《シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜》お使いと育と攻略と
「んー……わちぁ「古匠」にゃあ屆いとらんけ、これを直すこつは無理じゃけぇの」
「そうか……となるとヴァッシュの兄貴にお願いするしかないか」
「たわけっ!」
「ひばし!?」
脛に金屬の棒は駄目だろう……! 駄目だろう……っ! 弁慶だって泣くんだぞ!?
脛を抑えて悶絶していると、怒っていますと全でアピールするビィラックがべしべしと俺の頭を叩く。しれっとエムルは頭の上から退避してやがった。
「なんでもオヤジに頼るんじゃない! オヤジやてワリャに構ってばかりじゃないけぇ!」
「え、あー、すんません」
ヴァッシュも大概ランダムエンカウントだ。毎度兎殿にいるわけではない、それにビィラックに怒られた以上今すぐヴァッシュに頼ってこれを修復するのは困難だろう。好度が落ちる予がする、クソゲーで鍛えられた俺の地雷(フラグ)を嗅ぎ分ける直は八割當たる。
「さーてどうすっかなぁ……」
「どうするんですわー?」
「んー、久し振りに攻略進めてもいいけどなー」
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さてどうしたものか、とりあえず特技剪定所に行ってスキル整理しつつ大量獲得したポイントを割り振っちゃおう。
————————————
PN:サンラク
LV:78
JOB:傭兵(二刀流使い)
4000マーニ
HP(力):40
MP(魔力):50
STM (スタミナ):100
STR(筋力):70
DEX(用):70
AGI(敏捷):90
TEC(技量):65
VIT(耐久力):2
LUC(幸運):104
スキル
・無盡連斬
・グローイング・ピアス
・インファイトLv.MAX
・ドリフトステップ
・セツナノミキリ
・ハンド・オブ・フォーチュンLv.6
・グレイトオブクライム
・クライマックス・ブーストLv.9
・六艘跳び
・リコシェット・ステップLv.1
・ヘイト・トランプルLv.1
・ムーンジャンパー
・孤高の狼(トランジェント)
・オフロードLv.2
・致命刃【水鏡の月】參式
・イグニッションLv.1
・オーバーヒートLv.1
・ニトロゲインLv.1
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・デュエルイズム
裝備
右:兎月【上弦】
左:兎月【下弦】
頭:凝視の鳥面(VIT+1)
:リュカオーンの呪い
腰:無し
足:リュカオーンの呪い
アクセサリー:格納鍵インベントリア
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素晴らしい、スタミナと幸運がついに三桁の大臺に到達したぞ。今後インベントリアを使うことも考えてMPなどの數値にも手をれたが、もはや俺はまごう事なき幸運戦士と言えるだろう。VIT先輩は貫祿の一桁、裝備品で補強すれば四桁は見込めそうなステータスの気配がするのに一桁を維持し続けるそのガッツは敬意すらじる。いや、やったのは俺だけど。
「ご一緒にぃ、スキルの伝書はいかがですかぁー?」
「お金が貯まったらな」
「ぷぅ」
ぷぅ、じゃないよぷぅ、じゃ。隙あらば何か買わせようとしてきやがるなこの兎。
今回のスキル整理はほとんど弄らない事にした。オプレッション・キックにアサシン・ピアスを混ぜたらヘイト・トランプルなるなかなか面白いスキルが生まれた事くらいか。怯み狀態の相手に使えばヘイトを大量に集めることが出來る、というのはヘイト管理的観點からしてなかなかに優秀だ。致命刃【水鏡の月】、ヘイト・トランプルという真逆のヘイト作スキルを得ることが出來たのはありがたい。
いくつか得た新しいスキルは効果を検証しつつ育てていくじで……ん?
「育てる……育……そうか、無いなら集めればいい、手にれればいい、育てればいいのか」
そうだよ、ヴァッシュに頼れないなら現狀頼ることが出來るのはビィラックくらいしかいない。ビィラックは「名匠」の職業しか持っておらず、「古匠」の職業技能がなければエーテルリアクターは修理できない。
だがビィラックは未だ修行中のと何度か言っていた、つまりそれはビィラックというNPCには「名匠」キャラとして固定されたキャラクターではなく條件を達すれば長(・・)する可能があるのではないだろうか。
「エムル、予定が決まった」
「なにをするんですわ?」
「名付けて「ビィラック育計畫」……!」
「と、いうわけで「古匠」ジョブ取りに行こうぜ」
「何が「というわけで」なんじゃ……」
先ほど叱った相手が意気揚々と「無いなら取りに行こうぜ!」とか言い出したら俺も多分今のビィラックと同じ顔をするだろう。巨大な金槌を肩に乗せ、が黒くてよく分からないが頬についた煤を拭うビィラックは俺の言葉に呆れたような顔をする。
「むぅ……オヤジに頼れんならわちを古匠にする……理にゃ葉っとるが……」
「別に神匠になれと言ってるわけじゃない、だがいつかは通らなければならない道だろう?」
「ううむ……」
クルンクルンと人間が使うショートソード程はある金槌を回しながら考え込むビィラック。エムルやエルクのような現実の兎とほぼ同じかし大きい程度ではなく、俺の背丈の半分はある大きさのビィラックがそれを振るうとまるで大剣を振り回しているようにも見える。
「……うむ、わぁーった。ワリャの案に乗ってやるけ」
「グッド、実にグッドだ」
ビィラックが承諾してくれたことも、ビィラックというNPCに「古匠」適があるということも、どちらもグッドだ。
「どうせワリャは知らんじゃき、わちがオーダーを出しちゃる。エムル、地図ぅ持ってき」
「は、はいなっ!」
數分後、何やら魔法ではない、一般的な意味でのスクロールをエムルからけ取ったビィラックは、金床の上にそれを広げる。
「ええけ? 「古匠」になるにゃあな、二つ必要なもんがある」
「というと?」
「まず一つは神代の産……「機裝(レガシーウェポン)」。武を扱う職業ち、機上(きじょー)の空論(くーろん)じゃ鉄は打てん」
ふむふむ。
「そしてもう一つ、オヤジ曰く……「マーリョークウンヨーンユーニット」っちゅーものが必要になるらしいんじゃ」
厳かに必要となるアイテムの名を唱えたビィラックだが……何か引っかかるな。マーリョークウンヨーンユーニットー?
まーりょーく……うんよー……ゆーにっと……まりょく、うんよー、ゆにっと……
「……それ、もしかしなくても「魔力運用ユニット《マリョクウンヨウユニット》」じゃね?」
「……………………そうとも言うかもしれんな」
いや絶対そうとしか言わないって。なんだよマーリョークって、ニューヨークの姉妹都市か何かか?
「と、ともかくじゃ! 「古匠」になるためにゃあな、「稼働する機裝(レガシーウェポン)」と「マリョクウンヨーユニット」が必要なんじゃ!」
「稼働するレガシーウェポン? ってのはこれでいいのか?」
ゴトリ、と金床に広げられた地図の上に格納鍵インベントリアの格納空間の中から適當に選んだ「規格外武裝:太刀型【ハービンジャー】」がオブジェクト化する。今はエネルギーが通っていないのか暗くくすんでいるが、その蒼い刀は多の違いはあれど間違いなくあのウェザエモンが使っていたものと同型の武裝だ。
「んー……ん? んん……?? んんん!? んんんあ!?」
凄い、驚異の五度見だ。プルプルと震えるモコモコした手で【ハービンジャー】に軽くれたビィラックは、それが幻覚ではなく本であると理解したらしい。
「ワ、ワリャ、こここ、これ……」
「ウェザエモンを倒した時にちょっとな。レガシーウェポンってのがこれも該當するかは分からないし、さっき俺が見せたエーテルリアクターを修復しないと稼働しないが……」
「……「古匠」になる為に稼働する機裝《レガシーウェポン》ち必要になるんは神代の技を識る(・・)ためじゃき。稼働する、ってのは「仕組みを理解できる程度には部品が殘っている」っちゅー意味じゃ。ほぼ新品のこれならなんの文句もない!」
「そ、そうか……」
今にも跳ね回りそうなビィラックにどこかデジャヴをじつつも、俺は【ハービンジャー】をインベントリアに戻す。
「分解(バラ)すならあいつらの承認がいるからなぁ……」
クランを結した後、々調べた検証の結果分かったことがある。このインベントリアの格納空間は「共用」なのだ。なくともあの時ウェザエモン戦で手したインベントリアは全て同じ格納空間に繋がっていた。つまり非常に面倒なことに、インベントリアに最初からっていたアイテムは俺、オイカッツォ、ペンシルゴンの三人に所有権がある。
恐らく個人が取り出して使用するだけならまだしも、売卻や破棄をする場合は俺だけではなく他二人の承認も必要になるという厄介なシステムだ。
「うむむ……も、問題はもう一つじゃけ。オヤジ曰くマリョクウンヨーユニットはここ……「去栄(きょえい)の殘骸道(ざんがいいどう)」にあるらしい」
「去栄の殘骸道……」
その名前はビィラック育計畫以前に俺にとっては無視できない名前だ。いや、この場所ではなく厳にはこの次(・)のエリアに用があるのだが、どちらにせよこのエリアは攻略の必要があった。
ユニークシナリオEX「致命兎(エピック・オブ・)敘事詩(ヴォーパルバニー)」、その次の段階へ進むに當たってヴァイスアッシュより課されたお使いクエスト。
・信裝置Δ(デルタ)
・座標裝置Δ(デルタ)
・送信裝置Δ(デルタ)
これらのアイテムを集めて來いと言われ、どこにあるのかと問うたところ帰ってきた言葉が「無果落耀(むからくよう)の古城骸(こじょうがい)」……マップで言うのならば現狀、いやアプデ前までの攻略最前線の拠點とされていた十五番目の街「フィフティシア」。そこへと繋がる四つのエリアのの一つであり……「去栄の殘骸道」を超えた先の街「イレベンダル」から挑む事になるエリアなのだ。
「なんの因果か、フォスフォシエから直通ときたもんだ」
ヴォーパルバニーの手で作られたのか、サードレマで見かけたものよりも詳細に書き込まれた地図を改めて確認し、目下の目的とこの先の目的を含めてどうくかの予定を立てる。
「とは言ってもフォスフォシエから真っ直ぐ進むだけか」
他のエリアに興味がないわけではないが、目的の為に最短を行くのであれば目的地にたどり著く為、次に攻略すべきはフォスフォシエから続くエリア……「奧古來魂(おうこらいこん)の渓谷(けいこく)」だ。
「だが問題はどうやって兎二匹を連れてフォスフォシエを抜けるかだな……」
流石に白頭巾で街中を駆け回るのはやる気が起きないし、どうも人間に変化(へんげ)する例の魔法も喋るヴォーパルバニーなら全員が使えるワケでもないらしい。
「またマフラーのをやるですわ?」
「わちも久しぶりにファーコートのをやるけぇのう……」
ブルータス、お前もか。
うーん、どこかで今現在のマップ描寫をれたいけど文章が無駄に長くなっちゃいそうだしいっそのこと挿絵にしちゃおうか……
【完結】「死んでみろ」と言われたので死にました。【書籍化・コミカライズ】
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