《シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜》直線通路に迷宮を定義する、人それを思考と呼ぶ

この、どこかで同じような……あぁそうだ。

「大宇宙で宇宙人と生存競爭」というキャッチコピーの割に蓋を開けたら味方陣営でのNPC達による突然のゲバ、というか敵エイリアンもゲバ、見るだけで正気度が削られそうな宇宙怪獣がし、地球の意思によって生み出された謎種族が人類に対して攻撃……と信じられるのは自分と武だけ、とハードボイルドじみたプレイを強制させられる超戦MMO「ユニバース・ストーム」で見た目が顔から大量の手が生えた人型スライムとしか形容できない宇宙怪獣がクッソ可らしいロリボイスで協力要請して來た時の覚に似てる……

最終的にプレイヤーによる核弾特攻祭りでそして誰もいなくなった狀態になったのは実にアポカリプスしてたなぁあのゲーム。その時俺は核を抱えたプレイヤーを敵陣まで輸送(アテンションプリーズ)する宇宙船の縦士をロリボイス人外と一緒にやっていた。

「………っは!?」

いけない、神が顔面手ロリボイスに連れて行かれるところだった。今やってるのはユナイト・ラウンズとは別方向で自分以外全部敵のゲームではなくシャングリラ・フロンティアだ。

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何か宇宙的な神信しかけた神を神ゲーに戻し、改めて鎧騎士……サイガ-0が差した一手を考察する。

フレンドシステム、殆どのゲームがこの要素を持っていると言っていいだろう。それは時にゲームで仲の良くなった証であり、時にステータス増強のための一要素である。そしてこのゲームにおけるフレンド申請は可視化された友好関係だ。

フレンド関係になったプレイヤー同士であればパーティを組む際に優先される、やたら手間のかかるメール機能が多楽になるなど必須ではないが便利な機能が増えるらしいが……この狀況でフレンド申請という選択をする意図は何だ?

対人における隙作りのテクニックか? いや、そうであるなら今頃は真っ二つにされている。

ならば友好的関係を築いて俺が自主的にユニークを開示するのを促す平和的一手? となればフレンド申請は武を出さない以上の対話の意思表示?

「……分からん」

この俺をここまで悩ませるとは、恐るべしサイガ-0。たったの一手で俺を完全封殺してみせるとはな……だが、俺とて數々の対人を経験したゲーマーとして參りましたユニークを教えます、とはいかない。けて立つ!

俺はフレンド申請を認証、だがそれは仲良くしましょうサイガ-0さん! という降參ではない、お前の一手に乗った上でそれを超えるという対抗の意思表示だ。

「…………」

「…………」

互いに無言。この靜寂は西部劇のガンマン同士の決闘にも似た迫を孕んでいる。ただ違いがあるとすれば、この相対に3カウントはない。先手が必ずしも勝利とは限らない。レベルと経験、ゲーマーとしての力量全てにおいてディスアドバンテージを負う俺はサイガ-0のアクションにどう対処する?

畜生、この手の駆け引きは苦手なんだ。俺が一何度ペンシルゴンにカモられたと思ってるんだ、最終的に実力解決に持ち込まないとどうしようもないってのに、それを選んだら俺は速攻八つ裂きだ。いやむしろ三枚おろし?

「……あの」

「っ!!」

く、先手を取られた! いや、後手は悪手ではない。向こうからのアクションを見切れ、対処しろ。さぁどう來るサイガ-0……!

「もしよければ、その……攻略をお手伝い……します、ぞ?」

數瞬の思考停止。いや、停止というよりもナウローディング、意図を読み込もうとしてると言うべきか。

もしかして俺が複雑に考えすぎているだけで第三者が見れば現狀は極めてシンプルなのでは? と一瞬そんな考えが頭をよぎるが、そう斷ずるのは早計だと己を戒める。

「あー、そのレベルパワーで簡単攻略はあまり好きではないので……有難い話ですがお斷りを……」

「そ、そうですか……その、差し出がましい真似を……」

「あぁ、いえ……」

沈黙。だが先ほどまでのそれ……もしかして俺が一方的に警戒しすぎていたかもしれない迫とは違う。何だろう、この……好度が低くてフラグが立たなかったギャルゲー初見攻略みたいな気まずさ。

「あ、その、攻略の邪魔をして、その……」

「あぁ、いや……この前は踏み臺にしたりしてこちらこそ申し訳なく……」

「いえいえそんな……」

と、後ろの方で喧騒の気配がする。白頭巾(俺)を探すプレイヤー達がこっちにも來たのか。不味いな……

「……あ、その、攻略、頑張って……下さい。その、またの機會があれば」

「え?あー……それじゃ」

驚く程あっさりとサイガ-0は門から退いた。実は罠なのではと疑う自分もいるが善意を全て疑うのがデフォなのは世紀末円卓だけだ。

ともかく、向こうは俺を足止めするような意図はないらしい。未だその真意を読み切ることはできないが、今はいち早くサードレマから離することが先決だ。

俺は軽く會釈すると、門からサードレマの外へと飛び出したのだった。

……そういえば、いろいろ考えすぎてて今思い出したが、サイガ-0氏は聲的にだったのか。ネカマは多いがネナベは珍しいな……いや、今のご時世ネカマなんて絶滅危懼種ではあるんだが。なにせ聲でばれるからな、逆に開き直ってバリトンボイスのとか普通にいるが、男の……それも細の八、九頭じゃないゴツい男アバターとは、相當のゲーマーと見た。

人が分裂したり散したりする格闘ゲーム、ログインするだけでリスキルされる協力型MMO、懸命に育てた植や家畜を為すなく更地にしていく巨大生の脅威に怯える農業酪農シミュレーションゲーム……彼が嬉々として購していったゲームを自分もプレイすることで流の足がけにしようとしてて……その悉くに失敗。

ゲームショップの主人より「とりあえず劇毒に挑む前に基本的なスキルをにつけるべき」という言葉をけて始めたシャングリラ・フロンティア。真面目だが々堅の嫌いがあると思っていた姉が実はシャングリラ・フロンティアのヘビーユーザーだと判明したと同時に、特権で黒狼に所屬して目的のために邁進していった結果として今のサイガ-0が出來上がったわけだが、最初の目的からはどんどん遠ざかっていく現狀に歯噛みしていた。

そんなある日、彼が極めて珍しいことに(主人談)メジャーな大作ゲーム、それもシャングリラ・フロンティアを始めると知った時の喜び。

會えず、すれ違い続けた數日間がついに結実したという事実、フレンド欄の最新に表示された「サンラク」の四文字。

「んんんんん……やったぁぁぁぁっ!!」

しばらくした後、サードレマのプレイヤー達は非常に……そう、非常に上機嫌な鎧騎士の姿を見たという。

【朗報】ヒロインちゃん、として認識される

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