《シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜》ケジメとオーバーキル

予約投稿ミスぁぁぁぁぁ! しゃーないのでそのまま更新します

なんだあれ、オルスロットとかいうペンシルゴンの弟がボロ雑巾みたいにボコられて消えた……もはや憐れみしかじないレベルでフルボッコにされた阿修羅會殘黨達が消失し、その場に大量のアイテムが散する。

「あーあー、阿修羅會の保有してたアイテムをこんなに溜め込んで、夜逃げかっての全く……」

ため息と共にオルスロットがいた場所に落ちていたなにやら禍々しいオーラを放つ剣を蹴り飛ばすペンシルゴン。

ウェザエモンと戦ったフィールドから匿の花園へと戻る前、十中八九待ち構えているだろう阿修羅會をどうするのかという問題に対してペンシルゴンが提案したのが、「強いフレンド呼んでなんとかして貰おう作戦」である。

なんの因果か偶然にもシャンフロでもトップクラスの個人(プレイヤー)でもあるサイガ-0氏とフレンド登録していた俺が救難信號とやらを出す事になったのだ。ほぼノータイムでやってきたサイガ-0氏には謝しかないわけだが、あまりにレスポンスが速すぎてちょっと引く。

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「えぇと……」

「あー、サイガ-0さん。わざわざ來てくれてどうもありがとう」

「い、いやっ、気にしなくて……いい。それよりも……ユニークモンスター討伐……おめでとう、ございます」

あぁ、GMアナウンスで派手にバラされてたからな……おでますます表通りを歩きづらくなってしまった。もうそこらへんは諦めるかな、ラビッツという避難場所がある以上そこまで焦る事でもないだろう。

直接的な問題であった阿修羅會もペンシルゴンが潰してしまったわけだし、オルスロットも今しがたサイガ-0氏によってボロ雑巾と消えた。

俺とサイガ-0氏の間に沈黙が降りる。どうしよう、「もう呼び出した用件は終わったので帰っていいですよ」とは言いづらいし、何かしらお禮とかした方がいいだろうか。

「あー、サイガ-0ちゃーん? 來てくれたところ悪いけどもう一つお願いがあるんだけど、いいかな?」

「……なんだ?」

無理してやってるが半端ないぶっきらぼうな口調でペンシルゴンへと振り返るサイガ-0氏。ペンシルゴンは何でもない風に、至極あっさりと告げる。

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「ついでに私のこともキルしてもらえる? 報酬は再誕の涙珠二つを含んだ今(・)私の持ってるアイテム全てとここに落ちてる阿修羅會が保有してたレアアイテム全てで」

「……いいのか?」

「いいのいいの、私だけノーリスクなんて愚弟以下のマンチキンだし? いい加減PKも飽きて來たからここらでスパッと罪を清算しようかなってね」

確かPKKされた場合のペナルティは自の全アイテムの沒収、及び莫大量の罰金だったか。小っ恥ずかしい異名がつけられるくらいPKし続けていたペンシルゴンが一どれだけのペナルティを負うのかは想像もつかないが、ペンシルゴン曰く最初から決めていたことらしい。

「とはいえ、私もプレイヤーキラーの端くれ、首切り介錯を大人しく待つほど良い子ちゃんじゃなんだないわけでぇ……」

オルスロットが持っていた剣を拾い上げ、サイガ-0氏へと突きつけながらペンシルゴンは宣戦布告(おねがい)する。しばし悩む様子を見せるサイガ-0氏だったが、チラリとこちらを見た後、靜かに頷く。

「……分かった。廃人狩り(ジャイアントキリング)が相手なら、こちらも本気で行く」

サイガ-0氏は背負っていた漆黒の大剣……明らかに人の手だけで作れるようなものではない、何か人知を越えた力が形になったような強大な力が無理やり剣の形に押し込められたような大剣を構え、靜かに唱える。

「魔王天帝(サタナエル)……反転、天帝魔王(サタン)」

瞬間、大剣が脈打つように鳴する。大剣の剣先から徐々に白くが、質が、質が塗り変わって輝く純白の大剣が現れる。先程までの禍々しさなど欠片もじさせない、神々しい刃が月けて靜かに輝く。

であるならば邪悪な漆黒は消滅したかといえばそうではない。剣が輝きを増す中、大剣から放逐された黒はサイガ-0氏本人へ侵食する。白金の聖騎士然とした姿が黒く染まり、その形狀までもを歪めて行く。その姿は聖なる騎士とは程遠く、邪悪そのものな魔王じみた印象を強くじさせるものだ。

「これが噂に名高い最大火力(アタックホルダー)のユニーク武、「神魔の大剣(アンチノミー)」か……反転まで見せてくれるなんて太っ腹だねぇ」

「姉さ……ゴホンゴホン、団長から貴のことは聞いている。油斷しているとロクな目に合わないし、すぐ逃げるので見つけ次第一撃で確殺しろ、と」

「私はゴキブリか何かか」

「「ぼっふぉあ!!」」

全くもってその通りな評価から本人から繰り出されたあんまりな例えに思わず噴き出す俺とオイカッツォ。

「ちょっと待ってて、先にこいつらぶち殺すから……よぉし最後のPKおねーさん頑張っちゃうぜぇ」

「誰だやつに武を持たせたのは!」

「サイガ-0だっけ?はやくその危険人をボコって!」

「え、えぇと……」

どうにも俺達の蕓風に慣れていない様子のサイガ-0氏であったが、ペンシルゴンが剣を構えたことでサイガ-0氏もまた戦闘勢をとる。

「………「ハイエスト・ストレングス」「業魔の抱擁」「雷閃華」【エンチャント:ヴァー・ミリオン】……「カタストロフィ」」

「うわぁ、なんだあれ……」

オイカッツォが絶句する気持ちもよく分かる。なんというか、悍ましいレベルで強化が施されて行くサイガ-0氏の姿はもはやプレイヤーのそれではない。完全に悪魔とか魔王とかそういう類のモンスターだ。それはもう、強制レベル制限という縛りさえなければ墓守のウェザエモンと正面きって戦えるのでは? とすら思えるほどに。

「ふぅー……確か起呪文は「を啜れ、を喰い千切れ、死を噛み締め命を吐き捨てよ。汝は殺戮者、の山で高らかに謳え」……だったかな?」

ペンシルゴンがそう唱えると、持っていた元オルスロットが所持していた剣が比喩ではなく脈打つ。何やら生的な雑多に牙の生えたのようなものがペンシルゴンの右腕に食らいつき、刃をドス黒く染めてその形狀を変形させて行く。

「うへぇ、悪趣味ぃ……」

そして出來上がったのはなんというか……釘バットを真っ平らにしたような、至る所から牙が飛び出した剣と呼ぶにはあまりに歪な何か。

「さぁ、いざ尋常に勝負といこっか」

「………いつでも、どうぞ」

「んじゃあ遠慮なく……「シリアルキラー」、【影絵の嘲笑】、【エンチャント:ヴォーパル】、「マサクル・バイト」!」

右腕と一化した剣を構え、ペンシルゴンが飛び出す。蛇行に近い不規則なきでサイガ-0氏に近づいたペンシルゴンはサイガ-0氏が剣を振り下ろしたタイミングで急制、真後ろへと回り込んで剣を突き出す。

しかしその一撃はサイガ-0氏の漆黒の鎧を覆う黒い靄のような何かに阻まれ、鎧そのものには屆かない。サイガ-0氏は振り返りながら剣を振り薙ぐ。ペンシルゴンは純白の大剣から逃げようとするが、黒い靄が剣に絡みついたことで一手出遅れる。

「くぁ……!」

「イグジスト・レクイエム」

手が剣と融合していたからこそ、靄に剣が摑まれた事で逃げ損ねたペンシルゴンの右腕が斬り飛ばされる。

強制的に剣をから分離させられたペンシルゴンは後ろへと飛び退くが、何かに押さえつけられたようにそのきからは彩が欠けている。ペンシルゴンは右腕が飛んだ程度であそこまでパフォーマンスが落ちるようなメンタルはしていない。つまりはサイガ-0氏が何かしらの干渉をしていると考えていいだろう。

「……これで、終わらせる」

「ははは、やっぱ私程度じゃレベル差を覆すのは難しいかぁ……とはいえ、この場所(・・・・)でヘタれた真似はできないんだよねぇ!」

ペンシルゴンは一度だけ匿の花園に鎮座する、枯れ果て命を失った枯れ木に視線を向けたかと思うと、右腕も武もない一つでサイガ-0氏へと突撃を敢行する。

「………だったら、とっておき。相反する摂理、反発すると闇、拒絶を否定し、斷たれし運命をい繋ぐ。我がに染まり闇に浸る、混沌よ世界を喰らえ……【ケイオス・ヴォイド】」

一閃。サイガ-0氏がやったことは左腕で毆りかかったペンシルゴンに対して、すれ違いながら剣を橫薙ぎに振っただけ。だがただそれだけのことで、ペンシルゴンの上半は綺麗さっぱり消失していた。そして上半を失った下半もまたすぐさまポリゴンとなって消滅した。

「…………」

「えー、ちょっとタンマ」

俺とオイカッツォはサイガ-0氏から距離を離し、ヒソヒソ聲で相談を開始する。

(え、どうすんのこれ。思った以上にえげつねぇ方法でペンシルゴンが消し飛んだんだけど!?)

(コミュ力お化けのペンシルゴンがいなくなったらアレとどうコミュニケーションとればいいのさ、サンラクのフレンドでしょ何とかしてよ!)

(俺の作戦を読んで待ち伏せした挙句に突如フレ申請送ってくる相手だぞ!? 俺の中ではまだ危険人扱いですけど!!)

(ふぅー……よし分かった、先ずは俺がプロゲーマーとしてのコミュちからを見せてあげるよ)

(こみゅちから)

相談終了。いつの間にか白金の鎧に戻っていたサイガ-0氏に若干引きつった笑顔のオイカッツォが話しかける。

「あー、えー……と。ぺ、ペンシルゴンを一撃とは驚いたよ! それがハイレベルプレイヤーの実力ってやつ?」

「…………その、ユニークスキルとか、多いので……全員がそうという、わけでは……ない」

「どんなスキルとか教えてもらったりとかは……」

「……それはちょっと」

「あー…………」

こちらへと戻ってくるオイカッツォは、無言で俺の肩を叩く。

「ごめん、俺のコミュちからはゴミだったらしい。何かコミュ力を鍛えられるゲームを教えてしい」

「ラブクロック」

「ピザ留學じゃねーか!」

不用意に甘い言葉を投げてフラグを立てると尋常じゃなく面倒だという事を教えてくれるゲームだよ。とはいえオイカッツォがプロゲーマーのくせに予想以上にコミュ障だったので仕方なく俺が出る。

「あー、なんだ、その……ペンシルゴンのワガママに付き合ってもらってありがとう。あいつも言ってたけどそこらに落ちてるアイテムは全部け取ってください」

「…………………その」

「はい?」

「ヒトツ、オキキ、シタイコトガ」

「あっはい」

いきなりボイスに加工がったのかと思えるほどく平坦なロボットボイスに後ずさりそうになる足を叱咤しつつ、俺はサイガ-0氏の質問を聞く。

「……その、あの、ペンシルゴン…氏とは、どういった、ご関係で……?」

「ペンシルゴンと? うーん……ゲーム友達?」

友達と呼ぶには々裏切りゲバが多すぎる気がしなくなくなくもないが、まぁ結局のところ俺、オイカッツォ、ペンシルゴンの誰かがゲームやろうぜと言えば殘り二人が乗る辺り、やはりゲーム友達と言っていいだろう。

「そ、そうですか……友達、トモダチ、フレンズ…………………」

俺の中で「サイガ-0氏「バグったNPC」説」が現実味を帯びてきたのだが、流石にそんなことを聞くのは失禮というものだ。言葉をわすだけでウェザエモン戦の如きプレッシャーをじるので地面にぶちまけられた諸々の武アイテムなどなどをサイガ-0氏へと渡していく。

と、最後に元オルスロットの、そして先程までペンシルゴンが使っていた気悪い剣を拾い上げたところで、サイガ-0氏のが何やら白いに包まれる。それはサイガ-0氏がここへ転移してきた時の魔法陣のに似たもので、足先から消えつつあることからどうやら帰還系のシステムが発したらしい。正直助かった。

「あ…………もう、時間……」

「え、あー、じゃあ改めまして、この度は助けてくれてありがとう。このお禮はいつか」

「そ、その、でしたら、機會があれば……その、是非いっし……」

パヒュンッ、とサイガ-0氏の姿が消失する。渡しそびれた気悪い剣を持ったまま俺はそれを見送ることに。

「……オイカッツォ、これいる?」

「なんか生臭そうだしいらない」

「とは言えここに捨てていくのもなぁ……しゃーない」

片手で扱うには々重いし、なによりなんかヌメヌメして気持ち悪いので正直インベントリにれたくもないが所詮データと割り切って自のインベントリへと突っ込む。

「じゃあ帰るか」

「そうだね、あー今日はぐっすり眠れそうだよ」

「ぐっすりというかぐったり昏睡の間違いじゃねえか?」

「違いないね」

とはいえ、俺は行くところがあるしサードレマで別れることになるかな。

ケイオス・ヴォイド

者よりもレベルが低い対象を問答無用で即死させる。即死効果ではなくダメージ判定時に「その時點の力と同等のダメージを與える」というもの

者とレベルが同等、及び発者よりもレベルが高い相手に対しても幸運判定を強制し、失敗した場合「汚染」狀態となる。高位の浄化魔法を用いない場合、一分以に即死する。

當たり前といえば當たり前だがボスクラスのモンスターや浄化に特化した職業のプレイヤーであればそう大した脅威ではない、効果が効果なので修得條件は「PKを行っていない者」、かつ「PKをした時點で自滅する」という制限付き

アクシデントでPKしてしまった場合(フレンドリーファイア)でも容赦なく自滅させるので実は結構デリケート

主人公にいいところを見せようと起したらドン引きされたでござるの巻

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