《【書籍化】外れスキル『目覚まし』、実は封印解除の能力でした。落ちこぼれの年は、眠りからさめた神達と優しい最強を目指す。【コミカライズ企畫進行中】》1-9:初討伐

ルゥを治した翌朝。

僕は、東ダンジョンのとある階層に足を踏みれていた。

第3階層。

上2つの『探索層』とは異なり、『戦闘層』と呼ばれるここは、本格的に魔が強くなる。

たった一人。手には『青水晶の短剣』。

普段著を革で補強したいつもの防に、今日は魔石をれるポーチをつけていた。

上層と違って、薬草目當てに來る人はいない。そのせいかひどく靜かで、自分の呼吸音がよく聞こえた。

階段を降りた先は真っすぐな通路だ。いくつもの分岐があるはずで、その先にいる魔は時間により異なっている。アイテムも、魔も、ダンジョンでは常に変化していくんだ。

安全と思われていたエリアに、敵が配置されていることもある。

冒険者が危険と呼ばれる所以だ。

けれども魔石や素材、古代のが手にる。

お金を稼ぐなら戦闘層は無視できない。

「……って、わかってるんだけど」

時々、遠くで何かが地面を踏みしめる。

張がピークに達すと、頬を何かがよぎった。

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「うわっ」

飛び出た聲に、慌てて口を塞いだ。

「どうした?」

の輝きがそう言って、頭の橫で滯空する。

「……驚かせたかな?」

それは、手のひらサイズにんだソラーナだった。

巧な人形にもみえるけど、表はころころ変わる。

神様は大きさも変幻自在みたい。白いワンピースをはためかせて、ふよふよと浮かんでいる。黃金の髪と腕がきらめいて、語の妖のようだ。

「すまないね。どうも小さな姿の方が外へ出ていられる時間は長いようだ」

ソラーナは、姿は小さいけれど目は鋭い。

「この階層では、街よりも強く封印が作用している。おそらく魔を封じるためだろう」

僕は周囲を警戒しながら小さく頷いた。

ソラーナは続ける。

「大きなのまま外へ出ると、それだけ力を使う。振るえる力が多くとも、數分も持たなければ不便だろう」

神様に影響があるほど、やっぱりダンジョンの封印は強いんだ。魔を封じてあるってことが現実を増す。

じわり、じわり、と僕は不安になり始めた。

自信はある。

探索層でコボルトを一撃で倒したり、レベルがあがったり、ソラーナから新しいスキルをもらったり。本當にお金に困った頃はリスク覚悟でこの階層を駆け回ったから、地理も知っているし、相手を選んで戦うも知っている。

でもスライムとは比べにならない魔がいると思うと、慎重な僕が『まだ早かったんじゃないか』って囁くんだ。

僕は昨日のルゥの寢顔を思い出して、ぶんぶん首を振った。

「……自由になるには、避けられない」

いつまでオドオドしてるつもりだ。

深呼吸して、ぐっと顎を引く。

お腹で深く息をするのは父さんから教わった呼吸法だ。

「いくよ、ソラーナ」

足跡や痕を見逃さないよう、注意して進む。

やがて地面にくっきりと殘る足形を見つけた。

四本足に長い爪。前肢と後肢の幅は僕の一歩と同じくらいで、獣だとしたらかなり大きい。

「……ワーグ、だ」

ごくりとが鳴る。僕の足はい留められたようにかなくなっていた。

「こ、ここは引き返そう」

「ん? どうしてだ?」

漂うソラーナに小聲で応じた。

「強い魔なんだ」

別名、初心者殺し。

狼に似た魔で、素早いきから牙による攻撃を繰り出してくる。

厄介なのはとにかく速いこと。慣れたパーティーなら簡単に先読みできるというけれど、初心者パーティーはかくされてあっという間に躙される恐れがある。

「東ダンジョンでは滅多に出ないんだけど……まずいな」

唯一の救いは、『縄張り』から出たがらない習だろう。戦闘を避けるのは簡単だ。進んでいるなら、その場で回れ右すればいい。

「慎重なのはいいことだ」

小さなソラーナは腕を組む。金髪と瞳がきらりとした。

「念のため、スキルを復習しておこう。わたしのスキル『黃金の炎』は、常(・)時(・)、君の能力を向上させる。つまりリオン、君は君が思っている以上に強いぞ」

昨日は全力疾走しても息が切れなかった。

あれはほんのし、ソラーナの加護があったってことだと思っている。

「『黃金の炎』はそれだけじゃない。魔力を消費することで、時間限定でさらに能力を強化する」

魔力を消費して、さらなる強化を引き出す――か。

ソラーナは人差し指を立てた。

「時間限定のブーストだ」

こちらの使い方はまだやったことがない。戦闘層から出るときに、魔力に余裕があったら試そうと思っていたんだ。

ダンジョンに遠吠えが響き渡る。四つ足が地を蹴る爪の音。

「も、もしかして……」

もう迷うまでもなかった。

「グウウ!」

曲がり角から、唸り聲が近づいてくる。

やがて闇の狼が現れた。真っ赤な目と口が獲にかっと見開かれる。不揃いな牙を見せつけるように、ワーグは吠えた。

「む、向かってきた……?」

まだ縄張りには踏み込んでいないはずなのにっ。

から恐怖がせりあがる。ソラーナの言葉が太のように暖かかった。

「リオン。やってみるといい」

信じてくれる神様がいる。仲間がいるって、誰かが見てるって、思っていた何倍も心強い――!

僕はスキルをい立たせた。

――――

<スキル:太の加護>を使用します。

『黃金の炎』……時間限定で能力を向上。

――――

ぐん、と世界が鮮明になる。

何もかもがはっきりと見えた。薄暗いダンジョンなのに。

ワーグの息遣いや、前足のき、牙の狙い、それが手に取るように知できる。

能力の強化は、制限時間がある。できるだけ急ぐことだ」

僕はワーグに向かって床を蹴った。

とびかかるワーグ、その下をスライディングで潛る。

遅い。

狼の速度さえも、遅く見えるっ。

「ふっ」

敵の背面に回っていた。

そのままワーグに飛びかかろうとしたら、加減を間違えた。飛びすぎたんだ。

ダンジョンの4メートルはある天井、僕は頭をぶつけるスレスレにまで跳びあがってしまう。

「す、すごいジャンプ……!」

突き出した青水晶の短剣をまっすぐに下へ。

僕を見失ったワーグを、全重をかけて串刺しにした。

「グァッ」

短いきしか殘さなかった。ワーグは灰になり、魔石と牙が転がる。

僕は黃金のオーラに包まれた手足を呆然となでた。

「時間制限があるし、君の魔力では発はできない。だから切り札だ。けれど、なかなか頼りになるだろう?」

僕は汗をぬぐった。

「はいっ!」

強力な力だ。でも、あくまで切り札、か。

考えてみれば當たり前だ。

僕の力は神様からの借りで、僕自が強くならなければ、たぶん、本當の『最強』にはなれない。

初討伐のワーグ、その大きな魔石をポーチにれる。

この日はずっと第3階層で魔と戦うことにした。

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