《シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜》12月17日:メラメラ・ビートアップ Part.8

焠がる大赤翅「始源解帰」………擬人相。

人間というシステム(・・・・)を模倣し、その上で莫大なエネルギーで満たした天を衝くが如き巨の赤子と変じる。その巨が放つ掌の叩きつけはもはや天災に等しく。それはまさしくヒトの、かつて神代の”人類”が次世代に託した想いと生き抜く力を他でもない人類を滅ぼした者が使うという侮辱に他ならない。

「Daaaaaaaaaaaaaaaarrr……Buuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuu………!!」

蝶の貌、仮面舞踏會の仮面の如き蝶の翅に浮かび上がる灼眼球が分裂する。両翅合わせて十數個の小型灼眼球から放たれた灼熱の條(レーザー)を地上に放たれ、灼眼球の一つ一つが”敵”を視線で追いかけることで熱が不規則な舞で大地を抉り切っていく。

くだけで人が死に、眼差しだけで人が死ぬ。そんな超巨大スケールの怪を前にしてプレイヤー達の注目はただ一つの事にのみ向けられていた。

表溫度常溫(36度)だよこれ!!!」

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「普通に毆れるぞ!!」

これまで置盾でしかなかった近接理アタッカー達の解。それは參加しているようで參加できていないフラストレーションを貯め続けていた近接理ジョブのプレイヤー達にとってはまさしくスタートを告げる空砲に等しい朗報であった。

彼らはゲーマーだ、誰もが多かれなかれ世界を救った勇者であり怪殺しのスペシャリストだ。如何にリアリティが素晴らしいとて、如何に首が痛くなるほど見上げなければ全貌すら見えない巨の怪とて…………表溫度常溫でベビーパウダーを塗った赤子の程度のさしかない敵に恐れおののく道理は無い。強いて言うなら集合恐怖癥は顔を直視できないくらいか。

部分は人間と同じ溫、でも顔はそうでもなさそうだ……その上で肩とかが焼けてないってことは耐熱はヤバそう。なら………よし、全員に通達。消火系アイテムをまだ持ってるなら顔面に集中攻撃、それ以外は四肢を毆って転倒させる!!」

インカムから応、と返ってきた聲を聞き取りつつオイカッツォはそれまで溫存していた裝備を展開しつつ振り返り…………一人いない(・・・・・)ことに気づく。

「……あれ? エターナルゼロさんは?」

「あー……あそこ」

指さした先には、走った目で焠がる大赤翅へと突撃する見た目五歳児の姿が。

人のアバターとは比べにならない全てが尺された軀を全力で駆させながら激走する姿は、その速度も相まってもはやホラーに近い。

「オギャり(・・・・)に心が足りてねぇんだよボケがっ!!」

「…………ねぇ、あの人ヤバくない? その……仮にロールプレイだとしても、なんかこう……」

「狂人の真似とて大路を走らばなんとやら、って事でしょ?」

「うん」

「大丈夫、あれは真似じゃなくて生粋だろうから」

「なにも大丈夫じゃないと思うわよそれ」

あの友人(・・・・)の周りには妙に癖の強いゲーマーが集まる、というのはオイカッツォの経験則だ。

何かそういう電磁波でも出しているのだろうか、と他人事のように笑みを浮かべるオイカッツォだったが……真に他人からすれば自分もその「癖の強いゲーマー」に含まれていることには気づいていない。

「総攻撃だよペッパー、君は結構アイテム総量が戦力に影響するタイプだけど……どうする(・・・・)?」

「………愚問ね。ここに來て溫存して死んだらしばらく鏡が見れないわ、間抜け面だろうから」

にっ、と笑みを浮かべながら攻撃ポーションの數々を取り出したペッパーに同じく笑みを返し、オイカッツォは見上げるほどの赤子を…………開拓者達に群がられよじ登られている超巨大レイドモンスター「焠がる大赤翅」を改めて見據える。

「よし。じゃあこっちも切札を使っちゃおうか」

インベントリアを作。この世界における最小の「世界」から呼び出すは、巨大な………球。オイカッツォが特殊強化裝甲を裝備している間に、球は花開くように変形し、虎を模した形へと姿を変えていく。

白き軀に黒の虎柄(タイガーパターン)、鋼の側には仮想の《プラズマナ・エネルギー》を漲らせ、吼える様はまさしく白虎。しかし其は白虎………シャングリラ・フロンティアにおいて【騏驎】に至る四つのプロトタイプの一つたる【白虎】には非ず。

規格外リアクターが現狀一つしかないことを差し引いても、骨に白虎の貸與(返卻)に顔を顰めたとあるプレイヤーが「白虎を自分が保有することで発生するメリット」を滔々と語りつつも、しかし同時に「限定的ながら【白虎】の能を再現+量産品であるが故に替えが利くというメリット」を掲げて生み出した……そう、言うなれば量産型規格外戦機(・・・・・・・・・)。

「ルスト監修ボールメン『屏風ノ虎(スクリーンティガー)』………実戦テストだ」

虎がさらに花開く。それは戦機が持つ二段階目の変形、鋼の皮と化した虎が使い手に覆いかぶさり纏われる。

虎の貌を備えた機巧の戦士が見據える先は、かつて己が基となった文明が敗北した「赤」。生まれは現代なれども………そのに流れる技脈に、數千年の時を経て復讐の時がやってきたのだ。

・「屏風ノ虎(スクリーンティガー)」

いや別に元々私が手にれたわけでもないしシステム上も事実上も共有という形にはなっているけど、正直に言わせてもらうと私の方がペンシルゴンやオイカッツォ……サンラクよりも上手く使える自信があるしいや本當に獨占する意図は無いし手した三人へのリスペクトも欠かしたことは無いんだけど報(・・)通りなら私がこれらの武裝を保持しておくことによる戦略的な効果は無視しきれないものであって………あっ、ならこれならどうだろう。私が白虎と同じコンセプトの戦機を作る、もちろん製作費はこちらが持つし一切の妥協はしない。というわけで紹介するのがこちら「屏風ノ虎(スクリーンティガー)」。白虎が搭載する質の吸引と排出を自のエネルギーで代用することで推進力及び撃力の再現に功した傑作機で、本搭載の武裝を削除する代わりにリアクターチャージャーを搭載することで本來はリアクターの稼働時間を延ばす機能をある種の弾倉のような役割を擔わせる。これによって本稼働時間を減らさないまま高いパフォーマンスが発揮できる。うん、白虎が無くても大丈夫。本當本當。私噓つかない。(ここまで四呼吸)(オイカッツォは納得した)

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