《シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜》12月17日:メラメラ・ビートアップ Part.5

九月中はちょっときついっス(〆切的な意味で)

焠がる大赤翅による攻撃。挑む彼らはその名を知らないが「多面展開灼眼寫(よりどりみどり)」と名付けられたその攻撃は実のところ、布一枚を被るだけでいいのだ。

される「灼眼球」の視線を遮斷さえすれば即死級エンチャントから逃れることができる。

それは「灼眼球」があくまでも二次元的な認識で対象に照準(フォーカス)を合わせているため、布一枚でも対象のが隠れきってしまえばエンチャントによって副次的な燃焼の効果をけるのは隠しているものになるのだ。

ただし、それはあくまでも機上論。こと実戦、それも十數人での集団を相手に発された多面展開灼眼寫の攻略はまず「自分を見ている灼眼球の特定」から始まる。

「くっ………! ごめん魔法職! この際手當たり次第に障害を作りまくって!!」

『やれるけど次の攻撃までにリキャストが間に合わない! これ思ったよりヤバいよ!!』

この場にいるプレイヤーはオイカッツォが結したパーティ以外にもソロで突撃してきたプレイヤーや、オイカッツォとは別口でパーティを結したプレイヤー達など、その全てを合わせれば三十人はいる。さらに言えば別のチャンネル(・・・・・・・)にいるプレイヤーも含めればこの場にいるプレイヤー総數は數百人近いのだがそれはユーザーである彼らの知るところではない。

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問題は、數十個の灼眼球の中から自分を見ている眼球を見つけ出し、なおかつ閃が放たれるまでに灼眼球と自分との視線を遮る何らかのアプローチをする、という一連の行をかれこれ五回繰り返していて現在六回目だということだ。

「くっ……これウェザエモンの晴天大征と同じパターン?」

墓守のウェザエモン最大の奧義。リキャストタイムの制限を取り払った致命傷の連続は、その最後を飾る最大最強の奧義に打ち克つまで何度でも繰り返された。

重要なのはウェザエモンがそうであった、というよりも「このゲームでは特定條件を達しないと特定のモーションが永遠に続く」というケースが存在する、という事実だ。

「一定ダメージ? それとも十回くらい耐え凌ぐとか? 怯ませたら中斷、が一番楽で助かる……いや、そもそもあれ怯むの?」

これまで焠がる大赤翅と戦ってきたオイカッツォの率直な想は「臺風の目」である。騒の中心、という意味の比喩ではなく文字通りの臺風の空白。

そこを毆ったからといってそれそのものはどうにもならない、という意味である。

山火事か、大噴火か、あるいはもっと熱い(・・)何かしらの概念が偶然蝶の形をしているだけ、とでも言うべきか……なくとも(る前に死ぬとはいえ)ることができる彷徨う大疫青とは明確に異なる相手がそもそも怯むのか? とオイカッツォの脳裏に嫌な仮説が浮かび上がる。

同時に非活狀態の焠がる大赤翅との戦闘は何度かしてきたとはいえ、ぶっつけ本番はやはり無茶だったのか、とも……

「……ハッ」

故にオイカッツォは自分を笑い飛ばした(・・・・・・・・・)。

ウェザエモンと戦っていた時、そんなことを考えていたか? クターニッドと戦った時もほぼ伝聞の報だけで挑んだ、龍災大戦は言わずもがな………であればやれるやれないではなく、

「やるんだよ!!!」

灼熱の眼差しが照らす死火山をオイカッツォはインベントリアを作しながら駆け出す。背筋の凍る覚はの中に紛れた己を見る眼差しによるもの、だがオイカッツォはその眼差しを遮る事を選ばず……前へ。

「この手のレイド戦なんて、突き詰めれば大縄跳び……だったらっ!」

複數のプレイヤーが一つの攻略法をし遂げるために極まったきをしないといけない、そんなマルチコンテンツを揶揄する言葉だが、それは逆説的にある事実を提示する。

───皆で力を合わせて飛べば、クリアできる。

そして初見であるなら、賭け(・・)に出る必要だってあるのだ。

「このままじゃジリ貧だ! 一か八かに乗る奴は…………”消火”を始める!!」

オイカッツォがインベントリアから取り出したそれは、一見すると銃火のように見える金屬塊であった。

だがこれは銃ではない。なくとも銃火(・・・)とは真逆のガジェットなのである。

寒気が背筋を伝って脳を震わせる。眼球に照らされ濃くなった死の影がオイカッツォの肩にれようとしている。だがその程度のゲームオーバーに怯えているようではプロゲーマーなどやっていられない。

「そもそもこれが効くかも丁半。あーやだやだ、サンラクじゃないんだからさぁ…………!!」

そのガジェット、識別名を「エンタルピーイーター」という。

元々開発されていたそれは、人類が住まうに値する星を発見した際の環境調整(テラフォーミング)に使用されるはずだった大型裝備を個人攜行可能サイズにまで小型化したものだ。ではこのエンタルピーイーターは果たして何を目的として作られたものだろうか。

名はを表すとはよく言ったもので。

それは新天地においてマントルの過剰活を抑制する目的で生み出された熱量(エンタルピー)を喰らう者(イーター)。ベヒーモスで準備をする中で、焠がる大赤翅への対策の一つとして極めてシンプルな発想からパーティメンバー全員が持ち込んだもの。

繰り返すがこれは銃火ではない。姿は似ていても、理屈が難しくとも、それはまさしく………

「頼む効いてお願い神様!!」

消火(・・・)である。

高から低へと流れるエンタルピーの基本原則を促進させる海綿構造圧吸熱弾頭《スポンジフリーズシェル》が焠がる大赤翅へと放たれ、その表層へと到達する。これがただの弾頭であるならば、焠がる大赤翅にとってはなんら問題ないものだ。生けるエネルギーの塊である焠がる大赤翅はいわばエンタルピーの頂點、絶対的高みの存在………そのは防の構えを取るまでもなく無敵、そのはずだった。

だが環境(雨)が、開拓者(敵)が、そして今來た干渉が…………その全てが焠がる大赤翅という存在に牙を剝いて喰らい付いている。

故に

「Kyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyy!!!!」

スポンジが水を吸うように弾頭にエネルギーを喰われ、焔翅の大部分をごっそりと抉り取られた焠がる大赤翅は悲鳴の如き金切り音を上げた。

その瞬間、灼熱の睨みから逃げ隠れていた全ての開拓者達の心が一つになった。

「「「「「ぶち殺せ!!!!」」」」」」

・エンタルピーイーター

熱量喰らい、どこかで見たようなと思った方は正解。厳にはこれの基礎理論を限界まで研ぎ澄ませた末にあの悪魔の弾丸へ至るのです。

こっちの方は簡単に説明すると水の代わりに熱を吸って膨らむスポンジ、通常の焠がる大赤翅には効かないが大雨という焠がる大赤翅のそのものが拡散し続ける環境に加えて群がる開拓者への対処で攻勢に転じていたからこそ、がら空きかつ比較的(・・・)冷めているニラ蝶に効いたのです。

メグレズは疑似永久機関というか「奪った熱で自を持続させながら対象が死ぬまで熱を奪う」という弾丸でこっちは一発単位で吸収量に上限がある。

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