《シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜》12月19日:徹蹄鋼戦

あけましておめでとうございます、今年もシャンフロをよろしくお願いします

「は!? フィグ死んだぁ!?」

パーティを組んでいるが故に、パーティメンバーの落は他のパーティプレイヤーにも通達される。そしてそれは、決して素人ではないフィグが初心者がリスキルされるが如く倒されたことを証明していた。

『……こちらドーナツ。すまん、死んじゃいないが大ダメージだ』

「え、マジ?」

ドーナツはフィグがキルされた場所からそう遠くない場所にいたはずだ。であれば先ほどのソナーによって場所を探知されたことで、フィグが最後に言い殘した「何か黃くてってくるもの」が襲撃を仕掛けたのか。

しかしドーナツから返ってきた言葉は、アップルパイを……ひいてはGUN!GUN!傭兵団をさらに混させるものであった。

『なにか……黒い(・・)バイクみたいな戦機だ。スモークを張ってなんとか逃げ切ったが……ああくそ、左アームがかん。最悪だ、片手でアサルトライフルを撃てと?』

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「ドーナツ、本當に黒かったのか?」

『流石に黃と黒で見間違えん、間違いなく黒だった……』

思っていたよりも厄介だ、とアップルパイは隕鉄鏡が音を拾わない程度の音量で舌打ちする。今回の強襲に際してアップルパイ達は可能な限り高能な戦機を用意した、なくともそれはベヒーモスで購できる無改造狀態の戦機よりは遙かに高能だ。

だがそれでも拭いきれない懸念があった。

「戦機ガチ勢の集団(・・)を防衛に充てている、か……チッ、バラけるのは不味いか。とりあえずツーマンセルで合流して襲撃に備えろ!」

そもそも八人が個別行で強襲を仕掛けるのはそれが奇襲であるという前提に基づいたものだ。待ち伏せまでされていたとあっては、もはやその大前提のアドバンテージが丸々潰れていることになる。

『七人だ、俺は気にするな』

「すまんドーナツ!」

今回のイベントでは死亡したプレイヤーは直前のセーブポイントではなく本陣都市……新王陣営で言えばサーティードでリスポンする。すなわち実質的な強襲作戦からの落に等しい。

となればフィグが抜けたを埋めることはできない、ツーマンセルを組むならばひとり仲間はずれが出來上がる。

切り捨てるなら(・・・・・・・)自分だろう、と立候補したドーナツに詫びをれるアップルパイであったが、その言葉を遮る者がいた。

『んー? 俺ソロで良くない?』

「エクレア……流石に無茶じゃないか?」

『ま、なんとかなるって。それに位置的にはさ〜、ドーナツとハニートースト結構近いじゃん? 腳が生きてるなら最悪ピストルでキル取りながら斥候くらいは出來るじゃん?』

気楽な口調とは裏腹に、その言葉には斷言にも似た強さが含まれている。なくとも「そんなことできるか」と拒絶することはできない、なにせそれが出來る者がその言葉を発しているのだから。

『気軽に言うな全く……分かった、ハニートーストと合流する』

『ごめーんこちらハニートースト! 俺も死ぬかもしれん! こいつか!? 遭遇した!!』

◇◇

ヴァオン! と轟音を上げながらサードレマの大通りを駆け抜ける漆黒の戦機。だがその姿は基本的に人型であるはずの戦機とはかけ離れた姿をしている。

「……案外近くにいた、合流狙い?」

先ほど取り逃がした戦機を探していたルストは、しかしそれとは別の三人目へ突進を仕掛けながら考える。

この手の対人において位置を把握された場合のきはおおよそ二種類だ。その場から逃げ出すか、數を集めて防を固めるか。

散らばられる、と考えて高機の【黒獅無雙(コクシムソウ)】を出していたルストは、案外近くにいた別の敵機(プレイヤー)の姿に「GUN!GUN!傭兵団」が散開ではなく合流を選んだと判斷する。

「モルド」

『うーん、流石に線避けを徹底してるね。ただ………うん、ツーマンセルか4:3で分けるのかな? そういうきだ』

「……なら合流前に潰せるのは潰していく」

それは決して彼らの実力を侮ってのものではない。ただ、「自分ならできる」という純然たる自負と実力に基づいた判斷。なにせ彼が頂點に君臨するNephilim(ネフィリム・) Hollow(ホロウ)というゲームは……人とネフィリムの戦いでもある。

『クソッ、一応質問だけど防衛戦力何人くらいですかぁ!?』

「……ふっ」

やけっぱちのように見えて、しかし危なげなく突進を回避しつつさらに報アドバンテージのワンチャンを狙う質問を投げる敵にルストは思わず笑みを浮かべる。その意気やよし、ならば教えてやろうと言わんばかりにルストは【黒獅無雙】を格納する(・・・・)。

「……遠慮しなくていい、教えてあげる」

『あれ、聞いてみるもんだな……』

頭上に「ハニートースト@GGMC」と表示された戦機が大仰な作で周囲を浮かぶ隕鉄鏡へと顔をむけているのを見ながら、ルストは目の前のハニートーストに、あるいは彼を通してGUN!GUN!傭兵団に、あるいは……彼らの配信を見ている無數の「ネフホロユーザーになるかもしれない者達」に告げる。

「………二人(・・)」

『……………え、マジ? 狙撃手が一人で…………お一人で?』

「……そうなる」

『どうしよう、"舐めプ"か"ブラフ"のどっちかなんだけど』

「……安心してしい」

『え?』

がごん! と格納空間から"紺"の立方が現実空間へと落ちてくる。ルストとハニートーストこ間に落ちた紺の立方によってスーツを替えているルストの姿は隠れ、ただその聲だけがはっきりと響く。

「……"本気"で、"噓偽りなく"全滅させるから」

『おっとぉ……? もしかしてフィグの言ってた黃いやつって……』

直方の金屬塊が変形し、シャングリラ・フロンティアで最多の戦機保有數を誇るプレイヤーの鎧としての形をす。

一人、ただし六

RS:Δ【黒獅無雙(コクシムソウ)】

ルストシリーズの中では最初に設計され、最後に完したアルファにしてオメガのピラミッドメン。あくまでも裝甲、鎧としての戦機の常識に囚われず「変形することで様々な戦場でハイスペックなきを可能とする」というあまりに変態的な設計思想の元に完した異形変形型ピラミッドメン。

その質上、本に搭載された武裝は皆無。ただし裝甲形態、二形態、三形態、四形態の四種の変形パターンを持ち、本武裝の非搭載をインベントリアという無限にして無重量の兵站で補っている。この機のみ、変形パターンに対応してスーツとの接続を切り替える質上、プレイヤーが裝備する強化スーツは専用のものが用意されている。

設計思想の基となったのは墓守のウェザエモン……というよりも戦機馬「騏驎」であり、人型に囚われない変形合は真理書を読んだことでルストが考案したもの。

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