《【書籍二巻6月10日発売‼】お前のような初心者がいるか! 不遇職『召喚師』なのにラスボスと言われているそうです【Web版】》第193話 コラボイベント バーチャルモンスター2.0

9月3日。土曜。

當たり前のように休日出勤している哀川圭は、普段の彼からすれば信じられないほど浮かれていた。

「ぴえええええメールを間違えて別の人に送っちゃいましたああああああ」

「簡単な返事のメールでしょ。すぐに謝罪のメールを送って」

「ふえええん。こんな日はおいしいお店で哀川さんにめてしいです」

「ふぅん……じゃあここなんていいんじゃないかしら?」

「いい! いいですねここ! お灑落ですね高そうだけど……」チラッ

「気にった? それじゃ、地図送ってあげるから、仕事終わったら一人で行ってらっしゃい」

「わーいわーい……ひょ? 一人?」

「それじゃ、お疲れ様です」

そして、怒濤の勢いで自分の仕事をやり終えると、圭は素早く退社する。

帰宅後、作り置きで遅い晝食を済ませると、すぐさまGOOにログインした。

***

「凄い……賑わい!」

ヨハンが闇の城の王座の間にやってくると、既に大勢のギルメンが集っていた。

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ゼッカ、ギルティア、ミュウの三人娘。レンマ。コンと滅の姉妹。薬たちに小學生組。

ドナルドと煙條Pとピエール以外は全員揃っているのではないだろうか。

ギルメンたちはどこか興を抑えきれない様子で雑談を楽しんでいる。

「ふふ……みんなやる気のようね。今回のバチモンイベント2に!」

ヨハンは皆のやる気をじて有頂天だった。

ギルドマスターとして鼻が高い。

バチモンイベント2……正式名稱【コラボイベント バーチャルモンスター2.0】。

今日の20時から開始される、正真正銘のバチモンコラボ第二弾である。

待ちに待ったこのイベントを他のギルドメンバーも楽しみにしている。

それ以上の幸せがあるだろうか。

「ヨハンさ~ん! こんばんは~!」

「ゼッカちゃん、こんばんは」

ヨハンを見つけたゼッカが駆け寄ってくる。そして、その後をゆっくりとギルティア、ミュウがついてくる。

「いよいよですね、サービス再會後初のイベントですよ! う~ん燃えてきた!」

「そうね……私もこの日を楽しみにしていたわ!」

「ええ」

「メダモンコラボイベント!」

「バチモンコラボイベント!」

「………………………………あっ」

「……?」

何かに思い至ったのか、ゼッカが汗をダラダラと流す。

ヨハンはこんなにも目が泳いでいる人間を初めて見たという。

「どうしたのゼッカちゃん?」

「あの……その……えっと……」

何かを言い辛そうにしているゼッカを見かねたのか、口を開いたのはギルティアだった。

「イベントがブッキングしたのよ」

「ブッキング?」

「そうよ。まぁ、別に珍しいことじゃないわ」

「コラボイベントが重なるのはちょっと珍しいけどね」

ギルティアの言葉をミュウが補足した。

「ふぅん。つまり、今日からスタートするバチモンコラボと同時に、別のコラボイベントもやるってことよね?」

「そういうことになるわね」

そういえば自分が初めてGOOにログインした時も、バチモンコラボイベントの裏で別のイベントが行われていたことを思い出す。

日替わりでおいしい素材を落とすモンスターが大量出現するハンティングクエストが行われていて、當時のプレイヤーたちは皆そっちに夢中だったのだ。

そのため、バチモンイベントは當時の知名度も相まって恐ろしいくらいの過疎イベントとなっていた。

そんなことを懐かしく思いつつ、ヨハンはギルティアに尋ねる。

「まぁいいんじゃない。で、何の作品がコラボするのかしら」

「メダモンよ」

「え……?」

「知らない? メダルモンスター……略してメダモン」

「め……メダモン……ですって!?」

ヨハンの目が丸くなった。

メダモン……メダルモンスターとは來年で生誕25周年アニバーサリーを迎える超ビッグコンテンツである。

家庭用ゲームとして発売され、長い歴史の中でアニメ化、漫畫化、映畫化など、その全てで大ヒットを飛ばしている超大型IP。

日本のエンタメ全てを牛耳ったと言われる神永エンタープライズですらその手中に収めることができないほどの人気を誇る。

基礎設定はこうだ。

プレイヤーは【コレクター】となり、メダモンと呼ばれる不思議なモンスターを集めるための旅に出る。

メダモンは特別なアイテム【ともだちメダル】を使うことでともだちにすることが出來、ともだちにしたメダモンはプレイヤーが自由自在にり、戦わせることができる。

多くのメダモンをともだちにし、レベルを上げ、進化させ、メダモンマスターを目指して冒険する。

當時畫期的だったこのシステムは発的なヒットを生み、その後のゲーム史を大きく変えた。

バチモンも世間からの評価で言えばこのメダモンのパクリ、二番煎じという認識が強い。

「え……。ということは、今日ここに集まったみんなが楽しみにしているのって……」

「メダモンコラボに決まってるでしょ! バチモンと違ってメダモンはまだまだメディア展開が続いているキャラクタービジネスの王様なんだから! 若者にも大人気。バチモンと違って」

「ぐあっ」

「かくいうアタシもこっち目當てよ。バチモンと違って話も面白いし」

「ぐあっ」

「やめてギルティア! ギルマスのライフはもうゼロだよ!」

「いいのよミュウちゃん。わかってる。メダモンに比べて、バチモンの知名度は10分の1程度……この程度の扱い、なんてことないわ」ゼェゼェ

「10分の1? 盛るんじゃないわよ1000分の1あるかないかでしょ」

「ぴゃああああああああああ」

「「ヨハンさん!?」」

抗いようのない事実だったので、ヨハンはただただダメージをけた。

「ちょ……事実を言っただけじゃない……私別に何も悪いこと言ってないわよね!?」

地に伏すヨハンとそれを介抱する友人二人を見てあたふたするギルティア。真実とは時に鋭い刃となって人の心を抉るのだ。

「ふぅ……ようやく冷靜さを取り戻したわ」

「よかったです。でも、バチモンを貶めるわけじゃないですけど……やっぱりイベントの力のれ方の差はちょっと気になりますね」

ゼッカ曰わく、メダモンコラボの方は全プレイヤー協力型のイベントらしい。プレイヤー全員でいくつもの目標をクリアしていくタイプのイベント。

さらに個人にも目標が設定されており、頑張れば頑張る程、報酬も増えていく。

一方バチモンコラボ2に関しては、またもやソロでストーリーを見て、決まったバチモン召喚獣でバトルしていくだけのイベントだ。

ストーリーこそ劇場版の容となり、前回とは違うものの、それでも召喚師以外ならば一回クリアすれば十分な容のイベントには違いない。

そして、開催期間も異なる。

バチモンコラボが7日間なのに対して、メダモンイベントは30日間。

「まぁバチモンコラボの方はみんなで盛り上がるってじの容でもないし、仕方ないわね。私だけで楽しんでくるわ」

「ヨハンさん……」

ゼッカが心配そうに目を潤ませた。

楽しみにしていたバチモンコラボがこのような扱いで、傷ついているんじゃなかと、ヨハンのことを本気で心配していたのだ。

だが意外にも、ヨハン心のは落ち著いていた。

普通なら怒るところだろう。

自分の大好きなバチモンの扱いに。こんなメインイベントのおまけのような扱いに。

だが、20年バチモンファンを続けてきたヨハンから言わせれば――

「そんなの、いつも通りよ」

である。

そう。いつだってバチモンはナンバーワンになることはない。

一番流行してた20年前でさえ、覇権コンテンツではなかった。

殺殺ホビー部の連中の名前の由來となった雑誌でも、バチモンの扱いなんて毎月2ページ程度。流行った時で6ページ程度。

対するメダモンは漫畫をれれば80ページを超える報量。

昔からそうなのだ。

長年のファンのヨハンは慣れたものである。

「そんな顔しないで頂戴ゼッカちゃん。バチモンコラボ2が終わったら、メダモンコラボの方に合流するわ」

「ほ、本當ですか!」

「ええ。バチモンが一番好きだったけど、メダモンのアニメだって見てた時期があったからね」

「や、やった! それじゃ、バチモンイベントが終わったら合流しましょう!」

「ええ、約束よ」

ヨハンがゼッカと軽く指切りをする。すると、時計が18時を過ぎる。

イベント開始の時刻だった。

「それじゃあヨハンさん。良い時間を!」

「ええ、行ってくるわ!」

ヨハンはバチモンコラボ2に。

ゼッカたちはメダモンイベントに。

それぞれの目標をに、それぞれのイベントエリアへとワープしていった。

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