《シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜》12月19日:敗北の先に、勝利の先に

ちょっと短めだけどばすのも蛇足かなと

「………完敗だ」

単純な力比べ以前の時點に問題があったが、それを差し引いてもぐうの音も出ない完敗だった。

特殊狀態「調伏」は命を奪わないが、代わりにスタミナゲージを消費するような行を一定時間止する。理的にスタミナが殆ど全損狀態というのもあるが、この特殊狀態はリスポーンすることでしか解消されないのだ。

とはいえ、地面に仰向けに倒れているカイソクが立ち上がりもしないのは、「調伏」の効果以前に神的な理由によるものだ。

「得難い経験だった。きっと次は無いだろうからね……」

全米一位、と呼ばれているがその強さが北米大陸一つに収まっていないことなど、誰もが分かっている。

間違いなく世界最強のプレイヤーとの対戦経験はカイソクの人生における生涯の中でも屈指の思い出(かがやき)になるだろう。だが、何故だかカイソクは「それ以外」の中にあることに気づいた。

「ふふふふふ」

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と、勝利者であるアージェ(シルヴィア・)ンアウル(ゴールドバーグ)がこちらを見て笑い出した。敗者を嘲笑う類の笑みではないことはなんとなくじ取れた。だが何に対して笑っているのか。

「なにか………僕が面白いポーズで倒れていたかな」

「いいえ、違うわ。でも貴方を見て笑ったのは事実ね」

カイソクは自を省みる。なくとも跳ね起きて走り出す、というのは「調伏」の効果で難しいがかすことそのものが不可能になったわけではない。その上で、かさずとも自分が大の字で倒れていることくらいは分かる。一何が彼の琴線にれたのか…………なくとも自分の何かを見て笑ったのは事実なのだから。

だが、カイソク自が自覚していない答えをアージェンアウルはあっさりと答えた。

「だって………「次はどう戦えば勝てるか」って考えてる顔してるわよ」

「………………えっ?」

に、と笑顔を見せるアージェンアウルに、カイソクはそこで初めて………自分がアージェンアウルとの戦闘を反芻し、そのきを読み取ろうとしていたことを自覚した。思い出を優しく抱きしめてでるような、そんな溫い(・・)ものではない。先の戦闘における一挙一を思い出し、あの時どうしていれば現在の結果を塗り替えられただろうかと………ずっと、自分がそれを考えていたのだと。

「アメリアも、レオノーラも、クォンもケイも………負けた時や再戦する時にその目をしてる。次は負けない、今日こそ勝つ、そんな目……ファイティングスピリットね」

「そうか…………………………そう、か」

まだ自分にもそれが殘っていたのか。いや違う…………まだ、圧倒的な格上に対してそれを燃やせるだけの熱が殘っていたのか。シルヴィア・ゴールドバーグと戦って、そこで満足するものだと思っていた。それどころか、対戦が終わった瞬間プロゲーマーとして満足しきってしまうのでは、とすら思っていた。

だが、どうやらまだまだ自分も完全燃焼しきってはいなかったらしい。

「Ms, アージェンアウル」

「何かしら?」

「きっと……いや、間違いなく僕の方が先に引退するだろう」

「そうね」

それはプロゲーマーとしての壽命もあるし、単純にいち生としての壽命でもきっとカイソクが先に去る側になる。

「それまでに、また貴の前に現れるよう努力しますよ。今度は……ギャラクシア・ヒーローズで」

だがそれは、逆説的にカイソクが去るその日までシルヴィア・ゴールドバーグが現役であるという事でもある。ならば挑もうではないか、何度でも………ゴールがあるとしても、どこでスタートするのかは自分で決められるのだから。

己と比べればはるかに格下の、そも彼が戦うフィールドに一度しか足を踏みれたことのないチャレンジャーの意思表示に、しかしアージェンアウルは笑みを浮かべた。ギラギラと、ともすればカイソク以上に闘志の熱を帯びた太のような笑顔で。

「勿論。その時は私もけて立つわ」

そこで終われば再戦を誓う爽やかな終わりにも見えたかもしれないが………そこで、カイソクはふと思い立った。これでも一応新王陣営に屬していた、シルヴィア・ゴールドバーグが所屬しそうな前王陣営と敵対していたからとこちらに所屬したが………主義主張の善悪はさておき、あちらから見ればこちらが敵なのは事実だ。

その上で、正々堂々と戦って負けたのならば………敵役(かたきやく)として、なにかこうすべきではないのかと。

魚臣慧(オイカッツォ)に対して報をリークしていたのは間違いなく裏切りのそれだが………こうもはっきりすっぱりすっきり負けたのならば、多あちらに報を渡してもそれは潔さではないか、と。

それはある種英雄的なアージェンアウルと戦ったからかもしれないし……本気でヒーローとヴィランが戦うゲームで生計を立てていたからかもしれないし、あるいは単純に改崎自がギャラクシア・レーベルのファンであるからそういうお約束(・・・)に弱いからとも言える。

「ところでアージェンアウル。王城の警備に””があるのは知っているかい?」

ので、カイソクは新王陣営として作戦會議に參加していたからこそ気づいた重要報を、綺麗さっぱり吐き出すことにした。コミックのヴィランがやるようなことを、自がその立場になってやることにしながら……………

カイソクに一つだけ……そう、一つだけ誤算があるとするなら。

それを聞いたアージェンアウルがオイカッツォにその報を共有することで、最終的に………そう、よりにもよって誰に(・・)報が屆いてしまうのかを、知らなかったという事だ。

へぇ、新王陣営は本拠である王城に警備を固めていると。まぁそれは當然だね、流石にそこを手薄にするのは奇策過ぎるし

何々?でも新王陣営は萬が一の際、迅速な逃走をするために意図的に封鎖が甘い城門がある…………へぇーそうなんだぁ……………前王から聞いてたの抜け道はブラフで弾系アイテムが敷き詰められている、ねえ…………そうなんだ…………

そうなんだ。

ああそうだ大公閣下、それにトルヴァンテ陛下。ちょっとお聞きしたいんですけどぉ…………王城って対空兵裝とかってあるんですか?

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