《【書籍化】外れスキル『目覚まし』、実は封印解除の能力でした。落ちこぼれの年は、眠りからさめた神達と優しい最強を目指す。【コミカライズ企畫進行中】》2-6:次の迷宮へ

鐘の音が響いている。

起きなくちゃ。

僕には起こし屋の仕事があるから、鐘の前には起きてなくちゃいけない。

でも腳が、腕が、全が疲れ果ててまだ眠っていたいと大合唱してる。

鐘の音は続いていた。

し変だ。妙に大きい。まるで家の真上に鐘樓があるみたい。

「……え?」

無理やり起き上がると、そのまま目をぱちぱちしてしまった。

大部屋だ。

立派な暖爐が燃えていて、その手前には食事が乗った長テーブル。

僕はまだ夢をみているんだろうか。

ベッドを降りると絨毯がしいてある。おかげで靴をはくまで床の冷たさをじずに済んだ。

「起きましたか」

窓際から聲がかけられた。

杖を持った若い男が近寄ってくる。

冒険者風の革鎧に、2頭があしらわれた灰のマント。歳は20をし超えたくらいだろう。額にはめた銀の小冠(コロネット)が、暖爐の赤い火を寫している。

戦いのとき、僕に角笛を渡してくれた人だ。

「昨日の……?」

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男の人はふっと表を和らげる。目の細いちょっと冷たそうな顔なのだけど、笑うととても優しそうだった。

「そうです。角笛は役立ったようですね」

その人は軽く頷いてから、僕の額に手を當てたり、脈を測ったりしていた。

合はどうですか?」

「だ、大丈夫です」

は微笑した。

年はそうではなくてはね。食事はあちら、著替えはあそこ。もし湯を浴びたいなら、部屋を出て誰かを呼んでください。遠慮なさらずにね、英雄殿」

きびきびとく指を、

「ただし」

と言いながら立てる。

「ゆっくりはできません。それというのも冒険者としてのあなたに、依頼があるからです」

「待ってください」

失禮だと思ったけど、僕は割り込まずにはいられなかった。

こういう時は深呼吸だ。

周囲を見回しても家族の姿はない。暖爐の薪がぱちっとはぜた。

「母さんと、ルゥ……妹はっ?」

「どちらもここにいます。ただ、妹さんは総長殿――パウリーネ様と取り込み中で、今日いっぱいはかかりそうなのです」

そこで頭上からまた鐘が鳴り響く。

さすがに僕も事が呑み込めてきた。鐘が鳴る建なんて決まっているもの。

「ここ……神殿ですね」

「いかにも。ここは王都城壁外に設けられた、の戦士団の拠點です」

だんだん思い出してきた。

家で神様が金貨から飛び出した後、僕達家族はパウリーネさんの馬車に乗せてもらった。起きようと頑張っていたけれど、揺られていくうちに意識がぼんやりしたのを覚えている。恥ずかしいけど、そのまま寢てしまったんだろう。

は僕に右手を差し出した。

「私は、戦士団のフェリクス」

確か『幸運(フェリクス)』を意味する名前だ。

の戦士団に屬するいくつかのパーティーをまとめています。スキルは<賢者>、レベルは40」

レベル40を超える冒険者なんて、父さん達以外には會ったことがない。

冒険者の多くはレベル10から20臺前半に集中していて、30以上を目指すには才能が必要と言われている。

レベル40はほとんどの迷宮に一人でれる、一流だ。

「お父上には何度も助けられました。いつかその話もできるでしょう」

握手をわして、僕はフェリクスさんに尋ねた。

「ところで、依頼って……?」

「もちろんダンジョンです」

使い込まれた杖をつく。

「王都には東ダンジョン以外にも迷宮がある。東側でああなった以上、他の迷宮も調査しないわけにいきません」

確かに、スコルのような魔が他の迷宮にいないかどうかは、みないといけないだろう。

微笑して、フェリクスさんは指をひとつ立てた。

「あなたを襲った敵のことや、角笛のことは、調査の後にお話します。換條件というわけではありませんが……し、付き合ってもらいますよ、起(・)こ(・)し(・)屋(・)さ(・)ん(・)」

の戦士団の拠點は王都の城壁外にあった。

だから移は馬車になる。張り巡らされた街道を、四馬車がガタガタ疾走した。

目的地は、王都『北ダンジョン』。

多くの初心者が東ダンジョンの次に向かう場所だ。

僕達はその最下層に、<目覚まし>で開く未踏エリアがないかを調べる予定だった。ダンジョンの起こし屋ってことになるのかな。

「――あの」

聲を出してみる。

同乗者は5人いるけれど、反応したのはフェリクスさんだけだ。

いつも一緒だったミアさんは、別の用事で今はいない。

「どうしました、リオンさん?」

「僕、まだ北ダンジョンにれないかもしれないです……今更ですけど、正式にギルドの免狀がないので」

フェリクスさんは小さく笑う。

「ふふ、なるほど! 大丈夫、ギルドに話は通してあります。王都のダンジョンで、今日我々がれないところはありません」

やがて馬車が止まる。

「さて諸君、いきましょう」

戦士団は素早く降りていった。

フェリクスさんは杖を持っていて、他の戦士団も剣や槍など武はさまざま。でも2頭のをあしらったマントはお揃いだから、遠くからでも灰の集団だとわかる。

「裝備の合はどうですか?」

僕も自分の裝備をみた。

魔獣の黒革から作られた、鎧とブーツ。今までは普段著同然だったから、かなりのランクアップだ。

出発前に鏡で確認してちょっと嬉しくなってしまったのは緒です。

『リオン、なかなか似合ってるぞっ』

『強そうだな』

『かっこいいです』

『いいね』

『鏡で見てたもんね』

神様から聲がかかって、苦笑してしまう。

「……みんな戦士団の前には、出てこないんですか?」

ついでに聞いてみたけれど、トール神が応えてくれた。

『様子見だ。必要があれば出るが、リオンも連中がどう出てくるか、まだ聞いてないんだろう?』

こくりと頷いて、僕も階段を降りる。

北ダンジョンは森の迷宮だった。

あちこちに木が生えていて、天上からに似た明かりが降り注ぐ。探索層にはリスやキツネとか、自然の生きさえいるらしい。

「わぁ……!」

初めての、東ダンジョン以外の迷宮だ。

憧れた立派な冒険者に近づけたようで、こんな時なのに高揚してしまう。

足元をよく見て、草木に足をとられないように歩いていく。

いつもなら採集目的の冒険者とすれ違うのだけど、今日ばかりは誰とも出會わない。王都の迷宮は、の戦士団の調査のため今は全て立ち止だ。

「他の人がいないと、こんなに靜かなんだ……」

まるで本の森を歩いているよう。

迷宮の違いは、そこにいた人や神様の違いなんだろうか。

5人分の足音だけが迷宮に響いていく。新しい加護のせいか、小の息遣いさえ聞き取れそうだった。

先頭を歩くフェリクスさんが、右手を挙げる。

階段だ。

鬱蒼と木が茂る北ダンジョンは、いよいよ2層以降の戦闘層にる。

「……準備はいいですね?」

「はい」

スキルを起き上がらせた。

4人の神様から得た、新しい力を試そう。

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