《シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜》12月1?日:蛇はそれを形見と呼び、人はそれをプライドと呼んだ

前回のあらすじ(三秒前)

このままだとメイド服を著せられる。しかもこのエリュシオン・オートクチュールという人は本人の格好と一日も経っていない流の中でも分かる限り、メイド服を著せる対象の別を問わないタイプだ。

「ま、まぁ? 殘念ながら俺はこの刻傷があるから……流石に他人からの貰いを三分で裂させるのは申し訳ないのでモデルの話はお斷りということで……」

「───なくとも」

ん?

なくとも、この世界では百萬の寶石が理解を得たただ一つの石に負けることもある」

「……なんの話?」

「実例があれば、そこには必ず再現がある。現実的か非現実的かはさておき……「理論上可能」なんだ」

「だからなんの……」

「黒き死に捧ぐ嘆き《レクィエスカト・イン・パーケ》」

それがR.I.P.の正式名稱だということに気づくまでに數秒かかった。エリュシオン・オートクチュールはなんらふざけた素振りもなく、真面目な眼差しでその名を告げながらインベントリから実を俺に見せる。

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「裝備している防をコストに特殊な防を生するシャンフロの中でも特殊なものだが……重要なのはそこじゃない。このクリスタルの力で生された防は……通常の「破損」を一切無効化するという點だ」

それは俺が一番よく知っていると言っていい。R.I.P.は回復アイテムや魔法をぶつけられると破損するが、逆に言えばそれ以外のダメージでは中(プレイヤー)自にダメージがることはあってもR.I.P.が形した喪服自は絶対に破損しない。

「原理も今は重要ではない。マッチをっても蟲眼鏡で太を収束させても起こる現象は発火なのだから。大事なのは「防が破損を免れる現象」がこの世界(ゲーム)には存在する、という一點のみ」

「悪いが結論から聞かせてくれないか?」

「その刻傷……「呪い(マーキング)」の上位互換、ジークヴルムで言うところの「刻痕(こっこん)」と同じものだろう。あれも確か時間経過で裝備を破壊するデメリットがあった」

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こっこん? ユニークモンスターごとに名前が違うのか。

「結論から言おう。刻傷のデメリットを無効化、あるいはデメリットを許容した上で破損を回避する防(メイド服)を作れるかもしれない」

「………話を聞こうか。納得できたら本業仕込みのポーズを決めてやるよ」

本業モデル(ペンシルゴン)曰く。

寫真に映るモデルが読者を見る必要はない、読者がモデルの目を見るのだ……視界の主導権を獲ってこそ一流のモデルだと。

……

…………

………………

殘念ながらプレイヤーの防は採寸をする必要はない。の、筈なのだが「調和の把握に必要」と結局採寸させられた俺(聖杯使用)はサイナをスケープゴートにしつつ、死んだ目でマネキンをしていたウィンプの方へと向かう。

「よう、修行の方は順調か?」

「………まぁ、それなりに」

ちらり、と著せ替え隊の方を見る。何故か照れていた、初心な対応は求めてねーよ経過報告を求めてんだよ。

「いやー、ぶっちゃけ弱いよ。まぁはい」

「スキル覚えらんないのが痛いよねー。毒を出すのもどっちかというと支援系だし」

「だからアサシン系で修行中。肋骨を避けて刺すじで」

それアサシンじゃなくてクリミナルとかそっち系なんよ。

それはさておき、一応ウィンプ修行編は進行自はしているようだ。いくらヘタレでもユニークモンスターの端くれ、流石にどこまで鍛えても産廃ってことは無いとは信じたい。

「そんなウィンプちゃんに今日はプレゼントがあって來ました……と」

「ぷれぜんと? へんなもんすたーのたいえきからつくったあやしいくすりとかじゃないでしょうね」

「それがおみだったらトレイノル・センチピードの毒とか仕れてくるが?」

「けっこうよ!!」

こう、百足式8-0.5から一番搾りみたいなじで採取できないものか……無理か。もしできたらちょっとした錬金だぜそれは。

冗談はさておき、キャッツェリアでダルニャータに頼んで作ってもらった特別製のそれをインベントリアから取り出してウィンプへと差し出す。

「……っ! これって、」

「まぁそういうことだ」

ダルニャータはケット・シーの【寶石匠】だ。寶石の扱いに最も長けた「アクセサリー製作特化の生産職」であり………試しに頼んでみたら至極あっさりと仕事をしてくれた。実は封雷の撃鉄・災を落としたって言ったら怒るかな?

「キャッツェリア方面でもいろいろ採掘(カンカン)してる時に面白そうなのを見つけてな、々混ぜて編み込んでアクセサリーにしてもらった」

とりあえず使っとけ枠のラピステリア星晶にとりあえず使っとけ枠の蠍系水晶を加えて、キャッツェリアや地底都市ホルヴァルキンでの採掘チャレンジで発見した「純粋な化石晶」………鉱石と生の素材とを結びつける力を持つ採掘素材を俺がもっていたある素材と組み合わせて完したアクセサリー。

明なマフラー、ともすれば羽のようにも見えるそれはとあるモンスターの皮に寶石織で繊維化した鉱石を編み込んだものだ。

「名づけて「蛇の星天帯《クリアステラ・マフラー》」だってさ」

「これって………サミーちゃんの………」

仇討ちに形見を持っていくのはよくあるパターンだろう? 仇討ちの定石(功)にあやかって俺達もそういうのを用意した方が良いと思ってな。

あの時、死んで消えてしまったサミーちゃんがしたもの。判定的にはただの「食の大蛇《アサルテクス・スネーク》」の素材だとしても………たとえ金の龍王の角という極めて優れたアイテムがあったとしても。それでもこの大した存在でもないちょっとレア程度のモンスターの素材を使うことに意味がある。なくともこのゲームではそこに意味を存在させるだけの許容がある。

「金庫にしまいこんで眠らせておくよりは、一緒に連れて行ってやろうぜ」

じっと半明なマフラーを眺めていたウィンプだったが、それを大切そうに抱きしめるとぼそりと一言。

「…………ありがと」

「気にすんなよ。なんたって俺は【仇討人】だからな」

メインジョブだからな、仇討ちは本気でやるってもう決めてるんだ。

「…………なんだかすごいものを見た」

「あれがツチノコさんのNPCタラシ=スキル………」

「ウィンプちゃんの好度をああも容易く………」

「ロマンチストが服著て歩いてるかよ」

「いや服はさっきはじけ飛んでたじゃん」

「癡………」

著せ替え隊共、今のは聞かなかったことにしてやるよ。

「エクセレンッ! インスピレーションが無盡蔵に湧き出てくるっ! メイド服! 嗚呼メイド服! このゲームの歴史を変えるっ! その確信がデザインに宿ろうとしているっ!!」

聞かなかったことにしたいけど聲がデカすぎて問答無用で脳が認識するの勘弁してほしいぜ。

蛇の星天帯《クリアステラ・マフラー》

食の大蛇(サミーちゃん)の皮を基に複數の鉱石糸をい込んで作り上げられた半明なマフラー。

ラピステリア星晶が編み込まれているためか、時折星空のような輝きを放ち不思議なを風に揺らす姿はオーロラを首に巻いているようにも見える。

鉱石糸を編み込んでいるため見た目以上に頑丈であり、首元への攻撃に対してダメージ軽減判定を行う能力があり、さらに複數の鉱石のシナジーが素材となったモンスターの皮に反応することで………

ついでにもう一つ。

・破壊回避

例を挙げればR.I.P.は通常の裝備破損判定に対して「黒死の天霊の質を引き継いでいるので通常攻撃ではダメージが発生しない」という特で破損を無効化している。

このように素材や魔法など、なんらかの特を利用することで裝備の破損を回避することは理論上可能。とはいえ、霊系モンスター最上位の「天霊」に縁ある力でようやく実現可能な破壊回避を人の手で実現するには一どれほどの研鑽が必要なのか。

それこそ人の営み數千年を超えるほどの叡智を持つ神に縋りでもしない限りは…………ん???

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