《シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜》12月17日:メラメラ・ビートアップ Part.3

エターナルゼロが投擲したもの、それは「テンパーボム」とエターナルゼロ自が設計、命名したアイテムだ。本人は至って大真面目に命名したものであり、その能も真っ當なものとなっている。

テンパー、けっして天然パーマの略稱ではなく癇癪の英訳、すなわち一種の……かんしゃく玉(・・・・・・)である。見た目は野球ボールサイズの球、起を念じて握りしめてから投擲することで著弾した瞬間に小規模な発を多発して相手にダメージを與えるものだ。一発の発はそう大したものではないが、連続して発生するダメージ判定と蓄積する怯みは敵に損傷を與える以上に効果的な結果をもたらすだろう。

とはいえ、エターナルゼロもテンパーボムで焠がる大赤翅にダメージを與えられるとは思っていないし、怯みが取れることも多分無いだろうと最初から承知の上でこのアイテムを選んだ。というのもエターナルゼロ自、視認した焠がる大赤翅の姿に違和じていたこと………そして、焠がる大赤翅を包み込むような謎の沢(・・)に思い當たる節があったからだ。

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「あれはもしや………」

豪雨の中を、若干の弧を描きながらも真っすぐに灼熱の蝶へと飛んでいくテンパーボム。それは”コンッ”とい音を立てて焠がる大赤翅に命中し………

パキキキキキキキキキキキキキィンッ!!

「なっ」

『はぁ!?』

『噓!?』

インカム越しに焠がる大赤翅を囲んでいたプレイヤー達の驚愕の聲がオイカッツォの耳に屆く。その驚愕も無理はない、焠がる大赤翅は超・超・超高溫のレイドモンスターでありそれを打ち倒すべく彼らは準備を整えて來た。なのに目の前で起きた現象はそう、

発が………凍った(・・・)!?」

さながらブドウの房のように。連鎖的に発生した発、火炎と衝撃の球形がそのまま一つたりともらすことなく完全に凍結しているのだ。

「なによあれ!?」

「えー、あー………誰か予想できる人いる?」

誰もが炎屬だと思っていた焠がる大赤翅が起こした氷屬的な現象に意気揚々と取り囲んでいたプレイヤー達も混を隠せない。その中で予想という名の答え(・・)を口にしたのは……オイカッツォ達のパーティに屬する一人のプレイヤーだった。

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『予想だけどいい?』

「ん? あー、ええと……」

『炸裂グリンピース(・・・・・・・・)よ』

インカムから複數人の噴き出す聲が聞こえた。だが當人はもはやそのリアクションは見飽きたとばかりに自の予想を告げる。

『焠がる大赤翅ってエネルギー生産と作(・・)が能力の理屈でしょ? じゃあ自分の周囲2センチくらいの熱を限界まで奪えるなら………あんなじになったりしないかしら?』

「確かに……でもそれならもっと広範囲が凍結するんじゃないの? 発が凍るのよ? 多分凍ってるのは空気? か何かだと思うけど」

『その仮定2センチにれるか踏みったものが凍結対象なんじゃないか? さっきの発で氷が削れて範囲風がったから………』

『多段ダメージっても所詮は一度の攻撃、全部まとめてアウト判定くらったとか?』

果たしてそれは正解であった。

第二形態「熱量簒奪蛹鎧(こごえるさなぎ)」、それは自の表面から5センチまでを対象とした永続する熱量吸収狀態だ。本來は自を構築するエネルギーを外部に逃さないための防形態であるが、副次的効果として範囲に侵した「熱あるもの」の溫度を無差別かつ無制限に奪い取る。

氷の鎧を纏っているのは大雨という大量の水が効果範囲で凍結したためであり、本來は不可視の凍結空間とでも言うべき代である。

「氷なら叩き割れば!!」

そう勇んで突撃していった野良のプレイヤーが數秒で氷像となって砕け散っていったのを眺めていたオイカッツォはどうしたものかと考え…………ふと、過去に自へ向けられた言葉を思い出した。

───いものを破壊したいなら同質のものをぶつけるのが一番手っ取り早いでしょ。両方とも敵勢力なら萬々歳、漁夫って賢い生き方してこうよカッツォ君。

「それぶつけた本人がぶつけられた俺らに言わなきゃもっと素直にけ取れたのになぁ!!?」

「ちょっ、どうしたのよケイ!?」

「あの氷の鎧を破壊する! けど……使うのは氷屬魔法(・・・・・)だ!!」

過去の古傷が疼く痛みで活路を見出したオイカッツォの指示がインカム越しにパーティメンバーに通達される。

『炎とかじゃないの?』

発すら凍るなら下手したら落雷も凍るんじゃないかなアレ、だったら溫度が下がっても問題ない個で叩き割ればいい!」

実のところ、この形態になった焠がる大赤翅に対して有効な攻撃は雷屬、氷屬、そして一定以上の火力の場合のみ火屬……といった特定屬の「魔法」に限定される。自のエネルギー損失を防ぐことに特化した形態であるが故に、発生する現象が凍結に固定されるためだ。

運営側にでも回らなければ知り得ない報であるが、推測と試行が結果的に正解への最短距離であることはなんらおかしいことではない。錯誤を経る事のない試行の功を人は「運が良い」と言うのだ。

「氷が割れたわよ!!」

「なんかあからさまに燃料れしてるみたいなエフェクト出てる!!」

「パーティメンバーも野良も氷屬魔法使える奴はどんどん氷の塊をぶつけまくれ!!」

「よしきた! その氷のを剝ぎ取ってやるぜぇ!!」

天を味方に、開拓者たちは猛然と焠がる大赤翅へと挑む。

だが忘れることなかれ。

「Vaooooooooooooooooooooooooooom……」

地を味方につけているのは、相手の方であることを。

いものを破壊したいなら同質のものをぶつけるのが一番手っ取り早いでしょ。両方とも敵勢力なら萬々歳、漁夫って賢い生き方してこうよカッツォ君」

停戦協定で買収したサンラクをオイカッツォにぶつけて両者が疲弊したところで「ごめーーーーん!不思議なことに何故か都合よく唐突に特定の期間の會話容について記憶喪失になっちゃったーーーーーー!!」とびながら弾を投下して二人を破した直後の臺詞

8月17日、コミカライズ版シャングリラ・フロンティア~クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす~の5巻が発売されます。

それはそれとして発行部數が百萬部を突破したらしいですよ奧さん、百萬部っていうのはつまり百萬ってことです。ミリオンですよミリオン、ミニオンじゃなくてミリオン。クイズ番組と百萬超邪くらいでしか聞かないような単語ですよ。もしくは宇宙一のカレーパン。

それはそれとして表紙で停滯と信念を文字を使うことなく表現しきったかのような超絶畫力のウェザエモンが飾っている通り、墓守編クライマックスでございます。一応シャンフロは剣と魔法のファンタジーですよ、本當です。その前にちょっと栄えてた機械文明がたまに顔を出してるだけなんです。

流石にここまで世間様から評価されると流石に自分の文章を駄文、と稱するのはちょっと憚られますが過去に自分がテンションブッパで書いたものを完璧に絵にしてくださる不二先生の畫力だけでも買う価値はあります。ぜひぜひお手に取ってみてください。

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