《シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜》鳥面vs道化蜘蛛
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PN:サンラク
LV:31
JOB:傭兵(二刀流使い)
200マーニ
HP(力):30
MP(魔力):10
STM (スタミナ):60
STR(筋力):17
DEX(用):20
AGI(敏捷):70
TEC(技量):20
VIT(耐久力):1(6)
LUC(幸運):72
スキル
・ラッシュスラッシュ
・スパイラルエッジ
・ナックルラッシュ
・スライドムーブ
・レペルカウンター
・ループスラッシュLv.5
・エッジクライム
・アクセルLv.6
・一艘跳び
・クイックスピン
裝備
右:致命の包丁(ヴォーパルチョッパー)
左:致命の包丁(ヴォーパルチョッパー)
頭:凝視の鳥面(VIT+2)
:リュカオーンの呪い
腰:隔て刃のベルト(VIT+4)
足:リュカオーンの呪い
アクセサリー:なし
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スキルは増えているし、相変わらずの素寒貧だが、それはもうどうでもいい。最近は基礎スペックばかり上げていたので久し振りに幸運にポイントをぶち込んだ。とはいえ流石に全ブッパするとまでの度は無かったので、ラビッツで得た12ポイントについ先程レベルアップした事で得た5ポイントの合計17ポイントを割り振り、準備は完了した。
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「まぁ新しくプレイヤーがったら全回復してるか」
俺たちを出迎えたクラウンスパイダーは見ようによってはピエロのメイクにも見える、派手派手しいカラーリングのを揺らしながらこちらに威嚇行を取る。まぁ當然だがボスエリアにる前に新たにリポップしたクラウンスパイダーに疲労やダメージの気配は一切ない。
「……ふむ、やっぱりか」
周囲を見回して確信した、貪食の大蛇然り、泥掘り然り……中々にこいつも初見殺しだ。あの剣士トリオは気づけたろうか、気づけないなら相當面倒なボスだぞこいつ。
全力で駆け出せば、クラウンスパイダーは驚異的な跳躍力でこの木のうろ……樹空間の上部に張り巡らされた蜘蛛の巣へと移行する。だが俺は別にお前目指して走ったわけじゃない。
「木の側に紛れて見つけづらいのがまたやらしいわ……」
樹面の壁面に、螺旋階段のようにせり出したそれはまさしく絶対的優位に立ったクラウンスパイダーを引きずり落とす下克上の階段。このエリア、地面はあくまで口の延長なのだ。本當の戦いの場は……上だ。
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「エムルは端っこ……いや、螺旋階段の途中で待機! 攻撃はしなくていい、間違っても持たせた荷ぶちまけて死ぬなよな!」
「は、はいなっ!」
今回はエムルは戦闘には參加させない。これはある種のけじめであり……いや、本音で言おう。俺はガチのソロプレイするときはアシストNPCは切るタイプ、以上!
樹面を何週したか、エムルが白い點にしか見えなくなった辺りで俺は上部に張り巡らされた蜘蛛の巣へと到達する。クラウンスパイダーはこちらに気づいたのか、その軀にふさわしい太さと頑丈さの蜘蛛糸の上を伝いながらこちらへと近づいてくる……が、やはりその歩みは地上でのそれと比べると遅い。
「多分本來はここに一人遠距離攻撃できるやつを置いて地面に落とすのが正解なんだろうが……」
火が點いていない、風で撓(たわ)まない、綱が一本ではない。ここまで好條件が揃っていればやることは一つしかない。
俺は湖沼の短剣から切り替えた致命の包丁(ヴォーパルチョッパー)の腹で糸を軽く叩く。やっぱり縦の糸に粘著力は無い、橫に張られた糸さえ踏まなければ足場としては十分だ。一度足を乗せ、何度か力を込めて確認し……こちらへと近づきつつあるクラウンスパイダーの懐へと駆ける(・・・)。
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「綱渡りはお前だけの特権じゃあないんだぜ!」
限りなく素足に近い、初期裝備以下の無裝備時の末なサンダルだからこそ、よりダイレクトに糸の重心をじることができる。それでも俺はせめてブーツくらいは履きたかった!
「踏ん張りづらいが……先駆けいっぱぁつ!」
普通に踏ん張るのではうまく力がりきらないし、足を踏み外す危険もある。だからこういうシチュエーションでは下から上へ、綱の撓みを利用した跳ねるような斬り上げが最もダメージが大きい。
「おっと、久し振りだから落ちかけた。危ない危ない……踏ん張るなら真ん中かな」
どうやらクリティカルに加えて急所にも命中したらしい。顔面を切り裂かれたクラウンスパイダーはひっくり返るほどに仰け反って自が張った糸から落ちていく。
「向こうにも落下ダメージがってりゃいいが……」
グシャァッ!とあまり聞き慣れたくはない音を遠くに、地面でのたうっているクラウンスパイダーを余所に俺は巣の上を軽業師宜しく跳ねるように進んでいく。
なるほど、天井から巣の隙間から下に落ちるよう糸で吊るされた丸太、これを切り落として地上への攻撃にしていたわけか。これが自分に直撃するとかゾッとしないな……というわけで致命の包丁で糸を斬れないか試してみる。流石に足場の糸を斬れば俺が落下死(ポリゴン散)は免れないので、慎重に……あ、そーれ。
「む、い」
二度目で斬れた。クリティカル二発で切れるなら利用(・・)できそうだが、その前に怒り心頭の家主のお帰りだ。なるほど、跳躍力だけじゃなくて空中で糸をばして逆バンジーの要領で巣に登っていたのか、意外にがあるようだ。
表の無い蜘蛛のモンスターではあるが、前腳をブンブンと振り回す様は言葉以上に俺への怒りが伝わってくる。先程よりも素早いきでこちらへと殺到してくるが、既に俺は最も縦糸が集した蜘蛛の巣の中心部に陣取っている。
地の利を得た俺は先程よりも二倍は強いぞ? なお當社調べ。
「レペルカウンター!」
左足で巣の中心部を強く踏みしめ、右足を前へ出して勢を整えてクラウンスパイダーの前腳攻撃を弾き飛ばす。
仰け反りモーションを強制的に取らされたクラウンスパイダーの懐に再度飛び込み、左右の致命の包丁による二撃に加えてスパイラルエッジの補正付きの一撃を叩き込む。
またしても地面へと落ちていくクラウンスパイダー。明らかに顔面に一撃をけた以上のダメージを負っていたようだし、やはり落下ダメージはっているようだ。
「な、る、ほ、ど、ね……?」
あー今俺すごい悪い顔してると思う。
ではここでクラウンスパイダーくんの帰宅への挑戦、その戦いの記録を記そう。
帰宅(三度目)
クラウンスパイダーが最初に登った時、次に戻った時だから……三回目か。三回目の帰宅のために糸を天井へとばす。それが天井に張り付き、推進を得るために一度クラウンスパイダーが完全に糸にぶら下がり、び切ったこのタイミング。
「はいクリティカル二発」
ぶつっ、と切れた糸はクラウンスパイダーの重さを支えることは出來ない。重力という巨大な掌に鷲摑みにされたクラウンスパイダーはワシャワシャと腳をかしながら地面へと落ちていった。
帰宅(四度目)
「あれ、この位置は……」
糸がび、それを斬り落とさんとする俺は丁度近くに丸太がぶら下がっていることに気づく。
「モグラ叩き? 鼠返し? まぁいいや、丸太の鉄槌!」
丸太が重力に引っ張られ、落ちていく。それはまさに上から下への破城槌、不運にもまたしても逆バンジー寸前の最も糸がび切った狀態でに丸太が直撃したクラウンスパイダーは思わずと言った様子でからばしていた糸が途切れ、そして地面へと丸太ごと落ちていった……
帰宅(五度目)
落下。
帰宅(六度目)
よくわからない糸でぐるぐる巻きにされた何かが直撃し落下。
帰宅(七度目)
蜘蛛糸による逆バンジーが功し、上方へと跳ね上がるものの、巣の上へ戻る直前で俺により蹴り落とされて落下。
落下、落下、落下…………
「いやまさかここまでうまくハマるとは思わなかったな……」
プレイヤーがキャラクターを作するゲームにおいてバグと正常の狹間に位置する技……それこそがハメ技。
弱者が強ボスに勝つためのテクニックであり、ボスの何もかもを否定してサンドバッグへと変えてしまう悪魔のテクニック。
何度も地面に叩きつけられながらも、健気に巣へ戻ろうとする姿は哀れみを覚える……いや、一昔前のカートゥーンアニメのギャグみたいでウケる、とか思ってないよ、ホントダヨ。
「まぁそろそろ瀕死のようだな」
そりゃ十回は叩き落としたわけだし、いくらモンスター、それもエリアボスであってもこの高さから地面に叩きつけられ続ければ瀕死にもなるか。
クラウンスパイダーの様子はといえば、何度も地面に叩きつけられた為に腳の數本がひしゃげて妙な方向に曲がっているし、落下の衝撃故か全的に凹んでおり、の代わりにの所々からポリゴンが溢れている。俺なら十回死んでるようなダメージけてそれなら、十分過ぎるくらい強敵だったんだろう。
だが、瀕死のクアッドビートルを倒したあの時と比べても、なんというか盛り上がりに欠ける。いや楽しかったけど、楽しかったけどなんか違うんだなこれが。なんというか……そう、スリルが足りない。
ハメ技じみた落下コンボを決めたのも原因の一つ、というか大それのせいではあるのだが、もっとこう……オワタ式が極まったような戦闘がしたいのだ。
「その點クアッドビートルはストレートに理してて良かったんだが……」
クラウンスパイダーも強敵ではあったが、どちらかというとギミックを解くまでがメインのボスだ。それ故にネタさえ割れてしまえばクアッドビートルよりも弱い。仮に俺も地面に降りて地上でタイマンしたとしても、多分ほとんどダメージを負うことなく俺が勝つだろう。
だからこそ不完全燃焼、全力を出し切れなかったモヤモヤがクラウンスパイダーへトドメを刺す達に影を差す。
「……ちょっとだけ舐めプするけど堪忍な」
ボス故に、この樹の主人であるが故に、クラウンスパイダーは満創痍のをそれでもかしこちらへと飛びかかる。
スライドムーブ起、綱引きの綱ほどの太さはあるとはいえ不安定な糸の上をるように移してクラウンスパイダーの特攻を回避。そのタイミングで新たに覚えた……180度反転の際の急停止によって発生する仰け反りを解消して瞬間的な反転を可能とするクイックスピン起。
反転した直後にこれまでのステータスに補正がる回避系スキルとは異なる、純粋な跳躍距離(・・・・)を増強するスキル一艘跳びも起。
撓む蜘蛛の糸、跳躍するは攻撃モーション後の直にったクラウンスパイダーの背後へ。
本來ならこんな曲蕓の必要はない、レペルカウンターで弾いて斬れば安全かつ迅速に終わる。だからこれは舐めプであり、正しく遊び(・・)だ。
「オーバーキルかな?」
跳躍の勢いで刺突の威力を上げる……言うなればAGIによる無理矢理STRバフとも言える飛び込みの勢いをスパイラルエッジに重ねて突き出す。
クラウンスパイダーのに(流石に糸を生する部位に刺す勇気はなかった)突き刺さった致命の包丁が螺旋のエフェクトを発し、さながら削巖機(ドリル)の如くクラウンスパイダーからポリゴンを噴き出させる。
クラウンスパイダーは一度ビクンと震えて直、そしてそのはポリゴンとなって勢いよく散する。
「おっとと」
その勢いに押されて巣の上から落ちそうになったが、流石にここまで來て落下死は恥ずかし過ぎるので意地で持ち堪え、ポリゴンの中から地面に落ち(ドロップし)ていたなんらかの球をキャッチする。
「んー……まぁ、ノーダメノーコンだし上等か」
満點のプレイと最善の結果、しかし何か足りない勝利だ。
あんまりなやられ方をしたクラウンスパイダー君ですが正しい戦い方としては
魔法職がエリア上部でクラウンスパイダーを叩き落し、落ちたクラウンスパイダーを下で控えた火力職がフルボッコにする。
というどちらにせよハメ殺されるか袋叩きにされる可哀想なやつです。なおその戦法上、タンクの影が若干薄くなります。軽戦士は主人公がやったように巣の上で戦う、という役割があるだけまだマシでしょうか
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