《【書籍化】外れスキル『目覚まし』、実は封印解除の能力でした。落ちこぼれの年は、眠りからさめた神達と優しい最強を目指す。【コミカライズ企畫進行中】》2-9:暗闇の聖堂

王都の南ダンジョン。

一言でいうなら地下聖堂だ。

石造りの構造で広間が多い。おまけに壁には古代の彫刻が殘っている。母さんに教えてもらったけれど、昔は大勢の人が癒された本の聖堂であったみたいだ。

でも今は『暗闇の聖堂』と呼ばれている。

天井からのは、夜明け前と同じくらい。目が慣れている冒険者でなければ2メートル先も見えないと思う。

『ここは、シグリスが封印されていた迷宮でした』

薬神シグリスの言葉が頭に響く。

『今はこのようになっていたのですね……』

今は全8階層のうちの、4階層目にいる。

能力『野生の心』が多くの足音を伝える。僕らを囲うようにいているけれど、近寄ってくる音はない。同じところをいったりきたりしているだけなんだ。まるで命を失ったり人形みたいに。

ごくり、とが鳴る。

東ダンジョンで『その魔』とは何度か戦ったけれど、音の察知ができると異様さがよくわかる。

足音はするのに呼吸音はまったくないんだから。

Advertisement

「進行方向にスケルトンです。ずっと先の大部屋で、數は15くらい」

僕は進む先を指差した。

南ダンジョンは、淺層から低位のアンデッドが出る。だから『暗闇の聖堂』と呼ばれていた。

フェリクスさんは微笑する。

「ありがとう」

の戦士団は視線をわしあう。迂回するか直進するか、決めているんだと思う。

ボス層にある壁を『封印解除』して未踏空間を調べるのが目的だから、積極的に戦う意味はあまりない。

「……直進します。避けると大回りです」

フェリクスさんの決斷で進む先が決まる。

闇がまとわりくように濃度を増した気がした。

「スケルトン15か」

歩き出す前に、僕はフェリクスさんのマントを引いた。

「いざとなったら、神様を封印解除して助けてもらうこともできます。迷宮では、時間はとても短いですけど」

東ダンジョンでは狼という魔と戦っている。その時もソラーナが最後に魔を葬ってくれた。

フェリクスさんも足を止める。

Advertisement

「時間が短い、とは?」

「神様も封印の影響をけるんです」

フェリクスさんはし考えて、首を振った。

「……リオンさん、それは切り札としてください。あなたを守るための切り札です。それというのもの戦士団は替えが効きますが、あなたの<目覚まし>に代替はいない」

フェリクスさんは僕のポーチを見た。

「角笛はどうですか?」

「あ、まだ……変わりはありません」

取り出してみたけれど、かつてのは失ったままだ。『封印解除』に反応する気配もない。

靜かにすべき迷宮で軽々しく吹いてみるわけにもいかないけど、たとえ試したとしても効果は出ないと思う。

無念そうにフェリクスさんは首を振った。

「そうですか。角笛に神々を封印から解き放つ力があるとすれば、迷宮でこそ有効かと思ったのですが」

それは……そうかも。スコルを倒した力を、神々に自在に振るってもらえる。

ポケットで金貨が震えて、ソラーナの聲がした。

『今は無理だと思う。角笛そのものから、特別な力をじない』

いつでも使えるものじゃないってことなのかな。

『何日か魔力をためたり、あるいは角笛自が強い封印に反応するのかもしれない』

殘念だけど、今はしまっておくしかないんだろう。

しばらく歩くと、僕達は魔が待つ大部屋にたどり著いた。

り口で息を整える。お腹で深く呼吸すると、戦いの前でも落ち著ける。

「いきますっ」

フェリクスさんの合図で大部屋に突する。

待ち構えていたのはスケルトンの群れ。

一気に10ほどが走り寄ってくる。

軍勢、そのさらに奧から大きめの足音がした。いやな予がして『野生の心』に魔力を注ぐ。

大きな赤いオーラが4つも浮かび上がった。

『リオン、大きな気配が混ざってる!』

ソラーナの忠告どおりだった。睨んだ闇の中に、目に青の火を燃やすドクロが浮かび上がった。

戦士団が聲を飛ばす。

「ドラウグルだ!」

ただのスケルトンじゃない上位

これは……僕の索敵ミスだ。

ドラウグルはただのスケルトンじゃない。人骨に、うっすらと霊をまとっている。

人影の側に骨が見えて、ただのスケルトンよりもさらに不気味だ。

「速いぞ!」

ドラウグル4は大きく回り込んでくる。狙いは最後衛、つまり僕だ。

は一瞬でフェリクスさんに迎撃された。

でも、殘る2が骨を揺らして迫る。

「リオンさん! 落ち著いて距離をとって。我々が対処するからっ」

首を振った。

「い、いいえ!」

スキルで迎え撃とう。

――――

<スキル:太の加護>を使用します。

『黃金の炎』……時間限定で能力を向上。

――――

溫かいが全を包み、逸りかけた呼吸を整えた。

のドラウグルがを屈めた。手の位置は低く、大剣の切っ先は背中側に回している。

自分ので剣の長さを隠すやり方だった。

暗いせいで、さらに間合いが読みづらい。

『リオンさん、危険です』

シグリスの呟きが聞こえた。

『……彼らはスキル<剣士>の技を持っています』

でも逃げたくなかった。強い冒険者にはまだまだ遠いんだから。

同時に敵がいた。

低い姿勢から、掬い上げるように刃がくる。2本の大剣はまるで巨大なハサミだった。

「目覚ましっ」

それなら、風。

<目覚まし>された風の霊、シルフが短剣のクリスタルから飛び出した。

「わんっ」

逃げながら、突風で敵の足元をすくう。

2つの大剣が互いに接、火花を散らした。

そこが大きな隙になる。

目の懐に飛び込んだ。れた足で強引に剣を振ってくる。でも、かわしてしまえば隙が大きくなるだけだ。

「ふっ」

2撃目の時間は與えないっ。

短剣で弱點となる骨を突いた。武の重さに耐えかねたように、まず腕が崩壊する。それから全が崩れて、ドラウグルはただの灰に戻っていった。

殘るは1

ドラウグルは大剣を垂直に構え直している。

「目覚ましっ」

2回目の、霊による攻撃。

敵はをかわし、踏み込んでくる。振り下ろすのではなくてより直線的な――

「突きっ!?」

短剣でけると、肩が壊れそうな衝撃がきて膝をついてしまった。

ドラウグルは素早く片手を柄から外す。刃の中ほどを握ったようだ。

を両腕の力でこじ開ける半剣(ハーフ・ソード)の構え。

強い圧迫に心臓が発しそうなほど熱くなった。

『リオンは、やらせない!』

ソラーナの、太の加護による応援。

背中を押されたみたいに元気が出た。

「やぁ!」

短剣で大剣をはじき返す。

萬歳するようになったドラウグル。顔があったら唖然としていたかもしれない。

僕は弱點の骨を砕いて、灰に戻した。

「な、なんという……」

の戦士団、その何人かがあんぐり口を開けていた。

すでに通常のスケルトンは掃討されている。

「ふぅ……」

あ、危なかった……。

『リオン、し無茶をしすぎだぞ』

ソラーナの言葉どおりだった。

神様の力でどうにかなったけど、攻防としては失敗。大剣って普通は短剣でけるものじゃないもの。

「焦りましたよ」

フェリクスさんも心配したみたいだった。

「……ごめんなさい」

「今は我々はパーティーメンバーです。仲間として言いますが、冒険者は冒険をしないもの。勝てる相手に確実にぶつかる、そういう専門家であるべきです」

1人で2の魔を相手にするなんて、やるべきじゃない。

杖をついて苦笑している。

「……正直、勝ち方にも驚きましたが」

「もともとは僕のミスなので……」

失敗に失敗を重ねたみたいで、ずっしりと肩が重くなった。

「僕、敵の數だけ數えて、それで全部スケルトンって言ってしまったので……遠くからでも、敵の姿や強さを見る能力もあったんですけど」

「……っ!? そ、それは……そうですか」

フェリクスさんは目元をんでいた。

「ふぅ。索敵とは、そもそも百発百中を目指すものではありません。多の違いは折り込み済み。ですので、我々に任せていただければよかったのですよ」

神様の聲も次々とやってきた。

『うむ、うむ。今のは慎重な君らしくなかったぞ』

『ん? 力で勝ったんだからいいだろ? 何がまずいんだ?』

『え。トール、それは……』

『ロキもドン引き』

『……シグリスも焦りました』

みんなにまで言われて、さすがに反省した。でも、ちょっとが溫かくもなる。

「ごめんなさい。気を付けます」

反省を生かして、僕は周囲を探知しなおした。ウルのスキルに魔力をこめて、壁の裏側にいる魔も赤いとして見つけ出していく。

「……あれ?」

異変に、気付く。

もう周囲に赤いはない。ただ遠い端の方に、赤いがいくつも見えた。

北ダンジョンで索敵した時には、そんな遠くまでは見えなかったのに。

「範囲が広がってる?」

僕は、まだ腕を包んでいる『黃金の炎』を眺めた。

「もしかして……『黃金の炎』が、他のスキルも強化してる?」

    人が読んでいる<【書籍化】外れスキル『目覚まし』、実は封印解除の能力でした。落ちこぼれの少年は、眠りからさめた女神達と優しい最強を目指す。【コミカライズ企畫進行中】>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください