《シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜》12月17日:クライマックス・ヒートアップ 前

文章が多くなりすぎてさらに割る、次は後編Part.1ですかね……(白目)

赤子の首を斬り落とす。文字だけ見れば論外も論外、論ずる以前に提唱した者を警察に突き出す事満場一致間違い無し。

ただその赤子が山に抱きつけるほどに巨大で、顔が蝶で、そこに浮かんだ大量の眼の模様からビームを撒き散らす"力"そのものが意思を持った大怪であれば人類用の倫理を持ち出す者はいなかった。

「人數を集めろ! 奴の目線をこっちに引きつけて火口まで導するぞ!!」

「飛べる奴らは背中に回れ! 首に集中攻撃だ!!」

「ねぇこれ地上班高確率で死ぬわよね!?」

「狙い(ホーミング)は荒い! 全力で橫に飛べばちょっと裝備が焦げるだけだ!」

「首下は危ないぞ! 手のきに巻き込まれる!!」

「上がれ上がれ! 戦機乗りなら一人くらい擔げるだろ! 上がるやつに頼んで火力持ちをしがみつかせろ!」

「途中で落としたらごめんな?」

「抱きついてやろうか!?」

「それはちょっと中関係なくアバター以外遠慮してぇ……」

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◇◇

「まさか決戦用で持ち込んだ戦機でやる事が掘りってさぁ!」

「……見回してた(・・・・・)? まさか首が據わっている……? いや、腕の長さ太さから概算しても生後二ヶ月程度の赤子が再現されている……チッ、赤ちゃんの健やかな長すらも侮辱しやがるのか、許せねえ……っ!」

狂人が暴論を振り回しながら暴力を振るっている。何もかもが狂っているやべー奴を傍らに、オイカッツォは休む暇なく両腕を足元……焠がる大赤翅のうなじに叩きつけていた。

「なんかもっとこう……無雙系を想像してたんだけどなぁ!?」

機「屏風ノ虎(スクリーンティガー)」はマナ……魔力を圧し、それを弾丸や爪などの形狀にして解放する機構を搭載している。

近・中距離に対応した格闘戦に優れたコンセプトではあるが……攻撃対象が山と互角なサイズの怪ともなれば、近距離戦(インファイト)と言うよりももはや土木作業に近い有様であった。

「ダメージの治りが遅いし、攻撃も通りやすいから実際有効なんだろうけど……!」

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兎にも角にもサイズが大きすぎる。なんとか背中に辿り著いたプレイヤー達が続々とうなじへの攻撃を始めているが、背中だけで野球でもサッカーでも好きにできそうな広さがあるならば、當然首も尋常の大きさではない。恐らく背骨もちょっとしたトンネル程のサイズがあるだろう。

「誰か発破とか持ってねぇか!?」

「火屬相手に弾なんて持ってこないわよ! ただでさえ死んだら裝備全損なのに!!」

「俺持ってきてる」

「いやこれマジでどうするんだよ……囮やってる奴らもいつまでも耐えきれないだろ……」

「ていうかさっきから數えてたけど段々顔の蝶翅に浮かぶ目の數が増えてるんだよ! いくつがMAXかは知らないけど上限まで増えたらヤバいんじゃないのか!?」

ぶような會話の中で、オイカッツォは確かにその言葉を聞き取った。

「今弾持ってるって言ったの誰!?」

「え、俺だけど……」

「いくつ持ってきてる!?」

「ふっ………めっちゃある」

裝備ロストを見越してか、店売りだろうこれといった特徴のない皮鎧をに纏ったプレイヤーが手を挙げたのを見つけ出したオイカッツォはその人の手を引きながら土木工事(こうりゃく)の最前線、うなじのど真ん中へとそのプレイヤーを連れていく。

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弾持ちが來た! 設置するからいったん離れて!!」

機を裝備したプレイヤーの発する聲は戦機を通してある程度拡聲される。オイカッツォの言葉によって人が退いた、確かに削られてはいるものの依然として骨の出していない傷口まで発破持ちのプレイヤーを案する。

「ありったけ設置して!」

「おうさ」

弾が設置される、弾が設置される、弾が設置される、弾が設置される、弾が設置される、弾が弾が弾が弾が弾………………

「え、どっから出てきてんのそれ……」

「………本當はこれで王都更地にしようと思ってたんだけど、こっちの方が楽しそうだし」

とんでもない地雷を在野から掘り出してしまった。ひきつった顔を「屏風ノ虎」で隠しつつ、明らかに個人が所有していい量ではない弾がびっしりと設置された傷口から離れつつ隣にいるプレイヤーに起を頼もうとして……ふと、まだ一度も名前を呼んでいないことに気づいた。

とはいえ一々名前を聞く必要はない。なにせこのゲームでは頭上にプレイヤーネームが表示されているのだ。そのプレイヤーの頭上に表示された名前を読み取ったオイカッツォは、改めてその名を起の指示と共に呼ぶ。

「えーと………じゃあ、しいたけさん起よろしく」

「あいさ」

◇◇

「VooooooooooooooGyyyyyyyyyyyyyyyyaaaaaaaaaaaaaaaaarrrrrrrrrrrrrrrr!!!?」

焠がる大赤翅が悲鳴を上げた。それほどまでに巨大な赤子のうなじ部分で起きた発はすさまじいものだった。

「何をしたのよオイカッツォ……!」

地上で焠がる大赤翅が放つ灼眼を回避しつつも、なんとか注意を引き付け続けていた地上班に混ざっていたペッパー・カルダモンは背中へと登って行ったオイカッツォが一何をしでかしたのかと疑問符を浮かべつつも、これまでなんとか手繰り寄せていた焠がる大赤翅の好奇心(ヘイト)が一瞬で霧散したことに歯噛みする。

そも、地上のプレイヤー達は殆ど囮としての役目を果たせていなかった。何せ腕に近づけば踏み潰され、顔面には殆ど攻撃が屆かない。彼らにできることはありったけのヘイトスキルを當てて視線を導するくらいだ……だからこそ、うなじでの大発という明確なダメージによって焠がる大赤翅のヘイトはいとも容易く地上のプレイヤー達から外される。

「文字通り眼中に無いってわけね……」

ぎょろぎょろといていた眼球の全てが自の背中を見ようと顔ごと同じ方向にいている。頭部が未だ健在であるならば、まだ背中に上がったプレイヤー達が目的を果たせていない、ということだ。

「BaaaaaaaaaaaaaaJuuuuuuuuuuuuuu……!」

そして何より、これまで生らしいを見せていなかった焠がる大赤翅になって見せた……それが怒りの一に染まっている。瞼など無いはずなのに細められた蝶貌の灼眼球は、言葉無くともその意思を雄弁に示している。

「ブチ殺す、ってところかしら?」

目は口ほどにを言う、そして焠がる大赤翅は目で示した意思を躊躇うことなく実行する。

「オイオイオイ……なんだあの特大眼球は……!?」

「ねぇ、今の大赤翅の頭くらいある眼球からぶっ放されるレーザーってどれくらいの規模だと思う?」

「一番最初にサードレマに撃ったアレと同規模かそれ以上だろうさ! どうすんだよ!?」

焠がる大赤翅、その代名詞たる蝶の翅に浮かび上がった灼熱の眼球から灼熱の眼差し(レーザー)が上に(・・)放たれる。二十近い"まなこ"模様から放たれたは、もはや意にも介さぬ雨雲を突き破る……ことなく、一點に収束して巨大な球を生み出していく。

それはもはや、太と言っていいほどに眩く……そして、熱い。そしてそれに瞳孔が開いたことで、その巨大な……あまりに巨大な太の如き灼熱の巨眼球が己の首に痛みを與えた下手人たちを睨み據える。

「どうする!? どうにかタンクを集めてヘイトスキル一斉に使わせるか!?」

「そもそも個々人のスキルでどうにかなるものなの?」

「だから集団で使わせるんだろ!?」

地上のプレイヤー達が混と口論で右往左往する中、ペッパー・カルダモンは……………

「……………ムカつくわね」

皆とは違う理由で(・・・・・・・・)怒りを抱いていた。

「歯牙にもかけられないってのは………やっぱり、ムカつく」

そのに焠がる大赤翅は一切関係していない。ただ………そう、「自分の行が相手にとって何ら興味を引かない」という今の狀況から彼の脳で完結した連想ゲームで生まれた怒りが、まさしく八つ當たり的に焠がる大赤翅に向けられている。ただそれだけだ。

そうとも、どれだけ強い相手であろうと、強大な敵であろうと、最強の存在であろうと………いつだって弱者には挑戦の権利がある。挑むために行することだけは、萬人が等しく持つ権利だ。

だがその挑戦を、ける側である強者が蔑ろにすることは………とても、腹が立つ。

強者の都合を考えない弱者の傲慢(エゴ)、だがその傲慢を燃料にしてこそ弱者は初めて強くなる。それこそがペッパー・カルダモン……夏目恵が魚臣慧(オイカッツォ)の背を追う原力であり、さらにその上の存在に喧嘩を売る理由なのだ。

「炎だのエネルギーだのなんだか知らないけど………要するに、眼があのモンスターにとっての重要な要素なんでしょ?」

「何か案があるの?」

誰もが焠がる大赤翅を見上げ、確信のない行を取る中。一人明確な理由を抱いて行するペッパーに気づいた炸裂グリンピースがその理由を問う。

「眼を奪えばいいんでしょ? だったら必要なのは強さじゃない………派手さよ」

錬金師というジョブにおいて、それは々ロマン寄り………も蓋もない言い方をすれば、ネタ寄りのアイテムだ。作に要求されるアイテムこそレア度の低い手にれやすいものだがその數が多く、作には多大な量のマーニが要求される。そして作ったとしても使用できる狀況が々特殊すぎるが故に実戦向けとは程遠いという評価を下されたもの。

だがそれはこのイベントが始まる前までの評価だ。さらに言えば、青き始源の眷族が攻めて來たころには確かにプレイヤー達から注目されつつあったもの。しかし、その”狙い”が大雑把すぎるが故にやはりネタの領域から逃れられなかったもの………

だが、相手は巨軀なる怪焠がる大赤翅。その”狙い”が………文字通り、命中率(・・・)が大雑把であっても當たる確率が極めて高い相手であれば。

「まさか本當にこれを全部使うことになるとはね………!!」

錬金によって作された薬品がったガラス球を魔力的発によって、破損させないまま遠距離に出する錬出用迫撃砲《アルケミック・モーター》。諸事で結構な額のマーニを保有するに至った”戦爭金”であるペッパーが用意したその數八門。

それが今、魔力の火を噴いた。

・錬出迫撃砲《アルケミック・モーター》

要するに迫撃砲。錬した毒や薬などを遠距離に出することが出來るアイテム(武ではない)。

ただし冷靜に考えれば分かるがシャンフロのバトルシステム的に迫撃砲が必要になるような狀況自がそもそも無い、という致命的欠陥故にネタアイテムとして扱われていた。(良くてPK用の不意打ち)

ただ、彷徨う大疫青戦のような防衛戦においては有用ではないか、と言われていたが大疫青自がそんなに大きくないため、結局狙いづらいじゃねーかとされていたが………適當に撃っても當たるような敵がいたならば、その隠れ続けていた真価は十全に発揮される。

ところで11月17日にコミカライズ版シャングリラ・フロンティア6巻が発売されます!

表紙はコミックからった方々にヒロインと誤認されまくるエムル(人間態)です、本の上にいるのはサンラクに金を貢がれてる奴とサンラクに素材を貢がれてる奴とサンラクに金をカツアゲされてる奴です。

エキスパンションパスでは編集I氏にめちゃくちゃ好評を貰った外道三國志です、頑張って一話に収めました。

ぜひぜひお手に取ってみてください。

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