《シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜》深謀智慧以て真実暴きし騎士は虛構
サードレマに突如として出現した変質者(サンラク)の報は、リアルタイムで街中を駆け抜けていることから瞬く間にプレイヤー達に伝播する。
「うわっこっち見たぞ!」
「いたぞ! あっ、消えた!?」
「何あれレアモンスター!?」
家屋の隙間に消えたかと思えば路地裏から飛び出し、路地裏を覗き込めば大通りを橫切る。
神出鬼沒な白頭巾の報は錯綜し、仮にそれがユニークをするプレイヤー「サンラク」であると気づいた者がいても、何処にいるかを把握することができない。
「あの野郎どこに行った!?」
「てか聞いた話と違うじゃん! 刺青半なんじゃなかったの!?」
「おい! ダスクの鍛冶屋の方で見たってやつが!」
「そっちの方面ってことは……俺たちを撹した上で鐵跡に向かうつもりか! 行くぞ!!」
クランナンバーツーの想定外の離(リスポーン)+「なんかかったるいのでパス」という唐突のボイコットにより、下っ端のみでサンラクを探していたPK達は、知り合い(ペンシルゴン)であればあからさまなそのきに疑問を抱いたのだろう報を素直に信じて鐵跡へと先回りせんと走る。
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そんな中、サイガ-0はただひたすらに走っていた。時折聞こえる白頭巾出現の喧騒を無視して、ただひたすらに走る。
(追いかけても追いつけない……だったら、一か八でヤマを張ります!)
これもまた確証ではなく確信によるものだが、サイガ-0はあの白頭巾がサンラクであると、そして同時に二日という短いスパンで次のエリアを目指すつもりなのだと確信している。それはクランからの指示だからではない、文字通りサンラクを最初から(・・・・)追っていたからこその推測。
そして、サイガ-0はあの風に舞う花びらよりも摑み所のないサンラクと相対するには、追うだけでは駄目だということも理解した。
(サードレマから次のエリアへの道は三つ、あの人はどれを選ぶのでしょう?)
などと考えるだけ時間のロス。であるならば三分の一の可能を信じて、ランダムに選んだ場所で待ち構える(・・・・・)。
それを選んだことに理由はない、強いていうのならば自分がかつて通った道だから。
「…………」
「……何故バレたし」
サードレマ北西門、千紫萬紅の樹海窟へと続く門の前で仁王立ちしていたサイガ-0の前に果たして彼は現れた。
この世界の設定上、確として存在する神に謝を捧げながら、サイガ-0はく。
「……何故バレたし」
俺は今、かつてないほどの驚愕と揺の渦中にいた。確かに撹から直前でのルート切り返しは完璧に功した。
を覆う白頭巾から覗く初期裝備足がパルクールまがいのきで街中を疾走する、というの末にあえて裝備を元に戻して千紫萬紅の樹海窟へ続く門へと隠行で飛び込む。
自畫自賛気味だが完璧な流れだった。ユニーク匿をすっぱ抜かれた時のような油斷もなく、完全にこの街を、プレイヤーを出し抜いたと確信していた。
ならば何故そこにいる(・・・・・)? どこで俺の狙いを読み取った?
ただ一つ分かるのは、ただの脳筋廃人だと思っていた全鎧(サイガ-0)はその実、俺を完全に上回る……ペンシルゴンのような俯瞰的視點の策略家ではない、戦闘職としての極めて高い察力を以って俺の狙いを完璧に読み切った端倪すべからざるプレイヤーだという事だ。
(マズいヤバいよろしくない! どうする!?)
タイマンで抜けるような能してないだろアレ、多分マジョリティハウンドとか一撃で全て消し飛ばすタイプのインフレの気配をじる。
ただでさえ踏み臺にした過去があるわけで、初手謝罪コマンド……いや、その場合許す代わりにユニーク開示を求められかねない、いやしかし……
「サ、サンラクサン!ど、どど、どうするんですわ!?」
「どうするってお前……この作戦も二度は使えん、ならここで抜くしかないだろう……!」
下手なアイテムや魔法に頼った方法では対処される可能が高い。対人におけるセオリー(カッツォ式)は選択肢を飽和させるか、絞るかであると言う。
大量の可能できを取れなくさせるか、選択を強制させて行を縛るか……結局のところ縛ってサンドバッグにするんかい、とプロゲーマー(モドルカッツォ)にそれを実踐されてボコられながら思ったものだが、今まさにそれをすべき俺がサイガ-0によって選択を制限されている……強い。レベルとしてではなく、ゲーマーとしてサイガ-0は俺を上回っている。
奴が俺に與える択は三つ。即ち降參、逃亡、抹殺……いや、PKではなさそうだし自発的にキルはしないか? であるならばユニークを開示するか、サードレマへ戻るか……
「っ!」
鎧騎士の手がく。
おんぶのような狀態で俺の首にしがみつくエムルのが逆立つのがとして分かる。どう出てくるサイガ-0、俺の揺を見越した上で確実に先手を取るとはやはり相當のプレイヤーだ。
武は出さない、警戒と敵意はそのまま向こうの大義名分になりかねないからだ。そして恐らく何らかの作をしているのだろうサイガ-0の手のきが止まる。いや、アレは中斷ではなく完遂による停止……
『サイガ-0さんからフレンド申請が來ました。
「フレンドからよろしくおながいしもうす」』
……誤字ってる。
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