた。自分の好意を裏切ったあのたちにである。

(あの二人は……地獄にたたき落とさなくちゃ気がすまないわ!)

靜かに笑うと、江良Pは彼たちの控え室へと向かった。

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神永タワーゲストフロアーにある個室型の控え室。

戦いを終えた久留井咲と病院坂ふみはログアウトしていた。

原さん、ごめんなさい。あれだけ大口を叩いていたのに……私、勝てなかったよ。ほんと、格好悪いな私」

「ううん、そんなことないわ咲ちゃん! とっても格好良かった! 私、したもの!」

しゅんとする咲の手を握り、涙混じりに言うマネージャーの原。

「咲ちゃん、本當に熱くなってたよねぇ~。滅茶苦茶エンジョイしてたしぃ」

「うぅ……面目ない……」

「ふふふ。あんなに楽しそうに仕事してる咲ちゃん、久しぶりに見たな」

「うう……」

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ほとんど仕事ということを忘れていた咲は赤面する。

「でも……負けちゃった。ねぇ原さん。私たちの事務所、どうなっちゃうのかな?」

不安そうに呟いた咲の言葉に、原は堂々と答える。

「それは貴方たちの心配することじゃないわ。私に任せて! 絶対貴方たちに手は出させないから。貴方たちがのびのびと働けるように命を賭ける。それが私たちの仕事なんだから」

「くだらない茶番の最中しつれい~。権力者が室するわよ~」

三人の會話をぶった切って、江良Pが斷りもなくってきた。

「あ、貴方は! の控え室ですよ!」

「相変わらずキャンキャンうるさいわね貴方。しっしっ。どっか消えなさい」

蟲でもはらうような仕草をしながら、しかしサングラスの奧の瞳は咲を睨んでいた。

原はそんな江良Pの視線から咲を庇うように立ちはだかる。

「はっ、震えてるじゃない。けない。まぁいいわ。咲ちゃん」

「な、なんですか」

さっきまでのびた聲ではなく。恐怖に怯えながらも、それでも敵意の籠もった聲で咲は答えた。

「ワタシからのプレゼント、どうして途中で切っちゃったのかしら?」

「……使わなくても勝てると思いました」

キッと、江良Pを睨む咲。目線は逸らさない。その目には先ほど戦ったゼッカの目と同じ、燃えるような強い意志が宿っていた。

やがて江良Pは毒気を抜かれたようにため息をつく。

「はぁ……馬鹿ねぇ。だからアンタはトップに行けないのよ。もうしだったのにねぇ? 覚えてなさい。アタシを裏切ったんだもの。もう二度とテレビになんて出られると思わないことねぇ。あ、そうだ。帰り道には気をつけてねぇ。怖~いお兄さんたちに、酷い目に合わされちゃうかもしれないから」

「き、脅迫ですか!」

「シャラップ。脅迫じゃなくて……ある意味、予言かもねぇ」

八つ當たりが終わって気が済んだのか、高笑いしながら部屋を出て行こうとする江良P。

「ちょ、ちょっとちょっと……何なのよアンタたち!?」

だが部屋のり口からってきた屈強な黒服の男二人に両腕を拘束され、江良Pはぐいぐい部屋の中へと押し戻される。

そして、黒服たちに遅れて高そうな灰のスーツにを包んだ男が気品のある歩き方でってきた。茶の髪をオールバックにした俳優のように整った顔立ち。

年齢は20代後半といったところか。

その男を見た江良Pの顔がみるみる青ざめていく。

「あがががが……え、えええ、海老名千晶!?」

「「だれ?」」

頭にはてなマークを浮かべる咲とふみ。

「あははは……」

二人の反応に海老名と呼ばれた男は苦笑い。だが、マネージャーの原だけは、彼のことを知っていたようだ。驚いたように聲をあげる。

「海老名……海老名千晶って……グランドナインの海老名千晶!?」

グランドナインとは【はじまりの九人】とも呼ばれる。総帥神永太郎に代わって會社経営を行う、神永エンタープライズのトップグループである。海老名と呼ばれた男は、そのの一人。

「あはは、グランドナインですか。未だにその呼ばれ方は慣れませんね」

困ったように笑う海老名。その穏やかな雰囲気に、咲たちの張が解かれていく。一方江良Pはガタガタと震え始める。

「え、えええ、海老名……さんともあろうお方が、どどどどうしてこんな所に?」

「あはは、ごめんね江良さん。怖がらせてしまって。僕じゃなくて、彼の意向でね。あ、どうやら到著したみたいだ」

さらに4人の黒服が、巨大な晶モニターを擔いで控え室にってくる。途中扉に晶をガンとぶつけたものだから、場の空気が凍りついた。

「あはは……気をつけてください。そのモニター高いので」

「「はい……」」

「あの……ここ……アイドルの……控え……もういいや」

そんな彼らに原マネージャーの聲は屆かなかった。

何が始まるのか。テキパキとセッティングを終えた黒服たちが、モニターを起する。

そして、畫面に映し出されたのは……。

『SOUND ONLY……』

(((いやモニターわざわざ繋いだ意味!?)))

咲ふみ原の三人が心の中で突っ込んだ。

「江良さん。彼……神永太郎から直接君に話があるみたいだよ」

「あ……ああばばばばば……そうすい……」

『江良……貴様。外部の技者に作らせたツールを私のシステムに潛り込ませたな……私が気付かないとでも思ったか?』

聲しか聞こえないが、畫面の向こうの総帥……神永太郎がキレていることがはっきりとわかる。

「あ……いえ……何のことでしょう?」

『特定のプレイヤーとキャラクターのリンクを切斷するプログラムだ。どんな底辺技者に作らせた? おでGOOのシステムは滅茶苦茶だ』

「そ、それでしたらあの子、あの子が勝手に使ったのよ!」

両腕を拘束された江良Pは顎で咲の方を指した。

「もう本當にセコい子! ワタシがご褒をちらつかせたのも悪かったんだけどぉ……まさか悪質なチートプログラムを使われるなんて思ってもみな『「ワタシからのプレゼント、どうして途中で切っちゃったのかしら?」』な!?」

江良Pの見苦しい言い訳を、録音された江良Pの言葉が遮った。その音聲は、原マネージャーが手に持つICレコーダーから流れている。

それはすべて、この部屋で江良Pが吐き散らかした暴言にも近い臺詞の數々。

『「そーなのよぉ! だから二人のためにワタシがとっておきの【裏技】を持ってきたの。咲ちゃんのアカウントにインストールしておいたから、使って頂戴♪」』

『「そう裏技よ。メニューに【裏技】って項目が追加されてるから、試合が始まったら発してちょうだいな♪」』

『「正確に言うと、キャラクター作を封じるプログラムなの。後はけなくなった相手を一方的にボコボコにしてやれば、楽勝よぉ!」』

『ほう……』

「あはは……やりますねぇ」

「蕓能マネージャーなら必須スキルです」

原さん……」

「テ……テメェ……盜聴だとぉ!? 犯罪じゃねかああああああ!」

キレる江良Pだが、黒服の拘束を解くことはできない。

やがて諦めたようにその場にへたり込むと、しくしく泣き出す。

「認める……認めるわ。他所の會社にチートプログラムを作らせたのはワタシ……ごめんなさい……この企畫を功させたい一心で……」

そして、頭を下げた。

「この責任はワタシの首で! 今日を以てワタシは神永エンタープライズを退社し――」

『何勘違いしているんだ?』

「え?」

『私は會社を辭めることで責任を取ろうとする行為が一番嫌いだ』

「まぁ……江良さんなら他所の企業に行くアテとコネ、いくらでもあるでしょうしね」

『そう。責任をとって退職……なんて貴様にとっては何の罰にもならない。貴様は私の作ったしい世界の一つを穢した。素人のステータスを盛るのは一向にかまわない。ゲーマーにとっては丁度いいハンデだ。だがチートはあり得ない。貴様は私がもっとも忌むべき行いをした。責任を取って辭めるだと? そんなことで逃げられると思うなよ?』

「あはは……こんなにキレてる太郎くん、久々に見たよ。江良さん、どうするのこれ?」

「どどどどどどうしししアタシはあああああばばばば」

神の逆鱗に振れ震える江良P。もはやバイブレーションだった。

『江良門左衛門。貴様は今日付で神永コーポレーション【化部】へ移とする』

「い、嫌……嫌よ! 化部だけは……それだけは……くっ……お願いします。退職を……退職させてええええええ」

神永コーポレーション化部。広大な神永タワーのメンテナンス管理を擔當する一大部署で、社員たちから『ママ』と呼ばれる巨大なおじさんが仕切る闇の部署である。

「あはは……総帥の機嫌を損ねておいて、無事に神永を辭められるわけないじゃないですか」

笑顔で黒いことを言う海老名に、江良Pはもう助からないのだと悟る。

「ああそうだ、これは全然関係ないんですけど。江良さんの娘さん、今年小學校に上がったばかりでしたよね? おめでとうございます。あ、いやここで言うことではないんですけどね? 僕は結婚してないので羨ましいです。小學生なんて可い盛りですよね?」

「ぐっ……ぐぬぬぬうううううう」

(この海老名って人。笑顔だけど怖い……神永総帥さんよりよっぽどエグい格してる)

(遠回しに逃げたら娘さんに何かあるって言ってるよね~)

心の中で恐怖する咲とえみ。

「それじゃ、顔會わせとか引き継ぎとかもあるでしょうから、江良さんを『ママ』のところに連れて行ってあげてください」

「ど……どうか総帥! 慈悲を! 化部だけは……化部だけはいやあああああああああああ」

海老名が指をパチンと鳴らすと、黒服たちは江良Pを連れ、控え室を後にした。

そして、海老名はすっかり怯えてしまった咲たちに微笑みながら口を開いた。

「あ、怖がらないでくださいね。化部ってこのビルの管理とか清掃とかをする部署なんですよ。汚いものを綺麗にする……的な。だから江良さんも……掃除を通じて心を綺麗にできるといいですよね」

(((ぜんぜんそんなじじゃなかったんだけど……)))

「お時間を取らせて申し訳ありません。最後に先ほどの試合を観戦した神永の方から、皆さんに一言あるそうです」

咲たちはゴクリとを鳴らす。不正なチートを使ってしまった自分も何か罰をけるのだろうかと……咲は覚悟を決めた。

『ふん。貴様らの下らん試合のせいで時間を無駄にした』

吐き捨てるような言いだった。

『私の一分とお前たちの一生では価値が違う。これは大きな損失だ。この損失は貴様らに働いて補填してもらう』

「……えっと?」

「あはは……まぁ今のを翻訳すると。『手に汗握る素晴らしい試合にいたしました。よろしければ、弊社の新作ゲームの宣伝やイベントに社のタレントを起用させていただきたい』とのことです」

「え……ええええええええ!?」

「神永の新作ゲームに……ウチのタレントが!? やった……やったよ咲ちゃん!」

「うにゅ……でも」

ふみと原に抱きつかれる咲。その顔は釈然としていなかった。できれば自分で仕事を勝ち取りたかったからだ。

(でも……これも一つのチャンス……だよね)

本気で戦ってくれたゼッカというに心の中で謝しながら、咲はしばらくマネージャーとふみにもみくちゃにされるのだった。

***

「では、弊社江良のおかけした數々のご迷に関する賠償及び補填に関する相談は後日。それでは、失禮致します」

『次はGOOの運営室に運べ』

「わかったよ太郎くん。それじゃ、お願いします」

海老名は黒服たちに頭を下げる。それを合図に、黒服たちはテキパキと撤収作業を開始する。

それを眺めながら、海老名はぽつりと呟いた。

「そっちの方が……大忙しになるかもね」

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