《シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜》12月17日:メラメラ・ビートアップ Part.4

焠がる大赤翅の思考はおよそ生的なものとはかけ離れた機械的なものであり、基本的に大局的な目的のために行する。

赤き眷族の主目的は「エネルギーの生」と「巨大構造”異”」の破壊、そして「自の保全」………この三つである。故に、どれだけ水や氷を浴びせかけられようが、それは「自の保全」に抵するがそれ以上ではない程度に収まっていた………この時までは。

焠がる大赤翅の思考はおよそ生的なものとはかけ離れた機械的なものであるが(・・・・)、だからといって何が起きたとしても主目的に殉じるわけではない。例えばそう、自のエネルギー保全を妨害する原因………主目的を妨害するものとして判斷したのであれば。

焠がる大赤翅は小蠅のようなそれらに対し、「障害排除」の名目で権能を行使することを躊躇わない。

そもそも躊躇うという、持ち合わせていないが故に。

第二形態「熱量簒奪蛹鎧(こごえるさなぎ)」………それは焠がる大赤翅の一面に過ぎない。

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主目的だけを”見”據えていた灼熱の「赤」が、敵を睨(ね)めつける。

「Vororoooooooooooooooom」

『っ! 全員注意!! なんか様子が変だ!!』

最初の聲を上げたのは彼だった、だが気づいたのはその場にいる全員がほぼ同時のことだった。

『システムからの干渉型……っ!』

『おおっう、背筋に寒気が………』

『ウワーッ! ああいうのマジでダメなんだよもーーーーっ!!』

『全員マーキング(・・・・・)されてるぞ!!』

インカムからの反応を聞き分けつつも、オイカッツォは自分を見つめるそれへと視線を返す。

眼。眼。眼。眼。眼。

もし誰かが數えたならばこの場にいるプレイヤーと同じ數だけ展開された炎でできた眼球が一人につき一つ対応するかのように視線を向けている。その視線をぶつけられたプレイヤー達の背筋には本能的なものとは異なるゲームシステム側から付與された「寒気」が走り、メラメラギラギラと雨の中にも関わらず燃え盛る炎の眼球はまるでピントを合わせるかのようにの違う炎……「瞳孔」の拡大と小を繰り返す。

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「不味い………全員防オア回避! 焠がる大赤翅は「目」からビームを出す!!」

オイカッツォの脳裏をよぎったのはこの王國騒開幕と同時に放たれたサードレマを焼き滅ぼしかねない一撃だ。その時偶然この場所にいたプレイヤーによって攻撃の際、翅に浮かび上がった巨大な目の模様から放たれた、という報が齎されている。

サードレマから確認できる程の炎から放たれたレーザーだ、きっとめいいっぱいに広げられた翅に比例した巨大な「目」だったのだろう。であれば今浮かび上がっている眼球はきっと、初手の大火力ほどの威力は無いだろう………

「小型化して量産…………下手すればホーミング! 大火力より厄介だよそれは……!!」

「Boooooooodddddddddddddooooooooooooooooo………!!」

ぐば! と炎の眼球の瞳孔が最大まで広がった瞬間、球として形されていた灼熱が太が如く暗雲にる空間を照らし出した。プレイヤーと同じ數だけあるのだから、それらが一斉に輝きを放てばそれはもはや閃弾に等しい。

そしてただの目くらましで済ませるほど、「敵の排除」にき出した焠がる大赤翅は甘くない。

『ぐああっ!?』

『後ろで誰か死んだ音がした!!』

『C班は全員無事だ! ただ盾が焼け溶けやがった!! 噓だろ三発で耐久全損!?』

『B班! すまん二人死んだ!! 蘇生アイテム二個ここで切っちまう!!』

「こちらA班、一応(・・)全員生きてる………いったん攻撃は中斷! 勢を立て直すのを最優先に!!」

覚が痺れた右腕………避けきれず、もう手遅れなのではと思ってしまうほどに黒焦げになった右腕へと回復ポーションを直接浴びせながらオイカッツォはA班の殘り二人へと視線を向ける。

オイカッツォと同じく回避を選んでいたペッパーは左腳の膝から先に攻撃が當たってしまったのか同様に顔をしかめつつも回復中、エターナルゼロは防を選んだようだったがどろどろと溶け落ちた腕鎧のような武……「闘拳」を見るにやはり無傷ではないようだ。

「エターナルゼロさん、それ腕かせる?」

「悪い、インベントリ作はできても腕にぶっかけるのは難しそうだ……後で返すから回復アイテムを使ってくれるか」

「了解。力はどの程度減ってる?」

「耐熱特化の闘拳でガードを固めて二割、ってところだな」

エターナルゼロのステータスを事前に聞いていたオイカッツォは、VITの違いを差し引いても五割近く力が削れた自分と二割で済んだエターナルゼロの違い……そして、諸々の報を統合して一つ仮説を立てた。

「C班! タンクは力何割削れた!?」

『一割程度! スタミナはゴリゴリに削れたけど!!』

「もしかして他二人はタンクの後ろにいて、ノーダメージだったりする?」

『なんで分かったの?』

視線を向ければ、次の盾をインベントリから取り出しているタンクの背後でライフルを焠がる大赤翅に向けていた炸裂グリンピースの怪訝な表と目が合った。

「これ仮説だけど共有! 今の攻撃、で見えなかったけど多分あの目が起した瞬間に一定範囲……「視界」にっていた対象にレーザーを當てるタイプの攻撃だ!!」

オイカッツォの推測は、果たして限りなく正解に近いものであった。

焠がる大赤翅第二形態……裏面(・・)「多面展開灼眼寫《よりどりみどり》」。周囲の熱を奪うことで自の守りとする「熱量簒奪蛹鎧(こごえるさなぎ)」に対して、起の瞬間に灼眼球が目視した範囲に「閃熱」による多段ダメージを與える攻勢形態。

オイカッツォの右腕やペッパー・カルダモンの左腳だけがダメージをけたのは閃熱照寫(・)範囲から逃れ切っていなかったのがそこだけだったから。大盾や闘拳でを守ったC班やエターナルゼロが軽微なダメージで済んだのは、灼眼球がカメラで寫真を撮影するように二次元的な認識で範囲を決めているが故に灼眼球の「視界」から本を隠しきったから。

この攻撃の本質はレーザーなどではなく、灼眼球の視界に見えたものに対して付與される即死エンチャント(・・・・・・)である。

「ふざけた死の寫真撮影だ……!」

降り注ぐ豪雨によって、確かに焠がる大赤翅のきには制限がかけられた。だがそれがなんだというのか。

神のエネルギー源たる赤き眷族、數多の命を取り込んだ究極の「群」たる白き始源の獣が選んだ赤の代表たる蝶が、その程度で止まるはずがない。

神代よりもさらに前、始源に生きた最強の「力」が今を生きる開拓者たちへと明確に牙を剝く。

第二形態裏面(・・)「多面展開灼眼寫《よりどりみどり》」

笑って笑って……灰(ハイ)、チーズ!お前は死ぬ。

灼眼球がった瞬間に視界っているとその部位にエンチャント:オーバードーズが付與される。

の許容量をはるかに超えるエネルギーが灼眼球が視認した部位だけに過剰投されるため、當然ながら過剰すぎる力に耐えきれず細胞は過熱と共に壊死する。

攻撃自は灼眼球が二次元的な認識しか持たない……要するに寫真を見るような認識でしか対象を指定できないことから、に纏う(・・)もの以外でを隠すことで回避可能、要するに防やアクセサリーで防しても無意味だが障害や武を隠せばエンチャント対象がそちらになるため本は無事、ということ。これは服やマントは灼眼球から「本」の認識になるため。

表面(おもてめん)の「熱量簒奪蛹鎧(こごえるさなぎ)」が自の保全に特化した防形態であるのに対して、こちらは「敵の詳細は分かったので焼き殺す」という攻撃形態。當然ながら両立は出來ないのでこれを使用している間は焠がる大赤翅本は豪雨に曬されることになる。

ちなみにこの眼球に関しては出現場所に制限が無い。なので焠がる大赤翅をなんらかの壁などで閉してもその外側に出現する。あとシンプルにで目潰しされるのでめちゃくちゃウザい

それではみなさん、見つかったら焼死確定のデスかくれんぼを頑張ってください!

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みなさま、どうぞよろしくお願いします

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