《シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜》向きに荒ぶ臺風の目

匿していたユニークシナリオの存在がバレた。こればっかりは俺が油斷していたのもあるが、まさか最前線から廃人が直々にやって來るとは思わないだろう。

的確に対処しづらい位置からの攻撃を仕掛けて來るペンシルゴンから距離を取りつつ、さてこの現狀をどう対処したものかと思考を巡らせる。今現在はペンシルゴンの剣を余裕の表で回避して見せているのだが、ブラフに関しては見せかけるも見破るもあちらの方が數段上、実際のところギリギリであることはバレているだろう。

それにステータスとプレイヤースキルで劣っている以上、俺のアドバンテージはほぼ潰され、向こうは潤沢な裝備で俺をサードレマへの門からどんどん離していく。

「フェイクにディレイと相変わらず厄介だな……」

「サンラク君レベル幾つよ? 20かそこらだろうに、よくもまぁ避けられるものだねぇ。」

「神ゲーだからな、スムーズにくんだ……よっ!」

明らかに「毒屬付與されてます!」と主張の激しいナイフを避け、避けた先に差し込まれる剣の腹を短剣で押し退ける。中距離ではナイフが飛んで來るが近づけば圧倒的に不利、距離を離したくともそうはさせない、本當にいやらしい戦い方をしてくれる……

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「それはそれとして今回はメッセンジャーだからね、サンラク君にウチの頭(トップ)からのメッセージをだね……」

「今!?」

メッセージを真面目に聞いてしいなら攻撃をやめるとかさぁ……危ねっ。

矢継ぎ早に繰り出される攻撃を回避しながら俺は、そして矢継ぎ早に攻撃を繰り出しながらペンシルゴンは単純な言葉を伝える。

「諸々を開示するか、開示したくなるまで狙われるか選べ……だってさ」

「…………」

る程、シンプルなメッセージだ。ユニークシナリオの詳細を吐くか、徹底的にPKされるか選べ、と…………馬鹿だな(・・・・)。

「20點、脅し文句より先にその脅しでどうなるのか考えるべきだったな」

「あら高評価、私は諸々込みで10點で赤點評価なんだけど」

「俺を知らないで初心者を脅すならそんなもんだ……ろうっ!」

「おわっ」

まだ見ぬ阿修羅會とやらのリーダー氏は、二つ致命的なミスを犯している。

一つは俺がサードレマに來たのは拠點確保の為だが、それは「ラビッツから戻って來る時の場所」であってこれからリスポン地點にする場所は誰も訪れた(・・・・・)ことがない(・・・・・)場所だということ。

なくとも一年近くサービス続けて誰も知らないユニークシナリオによる喋る兎(エムル)の存在を知っているなら、それが誰も知らない場所である可能を失念しているのはいただけない。俺しか知らない場所に引き篭れば、プレイヤーキラーの集団だろうがなんだろうが対岸の火事だ。

そしてもう一つ、これが一番致命的だ。俺と鉛筆戦士(ペンシルゴン)が知り合いだと知ってこいつを寄越したのだとしたら、そもそもこいつをメッセンジャーにしたこと。

メッセンジャーというのは伝言を伝えることが第一で、その為には俺を殺(キル)してはいけないという縛りが課されるのだから。

「エムル!」

「はいっ!?」

そろそろ限界時間なのか、人の形を保てなくなってきたために人から兎へと変わりつつある尾や顔、耳などを一度に隠そうと手を慌ただしくかしているために、珍妙なダンスを踴っているようにも見えるエムルへ呼びかける。

くそ、明らかにレベルも裝備もスキルも魔法も……何もかもが劣っている俺が持ちこたえられていたのがおかしいんだ、ペンシルゴンは一度たりともスキルや魔法を使用していない……なくとも伝言を伝えるまでは。そもそもこいつの得意武剣じゃないし。

骨に手加減(舐めプ)していたペンシルゴンをレペルカウンターで弾き、さらにダメ押しで蹴り飛ばして一気に距離を稼ぐ。

「戻って摑まれ(・・・・・・)!」

「えええ! いやでも」

「ハリーアップ!」

「あぁもうはいなーっ!」

突然始まったPK、なのに何故か加害者側とフレンドリーで、挙げ句の果てには奇襲を仕掛けた加害者はメッセンジャー。奇妙な現狀に呆けていたエムルに腕を差し出し、この場においてエムルだけに通じる言葉を投げる。悪いが法はバラしてくれ。

ぼふーん!と相変わらずマヌケな効果音と共に白煙が発生し、煙が散れば俺の左腕にしがみついた垂れ耳兎。ただ全力で走るだけならともかく、今からはしばかり「ガチ」で逃げる故にこうしなければならんのだ、すまん。

「ああああああああ!!?」

「Animalia(アニマリア)だっけ?悪いけど俺もコレのフラグは把握してないんだ、ゴメンネ。」

「せめてその仔と寫真を……!」

「このままだとこいつも危ない(・・・)からさ!」

種は蒔いた、あとは逃げるだけだ。アニマリア氏とペンシルゴンの方へと押し出し、迂回するように全力で走る。

「おっと、そういうのは私の十八番(オハコ)だったんだけどねえ……」

「プレイヤーの方は割とどうでもいいけど、あの可らしい兎ちゃんに危険が及ぶ以上……止めるわ廃人狩り(ジャイアントキリング)!」

「まぁでも、対人にカケラも興味がないモンスター撮影クラン「SF-Zoo」の園長さんと戦える場を整えてくれたことは謝かな? サンラク君あーりがーとねーー!」

當然俺へと攻撃を加えようとするペンシルゴンだったが、低レベルプレイヤーたる俺なんかよりもよっぽど驚異的なステータスをしているアニマリア氏の攻撃を無視はできないだろう。というかなんだあれ、短剣にしてはやけに裝飾過多のような……ああいうデザインの武ってだけの短剣なのか、それとも他に用途があるのか、まぁいいさ。

何も攻撃に曬すだけが盾ではない。二、三ほど話しただけだがアニマリア氏がエムルのためだけにここまで來るガッツとモチベーションの持ち主ならば、エムルが危ないかもしれない(・・・・・・)だけで仕事を終えて本気を出すであろうプレイヤーキラーの足止めをしてくれるだろう……そう、エムルという盾……人質ならぬ兎質で俺はハイレベルプレイヤーという盾を手にれた。

悪いねアニマリア氏、また會うようなことがあればラビッツのSSを贈呈しよう。そしてペンシルゴン、お前絶対覚えてろよ……また闇討ちしてくれる。

エムルの【座標移門】のための條件は街にった時點で達できるんだ、さっさと門へ飛び込んでラビッツに雲隠れだ。

「まぁメッセンジャーは(・)私だけなんだけどサ、私別に一人で會いに來た(・・・・・・・・)なんて言ってないんだよねぇ……くっくっく」

野生のPK達が現れた!

ちくしょう、レベル50にも到達してない雑魚相手に増援なんて卑怯だぞ! 神ゲーをクソゲー展開にするのはやめろよ!

そうびたい衝をこらえて見據えた先、現れた追加のプレイヤー四人は、皆一様に真っ赤なプレイヤーネームを頭上に浮かべていた。

変更點

主人公がペンシルゴンによって門から距離を離される

描寫の追加

で取り囲むプレイヤーキラーA~D→門から全員やってくるプレイヤーキラーA~D

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