《シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜》12月1?日:二刀流とは雙剣に非らず
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「ふははははァーッ! 背鰭から魔力カッターを出しようが所詮は魔力! 所詮は魚類(サメ)! 哺類(オレ) feat. 哺類(シャチ)+海喰の剣(ブルー・プレデター)のトリプルシナジーに勝てると思ったか!!」
前々からキ……々思考構造が蠻族寄りだとは思っていたが、やはりというかサバイバアルの薫陶をけた著せ替え隊の面々はこの海底コロシアムに意図的に海中への「」を作ることでモンスターを引き寄せたり迅速な「自然死(自然の脅威によって死ぬことを指す)」を行っていた。頭がおかしいぜ。
とはいえ、本來なら船上から釣り上げるか深く素潛りするかしないと遭遇できないモンスターと比較的楽な條件でエンカウントできるのは強みと言えるだろう。
海中で仕留めた「鰭薙ぎ(スラッシャード)」の素材を手早く回収した俺は呼吸困難(・・・・)になる前にさっさと海中コロシアムへと戻る。
「つまり二刀流ってのはこういうことだ、分かった?」
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「うえからしたまでなにもわからないわよ」
おいおいウィンプ、それはちょっと……
「足りてないんじゃないか?」
「肯定:不足しています」
「な、なにがよ……」
「「インテリジェンス」」
イェーイ、とハイタッチする俺とサイナ。そしてぷるぷると震えるウィンプ。一何をしてるかと言うと……著せ替え隊、というより元々はサバイバアルに依頼していたウィンプ強化計畫の経過確認とちょっとした「授業」であった。
……
…………
「何? お前も二刀流にしたんだ?」
「なによ……わるい?」
「いや別に? DPSが出ればスプーンだって擔げばいい」
ウィンプが選んだのは短剣サイズの雙剣のようだ。俺とてこのゲームを始めてから今に至るまで二刀流使いだからな、多は二刀流に一過言ありとデカい顔もできる。
というわけで試しに模擬試合的なじでウィンプのきを見てみた、のだが………
「ウィンプ」
ビチビチビチ。
「なによ」
「雙剣は(・・・)やめた方がいいと思うぞ」
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ウィンプのレベルやステータス的に端から負けるつもりも負ける気もなかったが、それを差し引いてもウィンプと雙剣の相が悪過ぎる。
「わたしがよわいから……つかいこなせてないっていいたいわけ?」
「いや? 一応戦士ですと言える程度にはけてるけど……んー、」
る程確かに著せ替え隊の教えをラーニングすることはできている。ただこれは技量の出來不出來というよりそもそもの向き不向きじゃねーかな。
「雙剣じゃなくて二刀流の方が向いてるんじゃね?」
「……は?」
雙剣は剣を二本持っている二刀流だが、二刀流は別に雙剣ではない。とんち問答のようにも聞こえるが、割と真面目にこれは真理なのだ。なくともこのゲームでは。
「雙剣は剣を二本扱う事が前提だろ? 二刀流は違う……二刀流は、両手に別々の武を、両手に攻撃手段を持たせることだ」
「なにがちがうのかよくわからないんだけど」
「仕方ねーな……ちょっと実演してやるよ」
…………
……
……と、そんなわけで刻傷にも怯まず喧嘩を売ってきた泥掘り(マッドディグ)の親戚みたいな鰭薙ぎ(スラッシャード)をぶっ飛ばしてきた俺はコロシアム一角のガラス張りの窓からその様子を見ていたウィンプへと振り向いて一言。
「つまり二刀流ってのはこういうことだ、分かった?」
「うえからしたまでなにもわからないわよ」
おいおいウィンプ、それはちょっと……
「足りてないんじゃないか?」
「肯定:不足しています」
「な、なにがよ……」
「「インテリジェンス」」
イェーイ。ビチビチビチ。
さて、そろそろウィンプが癇癪を起こしそうなので真面目に授業をしてやりますか。
「いいか? 雙剣は剣が二本あって、その二つのシナジーをコンボさせる……要するに剣が一本でも無くなったらその時點で「雙剣の戦い方」は破綻するわけだ」
俺は海喰の剣を片手で握りながらもう片方の何も持っていない左手を開いたり閉じたりしながらウィンプに告げた。
「これも二刀流(・・・)だ」
「……わたしのこと、ばかにしてる? なにももってないじゃないの」
フフフ……そこが二刀流と雙剣の違いってわけよ。著せ替え隊は確かに良く善く雙剣の扱いについてウィンプに教えてるようだけど、キャラ設定の好みなんぞ効率的キャラ育の前ではフレーバーテキストよりも価値がない。
適があるならマッチョにヒーラーを擔當させるし可憐な妖にタンクをさせる、それがゲーマーというものだ。そしてウィンプの適は「二刀流」でこそ輝く。
「いいや違う、二刀流ってのは「両手それぞれに攻撃手段を持たせる」って事だ。これは右手に剣、そして左手に「拳」を持たせた二刀流だ」
二刀流、という書き方が悪いところもあるが……雙剣は両手が持つ二本の剣を組み合わせて「剣技」を行うもの、二刀流は両手それぞれに持った武を活用して戦う「戦闘スタイル」だ。
両方に剣を持たせる必要はない。例えば銃、例えば短杖、例えば拳……盾だって広義の二刀流だ。これを理解してるかしていないかでプレイヤーの強さは全くの別だ。
「いいかウィンプ、お前の薬用洗剤みたいな毒でも目に浴びせれば目潰しにはなる。右手の武が封じられたとしても左の拳をあんちくしょう(・・・・・・・)に叩き込める……一つの戦法に目を眩ませるな、二本ある腕を一つのことだけに使うのもアリだがもっと多くの可能を持たせるべきだ」
一意専心も悪くはない、だが二刀流は一意専心も「選択肢の一つ」にする事ができる。
「……つまり、どういうこと?」
「剣二本振り回すだけで満足してねーで片手剣両手剣徒手空拳毒手なんでも一通り覚えようねって事だよ」
要約:練習量と度を上げます。
それを理解したのか、ウィンプのただでさえ白い顔がさらに青白くなっていく。
「安心しろウィンプ! 俺も手空(てす)きだしここにはいろんなバトルスタイルに通したやつが沢山いるからな!」
「わ、わたしそうけんつかいでいい……」
「あっはっは」
ビチビチビチ。
「あのー……」
と、ここで遠巻きに見ていた著せ替え隊の一人が恐る恐るといった様子で俺に話しかけてきた。
「何か?」
「あーいや、もうこの際そのやけに鮮度の良さそうなシャケの覆面? については聞かないんですけども……」
現在、俺の頭裝備はリッチマン・キング・サーモンの頭面(かしらめん)………を、インベントリアにあった(俺自存在を忘れかけていた)素材で強化できる事が判明したのでビィラックにちゃちゃっと強化してもらった「富める鮭王面(プルト・サーモン)」を裝備している。
水中呼吸の一個前の効果である水中行時間延長の効果が付與され、強化前よりもイキイキぴちぴちした鮭の面は新スキル(・・・・)と併せて俺に水中戦という新たなバトルステージへの進出を可能とさせた。
「………正直、折角ボンバーバ……じゃない、ツチノコさんが聖杯使ってるなら出來れば顔見せてほしいなー……なんて。へへっ………」
「………る程?」
じっと生気を取り戻しつつある鮭の眼差しで著せ替え隊の面々を睨みつける。大のメンバーは目を逸らしたり口笛を吹いていたが、數人は何故かいい笑顔でサムズアップしていた。
「異形頭は自分癖(オッケー)なんで!!」
「私異形頭なら無機系が好きなんですけどこれはこれで!」
こいつら………鮭ヘッドを意地でも外さない決意をさらに固くしていた俺であったが、とりあえず全員一発アッパーカットを叩き込もうと決意したところで響き渡ったびがこの場にいる全員のきを止め、そして視線を集める。
「出來た……っ! 出來たぞぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「何が?」
「基礎理論(・・・・)だ!!」
なくとも裁をこれからしようって人から聞く単語ではねーな。
「きそりろん?」
「ああそうだとも。かつて私が手がけた「武凜(たけりえ)は裝飾品配置とサイズ、そして生地の素材とのシナジーを三十四通りの施行の中で見出した比率で合し、さらに裁系魔の習によって完させた當時の考え得る中では最高クラスの長期戦闘補助機能を備えたメイド服だった。だが月日が過ぎる中で隠し最上位職業の解放及び魔力…否、マナ粒子への理解深度が進んだことで生産職は新たなステージへと進まざるを………」
「早口言葉ならそこの海面に顔突っ込んでやってくれ。で、手っ取り早く結論は? パトロン様は何をすればいい?」
「いくつかの素材を用立ててしい。まず一つ目はなるべく等級の高いラピステリア星晶───」
「あるよ、布作るのに一等星級はほぼ使い切ったから二等星級多めだけど三等以下もしいならインベントリアから出す」
「………あ、ああ。二等星級がこれだけあれば十分だ……うん。次にリヴァイアサンで購可能な粒子回路構築マニピュレーターを───」
「リヴァイアサン・オンラインに接続、購っと……ご一緒に粒子観測ヘッドユニットもどうですかって勧められたんだけどこれいる?」
「パトロン様、靴を舐めます」
「靴くらい自分で洗えるから結構ですぅー」
新鮮な磯と清楚の香りが芳しい鮭顔スマイルで返しておいた。ビチビチビチ。
こう……若干気怠さを漂わせた開拓者特有のすらっとした肢がほぼ下著に近い初期裝備でいてるもんだからこう、水面から上がる時に水滴が滴る腹筋の引き締まるきが見えるのが……へへっ(本當は競泳水著を著ませんか? と言いたいけど過去にスク水を著ないか提案したサバイバアルがこの世のものを見ているとは思えない眼差しで睨まれていたのを思い出して言葉を飲み込んだ代わりに著せ替え隊の一人かられた寂しげな笑い聲)(頭が鮭じゃなけりゃあなぁ……)(異形頭だからボディが"映える"んだよ)(こいつ、直接脳に……!?)
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