《【書籍二巻6月10日発売‼】お前のような初心者がいるか! 不遇職『召喚師』なのにラスボスと言われているそうです【Web版】》第189話 お前あそこに行ったんか!?
トラウマの一つや二つ背負って、ようやく人は大人になるんですぜ……
「おや、何も見えませんね……」
「真っ暗だわ~☆」
廃ホテル2Fの最初の部屋は暗闇に包まれていた。
自分の姿さえも見えない深淵。
この暗闇の中をプレイヤーは進まなくてはならない。
だが當然、暗闇だけではない。
「ふひひひひ。次のターゲットがやってきた」
「奴らがポイントAに踏み込んだ段階で仕掛けるぞ」
「「「「オーケー」」」」
當然、脅かす役の中學生プレイヤーが潛んでいる。
彼らは暗闇の中でも相手の位置がわかる特殊な裝備をしており、進んできたプレイヤーが所定の位置にたどり著いた瞬間、四方からこんにゃくを投げつける。
お化け屋敷序盤の軽いジャブのようなステージ。
やられた側はうざったくて仕方ないが、やる方は楽しいやつである。
『こっちにおいで~』
「不気味なの聲っ☆」
「目印もありませんし、この聲の方向へ進みましょう」
(よし……ポイントAまで3……2……1……ふひひ、今だ!)
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「あ、そうだ~暗闇と言えば……丁度いいスキルをこの前手にれたのよ☆」
「ほう……どんなスキルですか?」
(な……スキル?)
「これよ――【マジックライト】☆」
ドナルドがスキルを発すると、足下にるエネルギー狀の球が出現。ドナルドの周囲1メールほどを照らし出す。
「「「「「ぎゃあああああああああああああ」」」」」
こんにゃくを振りかぶった彼らはソレを見てしまった。
暗闇の中で下からライトに照らされた、ドナルドと煙條Pの姿を。
生涯消えることのない景を網と脳みそに焼き付けつつ、一瞬のに【神ゲージ】を失った5人の中學生たちは、その場から退場してしまった。
「何でしょう?」
「何か聲が聞こえた気がしたけど……まぁいいわ。先に進みましょう☆」
「ですね」
***
***
***
「な……なんで……どうして!?」
廃ホテルの屋上に備えられたスタッフルーム。
そこには沢山のモニターが置かれ、廃ホテルにある各セクションの狀況が把握できるようになっていた。
廃ホテル企畫のリーダー且つ中學生プレイヤーのまとめ役でもあるエリリンはF2最初のセクション、通稱【暗黒の201號室】に現れたプレイヤーの姿に恐怖した。
「どうして……どうしてドナルド・スマイルと煙條Pがこんなところに!? 竜の雛の指示か!?」
混のあまり、涙目で頭を掻きむしるエリリン。
その様子を見た別のプレイヤーが、ヘラヘラした様子で近づいてきた。
先ほど小學生たちの廃病院を襲撃した三人だ。
ここではこの三人を仮にA、B、Cと呼ぶ。
「いつも冷靜なエリリンさんがえらい慌て様だな」
「どした、バカ焦りじゃねーか」
「本のお化けでも見ちまったのか?」
全員が語尾にwをつけてそうなヘラヘラと、どこか煽るようなしゃべり方。
「本のお化けならどんなに良かったか。もっと恐ろしいモノが來た……」
「……?」
頭に?マークを浮かべるABCの事を無視して、頭を抱えるエリリン。
「糞……何故、何故よりによってあの二人が……あの二人にチケットは売らないように指示していたはずだが……」
「チケットをどこかで拾ったとか?」
「ありえん。チケットは下の売り場以外では手にらないのだからな」
「あっ……」
思い當たる節のあったAが聲を上げる。すると、エリリン始め周囲の中學生たちからの視線が集まる。
A、B、Cの三人はビクりとしながら事を話す。
「何だ?」
「いや……俺たちさっき向かいの廃病院に行ってさ」
「ホラ。生意気な小學生共が企畫しているところさ」
「お前たちあそこに行ったのか!?」
「偵察のつもりだったんだよ!」
「そしたらあまりにも稚拙でつまらないからさ。チケットバラ撒いて言ってやったんだ」
「俺たちのお化け屋敷に來て勉強しろってさ」
「な……なんてことをしてくれたんだ……」
エリリンは再び両手で頭を抱える。
「行っただけか……?」
別のプレイヤーが尋ねる。
ちょっとバカにしたくらいでドナルドたちが出張ってくるとは思えないからだ。
「何か余計なことはしてないよな?」
相手を怒らせるようなことをしていなければ、事を説明し、帰って貰うこともできるかもしれない。
そんな縋るような期待をに尋ねたエリリンの希は打ち砕かれる。
「あ……その」
「ちょっと設備を破壊して……」
「営業不能に追い込んだ……」
「なっ……」
中學生たちは絶句した。
「お前たちなんてことをしてくれたんだ!」
「やっぱりあの二人が送り込まれたってことは……」
「間違いなく報復……それ以外あるまいよ」
「廃病院の企畫リーダーって……確か」
「ああ、この前の殺し合い祭り最多キル記録保有者……通稱【皆殺しのメイ】だ」
「メイって……竜の雛の所屬じゃ……」
「もう駄目だお終いだ……」
「バカ野郎!! ……このバカやろう」
「うわあああああああお母さあああああああん」
「俺たちみんな殺されるのか」
「その程度で済めばいいが……」
絶する中學生たちの様子を見て、ようやく自分たちがしてしまったことの重大さに気付くA、B、C。
だが時既に遅し。
メイによって送り込まれた無自覚の刺客は今この瞬間も止まることなく、ゴールであるこの屋上を目指している。
「いや……まだ希はある」
「エリリンさん!?」
「実は開眼Bowsに知り合いがいる。その人に連絡をとってみる」
「開眼Bows!? 開眼Bowsだって!?」
「知っているのか?」
「ああ! 殺し合い祭りにおいて、あの最果ての剣すらクリスタルを破壊された魔王ヨハンとドナルド・スマイル、そして煙條P三人の襲撃をけて尚、クリスタルを守り切った伝説のギルド!」
「全員お坊さんで除霊の腕もプロ級と聞く。彼らならもしかして」
「うおおおおおお神に謝の言葉マジで!」
「みんな靜かにしてくれ。通話に移る」
エリリンが開眼Bowsのメンバーと通話を開始する。必死に事を説明するエリリン。
「――という訳でして」
『とんでもないもの連れてきたね君たち……』
「なんとかならないでしょうか……」
『いや、それは私たちの手には負えない……諦めてくれ』
「そんな!?」
通話は切られた。
嫌な沈黙が流れる。
「え、エリリンさんっ!? 【ぽぽぽの202號室】が突破されました」
「八尺様役だったエイトちゃん【神ゲージ】を削られ消滅……」
「くっ……」
「エリリンさん!!【暗黒の201號室】に居た五人、連絡が取れません!」
「そいつらの事は諦めろ、もう無理だ」
「ですが……」
おそらく一生暗闇に怯えて暮らすことになるであろう元仲間を切り捨て、目の前の現実に目を向けるエリリン。
正直、もうログアウトしかないと思っていた。
しかし。
ふと、屋上から見える廃病院の窓に目をやる。
すると、メイの姿が見えた。窓の奧のメイは「ふふん」と笑ったように見えた。
実際はどうかわからないが、すくなくともエリリンにはそう見えたのだ。
(バカにされている……のか? 舐められているのか? この私が? 小學生に?)
「ふっ、ふははははは。良い度だ。だが、あまり中學生(われわれ)を無禮(なめ)るなよ小娘」
「どうした急に?」
「各自持ち場につけ。これより怪異ドナルド・スマイルと変態煙條Pの迎撃作戦を開始する。各々の持ち場であの二の【神ゲージ】を削り取れ!」
「「「「「ええええええええええ!?!?」」」」」
「逃げたチキンには今後それ相応の扱いをする。わかったな?」
((((に、逃げたい……))))
後にこの日のこの判斷のことを、エリリンはこう語る。
『この日の私は……恐怖のあまりどうかしていたんです。なくとも、冷靜ではなかった。けれど思うんです。仲間たちが次々発狂していくあの狀況で冷靜でいられる中學生が、果たしてどれほど居るのかと。我々人類が潛在的に抱える恐怖というの擬人化ともいえるような【モノ】が迫っている中、まともな判斷が下せる人間なんて、居ないでしょう?』
『もしあの日の自分に何か言えるなら……ですか? そうですね。「ログインするな」と言いたいです』
灑落怖三大あるある。
1、ジジイの「お前あそこへ行ったんか!?」 2、なぜか霊能者と知り合い 3、霊能者「君たちとんでもないものに憑かれてるねぇ」
異論は認める。
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