《シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜》剎那に想いを込めて 其の六

「いいなーユニークいいなー」

「お前そればっかだな」

エムルの紹介をして、それがユニークに由來するものだと知ったオイカッツォは神代の鐵跡に到著するまで終始この調子だった。

エムルはと言えば俺の頭にへばりついて歩く労力を削減中、そのうち俺のステータスの職業が傭兵からウサギノコシカケとかになるんじゃないか?

「いいなーユニークいいなー、俺も兎をもふりたいなー」

「今現在ユニークのためにパワーレベリングするって事忘れてねぇ?」

「自分で見つけるのと他人が見つけたやつにに乗るのは別だろー……お、あれじゃない?」

やんのやんのと「自発と助太刀の違い」について話していると、オイカッツォが一點を指す。視線を向ければ、そこには風化し劣化しているものの、これまでに見てきたエリア、文明とは完全に趣きを異なるSFの気配漂わせる「扉」がそこにはあった。

一瞬、「これ扉にらずに先に進み続けたらどうなるんだろうか?」とさらに道の先を見てみたが、その程度は運営の想定なのか巨大な大地の亀裂によって神代の鐵跡を無視して向こうへ渡ることは無理そうだ。

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なんだろうなこの亀裂、渓谷とかそういう長い年月で出來たものとは違うじがするし……普通に地割れで出來たという設定にしてもなんか違和が。

「はよ行こうよ」

「ん?ああ……」

「斬新な開き方してるけど、自ドアってやつ?」

「ねじ切れて歪んでいるのを開くと言えるならそうなんだろう。さて、中にったらまずは地下二階?まで行けとのことらしい」

「じゃあいこうか」

俺&エムル、そしてオイカッツォは永い年月の経過によってその役割を放棄した扉を潛(くぐ)り、神代の鐵跡へと足を踏みれるのだった。

「うわすっげぇ、ここだけ別ゲーみたいだ」

「黒い板がぐいーん!っていてますわ!」

「これに似た景どっかで見た気がするんだけどな……ああそうだ、ブレイヴ・ギャラクシー・ファイターのラスボスステージだ」

「ちょっと知らないゲームですね……」

「全世界で評価されたSF格ゲーの金字塔なんだけどなぁ」

神ゲーじゃないか、俺が知ってるわけないだろいい加減にしろ! 実際クソゲー抜きに特定カテゴリばかりやってるわけでもないし、ましてや特定カテゴリの特定ゲームにおける特定ステージとか知ったことじゃないという。

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「しかし、さっきまでファンタジーしていたのにいきなりコレかぁ」

目の前を通過した、浮遊する黒いプレート?らしき金屬板を眺めてそう呟いたオイカッツォに、俺もまた同意の頷きを返す。

神代の鐵跡というエリアがこれまでのファンタジーを由來とするものであったとするなら、こちらは完全にサイエンスなファンタジーに由來するものだ。

風化しきった扉を越え、おそらく元々はエスカレーターだったのだろう所々が破損した歯抜けの階段を降りた先に待っていたのは、本當に前報通りに「黒い板が空を浮遊する」広大な地下施設だった。

ただの金屬ではない、サイバーなの樹形をなぞりながら発する金屬板(プレート)は宙を浮遊し、時に別の場所に著地し、時に壁に延々とぶつかり続ける。

それだけでもゲームのエリアとしては及第點だろうに、ここを作った者はさらにそこへ荒廃要素をれたらしい。

元々は金屬のみが空間を構するはずだったその場所はかろうじて文明こそ維持しているものの、風化によって生じた天井の亀裂から日が差し込み、征服旺盛な植がこのSF空間にまでばしている。

「こういう滅んだ系のエリアは個人的に好きだな」

「ああいうくオブジェクトってバグると面白い挙するよな」

「一回眼球丸ごと洗浄してそのクソゲーフィルター洗い落としてきなよ」

「サ、サンラクサン!なんかこっち來てますわ!」

おや、どうやら久しぶりのパーティプレイではしゃぎ過ぎていたらしい。しばかり周囲への注意力が散漫になっていた。

「エリアがエリアなら敵も敵か、警備ドローンとかそんなじか……?」

丁度俺の頭の位置あたりの高さを飛行しながらこちらへと飛んで來たのは、正三角形の形をした金屬の、どういう原理で浮遊しているのかよく分からないエネミーだった。なんて形容すればいいんだこれ……UFOの三角形版?

「どうするオイカッツォ」

「あー、とりあえず俺が毆ってみるよ。経験値しいし」

そう言うなり素手のまま飛び出したオイカッツォ。三角UFOは突っ込んで來たオイカッツォを敵と認識したのか、フリスビーよろしく回転しながらオイカッツォへと突っ込む。

「素直なきだ、カウンター練習用のエネミーかな?」

そんな呟きが聞こえてきた次の瞬間、三角UFOが明な壁にでも衝突したかのように弾き飛ばされる。もしかしてあれレペルカウンターか? 他人が使うのは初めて見た。

「赤!」

なんだあれ、魔法か何かなんだろうが……オイカッツォの拳が赤いオーラに包まれた。そしてオイカッツォはノックバック狀態で空中でグラつく三角UFOの真下に潛り込むように薄すると、重力に真っ向から逆らうかのように拳を振り上げる。

「クラッシュアッパー!」

「おー」

「い、一撃ですわ!?」

ただの素手によるアッパーではないだろう。あの赤いオーラがなんらかのバフを與えていることは明らかだが、一撃で力全損か。

結局なんなのかよく分からないまま、三角UFOはポリゴンとなり、アッパーを振り上げた姿勢のまま余韻に浸るオイカッツォの拳から赤いオーラが消える。

「なんの職業だ?」

「修行僧(拳気使い)……いわゆるモンクだね。武を裝備できない代わりにバフで素手を強化しまくって毆る職業。ちなみに今のはSTRとVITに補正れる【拳気「赤衝」】って魔法」

「魔法職(理)を公式がやっていくのか……」

もうし俺も調べてから職業選べばよかったかな。拳にオーラを纏わせて戦う、というのは中々にかっこいい。

それに武に依存せず、素手で戦えるというのは中々に魅力的だ。それに赤という短い単語で発可能な魔法、というのはオイカッツォ自と相がいい、発生が早い的な意味で。

「でも武の補正がけられないのは結構痛いし、あんまりい敵相手だと逆にダメージけることもあるから、中々上級者向けかな」

る程ね……ちなみにステ振りどんなじ?」

「軽戦士ビルド……からAGIに振る分をHPとVITに振ったじ、カスダメ食らうこと多いからタフネスさをばしてみた」

ここら辺は格ゲーマーの考えだな。オイカッツォのゲームスタイルは基本的にダメージを前提とした戦い方だ、要約すれば「やられる前にやれ」と言ったところか、ちなみに俺は「當たらなければどうということはない」だ。

カスダメで気づけば死にかけという危険はあるが、回避スキルに使う分の時間やコストを攻撃に振れるのは中々大きい。

「サンラクは……ああ、言わなくていいよ。どうせ紙裝甲STR・AGI特化でしょ」

「殘念!AGI・LUC特化の幸運戦士でした!」

「ヴォーパル魂全開ですわ!」

「ええ……てかヴォーパル魂って何?」

それは俺も知りたい。

その後も幸運というステータスの素晴らしさについて語ったり、調子乗って目的地までの敵の処理は自分一人で十分と粋がったオイカッツォが三の三角UFO……デルタユニットドローンT1式というらしいそれに囲まれて危うく死にかけたり、それについて煽り倒していたらオイカッツォがぼそりと「中々死なないしぶとさを持つ上にやたら速いってそれゴキ……」というつぶやきにあわやPvPに発展しかけたりしたものの、俺達はステータス上は萬全の狀態で一先ずの目的地地下二階へと到達したのだった。

「荒廃合が酷くなってるな、てっきり下に行くほど設備が無事なタイプかと思ってたんだが」

「下から崩落したんじゃない?底が抜けた鍋みたいに」

「その例えは微妙によく分からないが……」

一度周囲を見回し、他のプレイヤーがいないことを確認する。一応耳が良さそうなエムルにも周囲の索敵をさせたのち、俺はインベントリからペンシルゴンに渡された地図を取り出す。

「このフロアから隠しエリアに行くことができるらしい」

「隠しエリアねぇ……なんか俺って本來自分で探す要素を他者から提供されっぱなしな気がするんだけど」

「今のご時世ゲームプレイ前に攻略サイト見る奴だって珍しくはないんだ、気にするだけ無駄だろ」

ぶっちゃけストーリーネタバレさえ踏まなければ攻略サイトを見ることはそこまでナンセンスなことでもないとは個人的な考えだ。

神ゲー良ゲーでもドツボにハマると延々と攻略できない、なんてこともあるし。クソゲー? 攻略サイト見ても意味が分からないしそもそも攻略サイトが無いかあっても極端に報がない、以上。

「俺もユニーク自力で見つけたいなー」

「はいはい、ええと……こっちか」

真ん中にの空いたプレートの左側を通って亀裂を飛び越し、四方が欠けたプレートに乗って地下二階と三階の隙間へと移しそこから先へ……

「面倒臭いわ!」

というか見つけた奴すげぇな! どういうメンタルしてたらこれを見つけられるんだよ。というかペンシルゴンが見つけたのかこれ?

「うわ、今時フルダイブでここまで手の込んだ隠し要素も珍しい」

「壁を特定のリズムで叩いたら隠し通路が、とかありそうだな……」

ともかく、俺達がやるべきはこの七面倒くさいルートを進むことだ。

「……で、最後はこのに飛び込めと」

地図に書かれた行程通りに道とすら言えないルートを進み、俺たちの前に隠しエリアへの最後の行程として立ち塞がったのがこの大

元々地下ということもあって完全に底が見えないに飛び込め、と言われればフルダイブのリアリティもあってしだけ怖気付いてしまう。

「実はこれ俺達を遠回しに暗殺するためのドッキリじゃないよね?」

「そしたらお前、あの鉛筆はケジメ案件よ」

「ケジメ!おと、カシラもケジメは大事って言ってましたわ!」

あの極道兎のケジメ……知りたいような知らない方が幸せのような、いやいや流石にゴア描寫マックスな事はないだろうが……うん、これ以上は考えないようにしよう。

「さて…………」

正直言って不安だ、俺とオイカッツォだけなら捻りをれたバク転しながら飛び込んでもいいくらいだが、エムルがリスポーンできない以上はこう言った先の見えない危険には注意を払わなければならない。

「んー、じゃあとりあえず俺が落ちるよ。そんで無事ならサンラク達が來ればいい」

「……ありがとよ」

「ふきゅ」

どうやら俺の警戒を察したのか、オイカッツォはそう言うと俺の肩に移したエムルの頭をポンポンとで、躊躇うことなく大へと飛び込んでいった。

「ふやぁ……カッコいいの人ですわぁ」

「そうだな………いや、あいつ男だぞ?」

「………?」

ああそうか、見た目と聲がアレだし勘違いしても仕方ないか。特にやつのシャンフロのアバターはあざといくらいのキャラだし。

「あいつ、顔だけど男だぞ」

「えええええ!?」

元々リアルが中的だから奴はプライベートなゲームではよく顔のキャラやのキャラを使って遊ぶ(・・)。なんでも姉二人妹一人という紅一點ならぬ黒一點? な家庭環境故にゲームを始めるまで趣味が的なばかりで……と、本人は遠い目をして語っていたことがある。

「せ、生命の神ですわ……」

「見た目だけのやつとかザラだろ」

「そういうのとはまた違う衝撃ですわ!」

さいですか。というかオイカッツォのやつが死んだかどうかをどう判斷すればいいんだ? あ、フレ登録とかしてなかったな。疑問から関係のない事へと思考が移り始めたその時、の奧から小さく反響する音が。

「…………れー…………」

「ペンシルゴンの遠回しの暗殺(ドッキリ)ではなかったようだな」

てかなんて言ってるんだあいつ。

「えーと、「はよ來いヘタレー」だそうですわ」

「上等じゃねぇかぶっ殺してやるあの野郎!」

「えっちょ、心の準備……ですわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!?」

一切の躊躇いなく、ついでに言えばエムルの心の準備が整うまでもなく、俺はエムルが剝がれないよう手で押さえながらへと飛び込んだのだった。

カッツォは顔、というよりも歌舞伎の形的な顔です。普通に男だけど裝したら予想以上ににしか見えないタイプのアレです。

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