《シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜》12月??日:理外を通す理あらば是即ち理外の理解に外ならぬ、とかぬちは己に言い聞かせた

書かなきゃいけない視點のどれもいまいち書くモチベが無いならモチベが湧き上がる視點を新造すればいいじゃない

鍛冶。シャングリラ・フロンティアにおいて武や防の作はNPCに委任するものではない。

プレイヤー自が裝備を作し、強化し、進化させ……さらにその先を見出す事すら可能。それはシャングリラ・フロンティアというゲームにおける異常なまでのリアリティと自由度の一部として認められ、剣を振るでもなく杖を掲げるでもなく……それらを作り出すことにこそ熱意を傾けるプレイヤーは決してなくはない。

古今東西、ハック&スラッシュ、そしてダイナミックなアクションがある種ゲームの華であることは確かだが、何かを生み出し拡張する生産を題材としたゲームもまた個々人の社會的地位や生活にもよるが”非日常”に分類されていた。

話を戻そう。

このシャングリラ・フロンティアにおける武の作は……ゲームそのものの自由度とクオリティかられることなく高い自由度を誇る。

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とはいえ、だ。やはり現実そのままの鍛冶、というわけではない。ゲームコンテンツとして「楽(たの)しく」そして「程々に楽(らく)」なある種のミニゲームのようなものだ。

まず第一にプレイヤーは作りたい武の「設計」から始める。どういった武で、どういった見た目で、どういった能なのか。その設定方法は人それぞれ、いちからデザインする者もいればあらかじめシステム側が設定したプリセットデザインを採用する者もいる。本當に珍しいパターンでは実際に現実で作ったものをスキャンしてゲームに持ち込む、なんて者もいる。

とはいえその全てが実現するようではゲームにならない。誰もかれもが掲げるだけで敵が死ぬ剣を持っていたらもはやそれは緩やかな絶のシミュレーションにはなるかもしれないが、ゲームかどうかと言われればちょっと難しいところだろう。

故に理想のデザイン、理想の能になるか否かはこの後の工程……すなわち素材の選択と実際の鍛冶の結果によって決定される。

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例えば「水屬魔法の威力が上がる杖」を作るとする。この時にそこらで採れる木の枝や、ツルハシで巖を叩いて落ちる石を使ってそれを実現しようとしたところで、出來上がるのはせいぜい木に石が埋め込まれた杖と呼ぶのもおこがましい棒のなり損ないだろう。もしも妥協無く「水屬魔法の威力が上がる杖」を作ろうとするならば……最低でも水辺、あるいは水中、あるいは地下水脈の近辺で採掘できる鉱石や、水棲モンスターの素材を使用する必要がある。そして高能をむのならば使う素材はより良いものであるべきだ。

素材アイテムにはそれぞれリソースポイントが存在し、これが武に要求される數値(ノルマ)を満たしていて、なおかつ鍛冶師プレイヤーの「鍛造」魔法のレベルも同様に要求値を満たしていれば……その手に「水屬魔法の威力が上がる杖」が生み出される。

素材が善くあれば理想の武が、素材が悪しくばデザインすらもが歪む。であるが故に鍛冶師のジョブについたプレイヤーは自ら理想の素材を手にれるか……あるいは、他者にその手を委託することで理想の武を形作る素材を求めるのだ。

とはいえ、ここまでの報は全て…………前提、基礎に過ぎない。このゲームで優れた(・・・)鍛冶師、匠の稱號を関するに至ったプレイヤー達はそれらを當然とした上でその先を……否、その果てを目指す。

前提と常識を応用する。あるいは逆説を前提と常識で肯定する。理想の裝備を作るためには上等な素材が必要で、それを加工する鍛冶師の技量……即ち鍛造魔法の習度が重要である。という事はつまり、逆に言えば……

───上等な素材と鍛冶師の高い技量があれば、理論上どんな武であっても作可能である。というさかさまの理論の証明に他ならない。

「出來た……ついに、ついについについに! 出來た! 年越す前に! し遂げたああああああ!!」

致命兎の國(ラビッツ)、兎殿のとある「工房」の中で。一人の人間が狂喜舞の歓聲を上げていた。

ひげに想のない騒な中年男の姿をしているが彼(・・)の名はイムロン。ある者は彼を「聖槌の勇者」と呼び、またある者は「プレイヤー最高レベルの鍛冶師」と呼ぶ。

かの傑作「超貓じゃらしLv.100」や名作「超過芯熱剣クリムゾン・ヒートライザー」、そのインパクトと業の大きさから今も畏怖の念を込めて語られる怪作「イムロン七大罪シリーズ」を生み出した名工、あるいは「名匠」である彼は、鍛冶師系職業最高位にして隠し最上位職業「神匠」に至る道がこの兎の國にあると考えて、素材の手以外は殆どこの國の自分に與えられた工房に引きこもるような生活を送っていた。

そんな彼が喜んでいる理由は、かねてより鍛冶師プレイヤー達に立ち塞がっていた「壁」をこの瞬間に乗り越えることに功していたからであった。

「私はッ! 限界を超えた! 見たかシャンフロ運営! 私はサーバーAIに勝った! 勝ったわあああああああああああああああ!!」

今でこそ忘れ去られ、しかしかつては全ての鍛冶師プレイヤーが一度は乗り越える事を考えた「壁」……それ即ち、「銃の作」である。

シャングリラ・フロンティアは剣と魔法のファンタジーである「現代」とロボと銃のSFである「神代」、二つの時代が混ざり合ったハーフサイエンスハーフハイファンタジーとでも言うべきゲームだ。それはチュートリアルの時點でも示唆されており、神代の殘滓が殘る跡やエリアを巡ったプレイヤーであれば一度は「銃が使えるのでは?」と考えるものだ。

結論から言えば、銃の設計図をシャンフロに持ち込んでも「パーツが作れない」という理由で銃を作ることは出來ず、結局銃火の普及はとあるプレイヤーによって神なる獣、星を泳ぐ魚たるバハムートが姿を暴かれる時を待つこととなったのだ。

そして今現在、二機目のバハムートであるベヒーモスが舊大陸にも出現したことでプレイヤー達はおおよそレベル50以上であれば容易く銃を手することが出來るようになった。

かつてあらゆる鍛冶師たちの前に立ち塞がった「銃の作」という壁は、バハムートでガンスミスライセンスを取得することで容易く乗り越えらえるものになり下がったのだ。

だからこそイムロンは挑んだ、神代文明に頼らない銃の作という難題に。砕けた破片を積み上げて再び「壁」を作り出した。今の自分ならば超えられるという自負を以て───!

「銃、という常識を捨てて銃を作る………酒をれてようやくたどり著いた境地! 神代の武ノウハウを得た上で辿り著いた原點!! あーもう、今から運営に直談判して稱號作ってもらっちゃおうかな!?」

イムロンが熱い視線を送る先、そこには奇妙なものが置かれていた。それは「銃」と呼ぶにはあまりにも………否、何もかもが足りていない。

「要するに引き金を引いたら(・・・・・・・・)なんか飛べばいい(・・・・・・・・)!! 」

あるいはそれは銃と認められないかもしれない。そもそも「これ銃じゃなくない?」と作った本人が一番思っている。だがそれでも、それは生み出された。

どれだけ使い勝手が悪かろうが、そもそも使える者がいるのかどうかも分からないような………あるいはそれを、世間一般では「失敗作」と呼ぶのかもしれない。

だがそれでも、狂気に近い熱を帯びた目をしたイムロンには勝算があった。思い出すのは悔しいが目指す頂點、「神匠」を目指す道のりを自分よりも一歩……いや二、三歩は先を行く鍛冶師のヴォーパルバニーの言葉だ。

「一見失敗したような効果だろうと、彼なら使う……使える」

テスターには心當たりがある。

金床の上に冷たく鋭く鎮座する………二丁一組のケンジュウ(・・・・・)を見つめながら、イムロンはそのテスターがラビッツに帰還するのを走った目で待つのだった。

今のヤシロバードが見たら鼻で笑うようなイロモノだし、弓使ってた頃のヤシロバードが見たら全財産渡すようなシロモノ

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