《【書籍二巻6月10日発売‼】お前のような初心者がいるか! 不遇職『召喚師』なのにラスボスと言われているそうです【Web版】》第192話 エピローグ

8月20日に公表しました當社サービス「ジェネシス・オメガ・オンラインに対する不正ツール使用によるシステム障害」に関し、下記の通り調査結果をお知らせ致します。

○経緯

當社従業員が業務上必要になるツールを外部企業に発注したところ、こちらの要求仕様とは異なる機能(ゲームシステムの進行、及び運営を阻害する機能)が仕組まれておりました。

その後、外部業者による不正アクセス及びゲームシステムへの介が確認されました。

○対応

不正アクセス確認から22時間程度を目安に不正ツールの製造元を追跡、特定。その後ジェネシス・オメガ・オンライン全サービスを停止。外部からのアクセスを遮斷しました。

また、速やかに関係機関との連絡を行い、弊社調査機関を通じてツールの製造業者の柄を確保。

○被害について

國家機関と共に調査を行った結果、個人報等の洩は確認しておりません。

また、お客様のプレイデータへの影響も確認されておりません。

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○再発防止について

***

「お、終わった~」

神永タワーの一室。

GOOの運営が置かれているこの部屋に、大きなため息が響いた。

江良Pによる外部ツールの使用によって生じたバグの修正のため、長期間のサービス停止を強いられたGOO。

羽月を始めとした運営スタッフも、あれ以降寢る間を惜しんで修正作業に取りかかった。

だが、皆の頑張りもむなしく、作業は10日ほど続き。

結局サービス再開は8月の31日からとなってしまった。

「皆さん」

ざわつく運営室を一括するように、グランドナインの一角海老名の穏やかな聲が響く。

「本當にお疲れ様でした。不正ツールを作した業者の柄も、無事拘束することができました」

「……」

スタッフ一同、その業者がどんな目に遭わされるのかは考えないようにした。

「さて、サービス再開は3日後の31日。それまではお休みとしますので、ゆっくりと疲れを癒やして下さい」

「「「お疲れ様でしたー」」」

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「どうしました羽月さん。浮かない顔ですが」

労働から解放され部屋を去って行く他の技者たちとは違い、重い顔をした羽月に、海老名が尋ねる。

「はい……約2週間。長かったですよね」

「まぁ……短くはないですね」

「その間に、多くのプレイヤーがGOOとは別のゲームを始めてしまったんじゃないかと、不安で……」

「なるほど。これまでGOOを育ててきた羽月さんにとって、それは心配でしょうね」

「……」

まるで人事みたいに言うんだなと、羽月はしだけ顔を歪ませる。

だが、それもそうかと諦める。

この海老名の上に立つ総帥……神永太郎の真の目的はフルダイブ技の研究なのだ。自分たちはその技を使わせて貰っている立場でしかない。

「それに、補償は手厚くしますよ。その名も【カムバックキャンペーン】」

「ああ、資料見ましたよ。本當にこんな大盤振る舞い、大丈夫なんですか?」

「なぁに、神永くんの……総帥の許可はちゃんと得ていますよ」

【カムバックキャンペーン】。

8月31日以降10日間、毎日豪華なログインボーナスがついてくる。そして、10日目のログイン時には一萬円分の神永ポイントがアカウントに付與される。

※対象者は8月31日以前にアカウントを取得、そして8月1日~18日の間に一回以上ログインしたユーザーのみとなります。

かつて存在した詫び石なる文化の豪華版のような容だった。

「実質一萬円相當の電子マネーが貰えるとなれば、皆ログインしてくれるでしょう。10回もログインすれば、皆すぐにこのゲームの楽しさを思い出しますよ」

「お金で釣るみたいなやり方で、私は好きではないですけどね……」

「あはは……痛いところをついてきますねぇ」

海老名は笑う。こればかりはGOO運営に落ち度はなく、完全に江良という人材がもたらした人災である。その責任は、どちらかといえば神永本部の方にある。

「私も元ゲーマーとして、思うところはあるんですよ……。純粋なプレイヤーたちから楽しいイベントを取り上げる結果となってしまった」

海老名は悲しそうに目を伏せる。そして、片手に持っていた高級そうなバッグから資料を取り出した。

そこには、世界的に有名なゲームタイトルが記載されていて。続けて、コラボイベントという文字が見えた。

つまり、GOOの次なるコラボイベントの企畫書である。

「えっ……えええええええええ!? このタイトルって……もしかしてアレですか」

「そう。正真正銘のアレです」

「だって……ありえないですよ。この作品は神永ですら買い取れなかった超有名IPですよ!? それに、TVゲームに強いこだわりがあって、VR化はしないって……」

「今までそうやって派にやってきたんですがね。実はこのタイトル、裏でVRゲーム化が進められているんです。そして、その先駆けとして、既存のVRゲームとコラボしておこうという話がありまして……。今回のお詫びとして、そのコラボ先をGOOにするよう、話を通しておきました。連続コラボの第一弾が、このGOOで行われるのです」

「え、海老名さん!」

にっこり笑う海老名を神のように崇める羽月。その企畫書に記された作品のタイトルは、羽月も子供の時から大好きなゲームだったからだ。ゲームだけではない。アニメ、漫畫、映畫など、さまざまなメディア展開がされていて、世界中の老若男される超・超・超ビッグタイトル。

そんな作品の初VR展開を任されるなんて、幸せ以外の何ものでもなかった。

「というわけで羽月さん。あなたの休日は消えてしまうわけですが……」

「全然構わないです! 寧ろ娯楽です! さ、打ち合わせを始めましょう」

「ふふ、そうこなくては」

海老名から企畫書をけ取り、るんるん気分でページをめくる羽月。だが、その手が止まる。

「え、サービス開始……9月3日……!?」

「急ですが、技的なことなら総帥直屬チームがアシストにつきます。問題ないですよ?」

「いや、そうじゃなくて……9月3日って……バチモンコラボイベントVer2.0の開始日と同じなんですが……」

「おや……それは」

***

***

8月31日、午後。

ようやくサービス再開となったGOOには、多くの人が集まっていた。

皆多くの不満はあれど、特別豪華な【カムバックキャンペーン】を前に「し、仕方ねぇな……」といった様子だ。そこは、海老名の狙い通りとなった。

他にも長いメンテナンスにより様々な改修やアップデートが行われており、プレイヤーたちの話題は文句から、そっち方面へ移っていく。

そして、竜の雛は――

ギルドホーム闇の城の地下闘技場には、向き合う二人のプレイヤーが居た。

一人は漆黒の鎧にを包むプレイヤーヨハン。

もう一人は二刀流を構えたプレイヤーゼッカ。

タッグトーナメントの企畫が消滅した後、二人は約束していた。

『サービスが再開したら……本気のバトルをしよう』と。

「殘念でしたね主君……」

ヨハンとゼッカ。二人の勝負をから見つめていてたコンの背に、妹である滅から聲がかかる。

「ですが良かったのですか?」

「んー何が?」

「1VS1の勝負ですよ。ヨハン殿との勝負を切していたのは主君とて同じ。ゼッカ殿に譲ってしまって、本當に良かったのですか?」

この場所を使って本気の戦いをするならば、まだ人が集まってこない、サービス再開直後のこのタイミングがベストだろう。

だからこそ滅はコンにそう問うたのだ。

だがコンはゆっくりと首を振る。

「別にええよ。うちはどちらかといえば、大勢の観客の前で『どっちが強いか』決めたいタイプやし」

「なら良いのですが」

ヨハンとの戦いを楽しみにしていたのを知っていた妹・滅としては複雑だった。

「それにな。社會人のうちは別にええけど。ゼッカちゃんは、もしかしたらこれが、魔王はんと戦える最後のチャンスかも知れへんやろ?」

「最後……? ああ~」

ゼッカは高校二年生。そして夏が終わる。そろそろ進學に、験勉強に力をれなければならない時期だ。今のようなペースでログインすることは厳しくなる。

「學生プレイヤーの大半は験で離れ、大學が決まった頃に戻ってきますが……」

「その頃には回りと差がつき過ぎてもうて、萎えてやめていく。まぁお決まりのパターンやね」

「それで最後のチャンスという訳ですか」

コンは頷いた。

「まぁ、先の事は誰にもわからへんけどな……」

言って、コンは立ち上がと、競技場から去ろうとする。

「見ていかないのですか?」

「そないな無粋なことせえへんよ。これは……二人だけの時間や」

「……」コクリ

コンの言葉に頷くと、滅も後に続いて出て行った。

それから數分の後、決著を告げる音が鳴り響く。

どちらが勝ったのか、誰も知らない。

それは二人だけのの時間。

長らく続きました夏祭り編、これにて終了です。謝罪は活報告にて。

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