《シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜》剎那に想いを込めて 其の十八

昨日は更新をすっぽ抜かしてしまい大変申し訳ないです、文章自は出來ていたのですがイクラ運びのバイトとシャチホコ運びの殺し合いで消耗しきってそのまま寢落ちして予約を忘れていました……ゲームは節度が大事ですね、本當に

「昨今の格ゲーで大事なことってなんだか知ってる?」

「んー、本職に答えを教えてもらおうかな?」

「まぁ人によって々なんだけどさ、俺としては「ゲームとリアルの區別をつける」だと思うんだよね」

その言葉にペンシルゴンはうへぇ、と骨に顔をしかめる。槍系パリィスキル「渦の転槍(メイル・スピアトロム)」によっていなされた騏驎甲冑の拳が大地を叩く。

「ここにきて倫理の話ぃ……?」

「違う違う、そんな舊時代的思考のPTAみたいな意味じゃなくってさ……格ゲーって要するに「人間離れしたきを実現する」ってことでしょ?」

「まぁ、そうだねぇ」

騏驎甲冑の足に縄が巻きつく。足だけではなく腕や、腰にも。幾つもの縄が巻きつけられ、そしてその端は一點へと繋がる。

ペンシルゴンが注意(ヘイト)を引きつけている間に、オイカッツォが騏驎甲冑の四肢に縄を巻きつける。即興の作戦を功させながらも話を続ける。

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「手がびる、ヤバいくらい跳ぶ、羽生えてる……場合によっては人の形ですらないキャラクターを作するわけ」

「そだね、君達がやってるバグゲーは人の形すら留めないらしいね」

「うーん……要約するとさ、人間離れしたキャラクターをるのはあくまでも人間なんだよね。だからさ、その作にはどうしても違和が出る」

「……話が見えないんだけど」

「だからプロゲーマー、それも格ゲーをメインにする奴らってのはその「ゲームキャラとプレイヤーの違和」を突く技能が必須なわけで……だからこそ、逆に言えば人のがどんな風にいてどれくらいけるかも把握しているんだなこれが」

さながらり人形の意図を握る人形師か、それとも無謀な挑戦を試みる愚か者か。オイカッツォがパワーレベリングの副産として得た大量のライブスタイド・レイクサーペントの素材、それを用いて作られた縄裝備、蛇縄「命の手綱」。

手を離した時點で裝備品はオブジェクト化するという特を利用し、大量の「命の手綱」によって騏驎甲冑を捕縛したオイカッツォだが、當然高5メートルを越える騏驎甲冑のSTRは相応に高く、オイカッツォ一人でそのきを封じることは困難である。

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現に、騏驎甲冑は縄を意に介することなくペンシルゴンを叩き潰すべく一歩踏み出さんと右足を上げ……

「例えば歩くモーション、片足を浮かせた瞬間にを支えている方の足を引っ張ってやれば転ぶ」

騏驎甲冑の重心が前へと傾いた瞬間、左足に巻きつけられた縄がオイカッツォによって引っ張られ、重厚なはいとも容易く転倒する。

「立ち上がる瞬間に足を引っ張ればさらに転ぶ」

両手を地面につき、立ち上がろうとした騏驎甲冑は両足を引っ張られ、さながら喜劇の道化のように再び派手に転ぶこととなる。そして二度の力みによってスタミナを使い切ったオイカッツォがスタミナ回復をしている間に、準備を終えたペンシルゴンが転倒した騏驎甲冑へと薄する。

「弱點候補その一ぃ……本との合部分!」

ペンシルゴンが持つ槍……大型モンスターの背骨から刃を削り出したものに金屬で補強と裝飾をれた「獅子の連骨槍(レグルス・トーテム)」はデザインされ、システムとして組み込まれた能力を十全に発揮して騏驎甲冑の欠けた空、本來であれば墓守のウェザエモン本が収まるための言うなれば玉座へと突き出される。

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複數のバフをけた槍の穂先は騏驎甲冑の接合部の奧の奧を確かに穿った……が、返ってきたのはあまり有効とは言い難いいまいち會心を外れた

「うーん、効果薄そう。次! カッツォ君仰向けでよろしく!」

「無茶言いなさる……!」

オイカッツォによる転倒、それによって発生するダメージはあくまでも騏驎甲冑自によって発生した自傷ダメージ(・・・・・)である。確かに文字通りの意味でオイカッツォは騏驎甲冑の足を引っ張ったわけであるが、それ自にはダメージは発生しておらず、そしてそれは同時にオイカッツォにヘイトが移ることはない、ということである。

「立ち上がって、頭……は無いけど、背中がびきって、慣が殘ったこのタイミングで……両腕!」

ゲームのシステム上片手で扱える裝備扱いである縄裝備は右と左で一本ずつ、一度に二本ることが出來る。騏驎甲冑が立ち上がった瞬間に両腕を一息に真後ろへ引っ張った結果、巨故に立ち上がる際の慣にオイカッツォによる牽引のエネルギーも加わって騏驎甲冑の重心は後ろに傾く。だが足りない、あとしで転倒するという寸前で、騏驎甲冑は左足を後ろに下げて踏ん張らんと試みる。

「あっ、耐えた!?」

「倒れとけ!」

よろめいた騏驎甲冑の腹に突進と跳躍によって威力を増したペンシルゴンの蹴りが命中し、首のない伽藍堂の巨人は青天井を仰ぐこととなる。

「腹を割って話そうか……なんて、ねっ!」

の耐久度を急速に消耗するというデメリットこそあれど、強力な裝甲貫通効果を付與する「ブロークン・シェル」によって、奇しくも墓守のウェザエモンと同様に自壊しながら突き立てられた獅子の連骨槍が騏驎甲冑のVITと真正面から激突する。狙う部位は腹、それも最も裝甲がい部位。

「分厚いってことは、その下が重要ってことだよねぇ……! カッツォ君、二十秒耐えて!」

「無理! 十五秒!」

「上々!」

攻撃スキルを連続して発し、ただ一點を集中的に攻撃し続ける。騏驎甲冑が起き上がろうとする、腹の上のペンシルゴンを払いのけようとする行はオイカッツォが腕を引っ張り、強制萬歳をさせる事で阻止される。

きを阻害してもダメージもデバフも與えていないからこっちにヘイトが來ないし、転倒させれば自傷ダメージもる……もしかしなくても、これハメだよね?」

「だったら運営に修正される前にウェザエモンを攻略しちゃおうか……!」

二度目のブロークン・シェルの行使によりビシリ、と致命的な亀裂のった獅子の連骨槍を投げ捨て、ペンシルゴンは別の槍をインベントリから取り出す。

「ああもう、致し方ないとはいえ本気を出せないのはつらいなぁ……!」

とある事から、今現在ペンシルゴンは本気を出せないでいる。それは決して侮りではなく、この戦闘におけるキーアイテム、対価の天秤を借りる(・・・)為にペンシルゴンは自らの槍を対価として預けているのだ。

だからこそ、ペンシルゴンは此度の戦いではアシストに回ることを選んだ。代用の槍も用意できうる最良と最上を兼ね備えたものを揃えたが、ここへきて騏驎甲冑を実際に倒す、という新たな課題の前に槍の不在が響いていた。

「それならそれでやりようは幾らでもあるけどね……! やりだ……」

「槍だけに?」

「うーわカッツォ君ダジャレつまんなーい。うーわ、うーわ」

「こ、この野郎……!」

初見食らった時は「なんだこのクソゲー!?」と思ったものの、よくよく考えてみればそうでもないかもしれない。要するに、覚えゲーなのだ。

それに気づくまでに三度死んで殘りあと四回は死ねるわけだが……

「晴天大征(せいてんたいせい)中の技はランダム選出、共通するのは最後の技は天晴(・・・・・・・)ということだけか」

「斷風(タチカゼ)、火砕龍(カサイリュウ)、灰吹雪(ハイフブキ)」

斷風は準備モーション中に行う墓守のウェザエモンの首のきと、踏み込んだ右足のきでどこを狙うのかが分かる。

火砕龍(かさいりゅう)は発生までラグがあるので今となってはさほど脅威ではない。

灰吹雪(はいふぶき)も同様に完全にプレイヤーを包囲するまで數秒あるので不意を打たれたならともかく、備えていれば回避は容易い。

「天晴に関しては試行回數がないからなんとも言えないが、回避行ができないことは確定している」

「大時化(オオシケ)、雷鐘(ライショウ)、道雲(ニュウドウグモ)」

大時化(おおしけ)は斷風ほどの理不盡速度ではないが、それでも驚くべき速さで接近して摑み攻撃をしてくる。だがその軌道は直線でしかなく摑まれさえしなければそれは腕を空振りするだけの作となり明確な隙となる。

雷鐘(らいしょう)は回避自は容易い、全力で走ればいいだけだからな。ただ狀況とスタミナ管理次第では走るだけのスタミナがなくて著弾する、逃げ切りはしたがスタミナを使い果たして次の攻撃を避けられない、などのアクシデントが起こり得るから注意。

道雲(にゅうどうぐも)、こいつが厄介だ。回避方法が単純に薙ぎ払いに追いつかれないよう走る、腕そのものを飛び越える、ウェザエモンの至近距離に存在する安全地帯に逃げ込む……どの選択肢もスタミナを確実に削ってくる辺りこの技が一番厄介かもしれない。

「対応は最小限、次に繋げられる勢を維持してウェザエモンとの距離は3メートルを維持……天晴(てんせい)までのリミットはおおよそ三十秒」

の挙と思考を切り離せ、これまでの技なんて慣れればそう怖いものではない。最重要を検証しろ、考察しろ、対応しろ。

回避そのものを封じてくる天晴(てんせい)の対処法、その候補を脳でリストアップし、一つずつ査していく。

太刀を破壊する……実現は困難だろう、なくとも破壊自は可能かもしれないがこの戦闘にそれを組み込んでいるとは思えない。

を撃破する……可能はなくはないが、それなら晴天大征(せいてんたいせい)のコンセプトに違和じる。ずっとボスのターンをガチでやっているあの技を潛り抜けて攻撃、というのは難しい。仮に大人數で袋叩きにするのが攻略として正解だとしても何か違う気がする、拠はないがこういう時の勘は信じた方が上手くいく。

となればやはり最有力説はあれをどうにかしてけて生き延びる(・・・・・・・・)ことだ。

「……パリィか」

それもクリティカルを出すレベルのベストタイミングで弾かなければならない。斷風(たちかぜ)程でないにしろ、見てから対処することが困難な速度で振り下ろされる太刀を、だ。だがそれだと別の問題が発生する。

「あれ……弾けるのか?」

パリィだって萬能ではない。クリティカル功率はけ手のタイミングや角度の他に攻め手の攻撃のパラメータも関係してくる。

がなんの問題もなくくのであればをひねるなりの補強をれていなすことは出來ただろうが、下手にかして回避認定されればパリィの功率は限りなく低くなるだろう。

つまり俺はその場で踏ん張ってあの太刀を弾かなければならない……が、下手なパリィでは力負けしてそのままぶった斬られるし、そもそも裝備破壊効果が付與されたあれを素直にけ止めればこっちの武が破壊される。

「考えられる最善、必要な要素は……あと三つ」

足元の白熱から飛びのきつつ、俺は辺りを見回す。どうき、どう転がり、どう跳ぶのか、頭の中で即興でチャートを作り出し、俺は行を開始する。

あと二分、耐えきれるか……?

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