《じょっぱれアオモリの星 ~「何喋ってらんだがわがんねぇんだよ!」どギルドをぼんだされだ青森出の魔導士、通訳兼相棒の新米回復士と一緒ずてツートな無詠唱魔で最強ば目指す~【角川S文庫より書籍化】》ワイ・ナニスノサ(セクハラ)

思わず、レジーナはその場にずるずるとへたり込んだ。

ユキオ――おそらくこのの名前なのであろう、その不思議な語が気になった。

は筒先を降ろし、背中に背負い直すと、レジーナたちに向き直った。

「怪我とかは……ないよな?」

思わずガクガクと頷くと、ん? というようにがレジーナを見た。

改めて真正面からの顔を見ると――やはり凄まじいまでの人のそれである。

は脇目も振らず、へたり込んでいるレジーナの前に真っ直ぐにやってきた。

ぐっ、としゃがみ込むと、やけに大膽に出された太ももがわになった。

その白さ、艶めかしさに同ながら思わずドキッとしてしまうと、はレジーナの顔――否、その下の部分をじーっと見つめた。

凄まじい人があまりに食いるように見つめてくるので、思わず同にも関わらずドギマギしてしまう。

先に沈黙に耐えきれなくなったのはレジーナだった。

「あの、なにか……?」

そう言った途端だった。

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ス……といたの右手が――一何を考えているものか、レジーナのを思いっきり鷲摑みにした。

そのままグニグニと弄ぶようにみしだかれて、一瞬、レジーナは自分が何をされているかわからず、キョトンとしてしまった。

それでも一瞬後には凄い違和と強烈な恥心が発して、レジーナの頭に凄まじい勢いでが昇った。

「な――何するんですか! 変態ッ!」

思わずを庇って顔を背けると、心したように眉間に皺を寄せ、やらしい手付きで指をグッグッと握った。

「おお、これはなかなか……E? いやもっとあるか……」

「な、なななな、何の品定めなのよ!? 突然何を……!」

「いーじゃないの減るもんじゃなし。私は命の恩人だろ? ぐらいませたっていいでしょ」

「どういう理屈よ! そんなにみしだきたいんだったら自分のみなさいよ!」

「それは斷る。減ったら嫌だからな」

滅茶苦茶な理屈でレジーナの抗議を柳に風とけ流したは、今度はしゃがんだままオーリンとイロハを見た。

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「ところで、アンタら何者? この道を通ったってことはミヒラの莊に行くんだろ? なんかウチの村に用あんの?」

今の突飛な行とはあまりに前後がつながらない言葉に、オーリンもイロハもキョトンとしてしまったようだった。

ウチの村、と言った所を考えると、どうやらこのユキオとかいう、ミヒラの莊の人間であるらしい。

互いに目配せし、どっちが説明する? 私だな、という風にイロハが話し始めた。

「ああ――我々は冒険者なのだ。特に理由があったわけではなく、全國津々浦々を旅しておるものでな。この山道には溫泉も多いと聞いて、その……」

「溫泉だぁ? アンタたち、溫泉と自分の命と天秤にかけたのか?」

ユキオと呼ばれたは大げさなぐらい顔をしかめた。

ひとつ、発見があった。これだけ整った顔をしているのに、このは嫌そうな顔をさせたら例えようもなく上品だ。

「イナニワで聞かなかったのか? 今の化け見ただろ。今この道を通るのは命知らずの阿呆か変態だけだ。アンタたちはどっち? 阿呆の方か? それとも変態の方?」

「変態ならアンタでしょうが! いきなり人のんどいて人を変態扱いするな!」

「わざわざクマに喰い殺されにこの山をほっつき歩いてる変態と私を一緒にすんな」

意味不明ではあるが、の聲には一部の隙もなかった。ぐぬぬ……! とレジーナが歯を食いしばって睨みつけても、申し訳無さの欠片すら見せない。

なんて奴だ、ヴリコの山の中にはとんでもないセクハラ人がいる……とレジーナが訳のわからないことを考えた時、ユキオが口を開いた。

「とにかく、今ならまだ引き返せる。諦めて王國道十三號線を行きな。ここは地獄の一丁目なんだ。ミヒラの莊行きは諦めろ。第一行ったって何にもないただの村だぞ?」

「だ、だばって、十三號線さ行げば溫泉(ゆッコ)されねぇべし……」

「え? は?」

ユキオが片眉を上げた。

「え――何? 何語?」

「だ、だばって、さっき(さきた)聞いだ大グマってこいづのこったべ? すたらんばそいづは今お前(な)が撃った(ぶった)べよ。もうミヒラの莊への道は安全だってごどでねぇんだば?」

「は、え? アンタちょっといい?」

「何だや?」

「『シンジュクでシンジ湖のシジミ食べるシンジ君』って言ってみ?」

「すんずくですんずこのすずみ食べるすんずくん」

「え、マジか。すげぇ訛ってるな……」

ユキオは心したような呆れたような表でオーリンを見つめ、次にレジーナを見た。

「お連れさんは今なんて?」

「え……うん、例の大グマなら今あなたが仕留めたでしょう、もう安全だろうって」

「それは違うぞ、旅人よ」

そう言って會話に割ってったのはギンシロウだった。

ギンシロウはユキオの側まで來ると、その足に太い尾を寄せた。

「今の獣など我々の敵ではない。我々が仕留め損なっているのはあれ程に小さくはないのだ。ミヒラの莊のマタギたちが仕留め損なっているのはもっともっと強大な敵だ」

あれより巨大なクマがいる、というその會話の容以上に、マタギ、という言葉が気になった。

まさか、このがミヒラの莊にいるというマタギ――大陸に比類なき腕を持ったプロのクマ撃ちだというのか。

「え、マタギ? あなたマタギなの?」

「何を疑うってんだよ、このカッコ見ろ」

ユキオは呆れたように言って両腕を広げた。

「この腳線は間違いなくマタギだろ? どんな山もひとぎに越えてくからマタギってんだ。他に何に見える?」

「何に見えるって……」

確かに、やけに出が多い以外は、これぞ猟師と言える格好に見えなくもないが。

レジーナはしばらくユキオの全を見て、小首を傾げながら答えた。

「……変態エルフ?」

「私はエルフじゃない。この髪のは単なる先祖返りだ。ほら、耳だって人間だろ? ちなみにエルフ語も喋れない。時々ボソッとエルフ語でデレるほど気も長くない」

流れるように変態以外の場所を否定してから、ユキオはハァ、とため息をつき、オーリンの足元にいるワサオを見た。

「全くアンタら、そこのワンちゃんに謝しとけよ。その子がいなかったら今頃全員クマの腹の中なんだからな」

ワウワウ、とワサオが自慢げに尾を振り回した。

【通訳】などしなくても、ワサオが自慢げにを張っているのがわかる。

しゃがみ込んだユキオが、おいで、とワサオに手を差しべた。

こう見えてプライドが高いはずのワサオも、何故なのか素直にユキオに近寄ってくる。

ユキオの手が、ワサオの頭の上に回った。

あ、噛まれる……! とかに慌てたレジーナだったが、ワサオは黙ってユキオに頭をでさせることを許した。

ふっ、と、ユキオの氷のような表がほころんだ。

「しかしまぁ、あれだけの大がこのワンちゃんの姿を見ただけであんなに怯えるなんてねぇ、お手柄だよ全く。飼い主さんたちにうんと褒めてもらいな」

でられているままのワサオが地面に転がり、腹を上に向けた。ユキオがさもおしそうにその腹をでても、ワサオは嬉しそうにされるがままになっている。

レジーナだけでなく、オーリンも驚いた表を浮かべたところを見ると、このプライドの高いアオモリのフェンリルにしては、それはよほど珍しいことだったに違いない。

「わ、ワサオが初めで會った人(ふと)さここまで懐く(うずげる)なんて……! は、初めて見たでぁ……!」

「ワサオ? おぉ、アンタの名前はワサオってのか。あんだけデカいクマの前によく飛び出せたなぁ。アンタは本當の男だよ、ワサオ」

ユキオはなんだかとろけたような表でワサオをでくりまわしている。

これだけ凍てついたような貌なのに、意外に可いもの好きであるらしい。

「しかしなぁ、アンタ本當に犬か? 尾も巻いてないし犬にしては鼻面が長いな。しかもギンと同じく瞳が金だ。どっからどう見ても犬には見えないなぁ。おいワサオ、アンタ実はフェンリルなんじゃないか?」

あ、その子は魔法で小さくなってるだけで――とレジーナが説明しようとする前に、ユキオが笑った。

「まぁこれだけ小さいフェンリルがいるわけないけど。おおよしよし、いい子だいい子だ。しかし惜しいなぁ。犬かぁアンタ。アンタほどの男、誰かの飼い犬にしとくのはもったいないぜ。アンタがフェンリルだったら間違いなくミヒラの莊の男たちもアンタを歓迎――」

そこまで言ったときだった。

ワサオの頭をでていたユキオの手が――ワサオの左目を見て止まった。

ぴくっ、と、ユキオの肩が揺れた。

ユキオは親指で何度も何度も、ワサオの左目に走る傷をでた。

「この傷……この傷は……!?」

そう言ったきり、ユキオの表が凍りついた。えっ? とその豹変に目を瞠っているレジーナの前で、ユキオががばっと立ち上がった。

「ギン! こっ、この子! この子、本當に犬か!? 臭いを確かめて!」

相変えて虎のフェンリルを見たユキオの表は――恐ろしいほど凍りついていた。

その表と聲に、ギンシロウがゆっくりとワサオに近づいて來て、ワサオの鼻面に自分の鼻先を寄せた。

途端に、ギンシロウの目が見開かれた。

「お前、フェンリルだな? いや――それだけではないな。この臭いは……!」

ギンシロウの満月のような瞳が異様なを発し、ぶわっ、とほとんど質的な程に濃い殺気が辺りに立ち込める。

「まさか、そんな馬鹿な……! これは悪い夢だ! あの子が、あの子が生きておるはずがない! だがお前は、お前はまさか――!?」

グルルルル! という凄い唸り聲とともに、ギンシロウの全が逆立った。途端に、今まであれほど機嫌がよかったワサオが怯え、後ろ腳に尾を挾み込んで飛び退った。

何がなんだかさっぱりわからないレジーナたちの前で。

ユキオは呆然と、怯えきったワサオを見つめてんだ。

「ワサオ……いや、レオ、レオなんだな!? 生きてたのか、レオ――!!」

「たげおもしぇ」

「続きば気になる」

「まっとまっと読まへ」

そう思らさっていただげるんだば、下方の星コ(★★★★★)がら評価お願いするでばす。

まんつよろすぐお願いするす。

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