《シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜》亡命生活一日目、飽きる

「…………とうぶん、かふぇいん、ごはん」

あたまいたい、たりない、れいぞうこれいぞうこ……

「…………っかぁー!」

エナジードリンク! ビタミン剤! 菓子パン! 晝に起きて初手がこれ! 不健康の極み最高!

まぁ二日酔いを治すためにドリンクを飲むようなもので、ちゃんと朝飯も食べるのだが。フルダイブゲーはエネルギーを使うから栄養補給しないとパフォーマンスに悪影響が出る。

ぢゅいー、とストローでエナジードリンクを吸いながら手っ取り早く朝食を作る。自家製のシャケフレークをご飯にのせて、海苔と隠し味にしの七味、あとは麺つゆと沸かしたお茶で即興茶漬けの完

「あぁー……染みる」

主に神的に。食事ってのは栄養じゃないんだよ、求の充填なんだよ。

手早く茶漬けを掻き込み、自室に戻りながらこれからの方針を考える。

「とりあえずラビッツにシナリオが終わっても滯在できるようにはなった。とはいえやる事が無くなったんだよなぁ……」

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ラビッツ名譽國民なる稱號のおか、ユニークシナリオをクリアしてもラビッツに滯在することができるようになった。だが問題はラビッツで出來る事が思った以上になかった、という事だ。

というかラビッツというエリアはどうもメインのマップから獨立した隠しエリア故にラビッツの外、というものが存在しない。

ただ兎を見てアニマセラピーするならこれ以上ない環境かもしれないが、なくとも「開拓」と「冒険」もへったくれもないだろう。

「それにあのユニークシナリオもな……」

ユニークシナリオ「兎の國からの招待」をクリアした事で新たに発生したユニークシナリオ「致命兎敘事詩《エピック・オブ・ヴォーパルバニー》」。

名前からしてヤバげなオーラを漂わせるそれは、あの時は見逃していたが推奨レベル80というほぼレベル上限を要求する怪ユニークだ。俺の見立てではヴァッシュの……明らかにユニークモンスターくさいヴァイスアッシュに関係するユニークシナリオなのだろう。

ユニークシナリオを注してもメインの攻略は縛られない事を確認したのでとりあえず注してみたが、シナリオが進むフラグがこれまた難解なもので曰く

「神代の魂揺らぎし時、彼の兎は敘事詩を語る」

ちょっと何言ってるか分からない。こういうタイプは個人的経験上、低レベルじゃどうしようもない條件な事が殆どだ。

神代……………………あ、そうか忘れてたわ世界観的に遙か昔に滅んだ文明を神代って言うんだっけか。そうなると本格的に世界観から調べないといけないが

「面倒なんだよな……」

以前攻略サイトを軽く開いていたときに、世界観から攻略に使えそうな報がないかと一度考察サイトを開いたのだが、俺を待ち構えていたのは結構イイものを使っているウチの回線をして読み込みに二十秒を要する程に莫大な量の考察の山。

なんでも考察専門のクランなどがいるらしく、彼等に加えて個人個人が思い思いに考察を続けた結果があの莫大な報量らしい。あれの中から報を見つけ出すのは骨だし、何よりモチベーションが湧かない。

「ユニークは流石に後回しだな……と、なると……」

最初の問題提起がここに來て戻ってくるんだよなぁ。そもそも現狀が想定外の狀況なわけで、本來は気の向くまま風の吹くままにゲームを楽しもうとしていたのが亡命生活。いや、プレイヤーに追われたり隠れたりは々と慣れているが自分からその狀況に飛び込むのとその狀況に放り込まれるのでは意味が違う。

「ならいっそユニークを開示する?」

恐らく一番賢い(・・)方法を思わず口に出すが、それを鼻で笑い飛ばす。俺はナンバーワンよりオンリーワンの方が好きなんだ、椅子に縛り付けられてリスキルされ続けてもユニークの開示はしない。というか仮に開示したところで「夜襲のリュカオーン相手にヴォーパル魂見せたらユニークシナリオのフラグが立ちました」なんて信じる奴いるのか?

「うーん……」

まぁとりあえずログインしよ。

外出たいけど狙われてつらいわー、的なサムシングをエムルに話して見たところ、返って來た言葉は

「つまりサンラクサンは自分の見た目を隠したいんですわ?」

というものであった。

「ん、んんんー……いや、まぁ突き詰めればそうかもしれないが……」

俺が知らないだけで名前隠しの裝備や方法もあるのかもしれない。見た目も鎧などを使えば初見はごまかせるだろう。

だが俺にとっては見た目で誤魔化して速攻人目から逃げるのが最適解だとしても、と腳部に裝備不可能という忌々しい呪いがここに來てじわりと効いてくる。しかも見た目も結構派手なために裝備のプレイヤーと比較しても目立ってしまう。

「だったらイイもん売ってるとこ知ってますわ! こっちですわ!」

「え、ショップあるのここ!?」

エムルに連れられ、到著したのはラビッツの街の中……ではなく、兎殿の中にいる一匹のヴォーパルバニーの前だった。

「おん?なんやエムルねーちゃんやんけ。どしたん?」

「サンラクサン! こいつはアタシの弟のピーツですわ! 」

「よろしゅうな、確かアレやろ? 夜の帝王のオキニとかいう鳥の人」

「鳥の人て、いや別にこれはただの覆面であってちゃんと下に顔があるんだぞ、ほら」

頭裝備は別に取り外しできる、俺はエムルと新たに発見した三目の喋るヴォーパルバニーの前で凝視の鳥面を外して素顔を見せる。そういや結構凝って顔を作ったのに殆ど見せてないや、ある意味ではこの鳥面こそが俺の顔だった……って

「いやなんでそんな驚いてるんだよ」

「それ、普通に外せたんですわ!? てっきり何か深い事があって外せないものかと……」

「いや、特には……外す理由もなかったし」

どうせ防は捨てているし外す理由も買い換える理由もなかったからなぁ。強いていうなら隔て刃裝備を買う時が裝備を変えるチャンスだったかもしれないが、選択肢が強盜覆面なのがいけなかった。

というか人の素顔見てそんな、FPSで後ろ取られた砂みたいな顔すんなよ……リアルの顔ではないとはいえ傷つかないわけではないんだ。

「ご、ごほんっ! と、ともかくその覆面を外せるなら好都合ですわ! ピーツ、確か前に面白い布を手にれたって言ってましたわ?」

「布? あー、あれか。おもろいし売れる思たんやけどなぁ、どーも値段の割に見た目はただの布だから中々買い手がつかんくてなぁ……獣人(ビーストマン)の祭祀用の裝で手にれるのにぎょうさん苦労したっちゅーのに」

布?

ファステイア、セカンディル、サードレマには不定期かつランダムで常に何かのドリンクを飲んでいる胡散臭いローブのNPC「ピーツ」が出現するとかしないとか

見たこともない珍しいアイテムを取り扱っているもののやけに高額な上に非常に曖昧な説明しかしない本當にを売る気があるのかと疑いたくなるNPCがいるとかいないとか

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