々あったのは事実だけど大エルデンリングって奴が全部悪いんです

『ルスト、ごめん───』

「……了解」

二度の発音。一つは空中に大きな炎の花を咲かせ、もう一つはサードレマ大公城の一部を崩壊させた。

そしてサードレマ大公城で後方支援を擔當していたモルドからの言葉で、ルストはおおよその狀況を把握した。

モルドが敵狙撃手との相打ちに近い形で撃墜された(・・・・・)。それ即ち、【安全領域(セーブゾーン)】による後方支援はもう期待できないという事だ。

だが本職ではない狙撃手という役割をけ持ち、敵の狙撃手と相打ちになったのならまずまずの戦果と言ってもいいだろう。

「……それはそれとしてモルドにはもっと狙撃訓練させないと」

ぼそ、と呟かれた言葉はモルドには屆かない。それが幸か不幸かはさておき、ルストは自分がを置いた戦場に意識を戻す。

ガゴン！と変形が完了し、青い流線型の……全的にシャープでありながら丸みをじさせる裝甲に包まれた機巧の剣士となったルストが大刀を構える。

「……伐斬凱青(バツザンガイセイ)」

『何パターンあんだよ……！』

『散れ散れ！ 5メートル以上離れてから撃て！』

その対応は間違っていない。戦機の膂力、速度、そして程(レンジ)は生の開拓者のそれとは異なる、言うなればスキルや魔法を使用不可とする代わりに己がを大きくする……個々人の存在の拡張(・・・・・)、それが戦機の存在意義だ。

故にルストから距離を離して銃火のアドバンテージを活かす……それはなんら間違っていない。唯一間違いがあるとすれば……それは目算だ。

「……殘念、5メートルは私の距離」

『速───』

『”スケープゴート”！！』

轟、とブースターを噴かした青い剣士が司令塔……アップルパイへと迫る。5メートル圏にれば、あるいはれれば(・・・・)確実に殺しきる、というコンセプトで設計された戦機RS:Ο「伐斬凱青(バツザンガイセイ)」の大刀がアップルパイを唐竹割りにせんとする直前、それを蹴り飛ばしながら自分が犠牲者となる隨分と荒々しいきで戦機が飛び込んできた。

「……！」

ルストにはその左腕がいていない戦機には見覚えがあった。確か一度逃した者だ、今度は確実に………そこでようやく思考が発せられた臺詞の理解に追いついた。

（スケープゴート？斷末魔じゃない………暗號、合図、捨て駒！）

周囲の戦機が一斉に銃口をルストに向ける。躊躇いなく発砲、そこに今まさに斬り裂かれんとする同胞への配慮は欠片も見られない。

「……ッ！」

なるほどそういう事か、とルストは自らの死を厭わず摑みかかってきた片腕(ドーナツ)を膝蹴りで押し戻しながらを翻す。味方もろともの集中砲火、「伐斬凱青」の裝甲はその流線型のフォルムで攻撃をけ流すコンセプトだが、四方八方からの弾丸は流石に許容の外だ。

であれば、許容の側に収まるまで無茶をする。

ただ真っすぐに、全力の加速。それにすら追隨する弾丸の嵐を必要経費とけれながらも目指す先は包囲網の一人。

「……袋叩きは、突いてを開ければいい！」

『あっぶ！？』

全から損傷のスパークと煙を上げながらも、サブマシンガンを裝備していた一人(チョコレート)の脇腹を大刀で斬り裂きながら包囲網を抜け出したルストは、すかさず次の戦機をインベントリアから呼び出す。

『クソッ！ 次は赤か！』

『いくつあるんだ！ ていうか一人であんな持てるのかよ！』

『チョコ死んだ！？』

『生きてるけど大ダメージでけん！ 捨てていい！！』

本來であれば、ルストが今やっているようなインベントリアからの戦機を高速で展開、変形というものは実は出來ない。だがそれはあくまでも基本的には、だ。

【展開最適化端子(エクスポートアッパー)】というアクセサリがある。これは「鍵」系アクセサリが格納空間からオブジェクトを展開する時間を短するというものだが………ルストはこれを三つ裝備している。

戦機を裝備中はプレイヤー自が習得している魔法やスキルを使用することは出來ず、さらに裝備も戦機用のパワードスーツを裝備する必要があり、任意発型のアクセサリも効果を発することが出來ない。

だが、常に発し続けるアクセサリだけは戦機を裝備してなお使用することが出來る。すなわちルストのパフォーマンスが異様に高い、ではなくGUN！GUN！傭兵団のパフォーマンスが低いのだ。

「……雅龍樞(ガリョウホウスウ)」

まるで誰かに見せつけるように真紅と黃金の華な”翼(ブースター)”を開き、ルストのが上空へと羽ばたく。

それは黃金の龍王へのリスペクト、そしてそう易々とは使えない真紅の朱雀(お気にり)への挑戦。特別を省いた汎用で特別なそれらへどこまで迫ることが出來るのか。それを突き詰めた戦機RS:Δ「雅龍樞(ガリョウホウスウ)」を纏ったルストは、眼下の傭兵団達を見下ろし、武裝を展開する。

「……撃開始」

一切の容赦が無い撃が街に、そして傭兵団達四人に降り注ぐ。「できれば街に被害は出さないようにしよう」と考えるだけの理をルストは今も持っているが、それはあくまでも「できれば」の話だ。モルドのように必要であれば被害を出すのも厭わない、とは違う。ノって來たから(・・・・・・・)、という理由でルストは半徑20メートルを丸ごと焦土にする勢いで撃を行う。

（……これで全滅するならそれまで、どうなる？）

その時だった。

『現著ゥ～っ！』

「……ッ！？」

間延びした拍子抜けするような聲。そして……ルストの拍子を完全に貫いた狙撃銃の一撃。

それは雅龍樞(ガリョウホウスウ)の翼の元を的確に破壊し、滯空に要するブースターの片割れを損失したルストのはバランスを崩して地へ墜ちていく。

だが、かつて緋の片翼をもってネフィリムホロウの頂點に立ったルストにとって偏ったブースターで機を制する事は、決して不可能なことではない。殘った右翼のブースターを用に制し、まるで竹とんぼがその回転を維持したまま地面に落ちるように不安定ながらも加速力で無理矢理姿勢を維持した回転運で不時著したルストはすかさずスモークミサイルを足元に叩き込んで煙幕を発生させつつ、思考と行を同時に行う。

（撃たれた、狙撃？ いや、狙撃手はモルドが相打ちにした………違う、狙撃手だけが狙撃銃を使えるわけじゃない、私のキルスコアは２、モルドが１、この場に四人………もう一人いた(・・・・・・)）

何度か使用しつつも、損傷がないRS:◇「玉石紺攻(ギョクセキコンコウ)」を展開しながらルストはこれまで姿を見なかったGUN！GUN！傭兵団最後の一人を思い出す。

”A”pple pie、”B”utter scotch、”C”hocolate、”D”onut、”F”ig、”G”inger ale、”H”oney toast。抜けているのは”E”のフォネティックコード。そして事前調査で調べた、GUN！GUN！傭兵団で”E”を擔當するのは───

『へぇ～、なんかヤバいのがいるってのは無線越しに分かってたけど～…………強そうじゃ～ん？』

配信者としての活では「エコー」と、そしてこのゲームにおいては「エクレア(”E”clair)」を冠する男。

GUN！GUN！傭兵団最強のプレイヤーが機巧の鎧を纏いながらも隨分と慣れたきで狙撃銃を投げ捨てながらも、煙越しに正確にルストへと照準を合わせて二丁拳銃を構えていた。

『1v1(タイマン)やろうぜ～？』

「……上等」

・RS:Ο「伐斬凱青(バツザンガイセイ)」

対人～対戦機想定の斬撃特化型。全を流線型の裝甲で構することで敵の攻撃をけ止めるのではなくけ流す設計思想の元、程距離5m圏でのベストパフォーマンスに特化している。武裝は大刀一本と腕部に仕込んだ雙剣二本。

・RS:Δ「雅龍樞(ガリョウホウスウ)」

RS共通の名前にをれる法則を無視した派手なネーミングセンスのソリッドメン。飛行能力に特化しており、空中戦だけではなく対地撃、滯空しての長距離狙撃などを可能とする空の覇者（ルスト談）。その名にある「」の規格外戦機「朱雀」の再現を目指すと同時、名前に「龍」が盛り込まれている通りユニークモンスター「天覇のジークヴルム」へのリスペクトも盛り込まれている。強いて言うならば「赤」と「金」の意味を持つ戦機とも言える。

・電撃菓子(エクレア)3號＠GGMC

エクレアが設計した戦機球ボールメン。西部劇のカウボーイのような意匠(デザイン)でありながら、分厚い裝甲を採用しているため、ふとっちょのカウボーイのような印象を與える。

ブースターの稼働率に大幅に手が加えられており、その推進力は太く短い。さらにその両手にはあるギミックが仕込まれており、配信を見ているリスナーに真似させる気のないエクレアの縦に特化した専用戦機と言える。