《【書籍化】外れスキル『目覚まし』、実は封印解除の能力でした。落ちこぼれの年は、眠りからさめた神達と優しい最強を目指す。【コミカライズ企畫進行中】》1-25:の戦士団

聞こえるはずのない、僕とミアさん以外の足音。

「て、敵っ!?」

振り返るのと、僕らが構えるのは同時だった。未踏空間で出會うとしたら、まず魔

「これは失禮」

けれども僕らが対面したのは、明な微笑だった。

男の人だ。年齢は20歳くらいにみえる。

手には杖。灰のローブをに著けて、空間中を見渡している。頭をかすと、氷の明かりをけて銀の小冠(コロネット)がきらりとした。

「この空間はあなた方が?」

語り掛けながら近づいてくる。

ソラーナがぱっとって、その前を橫切った。ふと起きた風に、男の人は足を止める。

「……不思議な風です。これ以上あなた方に近づかない方がいい、ということですか?」

僕は、聲を張る。

人に化ける魔の噂だって、ないわけじゃないから。

「誰ですか」

「それこそまさに、こちらが申し上げたかったこと」

男の人は一禮した。

「私はオーディス神殿から參りました。この迷宮を調査するためです」

こちらの警戒をそらすような微笑を浮かべている。冷然――そんな印象を持つのは、空気が冷たいからだけじゃないだろう。

「先日。仲間がダンジョンの異変を私どもに通報したものでね」

そう言うと、この人は壁際の氷を観察し始めた。

ミアさんが囁く。

「リオン、見ろ。背中だ」

男の人の背中には、2羽の(カラス)が描かれていた。

「オーディス神殿の、ダンジョン調査隊。『(カラス)の戦士団』だ」

ミアさんの言葉を待っていたように、男の人は頷いた。

り口に向けて手招きすると、もう何人かがさらにってくる。みんな同じような格好をしていたけれど、目つきは厳しい。

特に睨むのは――僕だ。

し同行してもらっても?」

「未踏エリアがボス層とは、珍しいのでね……!」

最初の人が、氷を眺めながら聲を発した。

「不要だよ! 君は――王都の起こし屋、リオン君だろう?」

こちらが驚く間に、聲は続ける。

「お隣の赤髪の冒険者も、恩人だ。私たちは彼らに2つもの借りがある」

「……なんのことだい?」

ミアさんが問いかけると、黒髪の男はまた笑みをり付けた。

けは人のためならず――あなた方の善行が巡り巡って返ってきた、そういうことです」

ミアさんは口を曲げてしまう。持って回った言い方、嫌いそうですものね……。

黒髪の人は、杖を僕の方へ向けた。

「そしてリオン君は、ルトガー氏の息子だ」

息をのんだ。

冒険者ルトガー――それは、父さんの名前。

あの、と急きこむ。

「どうして父さんのことを……」

「勇敢なお方でした」

黒髪の冒険者は氷に包まれた巨神を見上げる。

「角笛の音が聞こえたかい?」

聲を失ってしまう。もう振り返られることもなく、穏やかな言葉が來た。

「いきたまえ」

それ以上のことは、話してくれそうもない。

別の人が僕らをボスエリアへ連れ戻した。『(カラス)の戦士団』は、そのまま未踏エリアのり口を通せんぼしてしまう。

ダンジョンを管理しているのは、王族とオーディス神殿だ。だからあの空間は、もう彼らが仕切るということだろう。

「ミアさん、行きましょう」

「だが……いや、仕方ないか」

はありありだったけれど、とにかく帰り道だ。

ボス階層、戦闘層、と階段を上っていく。靜かだった。魔の気配さえなくて足音だけが響いている。

そのせいか心臓の音がいやに大きい。

あの巨神はなんなんだろう? 突然現れた、あの冒険者達は? どうして父さんの名前が出たの?

ソラーナが金貨から話しかけてくる。

『……リオン、オーディスという神について、心當たりを思い出せたかもしれない』

頭がぼうっとしていて、僕は生返事しか返せなかった。

『でも、今は言わない。推測があっていれば君は絶対にその名を知らないはずだし、あの神のことだ、本當の名を呼ばれたらそれを探知する――そういう仕掛けがどこかにあってもおかしくないから』

やがて探索層まで戻ってくる。

第1層、もうすぐ出口というところで、僕は絶対に見たくないと思っていた顔を目にした。

「よう、リオン」

ギデオンだった。

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