《シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜》12月19日:Wake Up! Guns Guns Mercenary cor←Shoooooot!!

事前の予告は無かった。

事前の告知は無かった。

事前の予兆すらなかった。

すなわち、それは完全な………奇襲(・・)であった。

「はーい! ガンガンやってる!? GUN!GUN!傭兵団アルファです!!」

下水道への侵、あるいは下水道からの侵を阻むための鉄格子を砕しながら、灰の金屬塊が姿を現す。

左手にグレネードランチャーを裝備したその金屬塊は、辺りを索敵しながらも自の周囲を浮遊する鉄鏡に朗らかな聲を上げる。

「完全突発配信! GUN!GUN!傭兵団フルメンバーによるサードレマ電撃作戦!! クリスマスには早いけどサプライズ配信!!」

ボポンッ、と間の抜けた音を立てて真上に向けられたグレネードランチャーが弾を上に発する。弾速に優れているわけではない擲弾は緩やかに上へ上へと登っていき、その推進力によって屆く上限まで到達したところで…………

「全方位奇襲作戦(・・・・・・・)! フルメンバーかつ全員個別配信でお送りするぜーっ!!」

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グレネードランチャー自の能力により、手本人の任意で起した擲弾が上空に大きな炎の花を咲かせた。そして、それに呼応するようにサードレマの各所から同様の発が連鎖していく。その數、合計八つ。

それはサードレマの各所に【配信戦線(ライブライン)】に屬する八人の”戦機”が潛んでいたことを示していた。

「いや本當、SNSで連日「GUN!GUN!傭兵団なにやってんの?」って百萬回聞かれましたけどね! 全てはこの日の為だったってわけですよ! 見てるかリスナー! 祭りだ祭りだ祭りだーっ!!」

全てはこの瞬間の為に。初日のぱやぶさによる電撃戦に紛れ込んでサードレマの地下下水道から街に侵、そしてそれぞれが潛伏してイベント終了一日前まで待った上で一日でサードレ(・・・・・・・)マを制圧する(・・・・・・)。

それこそがGUN!GUN!傭兵団が立てたプラン、正真正銘”勝つための”電撃戦であった。

アルファ、もといシャンフロでのPN「アップルパイ@GGMC」はある程度の練習を重ねたとはいえ、やはり生とは異なるきの戦機の調子を確かめるように軽く機(からだ)をかしながら隕鉄の鏡へと言葉を向ける。

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「では改めて戦力紹介……っていうかまぁ畫制作擔當のX(・)を除いたウチのフルメンバーなんですけども、今回は全視點を生配信! ゴメンX! 多分今死ぬほど忙しいと思うけどなんか奢るから勘弁してくれよな!」

シャンフロにはログインせず、八人の配信管理を一手に擔っているだろうもう一人のメンバーに謝罪しつつ、アップルパイは改めてサードレマの街並みを見渡す。

人気のないがらんとした景は、民衆がどこかに避難した後だということを示している。それは本気の市街地戦を求めてこのイベントに參加したGUN!GUN!傭兵団からすれば肩かしどころか肩を落とすような殘念な結果であるのだが、まさかそれを口にするわけにもいかないのでアップルパイはほんのしだけ溜息を吐いて気持ちを切り替える。

「これより我々GUN!GUN!傭兵団は市街地を突破して敵本丸に突撃、前王陣営の要人トルヴァンテとアーフィリアを確保する! 點呼!」

『バタースコッチ了解でーす』

『こちらチョコレート、了解~!』

『こちらドーナツ、了解』

『こちらエクレア~、あいあいさー』

『こちらフィグ、了解……せめてコードだけフィナンシェに出來ないかな』

『…………こちらジンジャーエール、了解。紛らわしいから諦めろ』

『こちらハニートースト、了解しやしたー』

昨今ではリアルタイムでの畫編集すら可能となった時代だ、実際にゲームをプレイしている八人の配信はリアルで畫編集を擔當する「エックスレイ」によって一つの生配信畫として現在進行形でGUN!GUN!傭兵団のチャンネルで配信されている………このリアルタイム編集による多視點配信こそがGUN!GUN!傭兵団が高い人気を誇る理由の一つである(チャンネルの屋臺骨とも言えるエックスレイも含めたメンバーのキャラクターも人気の一員である)。

「さあて………このリアリティでガチの攻城戦ってのも燃えて來た…………ぅおぉっ」

ぶるり、とに震えが走る。それは武者震いのようで、あるいは強風が吹きつけたようで……………

「強風(・・)?」

機はカスタマイズによってその質は千差萬別であるし、オンリーワンの機ともなれば再現が困難な特殊機能を持っていることもある。だが一つだけ共通していることがある。

それはスーツは気に優れており、風などじるはずが無いという事──────

『アップルパイ! ソナーだ(・・・・)! 座標を探られたぞ!!』

ソナー、索敵、即ち…………

がごん、と重い連結音が響く。だがそれが地上(・・)より現れた”侵略者”達に聞こえることは無い。何故ならばその機は………サードレマ大公城の頂點、焠がる大赤翅の攻撃によってその半分ほどが消し飛ばされた塔(ベルフリト)に”四つ腳”で踏ん張っているのだから。

「………よし、」

瓦礫によって最上階にあった捕虜用の室は原型こそ留めていないものの、辛うじて塔としての形は維持しているそこから長大な……あまりに長すぎてそれを構えながらくことが困難な程に長い銃をサードレマ下層に突き付けるそれは、まごうことなく金屬の塊であり………

しかし、まごうことなき人間であった。

「ルスト、作戦開始だよ」

『………了解。支援は不要』

「言うと思った。じゃあ僕は僕でチクチク狙撃してるよ」

その金屬塊には名がある。神代の技と、ネフホロ最強の王の影に控える支援屋………あるいは畏敬と揶揄を込めて呪いの石像(・・・・・)とまで呼ばれるプレイヤーの発想と要を詰め込んだ後方支援火力戦機。

「【安全領域(セーブゾーン)】、広域探知(インパクトソナー)起!!」

『広域探知(インパクトソナー):起

裝著者の音聲を認証した戦機が右背部に搭載した奇妙な箱のような裝置を展開する。それは見ようによっては大型のスピーカー(・・・・・)に見えなくもない、そしてそれは正しい。

───────────────ッッッ!!

それは音を発しなかった。否、なくとも人間の可聴域では聞き取れない音……あるいは衝撃を放った。

それはサードレマの上空四か所に展開し、自立滯空する探査子機(ソナードローン)を中継してサードレマ全域を無音で揺らし…………そして、探査子機からの報をけ取った親機が【安全領域(セーブゾーン)】の裝著者へとその結果報を伝える。

「一人発見………じゃあ始めようか」

リアクターに直結された超長距離靜音(・・)狙撃銃「ピノキオ」を構え、【安全領域(セーブゾーン)】………それを纏うプレイヤー名「モルド」は息を吸い込み、僅かに呼吸を止めて引き金を引いた。

「どおおおっ!!?」

アップルパイはそれ(・・)に気づいたわけではない。ただ、同僚(ドーナツ)の「ソナー」という単語と自分が通りのど真ん中にいること……なにより自分がサードレマ上層から丸見えの位置にいるという自覚で反的に裏路地へと飛び込むことが出來ただけだ。だがその瞬間的な判斷がアップルパイを救った。

キュゴッッッッ!!

「おいおいおい………生だったら弾け飛んでるでしょこれ………」

石畳を抉り貫いた狙撃の跡を見つめながらアップルパイは思わず、と言った様子で呟く。だがアップルパイとて歴戦のFPSゲーマーだ、既に狀況把握は思考で完了している。

既に配信者ではなく兵士(プレイヤー)の表となったアップルパイは戦機越しにアサルトライフルを握り締めながらインコムに、あるいは配信中の隕鉄鏡に怒鳴るようにその事実をぶ。

「察知されていた(・・・・・・・)ッ! 全員警戒最大! これはもう奇襲じゃない、正面衝突だ!!」

後に「サードレマ機鋼戦」と呼ばれる一戦。戦機というコンテンツにおける”最上級”を世に知らしめた戦いは一発の銃弾から始まったのだ。

・戦機錐ピラミッドメン【安全領域(セーブゾーン)】

ネフホロ界隈にて「タッグマッチのモルドは最優先で潰せ」「デバフを撒き散らす呪いの石像」「広域スピーカーで落語を流すのもやぶさかではない」とまで言わしめるモルドが自のプレイスタイルと王國騒イベントで予想される戦闘から逆算して設計した戦機。

ステルスしながら広域探査で敵の位置を補足してルストに伝達しつつ自はサイレンサー付きの狙撃銃で狙撃し続けるという人によっては額に青筋浮かべて罵倒しかねない後方支援火力に特化しており、放置すると場所はバレるわ狙撃されるわルストが向かってくるわで厄介極まりない。

なお”安全領域(セーブゾーン)”の名の由來は安全地帯から攻撃するから……………ではなく?

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