《シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜》連鎖するユニーク

と、まぁ意気込んだは良いがデスペナルティが解かれるまではどうしようもないし、致命の包丁が壊れかけなのはいただけない。

現狀クリティカル威力に補正がるこれは唯一の火力武と言っていい。武の消耗を回復させることができると分かった以上、回復させておきたい。というわけで鍛冶屋のおっさんと隨分と早い再會……の、はずだったのだが。

「閉店……だと……?」

いやコンビニでもなし、夜遅くになれば閉まることは別に不思議ではないけど……NPCとしてそれはどうなんだ?

まぁ嵐の中店で「いらっしゃい!」とか言われてもそれはそれで困るが。

「となると、朝まで修復はお預けか……」

自分で言うのもあれだが、俺は所謂「パーティは全員全回復させないと満足できない」タイプの人間であり、壊れかけの武を抱えたままくと言うのはその……むずい。だが致し方あるまい、おっさんが営業開始するまで致命の包丁の修復はお預けにする他ないだろう。

「幸運上げたのに運がないなぁ…………んんっ!?」

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と、何の気なしに辺りを見回していた視界の端にり込んだそれに、それまでの思考が全てシャットダウンされる。もし今の俺を第三者が見ていたのならそれはもう見事な二度見であったろう。それだけ今俺の首はらかかつ迅速に視界にり込んだ異に顔を向けたのだ。

「…………」

ちょいちょい。

と建の隙間、好き好んで通りたいとは思えない細い路地裏から顔を出し、明らかに俺だけを見て手招きするそれは、ある意味では見飽きる程に見た二足歩行の兎。

「ヴォーパルバニー?」

いや、しかしヴォーパルバニーと言えば二足歩行の兎と包丁だ。今コソコソと路地裏から手招きしているヴォーパルバニー(仮)は言ってしまえば全であったヴォーパルバニーとは違い、中々に高級漂う服にシルクハット、片眼鏡に懐中時計………なんだっけ、どっかで見たことがあるような……ああそうだ、不思議の國のアリスの兎だ。

「街の中にもモンスターがポップするのか?」

だとすれば中々にクソゲーじゃね?街中でも常在戦場って安心してセーブできないじゃないか。とりあえずレアエネミーなら狩ってみれば何か落とすかも……そう考えながら一歩踏み出した瞬間、目の前に突如としてウィンドウが開かれる。

『ユニークシナリオ「兎の國からの招待」を開始しますか?』

「っ………!!!」

大聲を上げそうになった口を手で押さえ、辺りをさりげなく見回す。幸い深夜という時間帯と、大半のプレイヤーがもっと先かファステイアに集中している今の時期と、店じまいした武屋の前という用のない場所が俺に味方したのか、この場に他のプレイヤーは存在しなかった。

ユニークシナリオ。

シャンフロが神ゲーたる所以であり、シャンフロのアンチが最大の攻撃點とする要素。

出現條件不明、諾條件不明、しかしてその恩恵は最大。

シャンフロは「世界の開拓」が大きなメインのストーリーであるが、それとは別に無數のサイドクエストが存在する。その中でもユニークシナリオは何処でいつどのように誰がフラグとなるのか全く明らかになっていない未知のシナリオだ。

だが、ユニークシナリオをクリアする事で獲得できる裝備、スキル、魔法……そう言ったものはどれも一級品の能を誇り、ユニークシナリオを探すためだけのクランも存在するらしい。

……まぁこれはクソゲーをやっている時に他のプレイヤーから「それに比べてこのゲームは」という話題の前段階として聞いた容だ。

「こういうのを塞翁が馬って言うのか……?」

あの黒狼に裝備欄二つ潰されたことは中々に不幸な事件だが、ユニークシナリオに遭遇できたことはこれ以上ない幸運だ。ユニークシナリオの條件として裝備欄二つと考えれば若干萎れたモチベーションもうなぎ登り……とまではいかないが回復すると言うものだ。

幸い致命の包丁は壊れかけでも殘弾(ゴブリンの手斧)はあるし湖沼の短剣もほぼ無傷だ。

「よし、朝になるまでユニークシナリオ攻略だ!」

嬉々としてシナリオ開始の「はい」を押した俺は、思えばまだ夜襲のリュカオーンとの遭遇からユニークシナリオ発見の連鎖に浮かれていたのだろう。

シナリオ名の隣に書かれたその文字に、気づくことなくユニークシナリオ……魔境に飛び込んでしまったのだから。

シナリオ名

「兎の國からの招待」

推奨レベル……80。

ユニークシナリオは基本的に「特殊な條件の達」でフラグが立ちますので、ハイレベル……廃レベルプレイヤーの中には意図的にユニークシナリオの「特殊條件」を匿してる者はザラにいます。

バレたら最後、手出しを抑えるだけのバックがいなければあらゆるプレイヤーから狙われかねない諸刃の剣ですが

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