《シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜》12月19日:剛機禍弾

RS:◇「殲顎緋砕(センガクヒサイ)」のブースターが咆哮を上げて推進力を生み出す。

を覆う攻勢裝甲は敵からの攻撃に対して防力でけきるのではなく、多の破損を前提とした上で自きを阻害しないギリギリのラインでけ流す、攻めの為の護だ。

的確に顔を狙う弾丸を前傾姿勢で伏せられた額の裝甲でけつつ、一気に距離を詰める。脳を揺さぶられる覚に気絶の狀態異常を危懼するが、ことこの戦機においては停滯はコンセプトの否定を意味する。

『………っ!』

『あっぶね!』

中距離から近距離レンジまでを一瞬で詰め、その速度のまま全力でぶん毆る。機が致命的な損傷さえけなければ、裝著者が戦闘不能にさえならなければいい。攻めきって倒しきる。當人に明かすつもりは無いが、とあるプレイヤーの裝備とバトルスタイルを參考にした殲顎緋砕(センガクヒサイ)の剛腕は……しかし、當たらない。

奇しくも殲顎緋砕(センガクヒサイ)と同様のコンセプト……「短距離を高速で移する」という敵の戦機の機力によってすんでのところで回避されているのだ。

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『ひゅーっ、こえー!』

(どの口が、)

あまりガラの悪い素振りをするわけにもいかないと、心の中でのみ毒づいたルストは左右にステップをれながら怒濤の勢いで放たれた弾丸を回避する。

弾丸が狙う場所は頭だけではなく、肘や膝といった関節部を狙うこともあれば、あえて裝甲の厚い部分に二発放ったかと思えば拍子をずらした弾丸が急所を狙い撃つ。

ずんぐりむっくりな鋼のカウボーイが凄い速度で回避行をしている様はどこか稽さもじるが、その両手が構えた銃から放たれる弾丸の狙いはいらやしいほどに勝利に真摯だ。

(厄介。想定の二倍……いやそれ以上に)

ルストは、自分こそが現時點で最も戦機に詳しいプレイヤーであると自負している。故に敵の戦機がそう大したものではない事を理解している。

能が極端に劣っている、というわけではないがプレイヤー自の設計品ではなく既製品のパーツの組み合わせによってカスタマイズされたものだ。

各部のブースターは短時間に大出力を発揮するタイプだ、形狀を見れば分かる。それは即ち瞬発的な回避に特化しているために距離を稼ぐことは不得手ということだ。戦機を裝備した上でGUN!GUN!傭兵団の他のメンバーたちの許に遅參していたのはその持久力の無さ故だろう。

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武裝は実弾型戦機用リボルバー、SF的な世界観から逆行するような理的に弾込めをする必要がある回転式拳銃だ。威力は対戦機としては申し分なく、しかし一発ごとに引き金を撃たなければ発砲できない。

それらの報を全て纏めて総括すると、敵の機は近~中距離戦に秀でており、中距離を維持することで近接攻撃から逃れつつ程の暴力を叩き込む、という見た目通りのガンマンスタイルという事だ。

殲顎緋砕(センガクヒサイ)との相は良くはない。否、相手から見れば相の良い相手ということになるだろう。この緋の拳は中距離以上の武裝を搭載していない、それはつまり距離が開いている時點で最たる攻撃手段が封じられたという事なのだから。

だがその上でルストは「まぁ勝てるだろう」と考えた。

ベストパフォーマンスを十全に発揮できることなど稀だ、「上振れ」という概念があるならば當然「下振れ」の概念も存在する。そしてルストは自の下振れを祈って、あるいは狙って挑んできた相手のことごとくを打ち倒してきた。相不利程度で止まるような戦いはしない。

が、蓋を開ければこと眼前の敵に関してはルストをして「極めて厄介」としか言いようがなかった。それこそ、今すぐにでも殲顎緋砕(センガクヒサイ)から別の戦機に著替えたいと考えてるくらいには。

(狙いが恐ろしく、弾幕が途切れない、何よりポジショニングがイラつく程に上手い)

常に移しつつ、ルストからは離れ過ぎず。どれだけ不意を突いても必ず自らもいて距離を維持する移……そしていていようが止まっていようが、拳が眼前に迫っていようが引き金を引く指は怯えず、竦まず、何より軽くく。

映像で見た印象と実際に相対した印象に差が生じるのは珍しい事ではないが、敵……エクレアというプレイヤーを相手にしてルストはその差を強くじていた。何気ない、ともすれば非効率的にすら思える挙すらもがこちらの命への王手となるような………

そして何よりも厄介なのが敵の戦機、その手首の辺りでいている蟲の足のような細いマニピュレーターだ。

(あれはオートリロードサブマニピュレーター。拳銃サイズの銃火をオート裝填(リロード)するパーツ………)

それも蟲の足のようなマニピュレーターがわっせわっせと一発一発理的に弾込めする、という極めて非効率的なパーツだ。しかもやたらめったらに高額。

基本的にそれがロボットのパーツであればとりあえず活用法を考えた上で評価するルストですら「弾込めしているマニピュレーターのきが健気で可い」以上の想が思いつかなかったような………控えめに言って、ネタパーツであった。

なにせ、一発一発マニピュレーターが裝填する時間を待つくらいなら、そもそも同型かつ弾が全裝填された別の銃を取り出せばそれで済む話だ。仮に六発裝填できるリボルバーがあるとして、あのマニピュレーターがリロードする時間とインベントリから別の銃を出す時間を比較したならば、大抵の場合は後者を優れていると評価するだろう。それどころか、戦機のパーツ……即ち理的に存在している質であるが故に破壊されれば當然その機能は失われる。

脆く、遅く、無駄の塊。だが……一つだけ。そう一つだけ、ルストですら気づかなかった利點があった。

『リローッド!』

弾切れを自ら堂々と宣言しながら、エクレアが左手の銃をリロードする。無論、その隙を見逃すまいとルストは一気に距離を詰め、殲顎緋砕(センガクヒサイ)最大の武裝たる鉄拳を叩き込む。

だが、避けられる。ロボを縦して(厳にはパワードスーツだが)空振りさせられた、という事実はルストの自尊心に無視できない疵を付ける。こればかりはあまりにも相が悪かった。

だが、さしものエクレアもルストの速攻には意識を集中しなければならないようで、なくともルストが攻めに転じている時は攻撃は牽制以上にはならない。

どこかの誰かさんのように、誰も彼もが飛び跳ねながらインベントリを作できるわけではないのだ………が。

『そっちのターンは終わったかぁ〜? じゃあ次はこっちのターンってな〜!』

ジャキン! とリロードの完了した銃がルストに突きつけられる。

エクレアは弾をリロードしていない、視線を向けていない、意識を向ける必要すらない。何故なら弾込めは全てあの頼りない細腕(サブアーム)が擔當してくれるから。

("集中"がブレない……!)

インベントリから別の銃を出した方が早い、その方が良い、とルストが結論づけたのはそれが戦況に対する無駄な時間の削減になるから。故に遅く、非効率的なサブマニピュレーターは優先されないだろうと。

だがそれは、ルスト自が無意識下で……あるいはサードレマに侵攻するGUN!GUN!傭兵団を二人で……否、実質的に一人で複數を相手にすると、すなわち一対多數を前提として戦機を構築、評価していたが故のものだ。

だがエクレアは違う。

そもそもの前提が違う。

GUN!GUN!傭兵団はサードレマで「多數の」前王陣営プレイヤーと戦うことになるだろうと想定していた中で、エクレアだけは「百人いるならタイマンを百回繰り返す」というコンセプトで準備を続けていた。

無論、相手が律儀に1v1に応えてくれるとは限らない。むしろ嬉々として袋叩きを狙ってくる可能もある。

『こういうロボ系も悪くないね〜! シャンフロシステムさいこ〜!!』

全て承知の上だ(・・・・・・・)。

何人來ようが何人に囲まれようが、一人一人丁寧に迅速にタイマンでキルを取る。電撃菓子(エクレア)3號は@GGMCはそれを想定し、それを実行するためのカスタマイズが施された戦機だ。

故に、ルストのように「戦闘中に発生する無駄を極力小さくする」ではなく、「どんなに非効率だろうが戦闘中に無駄を発生させない」ことを重視している。

一人で複數を相手にするなら、意識を眼前の戦いから僅かでも割くデメリットを生じさせるとしても迅速にアタックリソースを補充する必要がある。

だがタイマンならば、左腕に意識を向けるよりも左腕を使えない代わりに眼前の強敵に対して回避と右腕での攻撃に集中できる方が良い。

設計思想の違い、奇しくもタイマンという形式にルストが応え、何よりルストが近距離戦特化の戦機を選んだからこそ。

『ごめんね〜……ここから先はしばらくこっちのターンだぜい』

アドバンテージは敵にある。

・オートリロードサブマニピュレーター

片手運用できる銃火、かつマガジンまたは弾倉裝填タイプの武裝のリロードをオート、ただしめちゃくちゃ理的に代行してくれるサブアーム。やたら高額なのは獨自のインベントリ機能を搭載しているため(サブマニピュレーターに搭載されたミニ格納空間の弾丸をサブアームが取り出してリロードしている)

非効率的ではあるものの、プレイヤーが念じるだけでリロードを開始する上、全弾裝填しなくてもキャンセルできるので不便だけど便利

例えるなら二秒攻撃できなくてもいいから二秒でリロードを終えたいのがルスト、リロードに五秒かかっていいので片方のリロードをしてる間にもう片方の銃で攻撃を切らさないのがエクレア

どっちが優れてるかはまさに「狀況による」、そして現狀はエクレア有利ということ

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