《【書籍化】外れスキル『目覚まし』、実は封印解除の能力でした。落ちこぼれの年は、眠りからさめた神達と優しい最強を目指す。【コミカライズ企畫進行中】》1-16:パーティーができました。

換金が終わった後、ミアさんと僕は職人街を歩いた。

もう目的は済んでいるのだけど、晝間に街をぶらつけることはないから新鮮な気持ちになる。魔石とは違って、銀貨と金貨で膨れたポーチは心地よい重さだった。

「王都で力を持ってるのは、貴族だけじゃないってことさ」

風に赤を揺らして、ミアさんは振り返った。

「商人には商人の繋がりがある。西にはギデオン以外の貴族もいる。仕組みを知っておけば、換金にもいろいろな手がある」

それは本當なら父さんから教われたかもしれない、『処世』というやつだろう。

僕は足を止める。ミアさんにきちんとお禮を言いたかった。

「ありがとうございます」

「ふふん!」

ミアさんは得意げにをそらす。いつの間にか職人街の出口が近づいていた。

「リオン」

ミアさんは言った。

「あたしと組んでみないかい?」

驚いて見上げると、茶の瞳と目が合う。

「僕と、ですか?」

「ああ。ギルドは寄り合い。冒険者の寄り合いっていえば、パーティー、これも処世だ」

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とんとん、と話がうまくいく。確かに願ってもないことだ。

僕は家族のためにお金を稼ぎたいけれど、換金をギルドに頼ることは難しい。ミアさんがいれば、王都の西側、ギデオンの影響力があまりない場所へも伝手ができる。

なによりこの人には僕にはないもの――経験がある。

「よ、よろ……」

よろしく、とすぐに飛びつきたくなったけれど、自制する。

さっき取引について知ったばかりじゃないか。

話を進める前に聞かないといけない。渉、そして前提條件の確認だ。

「すごくありがたいです。でも、どうしてですか?」

僕はミアさんに尋ねた。

「僕はまだレベル5です。ミアさんは?」

「レベル30だ」

やっぱり、レベルがかなり離れてる。

ミアさんにメリットはあるのだろうか?

「……まず、僕はまだ東ダンジョンにしかることができません。ミアさんには、足りない冒険をさせてしまうことになります」

冒険者ギルドは冒険者をランク分けして、れるダンジョンを制限している。向こう見ずな挑戦を制限する、まっとうなやり方だと思う。

僕のランクではまだ東ダンジョンにしかれない。

初心者出、つまり他のダンジョンにれるようになる條件はいくつかある。

ギルドが指定する依頼をクリアしたり、試験をけたり、お金を払ったり。

でも一番は、東ダンジョン最下層の魔――『人狼』を討伐することだ。最初のダンジョンのボスを討伐すれば、初心者出の何よりの証になる。

ボス討伐は魔石も多い。

妨害には油斷できないけど、狀況が許す限り僕も人狼討伐でランクを上げるつもりだった。

「つまり、あたしにメリットがないって?」

イタズラっぽく笑うと、やっぱり貓みたい。3つくらいは年上だと思うのだけど。

「はは、心配してくれてありがとう! でも、メリットはあるさ。それも2つ」

ミアさんは僕に向かって、指を立てた。

「1つは、東ダンジョンに危険な魔がいたこと。危険だが、こういう難易度が上がり始めた迷宮は、レアなアイテムが見つかりやすい」

「そう……なんですか?」

「ああ。ダンジョンの難易度は王族が管理してるって噂もある。東ダンジョンはじきに注目されるだろうさ。興味があるし、るなら東の探索に慣れたあんたがいると助かる」

ミアさんは手のひらの先を僕に向けた。

「2つ目は、リオン、あんたの能力だ」

「の、能力――?」

苦笑するミアさん。

「見てたよ。ダンジョンで、魔法使っただろ?」

それは霊の力で――とは言えなかった。『封印解除』について話すことになる。

「それに霊石だ。リオンの手のひらで、石ころが霊石になったように見えたよ。迷宮でもさっきの工房でもね」

そうか。

僕を工房に案してくれたのは、パーティーにう前の様子見も兼ねていたんだろう。戦いでも、渉でも、必死で隠すことにまで頭が回らなかった……。

ミアさんはを尖らせる。

「……お禮の気持ちは本當だぞ」

「わ、わかってます」

心外そうなのがしおかしくて、僕もちょっと笑った。

ミアさんは続ける。

「スキルを明かせってわけじゃない。レアな能力はにするのも普通だ。でも、あたしもカネを貯めてる。儲かりそうだから、パーティーを組む、これがあたしのメリットだ」

どうかな、とミアさんはこちらを見る。

「あとは、あんたが気にったからさ」

を張り、堂々とした、冒険者の渉だった。

ソロでの危険はスケルトンとの戦いでじたばかり。それにダンジョンでは、信頼できる人とパーティーを組んだ方がずっと安全さは増す。

その信頼できる人に、ミアさんをれても大丈夫だと思えた。

なくとも、僕は今そう信じたい。

後はミアさんも知らない、大事な神様の――仲間の気持ち次第だ。

「ソラーナ、どうかな」

金貨から聲が聞こえる。

『わたしは、君にすべて賛だ』

顔をあげてミアさんに微笑み返す。長は違うけれど、同じ冒険者としてしは頼もしく見えただろうか。

「よろしくお願いします!」

「おう!」

僕たちは握手をわしあった。ミアさんの右腕に巻かれた鎖が、じゃらりと揺れる。

この時はまだ、あんなに長い付き合いになるなんて思わなかった――なんて、いつか思い返せるといいな。

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