《【書籍化】外れスキル『目覚まし』、実は封印解除の能力でした。落ちこぼれの年は、眠りからさめた神達と優しい最強を目指す。【コミカライズ企畫進行中】》2-10:ロキの二枚舌
何度確かめても同じだ。能力『黃金の炎』が、『野生の心』の索敵力を強化してる。
音も臭いもはっきりとわかる。
魔の気配だという赤いも、壁を越えてずっと遠くまで見渡せた。
『おやぁ。気づいたかい』
ちょっと笑いを含んでいる、神様の聲。いい加減、この人だけはしっかりと覚えてしまった。
「ロキ……だよね?」
『うん。僕のスキルについて君に教えよう』
ステータスを念じてもいないのに、頭に勝手に文字が浮かんだ。
――――
<スキル:魔神の加護>
『二枚舌』……2つの加護を組み合わせて使うことができる。
――――
『君は今、変わった狀況にいる。神々のことだ』
ロキに言われたとおり、僕は首肯した。
『複數の神が力を貸すなんて、僕らがいた時代でもあまり例がない。神との絆ってそんなに簡単なものじゃないからねぇ』
角笛を吹いて、神様が現れてくれた。それからあまり考えないまま加護をけ取ってしまったけれど、確かにソラーナの時とはし違う気がする。
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一番違うのは――
「本當はソラーナの時みたいに……誓いがいるってこと?」
『普通はね。まぁあの子は太神から魔力をけ継ぐ前、つまり弱った狀態で君と出會った。だから、目覚ましの角笛(ギャラルホルン)で目覚めた時とは単純には比べられないけど』
それに、とロキは続ける。
『君はスコルを倒した。神々の敵を倒し、勝利をあげた。だから戦いを通して絆を育んだともいえる、英雄なんだ。特に戦神でもあるトールなんかは、君とは強い結びつきをじていると思う』
神々の名をんで怪と戦う――そんな語も、冒険者の間には伝わっている。
自分がそれだと言われると、ちょっと戸う。
『ただねぇ……それでも、ちょっと神々の加護をスムーズにけすぎな気がするんだ。リオン、君はひょっとすると神々を宿しやすい質かもしれないよ』
「ま、まさか……! そんなことないですよ」
何もないところで手を振ってしまった。
の戦士団の人たちに、変な目でみられてしまう。
『なぜわかる? 家族にそんな人いない?』
否定しようとして、ルゥの顔がを過った。
ルゥには初めからソラーナが見えていた。いや、け、けど……?
『ふふ、まぁいいや』
ぱちんと手を叩く音。
『さて! 僕が授けた能力「二枚舌」は……そんな神々の力を組み合わせられる、セットでお得な能力だ』
たとえば、とロキは続ける。指を立てたりを揺すったりしながら解説する魔神様の姿が、簡単に思い描けた。
『ソラーナから授かった、「黃金の炎」。ウルから授かった、「野生の心」。どちらもを強化するものだから、相乗効果が起きたのさ』
ソウジョウ――聞いたことはあるけれど、多分、魔法のための用語でピンとこない。
「相がよかったってこと?」
『ま、そういうことだ。「野生の心」の探知範囲が広がっているだろう?』
辺りを見回すと、まだかなり遠くの方まで赤いが見えていた。
一番遠いものはすごく小さい。魔が弱いということじゃなくて、離れた場所にいるってことなんだろう。
『優れた魔法使いは呪文を同時に使えるというよね。そのスキル版。君は殘念ながら、魔法の素養はかなり低いようだ』
「へぇ、そう……?」
あれ……。今、ちくっとが痛んだ。
視界がにじむ。
「ぼ、僕、やっぱり魔法はダメなんですかっ?」
『お、おっと失禮? 魔力はそこそこなんだけど、ちょっと素直すぎるのかもしれない。現実を魔力でりたいという野心が足りないというか』
「……そ、そうなんですね」
がーん、と大鐘が頭に落ちてきたみたい。
薄々、貴族に比べたら不得手なんだろうとは思っていたけど、神様に言われると重みが違う。
『ソラーナの加護を使いこなせるだけの魔力があって、生活魔法しか使えなかった。その時點で……ねぇ』
「あ、う……」
『ま、まぁとにかく――ああソラーナ睨まないでくれ、いつか伝えないといけないんだからっ』
ごほん、とロキは咳払い。
『僕は魔神、魔法の神。代わりに魔力を使用する技、スキルを2つ組み合わせて使用できる能力を君に與えた』
能力向上のスキル『黃金の炎』と、知力向上のスキル『野生の心』。
この2つで、確かに索敵範囲は確実に広がっている。
『ただし神の加護の掛け合わせ、なんて僕でもやったことがない。だからどんなスキルでこの組み合わせが功するかは、実は僕にもわからない』
聞きながら、僕は探知範囲をあちこちにばしてみる。
丁度北ダンジョンの階層を覆うくらいが今の索敵の限界點みたいだ。
「なら……」
この階層の安全は確保できている。
こうなったら『黃金の炎』が消えるまで、この能力を試したい。
「リオンさん、どうしました? そろそろ出発しますが……」
フェリクスさんに、僕は笑いかけてみた。
「下の階層も、探知してみます」
「……こ。この位置から?」
「はい。階段を降りた後、魔の群れが遠い方が安心だと思いますから」
左右に広げられたのだから、上下にも広げられるだろう。
魔力をしずつ神様の力へ注いでいく。
同じ階層のが徐々に消えていき、代わりに階下にいる魔、その姿がぼんやりと赤く浮かび上がった。基本はスケルトンだけれども、ドラウグルや、レイスといったもうし強い魔も見える。
「やっぱり、アンデッド系が多いな……」
こんなに不気味な魔が多いから、『暗闇の聖堂』なんていう皮な名前がついてしまったんだろう。
冒険者からも不人気で、南ダンジョンの近くは住みたがる人もあまりいない。
一番よく南ダンジョンに潛るのは、オーディス神殿の神といわれていた。治療薬や施療院向けの魔法書が見つかることもあるし、アンデッドが多いから弔いの修行に使われることも多いみたい。
金貨が弱々しく震えた。
『……ヴァルキュリアとしては、し、辛いですね』
薬神シグリスの、そんな呟き。
問い返そうと思ったけれど、貧の時みたいに頭が揺れる。
「あ、あれ?」
手のひらが冷たい床にふれている。気づくともちをついていた。
フェリクスさん達が慌ててやってくる。
「ど、どうしました?」
頭がぼうっとして、しが熱かった。
『うん、やっぱりに負荷がかかるねぇ。心配ない、僕の方でセーブしておいたから5分も休めば復活さ』
あの、それ……!
「さ、先に言ってくれませんか?」
『あはは、ごめんねぇ♪』
やっぱりこの神様、油斷できない人かも……!
僕達は階段を降りてすぐの場所で、一度休憩をすることになった。
『ふふ、でも現に君は疲れていたし、こうでもしないと休まないでしょ?』
ロキの臺詞は言い訳なのか本気なのかわからない。ソラーナの怒っている聲がする。抗議はすごくありがたいけど、今は頭ががんがんした。
『……これでいいのさ。そろそろ魔と本當に向き合う心の準備も、しはしておいた方がいいだろう。君も、神々もねぇ』
それきり、ロキは口をつぐんでしまった。
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