《シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜》特異なる者
ふとランキングを見ていたところ、自分の作品の名前を目撃して五度見くらいしました。
これからも拙作をよろしくお願い致します。
ゴブリンの斧では割りに合わない。そう結論づけた俺はリアルで寢る、という手段で夜まで時間を潰すことにした。
こうなったら徹夜敢行で徹底的に攻略し盡くしてやるよ……!と意気込んだはいいが、武がなければまたあの不な太鼓ゲーだ。
「おっさん武出來た?」
「おう來たか妙な格好のニイちゃんよう、出來てるぜ。」
格好への指摘はけ付けない方針だ、なんか気にって來たんだよこの鳥面。手渡しではなく、インベントリに直接渡されたそれを確認する。
・湖沼の短剣
澱めど輝きの欠片を見せる短剣。
沼荒野の良質な鉱石から作られたそれは戦士の長き友となるであろう。
この剣に輝きを宿せるかは使い手次第。
クリティカル攻撃に功時、一定時間耐久値の減が半分になる。
「控えめに言って神武かよ………」
長く使う、という點でこれ以上に適切な武は現狀ないだろう。
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もう一方の雙鋸はクリティカルで追加ダメージ効果だったが、二刀流や雙剣自が手數とクリティカルを狙うスタイルで設計されているからだろう。
「ああそうだ、聞きたいんだけど。」
「あぁん?俺ぁそろそろ寢たいんだがよう……」
「武の耐久を回復する手段ってある?」
「あー、そういう質問する奴多いんだよなぁ。シロートが武をどうこうなんて出來るわけねぇだろ?大人しく俺たち鍛冶屋の世話になるんだな。俺たちゃ武を作り武を育てる鍛冶屋だぜ?武に関しちゃ任せてくれりゃ十全に仕上げてやるよ。」
「ん?武を育てる?」
「なんだ知らねぇのか?俺みてぇな鍛冶屋……鍛造魔法を使える奴は武を作るだけじゃなくてより強く強化することができる。ま、鍛冶屋にとっちゃ武は子供みてぇなもんだ、強化なんて味気ねぇ言葉じゃなくて育てる、って言うのさ……」
傷に浸り始めたおっさんをよそに、俺はおっさんの言う「育つ」について考える。
というのもこのゲーム、攻略Wikiが降參する程度には隠しパラメータ隠し要素隠し條件の寶庫らしく、普通にレベリングしても當然強いが何らかのユニークジョブ、ユニーク裝備、ユニーク魔法をゲットしようものなら例え始めて數日の初心者でも大注目を浴びる程度には「ユニーク」は強い影響力を持っている。
つまり武が「育つ」というのにも當然何らかの條件をトリガーに突然変異!ということも十二分にあり得る。
「ありがとよ、材料と金を集めたらまた來るよ。」
「おう、頑張れよ。」
おっさんと別れ、新たな武を手にれた俺は四駆八駆の沼荒野へと向かう。ノルマとしては「インベントリが限界になるまで」だ。
「マジかお前、それは反則だろう……!」
「ゲキャキャキャキャッ!!」
「グギゲッ!」
「ギャギャーッ!」
仲間を呼ぶ、は弱いモンスターの特権だろうがよ……!!
ゲーム上流石に真っ暗闇はクソゲーすぎるため、現実でいう日沒直後程度の暗さの沼荒野にて、俺は赤帽子をかぶったゴブリンが仲間を呼んだ事実に思わずそう毒づいた。
沼荒野は晝と夜で出現するモンスターが変化する、それが分かったのは良いが明らかにこいつらは強さの調整がおかしい。赤帽子の小鬼(レッドキャップ)達は打製石から磨製石にランクアップした手斧や、錆びた直剣を持って俺を包囲する。
遭遇した時、最初は一匹しかいなかったのだ。それでもゴブリンとは思えない素早さに避けることは出來るが時折背筋が冷えるような殺意高めのフェイントを絡めて來たりと、明らかに一定以上のレベルがなければ逃走一択な調整がされたモンスター……いわゆるユニークモンスター、他ゲーの単語を使うならF.O.E的な気配がプンプンしていた。
だがそこはフルダイブVR、レベルのディスアドバンテージはプレイヤースキルでカバーできるのがこの手のゲームの良いところであり、かつてのディスプレイ型ゲームにおけるゲームの上手いプレイヤー達が淘汰された悪しき點でもある。
そして自慢じゃないが全即死攻撃や確定命中、バグ命中でなければ俺は大抵の攻撃は回避できると自負している。
新調した武の攻撃力も中々のもので、俺の見立てでは三分の二程度は無傷でレッドキャップのHPを削ったのだが……そこでこの赤帽子野郎は仲間を呼びやがった。
結果、現在俺は四匹のレッドキャップに囲まれている訳だが……
(さてどうするか……)
別に俺はリスポーンを縛っているわけでもなければ、一度も死なない制約を自分に課しているわけでもない。
だがゲームシステム的にプレイヤーキャラはHPが全損してもすぐさまポリゴン散するわけではなく、數分間アバターがその場に殘り続ける。
さらに言えば數分経過してポリゴン散、リスポーンするまでの間は第三者がプレイヤーのインベントリを開くことが可能であり、プレイヤーキラー、PKはまさしく強盜のためにプレイヤーを襲う事が殆どだと聞く。俺をカバー、もしくは蘇生してくれる仲間がいない以上、インベントリを誰かに漁られることは回避したい。
なら逃げるのが最適解……ではあるのだが、無茶をしてみたいのもまた事実。何せゲームだ、楽しまなければ何のためにやっているのか分からない。
「さぁどうしようか……」
と、その時レッドキャップの一が轟音と共に空中へと吹き飛ばされた。もしや親切なプレイヤーが見兼ねて助けてくれたのか?
「グルルルルル………」
そんな淡い期待は明らかに捕食者じみた唸り聲にかき消されたのだった。
『ユニークモンスター「夜襲のリュカオーン」に遭遇しました。』
わぁ、そっちかぁ。
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