《シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜》帰還のKing Fisher

多分一週間経過したと思うんで更新再開します(斷癥狀)

かつて、世界に最初の巨人が落ちてきた。

暴れ狂う異形の巨人は當時の先進國の首都で腕を振るい、吐息を撒き散らし、のたうち回って最後はぜて死んだ。それを口火に世界各地に次々と落ちてきた巨人は人類の文明そのものを半壊させるに至った。

誰が一番最初であったのか、それは定かではない。だが、今がある以上確かにそれは実在した。

巨人と人間(・・・・・)との融合(・・・・)。巨人の心臓部にり手(パイロット)が融合する事で、人間は巨人の力とを得た。第一次ネフィリム大戦、今はそう呼ばれる人が駆る巨人と狂える巨人との戦いから二百年と幾ばくかが過ぎた頃、人類の文明は巨人をシステムとして包するに至った。

巨人を資源(・・)と見なし、企業形態の社會システムを構築する事でこの星で最も覇者に近いと謳われる「ネフィリム・カンパニー」。

巨人を崇拝(・・)し、「教皇」をトップに巨人を駆る「聖騎士」達が異端者を狩る「天人教」。

巨人の殲滅(・・)を掲げ、自陣営全ての巨人に自裝置を取り付けた上で他陣営に無差別に攻撃を仕掛ける「ジャイアント・キリング」。

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今や世界はこの三つの勢力が均衡を保つ事によってり立っていた。

「オハヨウゴザイマス、ルスト様」

「………ん」

早朝五時、機械音聲の挨拶に対して適當に挨拶を返した彼は己の機が格納されたドッグへと向かう。転送裝置に乗り、一瞬のホワイトアウトを経たは格納庫で靜かに佇む深紅の地に薄く明滅する炎のペイントが施された奇妙な形をした巨人を見上げる。

「緋翼連理(ヒヨクレンリ)」と名付けられたその巨人はこの世界において自稱ではない、事実として「最強」の稱號を持つ彼を象徴する機人(ネフィリム)である。

ベースとなる「ネフィリム」は中型二腳、右肩にレーザーガトリング、左腳にはミサイルポッドを搭載し、両腕は腰にダッキングしたレーザーブレード、及び実ブレード一対二組合計四本を使い分ける形で戦う、近距離戦闘を主とした機である。

最大の特徴として背中のブースターのみならず、左肩と右腳に裝備された追加ブースターにより不規則かつ予想が困難な機を可能としており、それを完璧に使いこなしている事実が彼を最強たらしめている理由だ。

「あ、おはようルスト。今日も早いね」

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「……モルド、五分遅い」

と、本來は彼のみしかれないはずのその場所に、一人の年が現れる。格自はがっしりした偉丈夫であるはずなのだが、のこなしや歩き方から弱な印象を抱いてしまう。そんな見た目にそぐわぬなよなよしさを発する男は、見た目よりも數段若い聲でへと聲をかける。

「五分くらいは見逃してくれても……あ、ハイなんでもないです」

「早速、潛るよ」

「はいはい……今日はどのルールでやるの?」

早朝五時から七時の間に必ず現れることから「早暁の王」、なんて恥ずかしい名前で呼ばれているに男は肩をすくめると、自の相棒たるに戦いの詳細を問う。

「今日は決闘(デュエル)の気分……」

「それ僕いらなくない? 一対一だよね?」

や初見の解析……それは貴方の役目」

「仰せのままに……ちょっと待ってて、今から支援人形(パペット)のメンテをするから……いてっ! いててっ! 脛はやめて脛は!」

人(ネフィリム)に搭載することでオペレーターの支援をけることができる小型ネフィリムとでも言うべき支援人形(パペット)のメンテナンスが終わっていないと言う事実にのローキックが男の脛へと刺さる。

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「そういうメンテは事前に終わらせるもの……!」

「き、昨日は部活が遅くまであったんだよう!」

「むう……」

渋々、と言った様子でローキックをやめたに、男はやれやれと苦笑じりのため息をついて支援人形のメンテナンスを進めるのだった。

「ネフィリム・カンパニー」、り手(パイロット)エントランスを訪れたルストとモルドは、他のり手(パイロット)やオペレーター達が何やらざわめいている事に気付く。

「どうかされたんですか?」

「ん? おおっ! 不死鳥(フェニックス)じゃねーか! 丁度いい、見ろよあれ!」

不死鳥《フェニックス》、それはかつて彼、ルストと緋翼連理(ヒヨクレンリ)が全ての機人(ネフィリム)の頂點の座を五度防衛した際、「ネフィリム・カンパニー」最高経営責任者(CEO)より多額の賞金と共に賞與として贈られた、彼のみが使用することを許された特殊機塗裝(ユニークペイント)の名から取られた彼の異名である。だが、今この場をざわめかせているのはそれではない。彼らの視線は、今現在繰り広げられている戦闘を映したホログラフィックモニターに向けられていた。

「あれは……」

「……「キングスギャンビット」、ランキング三位「へっぽこナイト」の機人(ネフィリム)」

大量の索敵レーダーと超遠距離裝備を搭載した構築は最速で敵を捕捉した上で全力で敵との距離を維持しつつ、遠距離から一方的に攻撃を叩き込んで相手を仕留める……名前の通り常に先手と有利を得た上で攻撃を行う「先行攻撃型(キングスギャンビット)」の機である。

一対一という條件であればこれ以上ないほどに厄介な構築をしている機人(ネフィリム)。無論ランキング三位の実力はそれだけではなく、相手との距離を維持する逃げ隠れのテクニックもさることながら、距離を詰められた際の対処も心得ているからこそのランキング三位。その実力はランキング一位のルストをしてそうやすやすとは倒せない実力者。

そのキングスギャンビットが、なすなく躙されている景が、ホログラフィックモニターにまざまざと映し出されていた。

「また當たった! 今度は頭部センサーだ!」

「噓だろ……互いに高速機中だぞ? それも単発式のスナイパーレールガンなんて産廃で狙い撃ちとか……化けかよ」

「見ろよ、キングスギャンビットの攻撃が追いついてない。ホーミングミサイルを振り切るってどんだけの速度出してるんだ……?」

「というかなんだよあの辻斬り。音速飛行を維持したまま変形して、キングスギャンビットをぶった斬ってまた変形して逃げるって……平衡覚ぐちゃぐちゃになるだろ普通」

「一時期流行ったネタビルドじゃないのかよあれ、やべぇ……」

よく注視しなければ、キングスギャンビットが空中分解しているようにすら見える景。だがよく見ればそれは、映像を撮影するカメラが追いつかないほどの超高速機で飛翔する翡翠(ひすい)の何かがキングスギャンビットを斬り刻み、撃ち砕いていることがわかる。

「…………っ!」

「うわっ」

畫面に一瞬映り込んだ翡翠(ひすい)が、キングスギャンビットを一方的に破壊している機だと気づくのに數秒。そしてそれが塗裝によるものではなく、機人(ネフィリム)が纏うように裝著する裝(パーツ)の初期カラーの組み合わせが、偶然翡翠(カワセミ)のような合いになったことがその名の由來である機だと気づくのにさらに數秒。それに気づいた瞬間、モルドは真橫から発せられた威圧に思わず一歩後ずさってしまう。

この世界において全てはデータとシステム、虛像でしかない。だが確かにモルドは自の真橫で炎が発生したかのような圧をじた。

「戻ってきたのか、「キングフィッシャー」……!」

「キングフィッシャー?」

「ああ、新參は知らねえのか、確か不死鳥(フェニックス)が二度目のランキング戦首位防衛戦の時だったか、その時にいきなり現れたのが奴だ。あの裝備そのまんまでランキング最下位から全戦全勝(・・・・)して不死鳥(フェニックス)相手に引き分けた怪……そのあとぱったりってこなくなったから引退したものだと思ってたが……」

古參のり手(パイロット)が數ない新參へと説明しているのを傍目に、モルドはルストに引き摺られるようにしてマッチングルームへと連れて行かれる。

「モルド、今すぐキングフィッシャーに挑戦狀……!」

「わ、分かったから服引っ張らないで!」

オペレーターとしてモルドは「キングフィッシャー」へと挑戦狀を送る。暫くして、キングスギャンビットの敗北で試合が終了したのだろう、キングフィッシャーから挑戦狀の諾を伝えるメッセージが屆く。

「來た! 諾されたよルスト!」

「モルド、本気で行く」

「了解!」

キングフィッシャー。そのあまりにハイリスクハイリターンなピーキーすぎる機構築と、それを用いてキングフィッシャーがし遂げた記録は、期間にして二日ほどのみの活躍でありながら、今尚機ビルドのレシピが殘る「変形型」機人《ネフィリム》である。

特筆すべきは武裝と裝甲の殆どを犠牲にしてまで優先された化けじみた機力(・・・)である。武裝は右腕の排熱転換ブレード「超熱棒(オーバーヒートロッド)」と、左腕に搭載された単発式スナイパーレールガンのみ。裝甲は超高速機に耐えうる限界を維持した最低限のものという極めて脆弱なもの。AIから武裝と裝甲のなさを心配されるレベルのピーキービルドである。

腳に至っては歩行を放棄したブースターそのものと一化した「噴腳」と呼ばれる特殊なタイプであり、の鳥の翼を思わせるウィング及びブースターも合わせて、航行形態時の速度は検証者によれば理論上はあらゆる機人(ネフィリム)の中でも最速を叩き出していると言う。

「速さ」のためにそれ以外のほぼ全て……地上に立つことすら犠牲にした「翡翠(カワセミ)構築(ビルド)」と呼ばれるそれは、「當たらなければどうと言うことはないが、速すぎてこっちの攻撃も當たらない上に燃費が悪すぎて失速したところを撃墜される一発屋」という評価が下されたネタ構築……だがそれはあくまでも「キングフィッシャー」以外の話である。

『左後ろ……違う、右上!? あっ、撃った! 真正面!!』

「ぐ……」

緋翼連理(ヒヨクレンリ)と融合したルストは超高速で飛翔するキングフィッシャーから偏差撃で放たれ、ほぼ誤差なく肩の付けを狙う電磁加速された弾丸を回避する。

『急降下! 超熱棒(オーバーヒートロッド)が來る!』

「それは予想済み……っ!」

ガトリングとミサイルを解放し、対空防を行う緋翼連理(ヒヨクレンリ)だが、曲蕓じみた機で下から上へと放たれた攻撃の雨を掻い潛ったキングフィッシャーが人の形へと変形する。

その右手には機に蓄積された熱を武裝に転用する質上、一定時間排熱をチャージしなければ使えないものの當たれば一撃で大ダメージを與えることが可能な白熱するブレード。すれ違いざまに振るわれた超熱棒であったが、ルストは左肩と右腳のブースターを用いた変則機でそれをかろうじて回避する。

「モルド! キングフィッシャーは!?」

『噓だろ……!? そのまま(・・・・)切り返してきた(・・・・・・)!』

接地(墜落)する寸前、地面ギリギリの位置で変形から噴腳の連続使用で宙返り(・・・)したキングフィッシャーは再び航行形態へ変形し、落ちてきたルートをそのまま上へと飛翔する。人のでやろうものなら平衡覚が完全に狂うようなそれを強行したキングフィッシャーが不安定な姿勢の緋翼連理(ヒヨクレンリ)へと迫る。

『ルスト!』

「なめる……な!」

左肩のブースターがオーバーヒートする勢いで無理矢理機を回転させ、その勢いのまま下から上へ急襲を仕掛けてきたキングフィッシャーの攻撃をレーザーブレードで迎撃する。かたや超高速の突進の勢いを殺しきれず吹き飛び、かたや貧弱かつ軽量な裝甲ゆえに激突の反で吹き飛ぶ。

『左肩ブースター、オーバーヒート! 冷卻まで三分!』

「奴は!」

勢を立て直してる!』

「攻めるなら今しかない……!」

距離を詰めんと全力で飛翔する深紅の不死鳥(フェニックス)。勢を立て直し、レールガンを構える翡翠(キングフィッシャー)。二羽の鳥が激突する……!

大丈夫です、この作品はちゃんと「シャングリラ・フロンティア 〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜」で合っています。

言わなくても解る方は解ると思いますが、元ネタは戦い続ける歓びのアレです。

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