《【書籍化】外れスキル『目覚まし』、実は封印解除の能力でした。落ちこぼれの年は、眠りからさめた神達と優しい最強を目指す。【コミカライズ企畫進行中】》1-20:次の目標

我慢して押しとどめたは、沸き上がる泉みたいに次から次へと押し寄せた。視界がどうしようもなくにじんで、涙がこぼれそうになる。

泣いちゃだめだ……!

『リオン、泣いちゃいけない理由なんて、どこにもない』

ソラーナの聲が聞こえ、涙が伝った。

母さんは背中をさすってくれて、ルゥも見守ってくれる。

2年も昔の、まだ父さんがいた頃の無力な僕に戻ったみたい。

けなくて、泣くべきじゃないって分かっていて、でも心地いい。安心が全にしみていく。

「ありがとう、リオン」

母さんが重ねて言う。ああ僕はこうしてしかったんだって思えた。

僕は泣いていた。

僕が落ち著くのを待って、靜かに母さんは家を出る。水を汲みに行ったんだ。

その頃には、涙が止まっていた。目の下がしヒリヒリする。

「ルゥ、もう大丈夫」

「お兄ちゃん、ゆっくりしてて。私、2階の片づけをするから」

妹も家事をできるようになったから、僕はダンジョンから戻った後、を休めることができた。

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ダンジョンでの修業は、母さんとルゥの家事に支えられている。

1人きりになって、ほっと息をついた。

『……平気かい、リオン』

ソラーナの聲。<目覚まし>をすると、ポケットの金貨からソラーナが天井近くに飛び出す。

神様はし空中を漂ってから、金髪をなびかせて僕の傍へ降りた。

僕はぐっと目元をぬぐって、笑ってみる。し恥ずかしかった。

「泣いちゃいました」

「泣けばいい。君が強い男の子であることは、わたしが知っている」

ソラーナは僕の頭をなでてくれた。

「君の家族の、絆はすごいな」

「……え?」

「君は、し楽になったような顔をしている。わたしの加護は強力だが、背負って、思い詰めさせてしまったかもしれないね」

みたいに笑う。

「わたしからも労いたい。リオン、君はすごい子だ」

今日はがぽかぽかする日だ。安心したせいか、食べたばかりなのにお腹が減ってくる。

3つ目のクルミパンを持ったところで、気づいた。

僕は大事なことを忘れていた!

「そ、ソラーナ、外に出てるけど」

「案ずるな。わたしの姿は今は君にしか見えない、じきコインに戻るさ」

それは、わかる。

でも今までは念のため、ソラーナを家で『封印解除』したことはなかった。何もないところと話をしていたら間違いなく変だから。

今は母さんはいないし、ルゥが家事から戻ってきたらソラーナを隠せばいいだけ。

でも、なんだろう、この騒ぎ――?

「お兄ちゃんっ?」

ルゥの聲で、僕たちははたと止まった。

からんからん、とルゥの手からお盆が落ちる。

「そ、その人、誰?」

沈黙。

ものすごい沈黙。

ぎぎぎ、と油がきれたようなきで僕はソラーナを凝視した。

「む、むむ?」

ソラーナはすっと右にいた。

ルゥの目線が同じだけ橫にく。

「………………」

ソラーナがばっと左へ跳んだ。ルゥの目線も追う。

の髪がわなわなと揺れた。

「み、見えて……いる……!?」

か、神様っ!?

あなたのことまだ隠したいんですけど!

とりあえず呼吸を落ち著ける。ソラーナがうまく何かを言えば――いや汗びっしょりだしなんか無理そうっ。

ルゥは唖然としていたけれど、やがて意を決したように僕の手を取った。

「ル、ルゥ?」

「お兄ちゃんこっち來て」

臺所の隅に連れてかれた。殘りの炭がまだ燃えていて、溫かい。

でもルゥの目は吹雪並みに厳しかった。

「お、お兄ちゃん! あの人、前も私が目覚めた時にいたでしょ」

今度こそ、僕は神様の金鎚で頭を毆られたみたいな衝撃をけた。

「…………み、みみ見えてたの?」

だって最初に治した時は、気付いてなかったよね……。

ルゥはを尖らせた。

「目覚める前に、お兄ちゃんの聲が聞こえたの。それで、私にあの人のこと気付いてほしくなさそうだったから……でも、ちょっと背中から髪のとか見えてたんだよ?」

ルゥはちらっとソラーナの方を見た。

空気読んで、合わせてくれてたんだ。

気が利くなぁ――じゃない、なんとか誤魔化さないと!

「え、ええと。じ、実は最近、仲間が増えたっていったでしょ? その一人で……」

ルゥはじとっと僕を見る。隠し事を見つけたルゥは、けっこう怖い。

「お兄ちゃん。そこに座って」

「はい」

「目を見て」

ルゥはおでこがぶつかりそうなほど顔を近づけた。

「もしかして、また私のためにお金たくさん使っちゃったの?」

妹はぎゅっと僕の服を握る。その顔は、泣きそうだった。

「それは……違うよ」

「だって、お母さんでも治せなかった病気が、あんなにすぐに治っちゃったんだもの。姿を消せるとか言ってたし……すごい魔法の使い手を頼んじゃったんだって、わたし、ずっと心配で……」

「は、話は聞かせてもらった」

ごほん、とソラーナは咳払いした。

「わたしは君が思っているような存在ではない。古き神で……む……」

目を泳がせて言い直す。

「君のお兄さんに助けられた存在だ」

「お兄ちゃんが……?」

「うむ。もう、彼なしではやっていけないほど、お互いが深く結びついている」

「は、え、えぇ!?」

ルゥが長い髪ごと跳ね上がった。

「……それって、もしかして、あなたは」

「そういうことなのだ」

ソラーナはうんうん頷いている。

『そういうことだ』って、絶対どういうことかわかってないと思う。僕もわかんないけど。

「お兄ちゃん、私……応援する!」

目をキラキラさせるルゥ。

ど、どうしよう。何かを誤解されてる気もするけど、誤解しておいてもらった方がいいような……。

神様は、ルゥに笑みを向けた。

「いずれにせよ謝するのは、君の兄に対してだ。けれど、そうか……君は見えるのか、そういうスキルが発現するのかもしれないね」

確かに、ソラーナの姿が見えるということは、なにかの力がルゥにあるってことなのかも。

ルゥはまだ、オーディス様からスキルを授かっていない。でも見えないはずの神様を見れる不思議な力は、スキル関係って思うのが自然だろう。

ソラーナはし目を閉じる。

「しかし……だとすると……」

こほん。

咳の音が転がった。

「ルゥ?」

「ごめん、お兄ちゃん」

ルゥはしばらく咳き込んでから、顔をあげた。無理をしている笑顔だ。

「ルゥ? 咳がでるの?」

「うん……」

の気が引くのがわかった。スキルで治したはずなのに。

「ソラーナっ」

「リオン、落ち著いて。わたしが見えるように、この子は、魔力をじやすいのだと思う。そういう能力は古代にもあった。そして……わたしが當初思っていたよりも、この子は魔力をじる力が強い」

また咳き込むルゥ。

ソラーナはその額にそっと手を當てた。

じやすいということは、影響をけやすいということ。ダンジョンから発する魔の気配を、この子は敏に宿してしまうんだろう」

でも、と言い添える。

「毎日、この子の容は気にしていた。昨日までは何もなかったはずだが……」

僕はルゥの手を握り、スキルを使った。

――――

<スキル:太の加護>を使用します。

『白い炎』……回復。太の加護で呪いも祓う。

――――

白い炎がルゥを包む。荒い呼吸はだんだんと治まり、咳も消えた。

「どう? 平気になった?」

僕の腕で、ルゥは小さく頷いた。ソラーナは難しい顔で瞑目する。

「原因もじているかもしれない。今ほど急に悪くなったなら、強い影響をけたはずだ。言い方は悪いが、容を崩す原因になった魔は、この子に痕跡を殘しているかもしれない」

僕はルゥの汗を拭いてやり、尋ねた。

「……なにか、変わったことはなかった?」

「変わった、こと? ずっと家にいたから……」

ルゥは一気に疲れたみたいだ。目がぼんやりして、け応えもあいまいになっている。

が猛烈に締め付けられた。

ソラーナが引き取る。

「なんでもいいんだ」

僕らを見つめる、金の瞳。ソラーナは腰をかがめて、ルゥに視線を合わせた。

かざした手から妹に魔力を流してくれているみたい。

「ぱっと頭に浮かんだこと。あるいは夢を見た。そういうことでも十分」

ルゥは大きな目をうっすらと開けた。汗で濡れた茶髪をぐしっと摑んで、口を開く。

「……今日の朝、急に寒くなったの。黒い影みたいなものが、私に迫ってくる夢。迷路みたいな場所で、骸骨や、狼……に追いかけ……られて」

ソラーナと目線をわす。

が影響しているなら、僕たちは魔が急に強くなったダンジョンに心當たりがあった。

「一番、怖かったのは……狼の顔した、大男……」

狼の顔に、人間の――?

ぞくりとした。

「人狼だ」

呟きがれる。僕はできるだけ力強く、ルゥに語り掛けた。

「ルゥ、大丈夫。明日からまた調べてみる。僕に任せて」

僕らに、新しい目標ができた。

ルゥの再発は、ダンジョンに突然現れた闇――スケルトンとも関係があるかもしれない。

東ダンジョンは最近おかしい。

が強くなったり、群れるようになったり、罠が発したり。明らかにダンジョンの難易度が上がっている。

妹を2階の寢室まで運びながら、僕は心を決めた。

何より東ダンジョンの最奧部にいるボスこそが、『人狼』なんだ。

もともとの目標だった。調べる必要もある。

行こう、東ダンジョンの最深部へ。

お読みいただきありがとうございます。

ここまででブックマーク、評価、想など頂けましたら幸いです。

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